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みぃくん(4)/幼稚園児③

ー/ー



「どうして誰も分かってくれないの」

「千恵、大丈夫だから」

「私はおかしくなんてなってないじゃない。可愛い娘がいて、愛する夫がいて、温かい家庭があって、絵に描いたような美しい日々を過ごしているのに。私達は完璧な家族のはずなのに」

「落ち着けって」

「なのにどうしてお義母さんは、みぃちゃんのことをみぃくんって言い続けるの? みぃちゃんは、美空(みそら)は、娘でしょ!? 見てわかんないの?」

「母さんに、よく言っておくよ」

「それにお義父さんも。美空のことにいちいち干渉してくるし、あれこれうるさいったらないわ。挙句は、私のことまで変人扱いするなんて」

「親父は......そういう人なんだよ」

「あなたがそんなんだからお義父さんが好き勝手言うのよ! ちゃんと私と美空を守ってよ!」

「悪かったよ」

「みぃくんはいい子に寝ましたよ。お茶でも淹れましょうか」

「子供の寝かしつけまで家内に任せておきながら、何が子育てだ」

「なんでそういう言い方するんだよ親父」

「お義母さんがやってくれるって言ったんですから、そんなこと言われても困ります」

「そうよ、うちにいる間はいいのよ」

「お前はどうしてそうやって甘やかす方を選ぶんだ。それにお前たちの子供は美空じゃなく満月(みつき)だろう」

「お父さん!」

「親父!」

「美空になんてこと言うんですか! 満月は亡くなった美空の弟です!」

「亡くなったのは姉の美空だっただろう! 公園で、千恵さん、あんたが目を離した隙に車道に飛び出し、走ってきた車に轢かれたのは美空だ! 葬式だってやって、あの小さな……、小さくて軽い棺桶を忘れたのか!?」

「親父、やめてくれ」

「私のかわいい娘は死んでなんていません! 死んだのは弟の方です!」

「いいや、千恵さん、あんたは心の病かなんか知らんが、現実を見なさ過ぎだ。娘の死を受け入れられないのは、残された満月に悪いと思わないのか?」

「どうして美空が死んだなんて、そんなひどいことを言うんですか!?」

「千恵さん、あんたは自分のことが可哀相だと思ってるかもしれないが、本当に可哀想なのは誰だか考えたことがあるか? 双子の姉が亡くなって心の整理もつかない子供に、姉の代わりをさせ、死んだのは自分だとされている我が子の心を考えたことはあるのか?」

「やめてください!」

「姉の服を着せられ、姉の愛称で呼ばれ、髪も結われて、運動や外遊びを禁止されて、満月は男の子なんだぞ?」

「ですからあの子は美空なんです!」

「あの子は、満月は何も悪くないのに、自分の存在がなかったことにされているんだぞ!? それも実の母親によって! 正俊、お前はなんとも思わないのか!?」

「親父、もうやめてくれ。千恵の心を、俺は大事にしたいんだよ」

「お前はあの子の父親だろう!」

「やめて! 美空は、美空は生きてるんです! 死んでなんかいないんです! やめてください!」

「千恵さん、落ち着いて。お父さんも。満月が起きてしまいますよ」

「あっ......」

「......みぃちゃん! ごめんね、ママ大きな声出しててびっくりしたよね」

「満月、トイレか?」

「ああ、私のかわいい美空。いい子だね。ママと一緒におねんねしようね。ごめんね」

「............」

「............」

「............」


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「どうして誰も分かってくれないの」
「千恵、大丈夫だから」
「私はおかしくなんてなってないじゃない。可愛い娘がいて、愛する夫がいて、温かい家庭があって、絵に描いたような美しい日々を過ごしているのに。私達は完璧な家族のはずなのに」
「落ち着けって」
「なのにどうしてお義母さんは、みぃちゃんのことをみぃくんって言い続けるの? みぃちゃんは、|美空《みそら》は、娘でしょ!? 見てわかんないの?」
「母さんに、よく言っておくよ」
「それにお義父さんも。美空のことにいちいち干渉してくるし、あれこれうるさいったらないわ。挙句は、私のことまで変人扱いするなんて」
「親父は......そういう人なんだよ」
「あなたがそんなんだからお義父さんが好き勝手言うのよ! ちゃんと私と美空を守ってよ!」
「悪かったよ」
「みぃくんはいい子に寝ましたよ。お茶でも淹れましょうか」
「子供の寝かしつけまで家内に任せておきながら、何が子育てだ」
「なんでそういう言い方するんだよ親父」
「お義母さんがやってくれるって言ったんですから、そんなこと言われても困ります」
「そうよ、うちにいる間はいいのよ」
「お前はどうしてそうやって甘やかす方を選ぶんだ。それにお前たちの子供は美空じゃなく|満月《みつき》だろう」
「お父さん!」
「親父!」
「美空になんてこと言うんですか! 満月は亡くなった美空の弟です!」
「亡くなったのは姉の美空だっただろう! 公園で、千恵さん、あんたが目を離した隙に車道に飛び出し、走ってきた車に轢かれたのは美空だ! 葬式だってやって、あの小さな……、小さくて軽い棺桶を忘れたのか!?」
「親父、やめてくれ」
「私のかわいい娘は死んでなんていません! 死んだのは弟の方です!」
「いいや、千恵さん、あんたは心の病かなんか知らんが、現実を見なさ過ぎだ。娘の死を受け入れられないのは、残された満月に悪いと思わないのか?」
「どうして美空が死んだなんて、そんなひどいことを言うんですか!?」
「千恵さん、あんたは自分のことが可哀相だと思ってるかもしれないが、本当に可哀想なのは誰だか考えたことがあるか? 双子の姉が亡くなって心の整理もつかない子供に、姉の代わりをさせ、死んだのは自分だとされている我が子の心を考えたことはあるのか?」
「やめてください!」
「姉の服を着せられ、姉の愛称で呼ばれ、髪も結われて、運動や外遊びを禁止されて、満月は男の子なんだぞ?」
「ですからあの子は美空なんです!」
「あの子は、満月は何も悪くないのに、自分の存在がなかったことにされているんだぞ!? それも実の母親によって! 正俊、お前はなんとも思わないのか!?」
「親父、もうやめてくれ。千恵の心を、俺は大事にしたいんだよ」
「お前はあの子の父親だろう!」
「やめて! 美空は、美空は生きてるんです! 死んでなんかいないんです! やめてください!」
「千恵さん、落ち着いて。お父さんも。満月が起きてしまいますよ」
「あっ......」
「......みぃちゃん! ごめんね、ママ大きな声出しててびっくりしたよね」
「満月、トイレか?」
「ああ、私のかわいい美空。いい子だね。ママと一緒におねんねしようね。ごめんね」
「............」
「............」
「............」