松雪は九路の記憶を見届けた。途中気分が悪くなり、えずいたが、頭に流れてくるので目を逸らせない。
「俺は、いずれ警察に捕まって、三人殺したから死刑になるでしょう。だけど、俺をこうしたのは、あいつ等です」
「九路さん……」
「許すのが強さだって言うやつも居ますけど、それが強さなら俺は弱いままでいい。このクソみたいな人生の終わりに道連れにしてやりますよ」
ニコッと九路は笑って言う。そんな笑顔の下、首元に黒い手形が浮かび上がる。
「俺の話はこれだけです。これで、俺は死ねますか」
手形が浮かび上がっているのに嘘も付けない。松雪は答える。
「えっと……、はい」
「良かった」
そう言って九路は上を見上げる。立ち上がり、松雪の元までやって来た。
「それじゃ、お願いします」
松雪は思う、イジメさえなければ、九路は歪むことも、復讐をする事も無かったはずだ。
全ては加害者が悪い、加害者が悪いのだが、日本の法律では九路が裁きを受けてしまう。
手をゆっくりと伸ばし、首元に触れた瞬間。いつもの恐ろしい力が加わり、立ったまま九路の首を締め上げる。
「が、ぐぐ」
声というよりも、空気が漏れ、そんな音が出た。腕以外にも全身に力が漲り、そのままの姿勢で目を強く瞑って九路が力尽きるのを待つ。
長いような、短いような時間の後、不意に手から力が抜けて、九路はドサリと地面に落ちた。
松雪は「はぁはぁ」と荒い息をしてそれを見つめる。
いつの間にか、松雪は自室の布団の上で目が覚めた。じっとりとかいた汗が気持ち悪い。
俺を地獄に追い込んだ奴らは俺が地獄に送ってやる。
夢も希望も奪われた、その苦しみを味あわせてやった。
最高に気分がいい。