——年明け第一発目のYouTube企画。
エリシアの「去年を振り返りますわよ」の収録がスタートした。
彼女は上機嫌でカメラに向かい、堂々と語り始める。
「ま、去年は破茶滅茶な冒険を皆様にご提供できましたわね!」
しかし、スタッフが控えめに口を挟む。
「その件なんですが……。」
スタッフが手元の資料を確認しながら、リスナーのコメントを読み上げる。
「——リスナーのコメントで、こんなものが届いています。」
【こいつ飯食ってるばっかだな】
エリシアは一瞬固まり、目を大きく見開いた。
「そ、そんなわけありませんわよ!」
慌てて手を振りながら続ける。
「あのねぇ!私のことを……食い意地の張った奴だと……思わないでくださいまし!」
スタッフは焦るエリシアを前に、冷静に資料を手に取った。
「否定されるのは結構ですが、まずはこちらをご覧ください。」
彼は直近のエリシアの活動記録を突きつける。
「まず、魔界の年末パーティーですね。」
「……。」
「ここで爆食いし、ゲスト用のステーキを自分で食べ過ぎて在庫を無くしてしまうという大失態。」
エリシアは肩をすくめ、視線をそらす。
「そ、それは……お味見というか、その……ゲストのためを思って……。」
しかし、スタッフは容赦なく続ける。
「次に、異世界転移の件です。」
「……。」
「屋台の串焼きを食べて『クズ肉』だのなんだのと文句を垂れる。この動画も結構な再生数がありましたね。」
エリシアは顔を赤くして反論する。
「だって本当にクズ肉でしたのよ!あんなのありがたがって食べるやつとかねぇ!」
スタッフは彼女を遮るようにさらに例を挙げる。
「さらに、エリシア商事の食品工場では工場長とおせちを試食。あれも食べすぎでしたよね。」
「……。」
エリシアは何も言えなくなり、俯く。
「そして極めつけは回転寿司です。」
「……え?」
「散々食べた挙げ句、会計のルールを知らずに皿をレーンに戻し、店員さんと揉めて危うく警察沙汰になった件。」
エリシアはとうとう言葉を失う。
「……ぐぬぬ……。」
スタッフは軽く肩をすくめ、カメラに向かって笑みを浮かべた。
「これでも『食べてばかり』じゃないとおっしゃるんでしょうか?」
少しの間、黙っていたエリシア。しかし顔を上げる。
「まあまあ!まあいいですわ!」
強引に態勢を立て直し、カメラに向かって堂々と語り始める。
「ええ、確かに食べ過ぎていましたわね。そこは認めます。」
エリシアは指を天に突き上げ、力強く宣言した。
「今年は期待してくださいまし!アバンギャルドな体験を皆様にご提供しますわ!」
(アバンギャルドって具体的に何やる気だよ……)
スタッフは内心でと突っ込んだが、カメラの前では黙って彼女を見守った。
エリシアは満面の笑みで締めくくる。
「というわけで、今年もどうぞよろしくお願いいたしますわ!次回もお楽しみに!」
エリシアが堂々と宣言を終えた直後、スタッフが問いかけた。
「ちなみに今年の抱負は?」
エリシアは迷いなく答える。
「事業拡大。」
「え?」
スタッフは一瞬聞き間違えたかと思い、問い返した。
「ですから、事業拡大ですわ。」
エリシアはにっこりと微笑みながら繰り返した。
「えっと……冒険の方は?」
スタッフはさらに確認するが、エリシアは軽く肩をすくめて答える。
「事業拡大も冒険のうちですわね〜。」
その言葉にスタッフは完全に沈黙した。
エリシアはカメラに向かって最後の一言を放つ。
「では皆様、今年もどうぞよろしくお願いいたしますわね〜!」
配信終了後、スタッフは静かに頭を抱えたのだった。