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雑踏の 空に滲める 予告編
見知らぬ私が 雨に濡れおり
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渋谷のスクランブル交差点に、それは突然現れた。
最新の浮遊型ホログラム広告。
しかし、映し出されているのは新製品の飲料でも、アイドルの笑顔でもない。
セピア色のノイズにまみれた、「三時間後のこの場所」の光景だった。
人々は足を止める。
空中には、土砂降りの雨の中、壊れたビニール傘を差して立ち尽くす一人の青年の姿が投影されている。
広告の隅には、無機質なフォントでこう記されていた。
【15:00 降水確率100% 運命の衝突まで、あと180分】
「なんだ、新作映画のプロモーションか?」
誰かが呟き、群衆はまた歩き出す。
だが、読書家で観察眼は鋭いと自負している私は気づいていた。
ホログラムの中の青年が持っている古びた文庫本の表紙が、今まさに私の鞄に入っているものと同じであることを。
午後三時。予報通り、空はバケツをひっくり返したような豪雨に見舞われた。
私はあえて、ホログラムが示した場所へ向かう。そこには、広告で見た通りに傘を壊した青年がいた。
「……あの、これ」
私が予備の折り畳み傘を差し出すと、彼は驚いた顔でこちらを見た。
その瞬間、私の脳内に強烈な既視感(デジャヴ)が走る。
これは「広告」ではなかった。
加速しすぎた未来が、過去の私たちに送った「記憶の断片」だったのだ。
「ありがとう。君に会えるのを、ずっと前から知っていた気がする」
雨音の中、彼が笑う。空中の広告はいつの間にか消え、ただ灰色の空が広がっていた。
* 日記風雑感 *
冬はね。季節柄、ということもあるのか、なかなかまとまった雨が降りません。
豪雪で大変なエリアがある一方、カサカサで乾ききったエリアも存在している。
自転車で川沿いを走ることが多いのですが、いつもの冬よりかなり水量が少ない印象。乾燥する季節とはいえ、こんなに雨が降らないのは珍しいのでは。
雨が降ったら、運命の人に出会えるかな?
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ホログラム 消えたあとの 灰色の
空に本物の 雨が降りだす
ビニール傘 壊れる音まで 予報され
なぞるように歩く 午後の三時を
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