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がんばれ!ミノタウロス君!

ー/ー



 魔王城の一室。



 ミノタウロスは、エリシアから「作戦会議がある」と呼び出されていた。

 彼は会議用のテーブルで待っていたが、部屋に入ってきたエリシアの様子がどこかおかしい。



「お待たせしましたわ!」



 そう言うなり、彼女は突然全力で駆け寄り——



 ——ガバッ!



 いきなりミノタウロスの膝にタックルを決めた!



「ぐおっ!?な、何事ですかぁ!?」



 膝を崩したミノタウロスに、エリシアは素早くマウントポジションを取る。顔を近づけ、上機嫌で声を張り上げた。



「いやぁ〜昨日のブレイキングダウンは盛り上がりましたわねぇ!」



 彼女のテンションは最高潮。ミノタウロスは痛みに耐えながら混乱するばかりだった。



「ちょ、ちょっと待ってください!何ですかそのテンション!」



「おかげで技も学べましたわ!こうやって、はい、肘打ち!肘打ちですわ!」

「ぐおおおぉ!勘弁してください!」



 エリシアの謎のハイテンションが会議室を支配する中、ミノタウロスはもはや成す術もなかった。



 気を取り直し、二人はテーブルに向かって席についた。



 エリシアは椅子に深く腰掛けながら、得意げに話を続ける。

「ま、私であればアサクーラなんてワンパンなんですがね。」



 ミノタウロスは額に汗を浮かべながら、苦笑を浮かべて応じる。

「お、お戯れを……。」



 エリシアは肩をすくめて軽く笑う。

「残念ながら、私は出禁ですわ。才能を妬まれるというのも辛いものですわね。」



 ミノタウロスは適当に相槌を打つ。

「そ、それは……残念ですな。」



 しかし、エリシアは突然椅子から立ち上がり、両肘を軽く曲げて構え始めた。



 ——シュッ!



 肘を繰り出す音が響く。



「こう……顎先を掠めるように……。」



 ——シュッ!



 さらにもう一度、キレのある肘打ちを繰り出すエリシア。

 ミノタウロスはそれを見ながら、完全に話題の迷子になっていた。



(なんの時間だっけ……?これ作戦会議だったよな……?)



 彼の頭の中は疑問符でいっぱいだったが、肘打ちの練習を邪魔する勇気はなかった。



¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥



 エリシアとミノタウロスは、勇者を倒すための作戦会議を行っていた。



「サンタのフリして近づくのが効果的だと思いますわ。」

 エリシアは自信満々に提案する。



 ミノタウロスはその案に即賛成した。

「それは、名案ですなぁ。」



 そして、その場でエリシアはスマホを取り出し、amazonでサンタの服一式を注文する。



 ——作戦当日。



 真っ赤なサンタの衣装に身を包んだエリシアが現れる。完璧に着こなしているものの、その目には何か企んでいる光が宿っている。



 一方、ミノタウロスは戸惑いながらも赤い鼻が付いたトナカイの角カチューシャをつけられていた。



「エリシア殿……これはいったい……?」



 エリシアは何を言われたかも気にせず、断言するように言い放つ。

「何言ってますの!?あなたがトナカイなのは当然でしょ!?」



 そして手を叩きながら続けた。

「早く四つん這いになりなさいよ!」



 ミノタウロスは心の中で呟いた。

(サンタが乗るのはソリなんだが……。)



 だが、エリシアの勢いに逆らえず、仕方なく四つん這いになる。エリシアはその背に勢いよく飛び乗った。



「よーし!いざ勇者のもとへ!進みなさい!」



 ミノタウロスはため息をつきながらゆっくり歩き始めたのだった。



 だが、ミノタウロスは歩きながらふと思い至った。



(待てよ……仮にエリシア殿がソリに乗っていたとしても、そのソリを引くのは結局この俺じゃないか?)



 ミノタウロスは自分の運命を悟り、どっちに転んでも苦労するのだと諦めることにした。



「はぁ……どのみちこうなるんですな……。」



 エリシアはそんな彼の心情を知る由もなく、背中に乗ったままご機嫌な声を上げている。



「よし!もっと速く進みなさいな!勇者は待ってくれませんわよ!」



 ミノタウロスは仕方なくペースを上げながら、勇者のもとへ向かう。

 そして、ついに勇者の元に辿り着いた。

 エリシアはミノタウロスの背から飛び降り、サンタの衣装を整えると、勇者の家の扉を叩いた。



「さあ、ここからが本番ですわ!」



 ミノタウロスは息を整えながら、小さく呟いた。



「……何が起こることやら。」



 いくら勇者とはいえ、彼も年頃の男の子。



 サンタの格好をしたエリシアが扉の前に立つと、彼は目を丸くして戸を開けた。



 エリシアは優雅に微笑みながら、明るく声を張り上げた。

「メリークリスマスですわ!」



 勇者はきょとんとした表情でエリシアを見つめる。

(え……サンタ……?いや、なんでサンタがここに……?)



 そんな彼の混乱をよそに、エリシアは手を伸ばし、満を持してプレゼントを取り出した。



 それは——Nintendo Switch(有機ELモデル)。



 ——パアアァァ!



 光り輝くそれを目にした瞬間、勇者の瞳には星が宿った。



「……ス、スイッチ……!」



 彼は感動のあまり声を震わせる。



 ——その後。



 魔王城に戻ったエリシアは、サンタの衣装を脱いで着替えを済ませると、淡々と衣装を片付け始めた。



 その様子を横で見ていたミノタウロスは、何か引っかかるものを感じ、恐る恐る口を開いた。

「なんか……忘れてません?」



 エリシアは手を止め、一瞬だけ考え込むような仕草を見せたが、すぐに微笑みを浮かべた。

「……いいえ、特に思い当たりませんわね。」



 そう言って、再び衣装をしまい込む。



 ミノタウロスはそれ以上何も言えず、口を閉ざした。



(まさか……勇者を倒すって目的、忘れてるとか……。)



 だが、エリシアに意見する勇気は無い。
 ミノタウロスは内心でため息をつきながら、結局その場で黙り込むことにしたのだった。



¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥



 エリシアは魔界での支持率を上げるため、年末の立食パーティを盛大に企画していた。



 豪華な料理と飲み物を用意し、魔族たちを魅了する計画だった。



 そして迎えた当日。



 予想以上の入場者数が押し寄せ、会場は大混乱。料理を運ぶスタッフたちはてんてこ舞いで、厨房もパンク状態になっていた。

 会場の隅では、参加者たちが料理を巡って軽い喧嘩を始めているほどだった。



「早く料理を出せ!」
「俺が先だ!」



 その報告を聞いたエリシアは頭を抱えながら、冷静を装って指示を出す。

 しかし、次に耳に入ったのは最悪のニュースだった。



「エリシア様!スイーツが足りません!」

「えぇ!?スイーツが足りないですって!?」



 彼女は一瞬驚愕したが、すぐに冷静を取り戻し、堂々と叫んだ。



「じゃあヨーカドーで買ってきなさい!」



 その場にいたスタッフたちは一瞬ポカンとしたが、次の瞬間、慌てて動き出した。



「ヨ、ヨーカドーって……どこに!?」「急げ!」



 会場はますますカオスな状況になっていったが、エリシアは悠然とワイングラスを片手に、笑顔で参加者たちに声をかけていた。



「ごゆっくり楽しんでいってくださいましね〜!」



 一方、厨房と会場の混乱は収まる気配がなかった。



 ——同刻。



 ミノタウロスは、久しぶりの休暇を満喫しようと朝から布団に潜り込んでいた。

 しかし、その安息は突如として破られた。



 ——ピコン



 スマホの通知音が響き、眠い目をこすりながら画面を確認する。そこにはエリシアからのメッセージが。



「今すぐ来なさい!会場がパニックですの!」



 ミノタウロスは一瞬、目を疑った。



「えぇ……マジかよ……。」



 続けて電話がかかってくる。強引に叩き起こされたミノタウロスは、やむなく魔王城へ向かった。

 そして立食パーティ会場。

 彼は給仕のエプロンを身につけ、慌ただしい会場の隅で料理を運び続けていた。



「お、俺の休みがあああぁ……。」



 彼の嘆きは大混乱の会場の喧騒にかき消される。



 ——ガヤガヤ



 スイーツ不足のクレームが飛び交い、料理を求める魔族たちが押し寄せる中、ミノタウロスは必死に対応し続けていた。

 一方、エリシアはワイングラスを片手に優雅に振る舞いながら、参加者たちと談笑している。



「皆さん、楽しんでいただけてますわね〜!」



 ミノタウロスは遠くからその姿を見て、心の中で泣き叫んでいた。



 混乱する会場に、またしても悪い知らせが飛び込んできた。



「エリシア様!ステーキが!ステーキが足りません!」



 エリシアは驚愕の声を上げる。



「えぇ!?なんですって!?せっかくの目玉が……!」



 会場のステーキはすでに早食い勝負のような勢いで消費され、まさに食べ尽くされようとしている。

 焦るスタッフにエリシアは慌てて指示を出す。



「もう、その辺にいる牛でもなんでも捕まえて……」



 その言葉が途切れる。なぜか、彼女の視線がミノタウロスと合った。



「……。」
「……。」



 エリシアは顎に手を当て、しばし考え込むような仕草を見せる。

 その様子に危機感を抱いたミノタウロスは、突然背を向けて動き始めた。



故郷(くに)へ帰ります。」



 彼はそう言いながら、荷物をまとめ始める。



「ちょっと待っておくんなまし〜!いきなりどうしましたの!?」



 エリシアが慌てて声を上げるが、ミノタウロスは振り返らない。


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 魔王城の一室。
 ミノタウロスは、エリシアから「作戦会議がある」と呼び出されていた。
 彼は会議用のテーブルで待っていたが、部屋に入ってきたエリシアの様子がどこかおかしい。
「お待たせしましたわ!」
 そう言うなり、彼女は突然全力で駆け寄り——
 ——ガバッ!
 いきなりミノタウロスの膝にタックルを決めた!
「ぐおっ!?な、何事ですかぁ!?」
 膝を崩したミノタウロスに、エリシアは素早くマウントポジションを取る。顔を近づけ、上機嫌で声を張り上げた。
「いやぁ〜昨日のブレイキングダウンは盛り上がりましたわねぇ!」
 彼女のテンションは最高潮。ミノタウロスは痛みに耐えながら混乱するばかりだった。
「ちょ、ちょっと待ってください!何ですかそのテンション!」
「おかげで技も学べましたわ!こうやって、はい、肘打ち!肘打ちですわ!」
「ぐおおおぉ!勘弁してください!」
 エリシアの謎のハイテンションが会議室を支配する中、ミノタウロスはもはや成す術もなかった。
 気を取り直し、二人はテーブルに向かって席についた。
 エリシアは椅子に深く腰掛けながら、得意げに話を続ける。
「ま、私であればアサクーラなんてワンパンなんですがね。」
 ミノタウロスは額に汗を浮かべながら、苦笑を浮かべて応じる。
「お、お戯れを……。」
 エリシアは肩をすくめて軽く笑う。
「残念ながら、私は出禁ですわ。才能を妬まれるというのも辛いものですわね。」
 ミノタウロスは適当に相槌を打つ。
「そ、それは……残念ですな。」
 しかし、エリシアは突然椅子から立ち上がり、両肘を軽く曲げて構え始めた。
 ——シュッ!
 肘を繰り出す音が響く。
「こう……顎先を掠めるように……。」
 ——シュッ!
 さらにもう一度、キレのある肘打ちを繰り出すエリシア。
 ミノタウロスはそれを見ながら、完全に話題の迷子になっていた。
(なんの時間だっけ……?これ作戦会議だったよな……?)
 彼の頭の中は疑問符でいっぱいだったが、肘打ちの練習を邪魔する勇気はなかった。
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 エリシアとミノタウロスは、勇者を倒すための作戦会議を行っていた。
「サンタのフリして近づくのが効果的だと思いますわ。」
 エリシアは自信満々に提案する。
 ミノタウロスはその案に即賛成した。
「それは、名案ですなぁ。」
 そして、その場でエリシアはスマホを取り出し、amazonでサンタの服一式を注文する。
 ——作戦当日。
 真っ赤なサンタの衣装に身を包んだエリシアが現れる。完璧に着こなしているものの、その目には何か企んでいる光が宿っている。
 一方、ミノタウロスは戸惑いながらも赤い鼻が付いたトナカイの角カチューシャをつけられていた。
「エリシア殿……これはいったい……?」
 エリシアは何を言われたかも気にせず、断言するように言い放つ。
「何言ってますの!?あなたがトナカイなのは当然でしょ!?」
 そして手を叩きながら続けた。
「早く四つん這いになりなさいよ!」
 ミノタウロスは心の中で呟いた。
(サンタが乗るのはソリなんだが……。)
 だが、エリシアの勢いに逆らえず、仕方なく四つん這いになる。エリシアはその背に勢いよく飛び乗った。
「よーし!いざ勇者のもとへ!進みなさい!」
 ミノタウロスはため息をつきながらゆっくり歩き始めたのだった。
 だが、ミノタウロスは歩きながらふと思い至った。
(待てよ……仮にエリシア殿がソリに乗っていたとしても、そのソリを引くのは結局この俺じゃないか?)
 ミノタウロスは自分の運命を悟り、どっちに転んでも苦労するのだと諦めることにした。
「はぁ……どのみちこうなるんですな……。」
 エリシアはそんな彼の心情を知る由もなく、背中に乗ったままご機嫌な声を上げている。
「よし!もっと速く進みなさいな!勇者は待ってくれませんわよ!」
 ミノタウロスは仕方なくペースを上げながら、勇者のもとへ向かう。
 そして、ついに勇者の元に辿り着いた。
 エリシアはミノタウロスの背から飛び降り、サンタの衣装を整えると、勇者の家の扉を叩いた。
「さあ、ここからが本番ですわ!」
 ミノタウロスは息を整えながら、小さく呟いた。
「……何が起こることやら。」
 いくら勇者とはいえ、彼も年頃の男の子。
 サンタの格好をしたエリシアが扉の前に立つと、彼は目を丸くして戸を開けた。
 エリシアは優雅に微笑みながら、明るく声を張り上げた。
「メリークリスマスですわ!」
 勇者はきょとんとした表情でエリシアを見つめる。
(え……サンタ……?いや、なんでサンタがここに……?)
 そんな彼の混乱をよそに、エリシアは手を伸ばし、満を持してプレゼントを取り出した。
 それは——Nintendo Switch(有機ELモデル)。
 ——パアアァァ!
 光り輝くそれを目にした瞬間、勇者の瞳には星が宿った。
「……ス、スイッチ……!」
 彼は感動のあまり声を震わせる。
 ——その後。
 魔王城に戻ったエリシアは、サンタの衣装を脱いで着替えを済ませると、淡々と衣装を片付け始めた。
 その様子を横で見ていたミノタウロスは、何か引っかかるものを感じ、恐る恐る口を開いた。
「なんか……忘れてません?」
 エリシアは手を止め、一瞬だけ考え込むような仕草を見せたが、すぐに微笑みを浮かべた。
「……いいえ、特に思い当たりませんわね。」
 そう言って、再び衣装をしまい込む。
 ミノタウロスはそれ以上何も言えず、口を閉ざした。
(まさか……勇者を倒すって目的、忘れてるとか……。)
 だが、エリシアに意見する勇気は無い。
 ミノタウロスは内心でため息をつきながら、結局その場で黙り込むことにしたのだった。
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 エリシアは魔界での支持率を上げるため、年末の立食パーティを盛大に企画していた。
 豪華な料理と飲み物を用意し、魔族たちを魅了する計画だった。
 そして迎えた当日。
 予想以上の入場者数が押し寄せ、会場は大混乱。料理を運ぶスタッフたちはてんてこ舞いで、厨房もパンク状態になっていた。
 会場の隅では、参加者たちが料理を巡って軽い喧嘩を始めているほどだった。
「早く料理を出せ!」
「俺が先だ!」
 その報告を聞いたエリシアは頭を抱えながら、冷静を装って指示を出す。
 しかし、次に耳に入ったのは最悪のニュースだった。
「エリシア様!スイーツが足りません!」
「えぇ!?スイーツが足りないですって!?」
 彼女は一瞬驚愕したが、すぐに冷静を取り戻し、堂々と叫んだ。
「じゃあヨーカドーで買ってきなさい!」
 その場にいたスタッフたちは一瞬ポカンとしたが、次の瞬間、慌てて動き出した。
「ヨ、ヨーカドーって……どこに!?」「急げ!」
 会場はますますカオスな状況になっていったが、エリシアは悠然とワイングラスを片手に、笑顔で参加者たちに声をかけていた。
「ごゆっくり楽しんでいってくださいましね〜!」
 一方、厨房と会場の混乱は収まる気配がなかった。
 ——同刻。
 ミノタウロスは、久しぶりの休暇を満喫しようと朝から布団に潜り込んでいた。
 しかし、その安息は突如として破られた。
 ——ピコン
 スマホの通知音が響き、眠い目をこすりながら画面を確認する。そこにはエリシアからのメッセージが。
「今すぐ来なさい!会場がパニックですの!」
 ミノタウロスは一瞬、目を疑った。
「えぇ……マジかよ……。」
 続けて電話がかかってくる。強引に叩き起こされたミノタウロスは、やむなく魔王城へ向かった。
 そして立食パーティ会場。
 彼は給仕のエプロンを身につけ、慌ただしい会場の隅で料理を運び続けていた。
「お、俺の休みがあああぁ……。」
 彼の嘆きは大混乱の会場の喧騒にかき消される。
 ——ガヤガヤ
 スイーツ不足のクレームが飛び交い、料理を求める魔族たちが押し寄せる中、ミノタウロスは必死に対応し続けていた。
 一方、エリシアはワイングラスを片手に優雅に振る舞いながら、参加者たちと談笑している。
「皆さん、楽しんでいただけてますわね〜!」
 ミノタウロスは遠くからその姿を見て、心の中で泣き叫んでいた。
 混乱する会場に、またしても悪い知らせが飛び込んできた。
「エリシア様!ステーキが!ステーキが足りません!」
 エリシアは驚愕の声を上げる。
「えぇ!?なんですって!?せっかくの目玉が……!」
 会場のステーキはすでに早食い勝負のような勢いで消費され、まさに食べ尽くされようとしている。
 焦るスタッフにエリシアは慌てて指示を出す。
「もう、その辺にいる牛でもなんでも捕まえて……」
 その言葉が途切れる。なぜか、彼女の視線がミノタウロスと合った。
「……。」
「……。」
 エリシアは顎に手を当て、しばし考え込むような仕草を見せる。
 その様子に危機感を抱いたミノタウロスは、突然背を向けて動き始めた。
「|故郷《くに》へ帰ります。」
 彼はそう言いながら、荷物をまとめ始める。
「ちょっと待っておくんなまし〜!いきなりどうしましたの!?」
 エリシアが慌てて声を上げるが、ミノタウロスは振り返らない。