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第110話 なんちゅうことしてくれとんじゃい

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 ミモザの収監された施設の入り口から離れ、半ば錯乱状態になりつつあったオキザリスをどうにか死に物狂いでなだめて、幻惑の腕輪も駆使しつつ改変された認識を元に戻すにまで至った。危うく殺されかけたが、その辺りは割愛。

 そんな一悶着をしているうちに、まずヤスミと合流。続いて、デニアとサンシとも合流することができた。ヤスミの方は、どうやらエルフの族長についてを調べ回っていたらしい。なんか到着が少し遅いなとは思ったが、なんと根回しのいい奴よ。

 デニアとサンシの二人も、地図を見ながらエルフの里を観光していたような口ぶりで、情報収集をしてくれていたようだ。全くの無傷な上に、まるで疲弊した様子がないこの余裕っぷりは何なのだろうな。

「ノイデスはどうなってる?」

 里の入り口で陽動していたはずだが、まさかエルフにやられてしまったのではあるまいな。そんな不安も過ぎりつつあったが、ヤスミは全てを見てきたかのようにさらっと報告する。

「ノイデス殿は里内に侵入できず、未だ入り口付近でエルフの相手をしていましたよ。里の外の見張りまで総動員で、今、外に出たら拙者たちも危ないでしょうね」

 アイツ、本当に暴れることしかできないのかよ。こうして我らが里の中に侵入できたのもノイデスがエルフを惹きつけてくれたおかげだから文句も言えぬが。

「もうあれから結構経っているような気もするが、大丈夫なのか?」
「さっきちょっと見てきた限りでは無傷でピンピンしていました。拙者も驚いたのですが、さすがはノイデス殿といったところでしょうか」

 じゃあもうしばらく放っておいてもよさそうか。
 騒ぎが外に向いているのならそれに越したことはない。

 どこからともなく「おい! 誰か俺を助けろ!」などというツッコミが聞こえてきそうな気もしたが、まあ、気のせいだろう。
 ノイデスには悪いが、引き続き頑張ってもらうことにしよう。

「では、一人揃っていないが、次の作戦に移ろう」

 遮蔽物の多い場所にひっそりと隠れ、我を含む五人は情報収集した結果を共に共有する。一番情報を仕入れてきたのはやはりというべきか、ヤスミだった。
 本当に優秀すぎる。うちの使用人になってくれないものだろうか。いや、ミモザの従業員を引き抜くわけにはいかぬな。

 全員の情報を集約した限りでは、どうやらこのアレフヘイムの里に住むエルフのほとんどは下層に暮らしており、丁度我らがいる上層部にいるのは族長に認められた連中くらいしかいないらしい。

 本来はもう少しこの辺りにも人員が割かれていたようだが、ノイデスが暴れていることもあり、一番重要な収容施設以外の見張りは大体外に回されたそうだ。なんと役に立っているではないか、ノイデス。良かったな。

 通りでさっきから武装したエルフしか見かけないと思った。一般住民はおらず、見張りだけ。しかもその大多数はここにいない。状況としては好都合この上ない。

 あとはミモザを連れて帰るだけなのだが、ここが一番の難所というべきか。

 これだけのメンバーが揃っているのだから、もう強行突破してしまおうとも考えてみたのだが、つい先ほど、収容施設の近辺にいた見張りエルフたちを大賢者の眼鏡(ライブミラー)でこっそり覗いてみたところ、驚愕の事実が発覚。

【アレフヘイム】(エルフ)
 ≪LV:66≫
 ≪HP:4482/4482≫
 ≪MP:7289/7289≫
 ≪状態:健康≫

【アレフヘイム】(エルフ)
 ≪LV:68≫
 ≪HP:4512/4512≫
 ≪MP:7304/7304≫
 ≪状態:健康≫

【アレフヘイム】(エルフ)
 ≪LV:62≫
 ≪HP:4311/4311≫
 ≪MP:6994/6994≫
 ≪状態:健康≫

 あれ……? アイツら我らより強くね?

 さっと見た感じ、結構ヤバめの数値が見えてくる。なるほど、さしずめアレフヘイムのエリート集団といったところか。
 多分奥の方にはさらにヤバいのが沢山待ち構えていそうだ。

 考えてもみれば、エルフの爪弾きどもを収監するための施設なのだから、軟弱なエルフに務まるはずもない。決して逃がさぬように鍛練を積んでいるのだろう。
 あのエルフたちに太刀打ちできそうなのはオキザリスかノイデスくらい。

 ノイデスは今、外で遊んでいる最中だし、オキザリス一人では荷が重い。というかどちらも魔法を使えぬのだからいずれにせよ戦力外。
 強力な魔法攻撃を放たれたら為す術なく一網打尽だぞ、これ。

「あらあらぁ……これでは入れそうにないですねぇ……」

 デニアも萎縮する。この中でステータス的には最弱かもしれんが、唯一まともに魔法を使えるエルフが意気消沈してしまったらどうしようもない。

「さて、どうしますかな。このまま手をこまねいていては時間を無駄に浪費するばかりですな」

 サンシも好戦的な態度は見せない。冷静に状況を見てのことだろう。

 ちなみに、二人とも我の持っている大賢者の眼鏡(ライブミラー)を使わず、裸眼で力量を見極めている。それができる時点で相当な手練れだ。

「しかし、いずれにせよ……はぁ……、我は……ふぅ……、もうしばらくは動けそうにないぞ」

 こっちはこっちで幻惑の腕輪を無駄に使いすぎた。疲労感が半端ない。オキザリスの分まで消耗してしまったから尚更だ。

 今はこのアレフヘイムの里中に霧のように充満する魔素を補給して何とか体調を整えている。これもなかなか無茶な回復の仕方なのだがな。

「では、拙者はもう少し情報収集をしてきます!」

 そういったときには、既にヤスミの姿はなく、霧の彼方へと消えてしまっていた。

「お嬢様、お加減はいかがでしょうか」
「問題ない。疲れているだけだ。少し休めばどうにかなる」

 問題となるのは、次の策。

 作戦その2。ミモザと接触して、脱出を試みる。
 予定では収容施設に入らないまでも、何かしらの連絡手段がとれるものかと思っていたが、思うようにいかないものだ。

「ふぅ……」

 ようやく我の呼吸も落ち着いてきた。もうあまり時間を掛けてはいられない。
 かといって、大胆な行動も控えなければならない。
 折角ノイデスが里の外側に惹きつけているというのに、豪快で目立つようなことをしてしまっては本末転倒。

 アレフヘイムのエルフの方が強いのが分かった今、より慎重にことを進めていかなければならないのだ。

「……? お嬢様?」
「む……?」

 オキザリスが先に何かを感じ取る。我も遅れてソレに気付く。
 地面が揺れているような気がする。地震だろうか。
 まさかと思ったが、その揺れは次第に大きくなっていく。無視できないくらいに。

 ズウウゥゥ-ン、ズウウゥゥ-ンという激しい地鳴り。なんだろう。物凄く嫌な予感がする。つい最近、これと同じものをその身で味わった気がする。
 それが足音ということに気付いた途端、我は血の気が引いたと思う。

 アレフヘイムの里全体が揺れていた。それは里中にびっしりと生えている蔦や蔓の揺れ具合からもよく見てとれた。

 そして次の瞬間、天井に大きな亀裂が走るのを見てしまった。バリバリバリと里の天井が裂けて、そこから出てきたのは苔まみれの巨大な物体。
 我は瞬時にそれを何かの足だと判断してしまった。

 ああ、そうだ。あれはトロールの足だ。そんな巨大な足が里に踏み込んできたと同時に沢山のものも降ってきた。エルフ、エルフ、エルフ……そしてノイデス。

 それを見て、我は全てを察し、こう思った。

 なんちゅうことしてくれとんじゃい!

 どういう経緯があったかは分からぬが、アイツが呼び寄せてきたということは、間違いないだろう。


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 ミモザの収監された施設の入り口から離れ、半ば錯乱状態になりつつあったオキザリスをどうにか死に物狂いでなだめて、幻惑の腕輪も駆使しつつ改変された認識を元に戻すにまで至った。危うく殺されかけたが、その辺りは割愛。
 そんな一悶着をしているうちに、まずヤスミと合流。続いて、デニアとサンシとも合流することができた。ヤスミの方は、どうやらエルフの族長についてを調べ回っていたらしい。なんか到着が少し遅いなとは思ったが、なんと根回しのいい奴よ。
 デニアとサンシの二人も、地図を見ながらエルフの里を観光していたような口ぶりで、情報収集をしてくれていたようだ。全くの無傷な上に、まるで疲弊した様子がないこの余裕っぷりは何なのだろうな。
「ノイデスはどうなってる?」
 里の入り口で陽動していたはずだが、まさかエルフにやられてしまったのではあるまいな。そんな不安も過ぎりつつあったが、ヤスミは全てを見てきたかのようにさらっと報告する。
「ノイデス殿は里内に侵入できず、未だ入り口付近でエルフの相手をしていましたよ。里の外の見張りまで総動員で、今、外に出たら拙者たちも危ないでしょうね」
 アイツ、本当に暴れることしかできないのかよ。こうして我らが里の中に侵入できたのもノイデスがエルフを惹きつけてくれたおかげだから文句も言えぬが。
「もうあれから結構経っているような気もするが、大丈夫なのか?」
「さっきちょっと見てきた限りでは無傷でピンピンしていました。拙者も驚いたのですが、さすがはノイデス殿といったところでしょうか」
 じゃあもうしばらく放っておいてもよさそうか。
 騒ぎが外に向いているのならそれに越したことはない。
 どこからともなく「おい! 誰か俺を助けろ!」などというツッコミが聞こえてきそうな気もしたが、まあ、気のせいだろう。
 ノイデスには悪いが、引き続き頑張ってもらうことにしよう。
「では、一人揃っていないが、次の作戦に移ろう」
 遮蔽物の多い場所にひっそりと隠れ、我を含む五人は情報収集した結果を共に共有する。一番情報を仕入れてきたのはやはりというべきか、ヤスミだった。
 本当に優秀すぎる。うちの使用人になってくれないものだろうか。いや、ミモザの従業員を引き抜くわけにはいかぬな。
 全員の情報を集約した限りでは、どうやらこのアレフヘイムの里に住むエルフのほとんどは下層に暮らしており、丁度我らがいる上層部にいるのは族長に認められた連中くらいしかいないらしい。
 本来はもう少しこの辺りにも人員が割かれていたようだが、ノイデスが暴れていることもあり、一番重要な収容施設以外の見張りは大体外に回されたそうだ。なんと役に立っているではないか、ノイデス。良かったな。
 通りでさっきから武装したエルフしか見かけないと思った。一般住民はおらず、見張りだけ。しかもその大多数はここにいない。状況としては好都合この上ない。
 あとはミモザを連れて帰るだけなのだが、ここが一番の難所というべきか。
 これだけのメンバーが揃っているのだから、もう強行突破してしまおうとも考えてみたのだが、つい先ほど、収容施設の近辺にいた見張りエルフたちを|大賢者の眼鏡《ライブミラー》でこっそり覗いてみたところ、驚愕の事実が発覚。
【アレフヘイム】(エルフ)
 ≪LV:66≫
 ≪HP:4482/4482≫
 ≪MP:7289/7289≫
 ≪状態:健康≫
【アレフヘイム】(エルフ)
 ≪LV:68≫
 ≪HP:4512/4512≫
 ≪MP:7304/7304≫
 ≪状態:健康≫
【アレフヘイム】(エルフ)
 ≪LV:62≫
 ≪HP:4311/4311≫
 ≪MP:6994/6994≫
 ≪状態:健康≫
 あれ……? アイツら我らより強くね?
 さっと見た感じ、結構ヤバめの数値が見えてくる。なるほど、さしずめアレフヘイムのエリート集団といったところか。
 多分奥の方にはさらにヤバいのが沢山待ち構えていそうだ。
 考えてもみれば、エルフの爪弾きどもを収監するための施設なのだから、軟弱なエルフに務まるはずもない。決して逃がさぬように鍛練を積んでいるのだろう。
 あのエルフたちに太刀打ちできそうなのはオキザリスかノイデスくらい。
 ノイデスは今、外で遊んでいる最中だし、オキザリス一人では荷が重い。というかどちらも魔法を使えぬのだからいずれにせよ戦力外。
 強力な魔法攻撃を放たれたら為す術なく一網打尽だぞ、これ。
「あらあらぁ……これでは入れそうにないですねぇ……」
 デニアも萎縮する。この中でステータス的には最弱かもしれんが、唯一まともに魔法を使えるエルフが意気消沈してしまったらどうしようもない。
「さて、どうしますかな。このまま手をこまねいていては時間を無駄に浪費するばかりですな」
 サンシも好戦的な態度は見せない。冷静に状況を見てのことだろう。
 ちなみに、二人とも我の持っている|大賢者の眼鏡《ライブミラー》を使わず、裸眼で力量を見極めている。それができる時点で相当な手練れだ。
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 こっちはこっちで幻惑の腕輪を無駄に使いすぎた。疲労感が半端ない。オキザリスの分まで消耗してしまったから尚更だ。
 今はこのアレフヘイムの里中に霧のように充満する魔素を補給して何とか体調を整えている。これもなかなか無茶な回復の仕方なのだがな。
「では、拙者はもう少し情報収集をしてきます!」
 そういったときには、既にヤスミの姿はなく、霧の彼方へと消えてしまっていた。
「お嬢様、お加減はいかがでしょうか」
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 予定では収容施設に入らないまでも、何かしらの連絡手段がとれるものかと思っていたが、思うようにいかないものだ。
「ふぅ……」
 ようやく我の呼吸も落ち着いてきた。もうあまり時間を掛けてはいられない。
 かといって、大胆な行動も控えなければならない。
 折角ノイデスが里の外側に惹きつけているというのに、豪快で目立つようなことをしてしまっては本末転倒。
 アレフヘイムのエルフの方が強いのが分かった今、より慎重にことを進めていかなければならないのだ。
「……? お嬢様?」
「む……?」
 オキザリスが先に何かを感じ取る。我も遅れてソレに気付く。
 地面が揺れているような気がする。地震だろうか。
 まさかと思ったが、その揺れは次第に大きくなっていく。無視できないくらいに。
 ズウウゥゥ-ン、ズウウゥゥ-ンという激しい地鳴り。なんだろう。物凄く嫌な予感がする。つい最近、これと同じものをその身で味わった気がする。
 それが足音ということに気付いた途端、我は血の気が引いたと思う。
 アレフヘイムの里全体が揺れていた。それは里中にびっしりと生えている蔦や蔓の揺れ具合からもよく見てとれた。
 そして次の瞬間、天井に大きな亀裂が走るのを見てしまった。バリバリバリと里の天井が裂けて、そこから出てきたのは苔まみれの巨大な物体。
 我は瞬時にそれを何かの足だと判断してしまった。
 ああ、そうだ。あれはトロールの足だ。そんな巨大な足が里に踏み込んできたと同時に沢山のものも降ってきた。エルフ、エルフ、エルフ……そしてノイデス。
 それを見て、我は全てを察し、こう思った。
 なんちゅうことしてくれとんじゃい!
 どういう経緯があったかは分からぬが、アイツが呼び寄せてきたということは、間違いないだろう。