第57話 滅びの笑い
ー/ー
ホッパーたちは、廃墟の中を歩き始める。
「まったく、なんだっていうんだ、ここは……」
こんな人の来なさそうなところに廃墟があるために、ホッパーたちはかなりの警戒を強めている。
「ふふふふ……」
ホッパーたちの耳に、突如として少女の笑い声が聞こえてくる。
声を聞いた瞬間に、ホッパーがぎりっと歯を食いしばっている。
「兄貴、どうしやしたんで?」
「くそっ、この声は……」
部下である傭兵の一人が、気になってホッパーに声をかける。
その部下の目の前で、ホッパーはなんとも悔しがるような素振りを見せているではないか。となると、勘の鋭い部下はピンと来てしまう。
「この声の主が、兄貴をこんな風にしやがった魔族ってわけですかい」
部下が声をかけるが、ホッパーはすぐには答えない。答えやしないが、その様子から悟ってしまったようだ。
「俺たちの敬愛するホッパー様をこのようにするとは……」
「魔族の奴め、許せないな!」
「探せ! 絶対この近くにいるはずだ!」
傭兵たちが声を上げ、警戒を強めながらも、ターゲットである魔族の少女を探して回る。
その状況がしばらく続く。
そして、一行は、ついに声の主であると思われる人影を発見する。
「あの黒髪、間違いない!」
「見つけたぞ、兄貴を酷い目に遭わせた魔女め!」
目の前には、少々薄汚れてはいるものの、全身が真っ黒で二本の触角を生やした少女が立っていた。
そう、まぎれもなく、それはかつて聖女候補と呼ばれていた少女である。
「てめえは許さねえ!」
「兄貴の痛み、苦しみ……。お前にも味わわせてやる!」
クロナを見つけた傭兵たちは、討ち取らんとばかりに襲い掛かっていく。
両手に武器を構えた傭兵たちが迫ってきているというのに、当のクロナはとても落ち着いている。
「愚かな人たち……」
傭兵たちの振るう武器が、クロナに届くかどうかという時に、クロナは小さくつぶやく。
その瞬間だった。
ガキンッ……!
「うわっ!?」
「うべらっ!」
確実にクロナを捉えたはずの武器は、クロナに当たることなく弾き返されてしまっていた。
弾き飛ばされた傭兵たちは、まったく何が起きたのか分からず、弾かれた衝撃で地面に叩きつけられたまま混乱している。
「くそっ! 障壁が展開されているのか」
遅れてやって来たホッパーが、状況を分析して叫んでいる。
よく見てみると、クロナの目の前にはキラキラと輝く壁のようなものがうっすらと見える。
「私は聖女ですから、それは慈悲深いですよ」
「誰がてめえが聖女なんだ、この魔族めが!」
クロナがつぶやくと、傭兵たちが反論している。
「このまま帰るのであるならば、私はあなた方を見逃しましょう」
反論を一切無視して、クロナは続きをつぶやいている。
「へっ! やっと賞金首を見つけたんだ。このままおめおめと帰れるかってんだ」
「俺の体をこんなにしやがって……。てめえだけは、絶対に許しやしねえ!」
ホッパーたち傭兵たちは、クロナの言葉に従うつもりはまったくないようである。
あまりにも騒がしくするために、クロナは頬に手を当てながら大きなため息をついている。
「あらあら、本当に見逃してあげようと思いましたのにね。ふふっ、みなさん。ちょっとばかり、この人たちを懲らしめなければならないようですね」
クロナのその言葉とともに、周りからなんともおぞましい気配がホッパーたちに迫ってきた。
「な、なんだ……?」
「さっきまではまったく感じなかったのに、この寒気はいったい何なんだ……」
傭兵たちが急に震え始めている。
よく周りを見てみると、何か得体の知れないものが、じわじわと自分たちを取り囲んでいく様子が目に入る。
「私はとても慈悲深いです。あなた方の勇気は認め、攻撃されても私は一切手を出しません」
胸の前で両手を組みながら、クロナはホッパーたちに告げる。その表情はにっこりと笑顔である。
「ですが、彼らはどうでしょうかね……。さあ、あなたたち、遊んであげなさい」
「ギギギギ……」
周りから姿を見せたのは、魔物の群れである。スチールアントにアサシンスパイダー、キラーホーネットまでいる。
なんということだろうか。傭兵たちは完全に包囲されていたのだ。
「ひ、ひっ!」
「危険種の魔物までいやがる!」
「お、おれは死にたくねえ……!」
傭兵たちは危険な魔物たちを前に震え上がっている。
「さあ、追いかけっこの始まりです。無事に逃げ切ってみせて下さいね。ふふふふ……」
クロナがにっこりと微笑んで宣言すると、魔物たちが一斉に傭兵たちに向かって飛び掛かっていく。
「ひいいっ!」
「ぎゃああーっ! おがあぢゃん……!」
魔物たちの群れに襲われた傭兵たちは、みるみるうちに無残な姿へと変わっていく。
ホッパーも抵抗を見せたものの、自分が四肢を砕かれたスチールアントよりも強い魔物に囲まれては、とても太刀打ちができるものではなかった。
「くそおおおおっ! 魔女めがああぁぁっ!!」
クロナが冷たい笑みを浮かべて見守る中、ホッパーたち傭兵団は魔物の襲撃によって全滅してしまったのであった。
「あはは、あははははははっ!」
魔物たちのはるか後方で様子を見守っていたクロナの不気味な笑い声が、名もなき廃墟に響き渡るのだった。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
ホッパーたちは、廃墟の中を歩き始める。
「まったく、なんだっていうんだ、ここは……」
こんな人の来なさそうなところに廃墟があるために、ホッパーたちはかなりの警戒を強めている。
「ふふふふ……」
ホッパーたちの耳に、突如として少女の笑い声が聞こえてくる。
声を聞いた瞬間に、ホッパーがぎりっと歯を食いしばっている。
「兄貴、どうしやしたんで?」
「くそっ、この声は……」
部下である傭兵の一人が、気になってホッパーに声をかける。
その部下の目の前で、ホッパーはなんとも悔しがるような素振りを見せているではないか。となると、勘の鋭い部下はピンと来てしまう。
「この声の主が、兄貴をこんな風にしやがった魔族ってわけですかい」
部下が声をかけるが、ホッパーはすぐには答えない。答えやしないが、その様子から悟ってしまったようだ。
「俺たちの敬愛するホッパー様をこのようにするとは……」
「魔族の奴め、許せないな!」
「探せ! 絶対この近くにいるはずだ!」
傭兵たちが声を上げ、警戒を強めながらも、ターゲットである魔族の少女を探して回る。
その状況がしばらく続く。
そして、一行は、ついに声の主であると思われる人影を発見する。
「あの黒髪、間違いない!」
「見つけたぞ、兄貴を酷い目に遭わせた魔女め!」
目の前には、少々薄汚れてはいるものの、全身が真っ黒で二本の触角を生やした少女が立っていた。
そう、まぎれもなく、それはかつて聖女候補と呼ばれていた少女である。
「てめえは許さねえ!」
「兄貴の痛み、苦しみ……。お前にも味わわせてやる!」
クロナを見つけた傭兵たちは、討ち取らんとばかりに襲い掛かっていく。
両手に武器を構えた傭兵たちが迫ってきているというのに、当のクロナはとても落ち着いている。
「愚かな人たち……」
傭兵たちの振るう武器が、クロナに届くかどうかという時に、クロナは小さくつぶやく。
その瞬間だった。
ガキンッ……!
「うわっ!?」
「うべらっ!」
確実にクロナを捉えたはずの武器は、クロナに当たることなく弾き返されてしまっていた。
弾き飛ばされた傭兵たちは、まったく何が起きたのか分からず、弾かれた衝撃で地面に叩きつけられたまま混乱している。
「くそっ! 障壁が展開されているのか」
遅れてやって来たホッパーが、状況を分析して叫んでいる。
よく見てみると、クロナの目の前にはキラキラと輝く壁のようなものがうっすらと見える。
「私は聖女ですから、それは慈悲深いですよ」
「誰がてめえが聖女なんだ、この魔族めが!」
クロナがつぶやくと、傭兵たちが反論している。
「このまま帰るのであるならば、私はあなた方を見逃しましょう」
反論を一切無視して、クロナは続きをつぶやいている。
「へっ! やっと賞金首を見つけたんだ。このままおめおめと帰れるかってんだ」
「俺の体をこんなにしやがって……。てめえだけは、絶対に許しやしねえ!」
ホッパーたち傭兵たちは、クロナの言葉に従うつもりはまったくないようである。
あまりにも騒がしくするために、クロナは頬に手を当てながら大きなため息をついている。
「あらあら、本当に見逃してあげようと思いましたのにね。ふふっ、みなさん。ちょっとばかり、この人たちを懲らしめなければならないようですね」
クロナのその言葉とともに、周りからなんともおぞましい気配がホッパーたちに迫ってきた。
「な、なんだ……?」
「さっきまではまったく感じなかったのに、この寒気はいったい何なんだ……」
傭兵たちが急に震え始めている。
よく周りを見てみると、何か得体の知れないものが、じわじわと自分たちを取り囲んでいく様子が目に入る。
「私はとても慈悲深いです。あなた方の勇気は認め、攻撃されても私は一切手を出しません」
胸の前で両手を組みながら、クロナはホッパーたちに告げる。その表情はにっこりと笑顔である。
「ですが、彼らはどうでしょうかね……。さあ、あなたたち、遊んであげなさい」
「ギギギギ……」
周りから姿を見せたのは、魔物の群れである。スチールアントにアサシンスパイダー、キラーホーネットまでいる。
なんということだろうか。傭兵たちは完全に包囲されていたのだ。
「ひ、ひっ!」
「危険種の魔物までいやがる!」
「お、おれは死にたくねえ……!」
傭兵たちは危険な魔物たちを前に震え上がっている。
「さあ、追いかけっこの始まりです。無事に逃げ切ってみせて下さいね。ふふふふ……」
クロナがにっこりと微笑んで宣言すると、魔物たちが一斉に傭兵たちに向かって飛び掛かっていく。
「ひいいっ!」
「ぎゃああーっ! おがあぢゃん……!」
魔物たちの群れに襲われた傭兵たちは、みるみるうちに無残な姿へと変わっていく。
ホッパーも抵抗を見せたものの、自分が四肢を砕かれたスチールアントよりも強い魔物に囲まれては、とても太刀打ちができるものではなかった。
「くそおおおおっ! 魔女めがああぁぁっ!!」
クロナが冷たい笑みを浮かべて見守る中、ホッパーたち傭兵団は魔物の襲撃によって全滅してしまったのであった。
「あはは、あははははははっ!」
魔物たちのはるか後方で様子を見守っていたクロナの不気味な笑い声が、名もなき廃墟に響き渡るのだった。