「やっぱりこうなってしまいましたか」
「ま、あれ持ってった時点でわかってたことでっしゃろ」
「あのお宅だけでなく、両隣も全焼とは、これまた大きな被害になってしまいましたね」
「火事で全焼、一家無理心中か? 無理心中のためにお隣さんも家が全焼とはやってられまへんわ」
「三軒とも家族全員焼死ですからね」
「でもあの人形持ってった子だけは助かったんですやろ?」
「そうみたいですね。女の子かと思ったら男の子だったのはちょっと驚きましたけどね」
「せやなぁ。かわいいお嬢ちゃんの格好してはりましたもんね。それにしても助かったのが良かったのか悪かったのか」
「良かったですよ。どんなことであれ、命があるというのは素晴らしいことですから」
「言うても家族全部死なれて、小さい子だけ残って、これから苦労するのは目に見えてますやん」
「あの子はあれを持って帰っても命が助かった。ということは、生かされた命ということです。苦痛や苦労や苦難を甘んじて受け入れるのが、生かされた使命を背負って生きていく者の宿命です」
「なんや、今日のイトーさんは辛口やな」
「あれだけの仕業とも思えませんし、引き金だったのは間違いないでしょうけど、別のなにかが働いていたのは間違いないですから」
「ま、それはそうなんやけど」
「ですから、あの子はあの状況で命が助かったことを良かったと思うべきですし、それは同時に、直接的にしろ間接的にしろ、あの子が背負うべき業ということなんですよ」
「んまっ、それをボクらが考えててもしゃーないしな」
「私達は私達のするべきことがありますからね」