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みぃくん(4)/幼稚園児②

ー/ー



「お電話ありがとうございます、こちら廃品回収サービスの」

『おたく、金かかる?』

「基本的には無料で回収致しますが、あまり遠方の場合ですと交通費を」

『遠方ってどんくらい?』

「そうですねぇ、片道百キロメートルを超えると出張料」

『いくら?』

「出張料ですか?」

『だからいくら?』

「最低三千円頂戴致しま」

『じゃあいいわ』

「何やのん、その電話。うちのことバカにしすぎてません? イトーさんも、もっとガツーンと言わはりませんとあかんのとちゃいますのん?」

「まあまあオオツキさん。きっとお忙しいお客さんだったんですよ」

「そうは言ったって、こっちかてある程度の商売としてやってる訳やないですか。そんなんじゃあきまへんで。もっと主導権握っていかんと」

「すいませんねぇ、私そういったことは苦手でして」

「まったくこれだからちっとも儲からないんやで!?」

「まあまあ、儲け、とは別の思惑もありますし、そっちが達成できればそれが一番じゃないですか」

「なーにを甘っちょろいこと言うはりますの。お客様対応ぐらいもうちょっとシャキっと......うわっ! なんやこの子供、どこから来たん!? いつの間に居ったん!?」

「おや、こんにちは。お名前言えますか?」

「えらいびっくりしてもうた。あーほんまびっくりした」

「お嬢ちゃん、お名前、教えてくれますか?」

「イトーさんのことがおっかないんとちゃいます?」

「ニコニコしてるんですけどねぇ」

「でも目ぇ、笑ってないですやん」

「オオツキさんが大きな声出したからびっくりしちゃったのかもしれないですよ?」

「あー、そら悪かったわ。なあ嬢ちゃん、どこから来はったん? お兄ちゃんが送ってったるから言うてみ?」

「なんにも言わないですね」

「困ったなぁ」

「あれ、その人形、どこで拾ったんですか?」

「それ、こないだ大量に引き取ってきたソフビ人形やないですか。お嬢ちゃん、それは遊んじゃいけないものなんやで。ほら、お兄ちゃんに返して?」

「あちゃあ、気に入っちゃいましたか」

「何をそんな他人事みたいに言うてますの。お嬢ちゃん、そんなもん持って帰ったらあかんで? おうちが大変なことになってしまうで?」

「お嬢ちゃん、ここにおじさんのおやつのチョコレートがあります。そのおもちゃ、これと交換するのはどうですか?」

「イトーさん、やるやん。ナイス!」

「チョコレート、......あれ? 食べたことないんですか? 甘くて美味しいんですよ。試しに一つ食べてみますか?」

「ちょ、犬猫やないんやからそんな餌付けみたいな......」

「ね? 美味しいでしょう? その人形返してくれたら、もっとチョコレート食べれますよ?」

「―――っ!! どこにいるの!?」

「あ、もしかしてあれ、お嬢ちゃんのこと探してるんとちゃうん?」

「あっ、ちょっと! それ返してください!」

「ああ!! みぃくん、どこ行ってたの!? 勝手に居なくなって心配したのよ」

「あの、すいません」

「な、なんですか、あなたたち」

「いえ、私達怪しい者じゃないです。この向こうの廃品回収サービスをしている者なんですが」

「それが何か?」

「その子がどうもうちの庭に迷い込んできたみたいでして」

「まあ! みぃくん、あんな危険なところに行っちゃだめじゃない! お母さんが知ったらどんなことになるか......」

「それでですね、その、お子さんがどうもうちの庭にあった廃品を持って行ってしまったようでして」

「……何も持ってないじゃない。変な難癖つけるのはやめてください!」

「難癖とかじゃないんですよ。もしそれを持って帰ったらよくないことが起きるんですよ」

「さ、みぃくん、おばあちゃんと一緒に帰ろうね」

「あの」

「これ以上うちの孫と関わるようなら警察呼びますから! ......大きい声出してごめんね、美味しいおやつが待ってるおうちに帰ろうね」


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『おたく、金かかる?』
「基本的には無料で回収致しますが、あまり遠方の場合ですと交通費を」
『遠方ってどんくらい?』
「そうですねぇ、片道百キロメートルを超えると出張料」
『いくら?』
「出張料ですか?」
『だからいくら?』
「最低三千円頂戴致しま」
『じゃあいいわ』
「何やのん、その電話。うちのことバカにしすぎてません? イトーさんも、もっとガツーンと言わはりませんとあかんのとちゃいますのん?」
「まあまあオオツキさん。きっとお忙しいお客さんだったんですよ」
「そうは言ったって、こっちかてある程度の商売としてやってる訳やないですか。そんなんじゃあきまへんで。もっと主導権握っていかんと」
「すいませんねぇ、私そういったことは苦手でして」
「まったくこれだからちっとも儲からないんやで!?」
「まあまあ、儲け、とは別の思惑もありますし、そっちが達成できればそれが一番じゃないですか」
「なーにを甘っちょろいこと言うはりますの。お客様対応ぐらいもうちょっとシャキっと......うわっ! なんやこの子供、どこから来たん!? いつの間に居ったん!?」
「おや、こんにちは。お名前言えますか?」
「えらいびっくりしてもうた。あーほんまびっくりした」
「お嬢ちゃん、お名前、教えてくれますか?」
「イトーさんのことがおっかないんとちゃいます?」
「ニコニコしてるんですけどねぇ」
「でも目ぇ、笑ってないですやん」
「オオツキさんが大きな声出したからびっくりしちゃったのかもしれないですよ?」
「あー、そら悪かったわ。なあ嬢ちゃん、どこから来はったん? お兄ちゃんが送ってったるから言うてみ?」
「なんにも言わないですね」
「困ったなぁ」
「あれ、その人形、どこで拾ったんですか?」
「それ、こないだ大量に引き取ってきたソフビ人形やないですか。お嬢ちゃん、それは遊んじゃいけないものなんやで。ほら、お兄ちゃんに返して?」
「あちゃあ、気に入っちゃいましたか」
「何をそんな他人事みたいに言うてますの。お嬢ちゃん、そんなもん持って帰ったらあかんで? おうちが大変なことになってしまうで?」
「お嬢ちゃん、ここにおじさんのおやつのチョコレートがあります。そのおもちゃ、これと交換するのはどうですか?」
「イトーさん、やるやん。ナイス!」
「チョコレート、......あれ? 食べたことないんですか? 甘くて美味しいんですよ。試しに一つ食べてみますか?」
「ちょ、犬猫やないんやからそんな餌付けみたいな......」
「ね? 美味しいでしょう? その人形返してくれたら、もっとチョコレート食べれますよ?」
「―――っ!! どこにいるの!?」
「あ、もしかしてあれ、お嬢ちゃんのこと探してるんとちゃうん?」
「あっ、ちょっと! それ返してください!」
「ああ!! みぃくん、どこ行ってたの!? 勝手に居なくなって心配したのよ」
「あの、すいません」
「な、なんですか、あなたたち」
「いえ、私達怪しい者じゃないです。この向こうの廃品回収サービスをしている者なんですが」
「それが何か?」
「その子がどうもうちの庭に迷い込んできたみたいでして」
「まあ! みぃくん、あんな危険なところに行っちゃだめじゃない! お母さんが知ったらどんなことになるか......」
「それでですね、その、お子さんがどうもうちの庭にあった廃品を持って行ってしまったようでして」
「……何も持ってないじゃない。変な難癖つけるのはやめてください!」
「難癖とかじゃないんですよ。もしそれを持って帰ったらよくないことが起きるんですよ」
「さ、みぃくん、おばあちゃんと一緒に帰ろうね」
「あの」
「これ以上うちの孫と関わるようなら警察呼びますから! ......大きい声出してごめんね、美味しいおやつが待ってるおうちに帰ろうね」