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SCENE110 招かざる者たち

ー/ー



 僕のダンジョンに初めて視聴者である探索者たちがやって来てから数日が経過した。
 あれ以降は大したこともなく、僕たちはダンジョン内に迷路を造る計画を進めていた。どのように通路を配置して、どこに宝箱を置くのか。ラティナさんやバトラーも一緒になって、それは朝から晩までずっと議論しているくらいだった。
 そんな時だった。

「これは、誰か来ましたな」

「そうだね。しかも、なんかよろしくない気配だ。以前にも感じたことのあるやつだね」

 僕とバトラーが話していると、ラティナさんがちょっと震えたように見える。

「えっと、何か危険な人でも来たということなのでしょうか」

「ええ。明らかに僕たちに敵意を持った人たちですね。入ってくる人たちによって、ダンジョン内のマナが変化しますから、僕たちはよく分かるんです」

「そ、そうなんですか。うう、怖いです……」

 ラティナさんを不安にさせてしまったけれど、こればかりはダンジョンマスターとしてしっかりと対処しないといけないからね。
 それにしても、今はダンジョン管理局の人たちもいるというのに、なんでこんな気配を持った人が入ってこれるんだろう。僕は首を傾げてしまう。

「何らかの形で管理局の人たちを黙らせたのでしょうね。この間の配信で視聴者の方々が仰られていましたが、世の中にはよろしくない方々がいらっしゃるようですから」

「……バトラー。これは配信しておいた方がいいかな」

「その方がよいかと思います。ラティナ様、あなた様の魔法でうまくどろーんとやらを守って下され」

「わ、分かりました」

 僕はドローンを起動させると、ラティナさんと一緒に後方に下がってもらう。

『こんらみあ~って、ちょっと雰囲気がおかしいな?』

『ウィンクちゃんの挨拶がないのはおかしいね』

『これは、緊急事態かな?』

 視聴者さんたちのコメントが流れていく。

「はい、ちょっとよろしくない気配がありまして、おそらく緊急事態で間違いないです。なので、申し訳ないですがほとんどしゃべりません」

『了解』

『そこもダンジョンだからなぁ』

『管理局をどうにか言いくるめれば、ウィンクちゃんのダンジョンでも侵入できるってわけか』

『ウィンクちゃんに危害を加えようなんて許せん』

 僕が事情を説明すると、視聴者さんたちは理解してくれたようだ。
 頼もしさを感じながら、僕はボス部屋の入口をじっと見つめている。今は何もまだ見えないけれど、明らかにびりびりとした異様な雰囲気が漂い続けている。

「けっ、ちんけなダンジョンだな」

「副マス、本当にこのダンジョンを荒らすんですかい?」

「ふん、あいつらに対する見せしめにはいいだろう」

「でも、ダンジョン管理局がバックにいるダンジョンですぜ? やばくないですかい?」

「ダンジョンなど、俺たちに攻略されてこそだろうが! 知ったこっちゃねえ!」

 殺気立った声が聞こえてくる。こんな攻撃的な連中は初めてだな。

『うわぁ、この声はパラダイスの副マスか』

『なんてやつらだ、俺たちの憩いを壊そうってのか?』

『ギルド名に反して破壊的だよな』

『こいつらにとってパラダイスってこったろ』

 視聴者さんたちがいろいろとコメントを打っている。
 なるほど、これが視聴者さんたちが言っていたことか。確かにとんでもない人たちみたいだ。

「ラティナさん」

「はい!」

「ひとまず入口を岩でふさいで時間を稼いでください」

「わ、分かりました」

 次の瞬間、ラティナさんの魔法が発動して、ボス部屋の入口が岩で覆われていく。あれだけ大きな声が聞こえていたので近いとは思うけれど、ちょっとでも時間が稼げればいいんだ。そうすれば、僕とバトラーでどうにかできるはずだもの。
 僕たちはじっと入口の様子を見守る。
 ごくりと息をのむ僕たち。その目の前でとんでもないことが起きる。

 ドゴォッ!

 ものすごい音を立てて、岩が粉砕されてしまう。
 ラティナさんの魔法をこんなに簡単に砕くなんてなんてやつらなんだ。

「けっ、薄っぺらい岩だな。こんなに簡単に砕けるってよ」

「はっ、ビギナーダンジョンならそんなもんだろ。さぁ、とっととここのボスぶっ倒して、消しちまおうぜ」

「おうよ!」

 こいつら、本気で僕らを殺すつもりだ。
 どうしよう。僕のレベルが低いから多分まともにやり合えない。声からすると相手は三人以上いるのは間違いないし、副マスっていうことは強さもそこそこあるはず。
 つまり、僕たちは過去一番ピンチだってことだ。
 まったく、どうしたらいいというんだ。

「プリンセス。ラティナ様の護石はお持ちですね?」

「うん。とはいっても一個しかないよ。それではどれだけ耐えきれるか分からないよ」

「大丈夫でございます。さあ、奴らが部屋に入ってきた時が勝負です。我が突撃しますので、プリンセスは魔法で援護をお願いします」

「分かったよ」

 僕たちの目の前では次々とラティナさんが作った岩の壁が壊されていっている。人が通れそうなくらいの穴が開いたから、もう入ってくるだろう。

「よし、これで通れるぜ」

「おっしゃ! じゃあ、とっととやっちまおうぜ」

「おう!」

 ついにパラダイスの人たちがボス部屋に足を踏み入れる。

「プリンセスの聖域に、汚い土足など似合いません。とっととお引き取りを願いましょう」

 足がすっとボス部屋に伸びてきた瞬間、バトラーが入口目がけて突進を始める。
 僕たちの守る戦いが始まった。


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次のエピソードへ進む SCENE111 これが格の違いなんだ


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 僕のダンジョンに初めて視聴者である探索者たちがやって来てから数日が経過した。
 あれ以降は大したこともなく、僕たちはダンジョン内に迷路を造る計画を進めていた。どのように通路を配置して、どこに宝箱を置くのか。ラティナさんやバトラーも一緒になって、それは朝から晩までずっと議論しているくらいだった。
 そんな時だった。
「これは、誰か来ましたな」
「そうだね。しかも、なんかよろしくない気配だ。以前にも感じたことのあるやつだね」
 僕とバトラーが話していると、ラティナさんがちょっと震えたように見える。
「えっと、何か危険な人でも来たということなのでしょうか」
「ええ。明らかに僕たちに敵意を持った人たちですね。入ってくる人たちによって、ダンジョン内のマナが変化しますから、僕たちはよく分かるんです」
「そ、そうなんですか。うう、怖いです……」
 ラティナさんを不安にさせてしまったけれど、こればかりはダンジョンマスターとしてしっかりと対処しないといけないからね。
 それにしても、今はダンジョン管理局の人たちもいるというのに、なんでこんな気配を持った人が入ってこれるんだろう。僕は首を傾げてしまう。
「何らかの形で管理局の人たちを黙らせたのでしょうね。この間の配信で視聴者の方々が仰られていましたが、世の中にはよろしくない方々がいらっしゃるようですから」
「……バトラー。これは配信しておいた方がいいかな」
「その方がよいかと思います。ラティナ様、あなた様の魔法でうまくどろーんとやらを守って下され」
「わ、分かりました」
 僕はドローンを起動させると、ラティナさんと一緒に後方に下がってもらう。
『こんらみあ~って、ちょっと雰囲気がおかしいな?』
『ウィンクちゃんの挨拶がないのはおかしいね』
『これは、緊急事態かな?』
 視聴者さんたちのコメントが流れていく。
「はい、ちょっとよろしくない気配がありまして、おそらく緊急事態で間違いないです。なので、申し訳ないですがほとんどしゃべりません」
『了解』
『そこもダンジョンだからなぁ』
『管理局をどうにか言いくるめれば、ウィンクちゃんのダンジョンでも侵入できるってわけか』
『ウィンクちゃんに危害を加えようなんて許せん』
 僕が事情を説明すると、視聴者さんたちは理解してくれたようだ。
 頼もしさを感じながら、僕はボス部屋の入口をじっと見つめている。今は何もまだ見えないけれど、明らかにびりびりとした異様な雰囲気が漂い続けている。
「けっ、ちんけなダンジョンだな」
「副マス、本当にこのダンジョンを荒らすんですかい?」
「ふん、あいつらに対する見せしめにはいいだろう」
「でも、ダンジョン管理局がバックにいるダンジョンですぜ? やばくないですかい?」
「ダンジョンなど、俺たちに攻略されてこそだろうが! 知ったこっちゃねえ!」
 殺気立った声が聞こえてくる。こんな攻撃的な連中は初めてだな。
『うわぁ、この声はパラダイスの副マスか』
『なんてやつらだ、俺たちの憩いを壊そうってのか?』
『ギルド名に反して破壊的だよな』
『こいつらにとってパラダイスってこったろ』
 視聴者さんたちがいろいろとコメントを打っている。
 なるほど、これが視聴者さんたちが言っていたことか。確かにとんでもない人たちみたいだ。
「ラティナさん」
「はい!」
「ひとまず入口を岩でふさいで時間を稼いでください」
「わ、分かりました」
 次の瞬間、ラティナさんの魔法が発動して、ボス部屋の入口が岩で覆われていく。あれだけ大きな声が聞こえていたので近いとは思うけれど、ちょっとでも時間が稼げればいいんだ。そうすれば、僕とバトラーでどうにかできるはずだもの。
 僕たちはじっと入口の様子を見守る。
 ごくりと息をのむ僕たち。その目の前でとんでもないことが起きる。
 ドゴォッ!
 ものすごい音を立てて、岩が粉砕されてしまう。
 ラティナさんの魔法をこんなに簡単に砕くなんてなんてやつらなんだ。
「けっ、薄っぺらい岩だな。こんなに簡単に砕けるってよ」
「はっ、ビギナーダンジョンならそんなもんだろ。さぁ、とっととここのボスぶっ倒して、消しちまおうぜ」
「おうよ!」
 こいつら、本気で僕らを殺すつもりだ。
 どうしよう。僕のレベルが低いから多分まともにやり合えない。声からすると相手は三人以上いるのは間違いないし、副マスっていうことは強さもそこそこあるはず。
 つまり、僕たちは過去一番ピンチだってことだ。
 まったく、どうしたらいいというんだ。
「プリンセス。ラティナ様の護石はお持ちですね?」
「うん。とはいっても一個しかないよ。それではどれだけ耐えきれるか分からないよ」
「大丈夫でございます。さあ、奴らが部屋に入ってきた時が勝負です。我が突撃しますので、プリンセスは魔法で援護をお願いします」
「分かったよ」
 僕たちの目の前では次々とラティナさんが作った岩の壁が壊されていっている。人が通れそうなくらいの穴が開いたから、もう入ってくるだろう。
「よし、これで通れるぜ」
「おっしゃ! じゃあ、とっととやっちまおうぜ」
「おう!」
 ついにパラダイスの人たちがボス部屋に足を踏み入れる。
「プリンセスの聖域に、汚い土足など似合いません。とっととお引き取りを願いましょう」
 足がすっとボス部屋に伸びてきた瞬間、バトラーが入口目がけて突進を始める。
 僕たちの守る戦いが始まった。