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交渉(ザンス編)

ー/ー




「フザケてんのか?何で俺等が、国王を殺すんだよ……?」


 西条の逮捕通告に雪之丞が抗議の声を上げる。

 だが、流石のこいつも事がいきなり過ぎて怒りより戸惑いの方が強く声に出てる。

 正直俺も逮捕と言う言葉に対して怒りより、 疑問の方が強い。


「……証拠でもあるんですか?」


 状況は未だ掴めないが、取り敢えずそう言って先を促してみた。


「これを見たまえ」

 
 俺の言葉を予想してたんだろう。

 すぐに西条は書類をしまうと、今度は複数の写真を出してきた。そこに写ってたのは…………


「な、何だこりゃ!!?」
「嘘だろ……!?」


 写真には、以前着ていた霊障スーツを身に着けた俺と雪之丞が写っていた!?

 写真の俺達(?)は、それぞれ会場の警備員らしき人間を “制圧” してる最中らしい。

 俺の方は、後ろから警備員の首を絞めてるのか?思わず、顔を背けたくなるようなヤバい顔をしてやがる。

 驚愕で固まる俺達を他所に、西条は淡々と続ける。


「初回は上手く躱したようだが、2回目はしくじったね……この通り、はっきりと君達の顔が写ってる。見間違いとか言って、誤魔化しきれないくらいにね」
 
「知らねぇよ!俺達は、こんなとこ行ってねぇ!!」

「じゃあ、ここに写ってるのは誰なんだい?雪之丞君」
 
「ほぉ〜〜、こりゃ見事なもんじゃ♪」
 
「「「……………………!?」」」

 

 西条と雪之丞がやり取りしてる中、いつの間にか俺達の後ろから写真を覗き込む爺さん(カオス)が感嘆の声を上げる。傍らには、マリアも一緒に来ていた。

 …………何故か嬉しそうに聞こえるのは、俺が焦ってるからか……?
  

「し……証拠は、これだけじゃない!」


 予想外の人物の登場に全員ドン引きしてたが、やや調子を崩されながらも、西条は新たな写真を取り出す。


「な……!?」


 それを見て、更に驚愕する俺。

 写ってたのは多分…………いや、絶対俺の部屋だな。

 俺の部屋の押入れ、その中に札束が山積みになったいた……一体ありゃ、いくらあるんだ?


「ついでに家宅捜索もしてきた、ここ数日帰ってなかったようだね?隣人の証言も得てる」


 隣人って……小鳩ちゃんだよな?

 あの娘を変な事に巻き込むなよ…………って今は、それどころじゃねぇな。


「調べなくても、君が貧乏なのは明白だ!この金は、どうしたんだい?」
「知りません。それと勝手に貧乏なんて、決めつけないで下さいよ!」


 もう、糞女の下にいる時と違って、そこそこ実入りはあんだよ。この前は、金塊だって手に入れたし(置き場に困るんで、雪之丞と分と一緒に武神様に預かって貰ってる)………


※月編参照


「おい!爺さん、あんた達も俺達と一緒に居たんだから証言してくれよ」

「間違いない。此奴等は、この2日間この汚い事務所に籠りっ放しだったぞい」
「イエス・3人共・出不精・健康に良くないです」

「汚い事務所とは、なんだ……」
「外にくらいは、出たぞマリア………」


 爺さん達の言葉にそれぞれ反応(抗議)する俺達だったが、案の定西条の反応は芳しくない。


「残念ですが、あなた方身内の言葉は正当な証言として扱えないんですよ」
「むぅ……やはり、そうか………」
「でも・2人・悪い事してません」


 ………やっぱり駄目か。

 解ったのは、俺達と爺さんが同じ穴の狢と認識(良いか、悪いかは別として……)されてる事くらいか。

 マリアの優しさが、胸に染みて来る……


「とにかく詳しいことは、署の方で聞こう。一緒に来るんだ」
「はっ!それも、台本通りの芸のねぇ台詞だな!」

「雪之丞君、余りのこちらの心象を損ねない方がいい」
「はぁ!?なら、心象良くすりゃ犯人じゃなくなるのか?端から、決めつけてる癖によっ!」

「決め付けてない。君達は、嵌められたんだ」
「ざけんなっ!さっき、逮捕するつったじゃねぇ!?」
「止せっ!」


 戸惑いから一転、西条に掴み掛かりそうになる雪之丞を慌てて止める。


「………嵌められたとは、どういう事です?」
「そのままの意味だよ。この写真を、もう一度見て欲しい」


 そう言って、さっき見せた雪之丞の写真を示して来る。

 こっちが、隙を見せた途端取り押さえる気かと一瞬身構えたが、そんな様子は無かった。他の連中も同様だ。取り囲んじゃいるが、それ以上近寄って来る気は無いようだ。


 それでも疑念は拭えなかったが、取り敢えずは全員で言われた通りにした。

 写真には、さっきと変わらず雪之丞がヤベェ顔をしながら、警備員の首を絞めてる場面が写っていた。表情はともかく、顔は見れば見る程雪之丞にそっくり(・・・・)だ。

 正直、それ以上に感じる物は無かったが、次に西条の放った一言で本人を含めた全員が納得した。


「その警備員、178センチあるんだよ」

「なるほど……!」
「ほう♪ほう♪」
「雪之丞さん・もっと・小さい」
「……………………」


 本人は不満MAX面だが、奴の身長は160前後。

 なのに、写真の奴の顔は警備員のほぼ真後ろ……いや、よく見ると寧ろ高い位置にある。

 写真の奴が、本物ならこんな “構図” なり得ねぇな………


 そんな中、西条は更に続ける。


「これを見た時から、おかしいとは思ってたんだよ……犯人は、多分顔を変える道具の様な物を使ってるんだろう。君の部屋の金にしたってそうだ。隠すなら、ここ(・・)みたいに人の近付けない絶好の場所があるのに、わざわざ部屋に持ち帰らないだろ?鑑識に回してるけど、多分君の指紋は出て来ないだろうね」
「なら、何故……?」

「今、言ったのは僕個人の考えさ。上の意見は、さっきやって見せたように「引っ張って来い」の一転張りだよ。ここまで、テロリストにいいよう(・・・・)にやられてるから、相当焦ってる……」
「…………西条さんは……私達の無実を、証明してくれるんですか?」


 まさかと言う思いはあるが、聞いてみた。

 そうじゃなきゃ、この男の行動が説明が着かない。そして、その狙いは………

 
「ああ、そうさ(犯人であって、欲しかったけど)。君達が囮にされてる事を証明して、捜査本部全体を正しい方向に導きたい。もう、時間が無いからね」
「「「……………………」」」


 ………………聞こえてるよ……いや、聞こえるように言いやがったな。この野郎………!!

 少し見直したと思ったのに、最悪だ。


「……とにかく、今言った通りだ。この事は、公式に発表してないし知ってる人間も僅か。だから、協力してくれ。今、素直に来てくれれば、君達は何も失わない(・・・・)
「チッ……」


 失わない………か……

 忌々しそうに舌打ちをする、雪之丞を横目に考える。

 奴も解ってるだろうが、真犯人が俺達を囮にしようとしたのは、雪之丞に “前科” があるからだ。魔族と契約したと言う、前科が………

 武神様の尽力で正式なGSになれはしたが、それでも周りの目は厳しい。それは、一緒に居る俺にだって良く解る。

 真犯人も、その辺に目を付けたんだろう……

 奴の力と今の不遇が絡みゃ、立派な動機成立だ。ヤバい奴が、追い詰められてヤバい仕事に手を出す。単純なシナリオだが、囮としてこれだけ適任(・・)な奴はいねぇ。

 そんな状態でこの場でゴネ(・・)でもしたら、今ある極めて不安定……もっと言えやぁ、屈辱的な地位すら無くなる可能性がある。西条は、そうに言いたいんだ。


「行こう……西条さんに従おうぜ………」
「チッ……しゃあねぇな」


 俺の言葉に雪之丞も渋々同意する。


 糞が……!胸糞悪いったらありゃしねぇ……

 この分なら、行けばすぐ釈放されるだろうが、正月早々に最悪の気分にされたぜ……

 そう思ってると………


「それを踏まえた上で……君達に頼みたい事がある」
「あぁ?」

「1000万出す。僕に協力して欲しい」
「ぶ……部長、何を__」


 傍らに居る部下を手で制止ながら、西条は更に続けた。


「君達もTVで見たかもしれないが、敵は精霊石を媒体とした精霊獣を使って来る。とても、強力だ。さっきの様子を見たから解ると思うけど………僕達だけじゃ、対応出来ない」
「ほぅ……♪」


 …………風向きが変わって来たな。

 何かを察した雪之丞も、さっきの仏頂面からいつも通りの口角を上げたワクワク面に変様してやがる。


「だけど、雪之丞君………君の『魔装術』そして、横島君の『文珠』……3人で協力すればアレを倒せなくても、退けるくらいなら出来るかもしれない。頼む!時間が無いんだ。力を貸して欲しい」


 …………真剣な表情だ。

 流石に頭までは下げなかったが、それなりの誠意(・・)の様な物は見える。

 この男は、「僕に協力して欲しい」と言った。Gメンじゃなく、 “僕” と言い切った。

 国家の主を守るのに1000万なんてのは、かなり安い気もするが、多分この男のポケットマネーだろう……そこまで(・・・・)してでも、こいつは俺達の力が借りたいんだ。こんな杜撰な証拠だけで、ここに来たのも直接俺達と交渉したかったから(・・)かもしれない。


旦那(・・)は、こう言ってるが……(忠夫)、お前はどう思う?」
「だ……旦那?」


 ニヤつきながら、聞くことじゃねぇだろ……!それに、西条の方も戸惑ってんな……もう、アラサー(今年29)だからか?

 まぁ、それは置いといて………


「フンッ………俺が嫌だって言っても、お前はやる気なんだろ?なら、1人より2人の方が良い。それに……」


 俺は、ワザとらしく溜めて言ってやった。


「こういうのは、どうだ?金をタダにする代わりに、オカルトGメンの日本支部長殿に強烈(・・)な貸しを作るってのは」
「な、何を……!?」

「クハハハハッ!そりゃ、傑作だ♪俺達を嵌めた馬鹿をボコれる上に、Gメンに恩を売り付けられるかぁ♪♪西条の旦那!そう言う訳だ。金は要らねぇ。俺達は、あんたに喜んで協力するぜぇ!!」
「「「「…………………………」」」」



 結局、ナンダカンダ言い合った末、報酬は1500万に上乗せされる事で落ち着いた。

 この野郎、本気で俺達に借りを作りたくないらしい………



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 西条の逮捕通告に雪之丞が抗議の声を上げる。
 だが、流石のこいつも事がいきなり過ぎて怒りより戸惑いの方が強く声に出てる。
 正直俺も逮捕と言う言葉に対して怒りより、 疑問の方が強い。
「……証拠でもあるんですか?」
 状況は未だ掴めないが、取り敢えずそう言って先を促してみた。
「これを見たまえ」
 俺の言葉を予想してたんだろう。
 すぐに西条は書類をしまうと、今度は複数の写真を出してきた。そこに写ってたのは…………
「な、何だこりゃ!!?」
「嘘だろ……!?」
 写真には、以前着ていた霊障スーツを身に着けた俺と雪之丞が写っていた!?
 写真の俺達(?)は、それぞれ会場の警備員らしき人間を “制圧” してる最中らしい。
 俺の方は、後ろから警備員の首を絞めてるのか?思わず、顔を背けたくなるようなヤバい顔をしてやがる。
 驚愕で固まる俺達を他所に、西条は淡々と続ける。
「初回は上手く躱したようだが、2回目はしくじったね……この通り、はっきりと君達の顔が写ってる。見間違いとか言って、誤魔化しきれないくらいにね」
「知らねぇよ!俺達は、こんなとこ行ってねぇ!!」
「じゃあ、ここに写ってるのは誰なんだい?雪之丞君」
「ほぉ〜〜、こりゃ見事なもんじゃ♪」
「「「……………………!?」」」
 西条と雪之丞がやり取りしてる中、いつの間にか俺達の後ろから写真を覗き込む|爺さん《カオス》が感嘆の声を上げる。傍らには、マリアも一緒に来ていた。
 …………何故か嬉しそうに聞こえるのは、俺が焦ってるからか……?
「し……証拠は、これだけじゃない!」
 予想外の人物の登場に全員ドン引きしてたが、やや調子を崩されながらも、西条は新たな写真を取り出す。
「な……!?」
 それを見て、更に驚愕する俺。
 写ってたのは多分…………いや、絶対俺の部屋だな。
 俺の部屋の押入れ、その中に札束が山積みになったいた……一体ありゃ、いくらあるんだ?
「ついでに家宅捜索もしてきた、ここ数日帰ってなかったようだね?隣人の証言も得てる」
 隣人って……小鳩ちゃんだよな?
 あの娘を変な事に巻き込むなよ…………って今は、それどころじゃねぇな。
「調べなくても、君が貧乏なのは明白だ!この金は、どうしたんだい?」
「知りません。それと勝手に貧乏なんて、決めつけないで下さいよ!」
 もう、糞女の下にいる時と違って、そこそこ実入りはあんだよ。この前は、金塊だって手に入れたし(置き場に困るんで、雪之丞と分と一緒に武神様に預かって貰ってる)………
※月編参照
「おい!爺さん、あんた達も俺達と一緒に居たんだから証言してくれよ」
「間違いない。此奴等は、この2日間この汚い事務所に籠りっ放しだったぞい」
「イエス・3人共・出不精・健康に良くないです」
「汚い事務所とは、なんだ……」
「外にくらいは、出たぞマリア………」
 爺さん達の言葉にそれぞれ|反応《抗議》する俺達だったが、案の定西条の反応は芳しくない。
「残念ですが、あなた方身内の言葉は正当な証言として扱えないんですよ」
「むぅ……やはり、そうか………」
「でも・2人・悪い事してません」
 ………やっぱり駄目か。
 解ったのは、俺達と爺さんが同じ穴の狢と認識(良いか、悪いかは別として……)されてる事くらいか。
 マリアの優しさが、胸に染みて来る……
「とにかく詳しいことは、署の方で聞こう。一緒に来るんだ」
「はっ!それも、台本通りの芸のねぇ台詞だな!」
「雪之丞君、余りのこちらの心象を損ねない方がいい」
「はぁ!?なら、心象良くすりゃ犯人じゃなくなるのか?端から、決めつけてる癖によっ!」
「決め付けてない。君達は、嵌められたんだ」
「ざけんなっ!さっき、逮捕するつったじゃねぇ!?」
「止せっ!」
 戸惑いから一転、西条に掴み掛かりそうになる雪之丞を慌てて止める。
「………嵌められたとは、どういう事です?」
「そのままの意味だよ。この写真を、もう一度見て欲しい」
 そう言って、さっき見せた雪之丞の写真を示して来る。
 こっちが、隙を見せた途端取り押さえる気かと一瞬身構えたが、そんな様子は無かった。他の連中も同様だ。取り囲んじゃいるが、それ以上近寄って来る気は無いようだ。
 それでも疑念は拭えなかったが、取り敢えずは全員で言われた通りにした。
 写真には、さっきと変わらず雪之丞がヤベェ顔をしながら、警備員の首を絞めてる場面が写っていた。表情はともかく、顔は見れば見る程雪之丞に|そっくり《・・・・》だ。
 正直、それ以上に感じる物は無かったが、次に西条の放った一言で本人を含めた全員が納得した。
「その警備員、178センチあるんだよ」
「なるほど……!」
「ほう♪ほう♪」
「雪之丞さん・もっと・小さい」
「……………………」
 本人は不満MAX面だが、奴の身長は160前後。
 なのに、写真の奴の顔は警備員のほぼ真後ろ……いや、よく見ると寧ろ高い位置にある。
 写真の奴が、本物ならこんな “構図” なり得ねぇな………
 そんな中、西条は更に続ける。
「これを見た時から、おかしいとは思ってたんだよ……犯人は、多分顔を変える道具の様な物を使ってるんだろう。君の部屋の金にしたってそうだ。隠すなら、|ここ《・・》みたいに人の近付けない絶好の場所があるのに、わざわざ部屋に持ち帰らないだろ?鑑識に回してるけど、多分君の指紋は出て来ないだろうね」
「なら、何故……?」
「今、言ったのは僕個人の考えさ。上の意見は、さっきやって見せたように「引っ張って来い」の一転張りだよ。ここまで、テロリストに|いいよう《・・・・》にやられてるから、相当焦ってる……」
「…………西条さんは……私達の無実を、証明してくれるんですか?」
 まさかと言う思いはあるが、聞いてみた。
 そうじゃなきゃ、この男の行動が説明が着かない。そして、その狙いは………
「ああ、そうさ(犯人であって、欲しかったけど)。君達が囮にされてる事を証明して、捜査本部全体を正しい方向に導きたい。もう、時間が無いからね」
「「「……………………」」」
 ………………聞こえてるよ……いや、聞こえるように言いやがったな。この野郎………!!
 少し見直したと思ったのに、最悪だ。
「……とにかく、今言った通りだ。この事は、公式に発表してないし知ってる人間も僅か。だから、協力してくれ。今、素直に来てくれれば、君達は何も|失わない《・・・・》」
「チッ……」
 失わない………か……
 忌々しそうに舌打ちをする、雪之丞を横目に考える。
 奴も解ってるだろうが、真犯人が俺達を囮にしようとしたのは、雪之丞に “前科” があるからだ。魔族と契約したと言う、前科が………
 武神様の尽力で正式なGSになれはしたが、それでも周りの目は厳しい。それは、一緒に居る俺にだって良く解る。
 真犯人も、その辺に目を付けたんだろう……
 奴の力と今の不遇が絡みゃ、立派な動機成立だ。ヤバい奴が、追い詰められてヤバい仕事に手を出す。単純なシナリオだが、囮としてこれだけ|適任《・・》な奴はいねぇ。
 そんな状態でこの場で|ゴネ《・・》でもしたら、今ある極めて不安定……もっと言えやぁ、屈辱的な地位すら無くなる可能性がある。西条は、そうに言いたいんだ。
「行こう……西条さんに従おうぜ………」
「チッ……しゃあねぇな」
 俺の言葉に雪之丞も渋々同意する。
 糞が……!胸糞悪いったらありゃしねぇ……
 この分なら、行けばすぐ釈放されるだろうが、正月早々に最悪の気分にされたぜ……
 そう思ってると………
「それを踏まえた上で……君達に頼みたい事がある」
「あぁ?」
「1000万出す。僕に協力して欲しい」
「ぶ……部長、何を__」
 傍らに居る部下を手で制止ながら、西条は更に続けた。
「君達もTVで見たかもしれないが、敵は精霊石を媒体とした精霊獣を使って来る。とても、強力だ。さっきの様子を見たから解ると思うけど………僕達だけじゃ、対応出来ない」
「ほぅ……♪」
 …………風向きが変わって来たな。
 何かを察した雪之丞も、さっきの仏頂面からいつも通りの口角を上げたワクワク面に変様してやがる。
「だけど、雪之丞君………君の『魔装術』そして、横島君の『文珠』……3人で協力すればアレを倒せなくても、退けるくらいなら出来るかもしれない。頼む!時間が無いんだ。力を貸して欲しい」
 …………真剣な表情だ。
 流石に頭までは下げなかったが、それなりの|誠意《・・》の様な物は見える。
 この男は、「僕に協力して欲しい」と言った。Gメンじゃなく、 “僕” と言い切った。
 国家の主を守るのに1000万なんてのは、かなり安い気もするが、多分この男のポケットマネーだろう……|そこまで《・・・・》してでも、こいつは俺達の力が借りたいんだ。こんな杜撰な証拠だけで、ここに来たのも直接俺達と交渉したかった|から《・・》かもしれない。
「|旦那《・・》は、こう言ってるが……|鴉《忠夫》、お前はどう思う?」
「だ……旦那?」
 ニヤつきながら、聞くことじゃねぇだろ……!それに、西条の方も戸惑ってんな……もう、アラサー(今年29)だからか?
 まぁ、それは置いといて………
「フンッ………俺が嫌だって言っても、お前はやる気なんだろ?なら、1人より2人の方が良い。それに……」
 俺は、ワザとらしく溜めて言ってやった。
「こういうのは、どうだ?金をタダにする代わりに、オカルトGメンの日本支部長殿に|強烈《・・》な貸しを作るってのは」
「な、何を……!?」
「クハハハハッ!そりゃ、傑作だ♪俺達を嵌めた馬鹿をボコれる上に、Gメンに恩を売り付けられるかぁ♪♪西条の旦那!そう言う訳だ。金は要らねぇ。俺達は、あんたに喜んで協力するぜぇ!!」
「「「「…………………………」」」」
 結局、ナンダカンダ言い合った末、報酬は1500万に上乗せされる事で落ち着いた。
 この野郎、本気で俺達に借りを作りたくないらしい………