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SCENE111 これが格の違いなんだ

ー/ー



 僕のダンジョンに緊張が走る。
 ラティナさんが作った岩の壁が破られ、明らかに敵意を持った連中が入ってくる。

「プリンセスの聖域、汚させはしませんぞ!」

 踏み入れてくる明確な敵に対して、バトラーが突っ込んでいく。

「うべらっ!」

 まともに入った不意打ちに、一人が吹き飛んでいく。

「がへっ!」

 そのまま岩壁に激突し、ずるずると気を失ってしまったようだ。

「やった!」

「プリンセス、すぐに闇魔法で拘束を。こやつら、この程度ではすぐに復活します」

「わ、分かった!」

 僕はバトラーの声に反応して、すぐに気絶した人に向けて闇魔法を使う。
 僕から放たれた魔法は、気絶している探索者をぐるぐるに巻いて身動きを封じていた。

「けっ。油断してるから吹き飛ばされんだよ」

「まったくだな。にしても、手荒い歓迎だな、おい」

 少し遅れて二人の男が姿を見せる。
 なんとも分かりやすい、まさに不良という感じの雰囲気の男たちだ。

『げげっ、本当に副マスのやつだ』

矢羽(やば)肝井(きもい)じゃねえか』

『ってことは、気絶したやつは遠手(とおて)か』

『なんでこんな平和なダンジョンに似つかわしくない連中ばかり来てんだよ』

 視聴者さんたちのコメントが流れていく。やっぱりろくでもない連中みたいだ。

「うちの舎弟が世話になったっていうんでな、お礼参りに来たんだが……。こいつぁ、挨拶なもんだな」

「何がお礼参りですかな。プリンセスに害をなす気満々のオーラ、隠しきれておりませんぞ」

「はっ! この蛇の分際でうるさいやつだ、なっ!」

 視聴者さんのコメントからすると、バトラーと話をしているのが矢羽っていう人か。
 その矢羽って人は、話をしながらバトラーに対して攻撃を仕掛ける。

「それが攻撃ですか。止まって見えますね」

 命中したかのように見えたはずだけど、バトラーは平然としていた。

「残像です。お前ごときの攻撃、この我に当てることは叶いませんぞ」

「けっ、蛇の分際で偉そうに。だったら、いくらでも方法はあるんだよ」

 矢羽とかいう人が首を動かしながら話していると、もう一人の人が消えた。ちょっと、どこに行ったんだ?

『ウィンクちゃん、前!』

「え?」

 僕は驚いた。消えたと思った人が、いきなり僕の目の前に現れたんだから。
 これは、いくらなんでもピンチすぎる。

「けけっ、死ねえっ!」

 僕は魔法を使おうとするけど、相手の方が早い。さすがにこの瞬間は死を覚悟する。

 ガキン!

 ところが、男の攻撃は僕に届くことなく弾き返されていた。しかも、手に持っていた武器は粉々に砕けていた。

「な、なんだぁ、こりゃあ!」

「おいおい、どうなってんだよ」

 二人揃って驚いている。
 これは、ラティナさんの護石の効果だ。だって、小さくピシッていう音が聞こえたんだもん。ありがとう、ラティナさん。
 でも、感謝している場合じゃない。せっかくできた相手の隙だ。今やらなきゃ、いつやるんだよ。
 食らえ、ゼロ距離の僕の魔法を!

「アクアシュート!」

「ぶへえっ!」

 僕が魔法を発動すると、襲ってきた男はゼロ距離での魔法をもろに食らって、大きく吹き飛んでいく。
 地面に叩きつけられたかと思うと、その瞬間、顔以外が岩に覆われてしまう。きっとラティナさんが魔法を使ったんだろう。
 これで、二人脱落。あとは、ボスであるあいつだけだ。

「おいおい。できたばっかりの弱小ダンジョンだと思ってたが、こいつはやってくれるな」

 この状況にもかかわらず、矢羽って人は余裕の表情を見せている。

「降参するなら今のうちですぞ。とはいえ、プリンセスの命を狙ったのですから、降参してもただでは済まないでしょうがね」

「まあ、そうだな」

 頭の後ろに手を当てて困ったような表情をしているけれど、なんでこの状況であんなに余裕を感じているんだ?

「まったく、てめえらを血祭りにしねえと、ボスに合わせる顔がねえってもんだ。あの女をやりてえとこだが、お前の方が先みたいだな」

「ええ、最初からそうしていればよかったのです。よそ見などするから、すでに決着はついているのですよ」

「なんだと?」

 バトラーと話している男が、態度が気に食わないのか表情を歪ませている。

「けっ、痛い目を見ねえと分からねえよだな。食らえっ!」

 矢羽って人がバトラーに対して殴りかかろうとしている。ところが、その振り上げたこぶしはぴくりとも動かなくなってしまっていた。
 危ないと思って一瞬よそ見をしてしまった僕は、まったく何が起きたのか分からなかった。

「な、なんだ? 体が動か、ねえ、ぞ……」

「だから申しましたでしょう。すでに決着はついていると」

「なん……だと……」

 男は何かを感じて足元に視線を向ける。そこにはバトラーから伸びた影が足に絡まり、がっつりとかみついている姿があった。

「て、てめえ……」

 バトラーへとゆっくり睨むように視線を向けている。

「強力なマヒ毒です。我とお前のレベル差を考えれば、耐性が強くても無効化は不可能。そのままおとなしくしているのですな」

「く……そ……、どこ、が、しょ、しん……しゃだ、ん、じょ……」

 矢羽という男は、喋ることもできなくなったようだ。
 こうして、ダンジョンへとやって来たパラダイスってギルドの三人は、あっという間に撃退されてしまったのだった。
 それにしても、バトラーってば余裕すぎるね。僕もあれくらい強くならなくちゃ。
 無事に撃退はできたけれど、僕は決意を新たに気合いを入れ直していた。


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 僕のダンジョンに緊張が走る。
 ラティナさんが作った岩の壁が破られ、明らかに敵意を持った連中が入ってくる。
「プリンセスの聖域、汚させはしませんぞ!」
 踏み入れてくる明確な敵に対して、バトラーが突っ込んでいく。
「うべらっ!」
 まともに入った不意打ちに、一人が吹き飛んでいく。
「がへっ!」
 そのまま岩壁に激突し、ずるずると気を失ってしまったようだ。
「やった!」
「プリンセス、すぐに闇魔法で拘束を。こやつら、この程度ではすぐに復活します」
「わ、分かった!」
 僕はバトラーの声に反応して、すぐに気絶した人に向けて闇魔法を使う。
 僕から放たれた魔法は、気絶している探索者をぐるぐるに巻いて身動きを封じていた。
「けっ。油断してるから吹き飛ばされんだよ」
「まったくだな。にしても、手荒い歓迎だな、おい」
 少し遅れて二人の男が姿を見せる。
 なんとも分かりやすい、まさに不良という感じの雰囲気の男たちだ。
『げげっ、本当に副マスのやつだ』
『|矢羽《やば》と|肝井《きもい》じゃねえか』
『ってことは、気絶したやつは|遠手《とおて》か』
『なんでこんな平和なダンジョンに似つかわしくない連中ばかり来てんだよ』
 視聴者さんたちのコメントが流れていく。やっぱりろくでもない連中みたいだ。
「うちの舎弟が世話になったっていうんでな、お礼参りに来たんだが……。こいつぁ、挨拶なもんだな」
「何がお礼参りですかな。プリンセスに害をなす気満々のオーラ、隠しきれておりませんぞ」
「はっ! この蛇の分際でうるさいやつだ、なっ!」
 視聴者さんのコメントからすると、バトラーと話をしているのが矢羽っていう人か。
 その矢羽って人は、話をしながらバトラーに対して攻撃を仕掛ける。
「それが攻撃ですか。止まって見えますね」
 命中したかのように見えたはずだけど、バトラーは平然としていた。
「残像です。お前ごときの攻撃、この我に当てることは叶いませんぞ」
「けっ、蛇の分際で偉そうに。だったら、いくらでも方法はあるんだよ」
 矢羽とかいう人が首を動かしながら話していると、もう一人の人が消えた。ちょっと、どこに行ったんだ?
『ウィンクちゃん、前!』
「え?」
 僕は驚いた。消えたと思った人が、いきなり僕の目の前に現れたんだから。
 これは、いくらなんでもピンチすぎる。
「けけっ、死ねえっ!」
 僕は魔法を使おうとするけど、相手の方が早い。さすがにこの瞬間は死を覚悟する。
 ガキン!
 ところが、男の攻撃は僕に届くことなく弾き返されていた。しかも、手に持っていた武器は粉々に砕けていた。
「な、なんだぁ、こりゃあ!」
「おいおい、どうなってんだよ」
 二人揃って驚いている。
 これは、ラティナさんの護石の効果だ。だって、小さくピシッていう音が聞こえたんだもん。ありがとう、ラティナさん。
 でも、感謝している場合じゃない。せっかくできた相手の隙だ。今やらなきゃ、いつやるんだよ。
 食らえ、ゼロ距離の僕の魔法を!
「アクアシュート!」
「ぶへえっ!」
 僕が魔法を発動すると、襲ってきた男はゼロ距離での魔法をもろに食らって、大きく吹き飛んでいく。
 地面に叩きつけられたかと思うと、その瞬間、顔以外が岩に覆われてしまう。きっとラティナさんが魔法を使ったんだろう。
 これで、二人脱落。あとは、ボスであるあいつだけだ。
「おいおい。できたばっかりの弱小ダンジョンだと思ってたが、こいつはやってくれるな」
 この状況にもかかわらず、矢羽って人は余裕の表情を見せている。
「降参するなら今のうちですぞ。とはいえ、プリンセスの命を狙ったのですから、降参してもただでは済まないでしょうがね」
「まあ、そうだな」
 頭の後ろに手を当てて困ったような表情をしているけれど、なんでこの状況であんなに余裕を感じているんだ?
「まったく、てめえらを血祭りにしねえと、ボスに合わせる顔がねえってもんだ。あの女をやりてえとこだが、お前の方が先みたいだな」
「ええ、最初からそうしていればよかったのです。よそ見などするから、すでに決着はついているのですよ」
「なんだと?」
 バトラーと話している男が、態度が気に食わないのか表情を歪ませている。
「けっ、痛い目を見ねえと分からねえよだな。食らえっ!」
 矢羽って人がバトラーに対して殴りかかろうとしている。ところが、その振り上げたこぶしはぴくりとも動かなくなってしまっていた。
 危ないと思って一瞬よそ見をしてしまった僕は、まったく何が起きたのか分からなかった。
「な、なんだ? 体が動か、ねえ、ぞ……」
「だから申しましたでしょう。すでに決着はついていると」
「なん……だと……」
 男は何かを感じて足元に視線を向ける。そこにはバトラーから伸びた影が足に絡まり、がっつりとかみついている姿があった。
「て、てめえ……」
 バトラーへとゆっくり睨むように視線を向けている。
「強力なマヒ毒です。我とお前のレベル差を考えれば、耐性が強くても無効化は不可能。そのままおとなしくしているのですな」
「く……そ……、どこ、が、しょ、しん……しゃだ、ん、じょ……」
 矢羽という男は、喋ることもできなくなったようだ。
 こうして、ダンジョンへとやって来たパラダイスってギルドの三人は、あっという間に撃退されてしまったのだった。
 それにしても、バトラーってば余裕すぎるね。僕もあれくらい強くならなくちゃ。
 無事に撃退はできたけれど、僕は決意を新たに気合いを入れ直していた。