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期末試験

ー/ー



「いよいよ、明日だな……」


 窓の外は、どんよりとした12月の空が広がっているある日。

 フックが、まるで処刑台に向かう囚人のような悲壮感漂う声を漏らして来た。


「ああ」


 それに対する俺の方と言えば、ストーブの熱で少しぼーっとした頭で、そっけなく返す。


「どんな具合だ?」
「いつも通り……」

「じゃあ、赤点直行だな」
「ギリ回避だよ……!」


 失礼な野郎だ………


「………見栄、張んなくても良いんだぞ…………」
「別に張ってねぇわ」

「本当か……?」
「何故、そこまで食い下がる?」

「いや……結構、ヤバい教科があって………」
「頑張れよ」


 すまないが、同類になる気は無い……


「何だ?その余裕面………」
「生まれつきの顔だ。田嶋の “度” が合ってねぇんじゃねぇか?」

「そのネタ(眼鏡が本体)、いつまで引っ張んだよ……?田嶋は俺だ」
「赤点の田嶋」

「まだ取ってねぇよ!」
「明日、取りゃ同じ事だろ?」

「だぁっ!?そんなの、お前だってやってみなきゃ解んねぇじゃねぇか!!?」
「そうだなぁ〜、互いに頑張ろうぜ♪」

「テェンメェ〜〜、前より、学校来るようになったからって調子に乗りやがって!」
「学校だけじゃない。仕事もこなした上で勉強でも、結果を残してる♪」
(結果残してないじゃない……)


 何か、隣から呆れたような溜息混じりの声が聴こえたけど、華麗にスルー♪


「巫山戯んなっ!赤点ギリギリで、何が結果だよ!?」
「学校しか来てない癖に、赤点取りそうになってる奴に言われたかねぇな♪」

「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ〜っっ!!も゙ぅ゙〜、や゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ〜〜っっっ!!!」
「煩いぞ、田嶋!早く席に着け!」


 発狂(?)して頭を掻きむしり出す田嶋のフックだっが、予期せぬ教員の叱責にすごすご(・・・・)と引き上げて行った。

 相変わらず、良く響くダミ声だぜ。


「はっは〜、天罰だ♪」
「…………良く、得意になれるわね。ノート見せて上げてるのに」


 良い気分になってる俺の隣から飛んできたのは、氷点下に近い冷ややかな声。

 視線を向ければ、愛子が呆れたように頬杖をついていた。


「ノートは、あいつ(フック)だって見てるだろ?条件は一緒……いや、俺は寧ろ低い位置から奴を追い抜いた♪」
「それこそ、明日になんなきゃ解んないじゃない?それと、私が言いたいのは、そんな低レベルな争いに満足してていいのかって事……」


 そう話す愛子の瞳に、かすかな苛立ちと、それ以上に深く出てるのは………「懸念」か?


「言いたい事は解るよ。でも、こんなのクラスメート同士の馬鹿騒ぎだろ?これだって、お前の好きな『青春』の一部なんじゃないか?」
「………そうかもしれないけど……もっと、上を目指そうとか思わないの?もう、12月よ。私達、来年には3年なのよ」

「………ノートを借りてる事には、感謝してるよ。でも、高校を普通に卒業出来るなら、それで良い」
「そう………」


 愛子はそう言うと、それ以上口を開く事はなかったが何処か不満そうだった………


 ノートの感謝を示して欲しかったんじゃなかったのか……?





   ◇◇◇

《数日後》


「テストどうだった?」
「問題無く、クリアした。愛子のノート様々だ!」

「………良く出来た(・・・・・)じゃなくて、クリア(・・・)したのね……」
「追試を全て、回避出来たんだ!上出来だぞ♪」

「………あんな丁寧に取って上げたのに、本当に赤点クリアがギリギリって……」
「ひょっとして、気を使ってくれたのか!?ますます、ありがたい。愛子様々だ♪」

「じゃあ、私のじゃなかったら赤点だったかもしれないって事………?横島君って、本当体育以外は目茶苦茶ね」
「いや、政経や美術は割と良い点取ってるぞ。後、音楽も……」

「……フィーリング系は得意なのね。でも、美術の道に行く気は無いのよね?」
「んな、人間には見えないだろ?」

「………進学する気は、やっぱり無いの?」
「…………この仕事を辞める気は無いからな」

「…………でも、GSってやっぱり危険な仕事な訳でしょ?他の道とか、考えたりはしないの」
「いつも、考えてるよ……勉強に専念して、大学に行く事も何回も考えた」


 大学を卒業して、普通の会社に就職する。その方が間違いなく安全だし、安定してる。

 他の仕事にだって勿論苦労はあるだろうが、一瞬の油断が死に直結するような事態なんてまず無いだろう。


「それでも、GSになる考えは変わらなかったのね」
「今の所わな……」


 正直言うと、そこまでこの仕事に賭けてる訳でもない。

 ただ、今辞めれば必ず後悔する自分が現れる……それが、解ってるから別の道を模索する事にもイマイチ積極的になれないのが実情だ。

 仕事も、修業もある意味命懸け………厳しいと思うことは、何度もあったが、辞めようと言う気持ちにはなれなかった。

 それでいて、その場に拘る気持ちの方も良く解らない。

 修業の成果が出れば嬉しいし、仕事で結果を残せば充実感だって湧いて来る。それが、やり甲斐として支えてるのは間違いないんだろうが、それだけじゃない気もする。


「ふうん……思ったより、真剣に考えてるんだ」


 そう答えた愛子の表情は、昨日に比べてどこか “険” が取れたように柔らかくなった感じがした。

 
「そう……思ったよりはな」


 愛子は、心配してくれてたのかもしれない………




 ………………どうでもいいが、フックの奴は一番懸念していた教科はシャカリキになってクリアしたが、そこで燃え尽きて別の教科を落とした。

 合掌……



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「いよいよ、明日だな……」
 窓の外は、どんよりとした12月の空が広がっているある日。
 フックが、まるで処刑台に向かう囚人のような悲壮感漂う声を漏らして来た。
「ああ」
 それに対する俺の方と言えば、ストーブの熱で少しぼーっとした頭で、そっけなく返す。
「どんな具合だ?」
「いつも通り……」
「じゃあ、赤点直行だな」
「ギリ回避だよ……!」
 失礼な野郎だ………
「………見栄、張んなくても良いんだぞ…………」
「別に張ってねぇわ」
「本当か……?」
「何故、そこまで食い下がる?」
「いや……結構、ヤバい教科があって………」
「頑張れよ」
 すまないが、同類になる気は無い……
「何だ?その余裕面………」
「生まれつきの顔だ。田嶋の “度” が合ってねぇんじゃねぇか?」
「その|ネタ《眼鏡が本体》、いつまで引っ張んだよ……?田嶋は俺だ」
「赤点の田嶋」
「まだ取ってねぇよ!」
「明日、取りゃ同じ事だろ?」
「だぁっ!?そんなの、お前だってやってみなきゃ解んねぇじゃねぇか!!?」
「そうだなぁ〜、互いに頑張ろうぜ♪」
「テェンメェ〜〜、前より、学校来るようになったからって調子に乗りやがって!」
「学校だけじゃない。仕事もこなした上で勉強でも、結果を残してる♪」
(結果残してないじゃない……)
 何か、隣から呆れたような溜息混じりの声が聴こえたけど、華麗にスルー♪
「巫山戯んなっ!赤点ギリギリで、何が結果だよ!?」
「学校しか来てない癖に、赤点取りそうになってる奴に言われたかねぇな♪」
「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ〜っっ!!も゙ぅ゙〜、や゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ〜〜っっっ!!!」
「煩いぞ、田嶋!早く席に着け!」
 発狂(?)して頭を掻きむしり出す田嶋のフックだっが、予期せぬ教員の叱責に|すごすご《・・・・》と引き上げて行った。
 相変わらず、良く響くダミ声だぜ。
「はっは〜、天罰だ♪」
「…………良く、得意になれるわね。ノート見せて上げてるのに」
 良い気分になってる俺の隣から飛んできたのは、氷点下に近い冷ややかな声。
 視線を向ければ、愛子が呆れたように頬杖をついていた。
「ノートは、|あいつ《フック》だって見てるだろ?条件は一緒……いや、俺は寧ろ低い位置から奴を追い抜いた♪」
「それこそ、明日になんなきゃ解んないじゃない?それと、私が言いたいのは、そんな低レベルな争いに満足してていいのかって事……」
 そう話す愛子の瞳に、かすかな苛立ちと、それ以上に深く出てるのは………「懸念」か?
「言いたい事は解るよ。でも、こんなのクラスメート同士の馬鹿騒ぎだろ?これだって、お前の好きな『青春』の一部なんじゃないか?」
「………そうかもしれないけど……もっと、上を目指そうとか思わないの?もう、12月よ。私達、来年には3年なのよ」
「………ノートを借りてる事には、感謝してるよ。でも、高校を普通に卒業出来るなら、それで良い」
「そう………」
 愛子はそう言うと、それ以上口を開く事はなかったが何処か不満そうだった………
 ノートの感謝を示して欲しかったんじゃなかったのか……?
   ◇◇◇
《数日後》
「テストどうだった?」
「問題無く、クリアした。愛子のノート様々だ!」
「………|良く出来た《・・・・・》じゃなくて、|クリア《・・・》したのね……」
「追試を全て、回避出来たんだ!上出来だぞ♪」
「………あんな丁寧に取って上げたのに、本当に赤点クリアがギリギリって……」
「ひょっとして、気を使ってくれたのか!?ますます、ありがたい。愛子様々だ♪」
「じゃあ、私のじゃなかったら赤点だったかもしれないって事………?横島君って、本当体育以外は目茶苦茶ね」
「いや、政経や美術は割と良い点取ってるぞ。後、音楽も……」
「……フィーリング系は得意なのね。でも、美術の道に行く気は無いのよね?」
「んな、人間には見えないだろ?」
「………進学する気は、やっぱり無いの?」
「…………この仕事を辞める気は無いからな」
「…………でも、GSってやっぱり危険な仕事な訳でしょ?他の道とか、考えたりはしないの」
「いつも、考えてるよ……勉強に専念して、大学に行く事も何回も考えた」
 大学を卒業して、普通の会社に就職する。その方が間違いなく安全だし、安定してる。
 他の仕事にだって勿論苦労はあるだろうが、一瞬の油断が死に直結するような事態なんてまず無いだろう。
「それでも、GSになる考えは変わらなかったのね」
「今の所わな……」
 正直言うと、そこまでこの仕事に賭けてる訳でもない。
 ただ、今辞めれば必ず後悔する自分が現れる……それが、解ってるから別の道を模索する事にもイマイチ積極的になれないのが実情だ。
 仕事も、修業もある意味命懸け………厳しいと思うことは、何度もあったが、辞めようと言う気持ちにはなれなかった。
 それでいて、その場に拘る気持ちの方も良く解らない。
 修業の成果が出れば嬉しいし、仕事で結果を残せば充実感だって湧いて来る。それが、やり甲斐として支えてるのは間違いないんだろうが、それだけじゃない気もする。
「ふうん……思ったより、真剣に考えてるんだ」
 そう答えた愛子の表情は、昨日に比べてどこか “険” が取れたように柔らかくなった感じがした。
「そう……思ったよりはな」
 愛子は、心配してくれてたのかもしれない………
 ………………どうでもいいが、フックの奴は一番懸念していた教科はシャカリキになってクリアしたが、そこで燃え尽きて別の教科を落とした。
 合掌……