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濡衣(ザンス編)

ー/ー



 TVでザンス王国のテロ事件を見てから、2日経った。
 
 TVでは変わらず事件の事ばかり放送してるが、犯人に対しての情報は一切なく混沌としていた。現在、警察とオカルトGメンの合同捜査本部が置かれて全力で捜査に当たっているらしい。
 また、襲われた国王達も幸い皆が無事だったようでスケジュールはそのまま実行されるとのことだった。


「あの精霊獣ってのは、どうやって倒すんだ?」
「基本的に精霊獣を倒せるのは、精霊獣だけじゃな。普通の武器なんて勿論効かん。じゃがエネルギーを物資化してる以上、同じような攻撃なら通る。小僧の魔装術なら、一番相性が良いんじゃないか?」


 先日の見た映像から、バトルマニアの血が騒ぐのかTVを見ながら質問する雪之丞に爺さんが答えていた。


 エネルギーの物質化か……なら、俺の霊手も通ることは、通るんだな。

 だけど…………


「人の霊力と精霊石じゃ、出力に差が無いか?」


 気になって聞いてみると、爺さんはニヤリと笑う。


「良いとこに気づいたな。その通りじゃよ。物にもよるだろうが、昨日見た奴の場合だと人の霊力では、ちと厳しいぞ。あくまで “対抗出来る” だけと割り切った方がいい」
「なるほど……」


 …………まぁ、やりあう事なんてねぇだろうけどな。



 世間は事件で盛り上がってたが、俺達は特に変わらずだった。
 
 仕事はねぇけど、ダラダラしてると流石に体が鈍るんで雪之丞と霊能なしで組手したり、瞑想して文珠のストックを増やしたり、増えすぎた外の悪霊を間引き(?)したり…………要は、いつも通りだったな。

 いつもと違うのは…………


「ここの文法は___」

「この公式には__」

「この例文の・要点__」


「まだ、やってんのか?」
「ここで全部、終わらしちまおうかと……」


 マリアに冬休みの宿題を見てもらっていた…………


 すげぇよ。模範解答見るより分かりやすい。

 こんな事も頼めるんじゃないかと、一式持ってきといたけど大正解だぜ!いっそ、全部やって貰った方が……って、それじゃ意味がねぇか。

 と、今までとは少し違う面もあったが、何事もなく平和な時間が流れていた。



 異変が訪れたのは、午後2時過ぎ……


“緊急速報です!現在訪問中のザンス王国国王が、演説中に再び襲撃を受けました__”

“国王自らの精霊獣が相手を撃退しましたが、国王のボディーガードが全員重症__”

“国王は、テロに屈しての帰国はないとのコメントを__”


「2度目の襲撃……」
「 “次” で決める気じゃな」
「次で……?」


 俺の呟きになるほどと言った感じに答えた、爺さんが更に続ける。


「1度目の偵察……つまり “捨て石” じゃ。あれで王や護衛の実力(精霊獣)の調べ、そして今回は護衛だけに的を絞った…………精霊獣を倒せるのは、精霊獣だけ。護衛を失った王は自らの手で、自分を守るしかない」

「戦力を削いだ上で確実に仕留めるって訳か……」

「面倒くせぇ話だな。狙われてるのが解ってて、逃げることも出来ねぇとは……」


 横で俺等のやり取りを聞いていた雪之丞が、“やれやれと” 言った感じで返す。

 単純明快を好むこいつとしては、複雑な事情を抱えながら立ち回ることに苦手意識が働くのかもしれない………まぁ、俺も同感なんだけどな。


「やはり、今回の来日……国内では、相当な反発があったんじゃろうな」


 そんな危険な状況でも表に出てこなければならない国王を、気の毒に思わないわけじゃなかった。

 ただ繰り返すがこの時も、まだ俺は “傍観者” の積りだった…………当たり前だ。端から関わり合いなんて、皆無だったんだから。

 
 そんな呑気な時間が唐突に終わったのが、それから更に数時間後…………



「乗用車・複数・接近してきます」
「……ここに…………?」
 

 レーダーの反応を報告してくるマリアに、俺達は顔を見合わせる。

 ここは工業地帯の一画にして、その外れにある。しかも、地元で “有名” ……と言うか “危険” な心霊スポットだ。

 誰もここには近寄らない。車が通ることだって滅多にない。そんな所に複数の車が近づいて来るんだ。自然と全員に緊張感が走る。


 しかし、何故…………?
 
 そんな、疑問と不安が事務所を支配するが、それが解ける前に3台の車が敷地の前に停まる。


「おい、あれって……」
「オカルトGメン……」


 窓から見下ろすと、そこには3台のパトカーが停まっていた。

 だけど、雪之丞の問いに俺が警察とは言わず “オカルトGメン” と言ったのは、出てきたスーツ姿の男達の中に見覚えのある顔があったからだ……


「おお、彼奴は……」
「西条……」


 ゆうに180を越える長身に、男の癖に腰まで届く長髪。女にモテそうないけ好かない(・・・・・・)甘いマスク………オカルトGメンのエリート、『西条輝彦』だ。
 

 先生の母親、美神美智恵氏(故人)の元弟子でイギリスに留学した後にICPOの超常犯罪課(オカルトGメン)に就職し、現在は同課の日本支部長を務めている。
 
 最後に会ったのは、あの娘(お絹ちゃん)が事務所に復帰した祝いの席だったか?もう、何年も会ってない気がする。
 
 ……そう言えば、この男と初めて会った頃に先生のことで揉めたんだよな。
 
 今思えば、何であんな意味わかんねぇことで揉めたんだか、自分でも理解に苦しむ……

 あんな、糞面倒くせぇ女が大好きなんて言う “稀有” な男なんだぞ。寧ろ、後押してやるべきだったんじゃないか?


 …………ただ、これは今の心情であって、実際俺が奴と揉めたのは事実。

 爽やかな見た目と言動の割に、やられた事をかなり(・・・)根に持つ性格で、そこに加えて嫌味な所もあるから正直余り会いたい相手じゃない。

 

「助けてやるか?」
「面倒くせぇ連中だな……」


 下の様子を見ながら、呆れたように呟く雪之丞に俺は少しウンザリしながら返す。


 西条達が、ここに用があるのは明らかだ。

 だが、奴等の周りには例によって複数の雑霊が飛び回ってて、前に進むのに難儀してる。

 西条は、見た目は “西洋の大型剣クレイモア” な愛用の霊剣『ジャスティス』を振るって撃退してるが、他は右往左往するばかり……
 
 オカルトGメンと言っても、西条以外は急遽集められた人員で、実力は並のGSにも劣るってのは本当みたいだな。


 奴等に対する疑念は尽きないが、そのまま放置しても一向に話が進まなそうなんで、雪之丞と一緒に下へ降りて玄関から外に出る。

 当たり前だが、連中の様子はさっきと一緒……


「ぶ、部長!」
「君達は!?」


 出てきた俺達に奴等は驚きの声をあげる。
 
 
「ったく、チンタラやってんじゃねぇよ!」


 開口一番、挨拶なんだか不平なんだかよく解らない一言共に霊波砲を放つ。

 威力は、かなり弱め………それでも複数の雑魚が一瞬で吹っ飛ぶ。

 全くだ…………いつもなら敵を作るような言動は嗜める(全然効果は無い)んだが、今回は相手が相手だけに完全に同意見だ。
 
 俺も無言で霊手を顕現する。

 いつもの鉤爪じゃなく5本の指が長く伸びた鞭状に展開すると、とにかく追い払うようにブン回した。

『追尾眼』を使えば簡単に片が付くのに、連中を巻き込むことになるから使えない……… “招かねざる客” に気を使わなきゃならないとは、地味にストレスだな。

 
 …………いっそ、巻き込むの承知で撃っちまうか?威力下げりゃ当たっても死なねぇだろうし……


 ………………と、そんな危険な思考に従うか、否かと割と本気で悩んでたんだが、10分もすると取り敢えず話が出来る程度には蹴散らせた。

 

「こんな雑魚に苦戦してるようじゃ「オカルトGメンも大した事ねぇ」とか言われちまうぜ」
「一体何の用です……?」


 周りの状況を確認した上で、俺達は改めて連中に問い掛ける。
 
 だが、何か様子が変だ……

 周りの脅威は排除したのに顔が全く浮かない。と言うより、西条を含めた全員が何か複雑な表情をして、こっちを訝しんでいるように見える。

 そんなふうに思っていると、俺達を見ながら西条が苦々しく呟いてきた。






濡衣 西条
「 “本来” なら「どうも、ありがとう」と言わなきゃないんだろうな……」


 “本来なら” ……? どういう意味だ??


 奴の物言いに、今度は俺が訝しむが西条はそれに構わず歩み寄って来る。そして、他の連中も俺達を “包囲” するように近寄ってくる。


 おいおい、これじゃまるで…………
 

「オカルト犯罪防止法に基づき、君達をザンス国王暗殺未遂容疑で逮捕する!!」
 

 そう言って、2枚の書類を開いて指し示す!

 
「はぁ!!?」
「…………!!?」


 …………2時間ドラマなんかで良く見る光景、そのまんまかよ!?

 確認すると、それぞれの書類にちゃんと俺達のフルネームが記載されてた。

 
 なんでだ……?意味がわからん…………


 


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 TVでザンス王国のテロ事件を見てから、2日経った。 
 TVでは変わらず事件の事ばかり放送してるが、犯人に対しての情報は一切なく混沌としていた。現在、警察とオカルトGメンの合同捜査本部が置かれて全力で捜査に当たっているらしい。
 また、襲われた国王達も幸い皆が無事だったようでスケジュールはそのまま実行されるとのことだった。
「あの精霊獣ってのは、どうやって倒すんだ?」
「基本的に精霊獣を倒せるのは、精霊獣だけじゃな。普通の武器なんて勿論効かん。じゃがエネルギーを物資化してる以上、同じような攻撃なら通る。小僧の魔装術なら、一番相性が良いんじゃないか?」
 先日の見た映像から、バトルマニアの血が騒ぐのかTVを見ながら質問する雪之丞に爺さんが答えていた。
 エネルギーの物質化か……なら、俺の霊手も通ることは、通るんだな。
 だけど…………
「人の霊力と精霊石じゃ、出力に差が無いか?」
 気になって聞いてみると、爺さんはニヤリと笑う。
「良いとこに気づいたな。その通りじゃよ。物にもよるだろうが、昨日見た奴の場合だと人の霊力では、ちと厳しいぞ。あくまで “対抗出来る” だけと割り切った方がいい」
「なるほど……」
 …………まぁ、やりあう事なんてねぇだろうけどな。
 世間は事件で盛り上がってたが、俺達は特に変わらずだった。
 仕事はねぇけど、ダラダラしてると流石に体が鈍るんで雪之丞と霊能なしで組手したり、瞑想して文珠のストックを増やしたり、増えすぎた外の悪霊を間引き(?)したり…………要は、いつも通りだったな。
 いつもと違うのは…………
「ここの文法は___」
「この公式には__」
「この例文の・要点__」
「まだ、やってんのか?」
「ここで全部、終わらしちまおうかと……」
 マリアに冬休みの宿題を見てもらっていた…………
 すげぇよ。模範解答見るより分かりやすい。
 こんな事も頼めるんじゃないかと、一式持ってきといたけど大正解だぜ!いっそ、全部やって貰った方が……って、それじゃ意味がねぇか。
 と、今までとは少し違う面もあったが、何事もなく平和な時間が流れていた。
 異変が訪れたのは、午後2時過ぎ……
“緊急速報です!現在訪問中のザンス王国国王が、演説中に再び襲撃を受けました__”
“国王自らの精霊獣が相手を撃退しましたが、国王のボディーガードが全員重症__”
“国王は、テロに屈しての帰国はないとのコメントを__”
「2度目の襲撃……」
「 “次” で決める気じゃな」
「次で……?」
 俺の呟きになるほどと言った感じに答えた、爺さんが更に続ける。
「1度目の偵察……つまり “捨て石” じゃ。あれで王や護衛の実力(精霊獣)の調べ、そして今回は護衛だけに的を絞った…………精霊獣を倒せるのは、精霊獣だけ。護衛を失った王は自らの手で、自分を守るしかない」
「戦力を削いだ上で確実に仕留めるって訳か……」
「面倒くせぇ話だな。狙われてるのが解ってて、逃げることも出来ねぇとは……」
 横で俺等のやり取りを聞いていた雪之丞が、“やれやれと” 言った感じで返す。
 単純明快を好むこいつとしては、複雑な事情を抱えながら立ち回ることに苦手意識が働くのかもしれない………まぁ、俺も同感なんだけどな。
「やはり、今回の来日……国内では、相当な反発があったんじゃろうな」
 そんな危険な状況でも表に出てこなければならない国王を、気の毒に思わないわけじゃなかった。
 ただ繰り返すがこの時も、まだ俺は “傍観者” の積りだった…………当たり前だ。端から関わり合いなんて、皆無だったんだから。
 そんな呑気な時間が唐突に終わったのが、それから更に数時間後…………
「乗用車・複数・接近してきます」
「……ここに…………?」
 レーダーの反応を報告してくるマリアに、俺達は顔を見合わせる。
 ここは工業地帯の一画にして、その外れにある。しかも、地元で “有名” ……と言うか “危険” な心霊スポットだ。
 誰もここには近寄らない。車が通ることだって滅多にない。そんな所に複数の車が近づいて来るんだ。自然と全員に緊張感が走る。
 しかし、何故…………?
 そんな、疑問と不安が事務所を支配するが、それが解ける前に3台の車が敷地の前に停まる。
「おい、あれって……」
「オカルトGメン……」
 窓から見下ろすと、そこには3台のパトカーが停まっていた。
 だけど、雪之丞の問いに俺が警察とは言わず “オカルトGメン” と言ったのは、出てきたスーツ姿の男達の中に見覚えのある顔があったからだ……
「おお、彼奴は……」
「西条……」
 ゆうに180を越える長身に、男の癖に腰まで届く長髪。女にモテそうな|いけ好かない《・・・・・・》甘いマスク………オカルトGメンのエリート、『西条輝彦』だ。
 先生の母親、美神美智恵氏(故人)の元弟子でイギリスに留学した後にICPOの超常犯罪課(オカルトGメン)に就職し、現在は同課の日本支部長を務めている。
 最後に会ったのは、|あの娘《お絹ちゃん》が事務所に復帰した祝いの席だったか?もう、何年も会ってない気がする。
 ……そう言えば、この男と初めて会った頃に先生のことで揉めたんだよな。
 今思えば、何であんな意味わかんねぇことで揉めたんだか、自分でも理解に苦しむ……
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 …………ただ、これは今の心情であって、実際俺が奴と揉めたのは事実。
 爽やかな見た目と言動の割に、やられた事を|かなり《・・・》根に持つ性格で、そこに加えて嫌味な所もあるから正直余り会いたい相手じゃない。
「助けてやるか?」
「面倒くせぇ連中だな……」
 下の様子を見ながら、呆れたように呟く雪之丞に俺は少しウンザリしながら返す。
 西条達が、ここに用があるのは明らかだ。
 だが、奴等の周りには例によって複数の雑霊が飛び回ってて、前に進むのに難儀してる。
 西条は、見た目は “西洋の大型剣クレイモア” な愛用の霊剣『ジャスティス』を振るって撃退してるが、他は右往左往するばかり……
 オカルトGメンと言っても、西条以外は急遽集められた人員で、実力は並のGSにも劣るってのは本当みたいだな。
 奴等に対する疑念は尽きないが、そのまま放置しても一向に話が進まなそうなんで、雪之丞と一緒に下へ降りて玄関から外に出る。
 当たり前だが、連中の様子はさっきと一緒……
「ぶ、部長!」
「君達は!?」
 出てきた俺達に奴等は驚きの声をあげる。
「ったく、チンタラやってんじゃねぇよ!」
 開口一番、挨拶なんだか不平なんだかよく解らない一言共に霊波砲を放つ。
 威力は、かなり弱め………それでも複数の雑魚が一瞬で吹っ飛ぶ。
 全くだ…………いつもなら敵を作るような言動は嗜める(全然効果は無い)んだが、今回は相手が相手だけに完全に同意見だ。
 俺も無言で霊手を顕現する。
 いつもの鉤爪じゃなく5本の指が長く伸びた鞭状に展開すると、とにかく追い払うようにブン回した。
『追尾眼』を使えば簡単に片が付くのに、連中を巻き込むことになるから使えない……… “招かねざる客” に気を使わなきゃならないとは、地味にストレスだな。
 …………いっそ、巻き込むの承知で撃っちまうか?威力下げりゃ当たっても死なねぇだろうし……
 ………………と、そんな危険な思考に従うか、否かと割と本気で悩んでたんだが、10分もすると取り敢えず話が出来る程度には蹴散らせた。
「こんな雑魚に苦戦してるようじゃ「オカルトGメンも大した事ねぇ」とか言われちまうぜ」
「一体何の用です……?」
 周りの状況を確認した上で、俺達は改めて連中に問い掛ける。
 だが、何か様子が変だ……
 周りの脅威は排除したのに顔が全く浮かない。と言うより、西条を含めた全員が何か複雑な表情をして、こっちを訝しんでいるように見える。
 そんなふうに思っていると、俺達を見ながら西条が苦々しく呟いてきた。
「 “本来” なら「どうも、ありがとう」と言わなきゃないんだろうな……」
 “本来なら” ……? どういう意味だ??
 奴の物言いに、今度は俺が訝しむが西条はそれに構わず歩み寄って来る。そして、他の連中も俺達を “包囲” するように近寄ってくる。
 おいおい、これじゃまるで…………
「オカルト犯罪防止法に基づき、君達をザンス国王暗殺未遂容疑で逮捕する!!」
 そう言って、2枚の書類を開いて指し示す!
「はぁ!!?」
「…………!!?」
 …………2時間ドラマなんかで良く見る光景、そのまんまかよ!?
 確認すると、それぞれの書類にちゃんと俺達のフルネームが記載されてた。
 なんでだ……?意味がわからん…………