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もし私が異世界転生したら

ー/ー



 Youtube企画で「もし私が異世界転生したら」ということで異世界転生したエリシア。



 異世界に転生したエリシアは、さっそく動画の撮影を開始した。



「そうですわね……じゃあ恒例のアレ、やってみましょう。」



 彼女は半笑いを浮かべながら、軽い調子で唱えた。



「ステータスオープン!」



 目の前に浮かび上がったステータス画面には、膨大な情報がぎっしりと詰まっている。しかし、エリシアは一瞥しただけでそっけなく言い放った。



「ま、基本放置ですわ。こういうのって後半になると飾りみたいなもんですし。」



 彼女の言葉と共に、画面の片隅に浮かび上がった文字——

【異世界ポイント:ステータスは飾り】



 エリシアは平然とした顔でその場を後にし、次の企画に移る準備を始めた。



 遠くで激しい争いの音が響いている。



 エリシアは音のする方向に向かって足を進め、状況を確認するために少し離れた場所から覗き込んだ。



 そこには、商人の馬車がゴブリンたちに襲われている光景が広がっていた。商人たちは必死に抵抗しているが、数の上で圧倒されつつある。



「よし!助けますわよ!」



 一瞬力強くそう言いかけたエリシアだったが、すぐに表情を変え、冷静な声で続けた。



「——と思うの素人ですわ!」



 彼女は物陰に隠れ、じっと状況を観察する。



「ちゃんとどっちを助けるか、あるいはどっちも見捨てるか、見極めないといけませんわね。」



 真剣な目で状況を見つめながら、慎重に判断しようとするエリシア。その横には、異世界の法則を記したメッセージが浮かび上がった。

【異世界ポイント:安易に助けない!】



 エリシアは腕を組み、しばらくその光景を冷静に見守り続けた。



 結局、エリシアは商人を助けた。



 というのも、ゴブリンたちが何のアイテムも持っていなかったため、彼らを倒しても得るものがなかったからだ。

 で、なんやかんやあって、助けた商人の馬車に乗り込み、近くの街まで向かうことに。



 道中、商人が感心したように口を開く。

「お嬢さん、強いね。どっから来たんだい?」



 エリシアはスマホを弄りながら、適当に返事をした。

「あ〜、その辺ですわね。」



 そして次の瞬間、彼女は驚きの行動に出た。



「——というわけで、売り上げ全部くださいましね。」



 商人は驚愕の声を上げる。

「えええぇ!?」



 エリシアは平然とした顔で続ける。

「あのまま助けなかったら、あなたは死んでいたのですから。売り上げを渡すくらい安いものだと思いますけれど?」



 商人はしばし言葉を失い、最終的に渋々袋を差し出した。



 その場には、異世界の法則を記したメッセージが再び浮かび上がった。

【異世界ポイント:命も金も重い!】



 エリシアは袋を受け取りながら、満足げに微笑むのだった。



 街に着いたエリシアは、賑わうサンセット街を悠然と歩いていた。



 大通りの両脇には露店が立ち並び、串焼き屋台からは香ばしい煙が立ち上っている。観光客たちは楽しげにその串焼きを頬張りながら通りを行き交っていた。

 エリシアは露店を横目に冷ややかに呟く。



「私も食べたことありますけど、あれねぇ、ゴミみたいな肉ですわ。」



 その発言に近くを歩いていた人々がぎょっとして振り返るが、彼女は気にするそぶりもなく続けた。



「肉屋からただ同然のクズ肉を買ってきて、観光客に売りつけてますのよ。もう見ただけでわかりますわ。」



 そう言い切ると、エリシアは露店に興味を失ったように視線を外した。



 通りの上には異世界の法則を記したメッセージが浮かび上がる。

【異世界ポイント:串焼きの屋台はボッタクリ!】



 観光客たちが賑わう中、エリシアだけが冷めた表情で通りを歩き続けた。



 歩いていると、大通りの片隅でガラの悪い男たちが一人の少女に絡んでいる場面が目に入った。



「かわいいね〜俺と一緒にいいことしようぜ!」

「そうだぜ、一夜限りのアバンチュ〜ル!」



 少女は怯えた表情で、声を震わせながら拒絶している。



「やめてください……そんな……。」



 その光景を見たエリシアは、何をするでもなくその場に立ち止まった。

 まるでコメディでも見ているような、少し面白そうな顔を浮かべながら、腕を組んで傍観している。



 すると、若い冒険者の男が少女に近寄り、勇敢に制止した。

「何してんだ!やめてやれよ!」



 チンピラの一人が不快そうに睨み返す。

「なんだおめえ?」



 もう一人の男も挑発的に叫ぶ。

「そうだよ!インタ〜セプトだぜ!」



 一人のチンピラが殴りかかろうと拳を振り上げた。

 しかし、冒険者はその攻撃を素早くかわし、アビリティ「二連撃」を発動。拳のような輝きが一閃し、二発の連続攻撃がチンピラに命中する。



「ぐわぁ〜!」



 吹っ飛ばされたチンピラは地面に転がり、もう一人も怯んだ表情で立ちすくむ。冒険者は体勢を整えながら、挑発的に二人を睨みつけた。



 少女は冒険者に駆け寄り、その腕に抱きついた。

「ありがとう……私、怖かった。」



 冒険者は優しく肩を叩きながら答える。

「大丈夫だ。気をつけなよ。」



 感動的な場面のように見えたが、エリシアの目は別のものを捉えていた。



(……ふふ、見逃しませんわ。)



 少女が抱きつく瞬間、冒険者のポケットから何かを抜き取ったのだ。



 その手の動きは素早く、周囲には気づかれないよう巧妙だった。



 冒険者が去っていくと、少女はなぜか倒れていたチンピラたちの方へ向かう。そして、三人で盗んだ物を物色しながら笑い合っているではないか。



 エリシアはその光景を物陰から半笑いで眺め、冷静に呟く。



「悪人に老若男女なんて関係ありませんわね。」



 頭上には異世界の法則が浮かび上がる。

【異世界ポイント:悪人に老若男女関係なし!】



 エリシアはその場を立ち去るでもなく、しばらく微笑みながら彼らのやり取りを観察していた。



 エリシアは、少女とチンピラたちのやり取りを観察しながら考えを巡らせていた。



(なるほど……相手が弱ければ、そのままボコボコにして持ち物を奪う。強ければ、負けたふりをして仕上げに少女が盗む……隙を見せぬ二段構えですわね。)



 彼女の目は、目の前で繰り広げられる悪行のプロフェッショナルぶりに興味を示しているようだった。



 「あ、異世界といえばアレですわね!」



 エリシアはそう呟きながら、冒険者ギルドの建物にたどり着いた。



 重いドアを開けると、中からチンピラたちの喧騒が響いてくる。昼間から酒を飲み、戦利品を巡って喧嘩。その様子を見ながら、他の連中が誰が勝つか賭けをしているというカオスな光景だ。



 エリシアは一瞬だけその光景を眺めた後、受付へ向かい、淡々と話を切り出した。

「試しに登録してみましょう。」



 受付嬢はにこやかに応じ、エリシアに一枚のカードを手渡す。

「ここに血を垂らすと、あなたの情報が登録されます。」



 エリシアはカードをじっと見つめながら首を傾げた。



「はい、来ましたわ!この……えっと……謎のカード!いつも思いますけど、どういった原理なんでしょうかね?まあいいですけど。」



 彼女はカードを掲げながら淡々と語る。その上にはまたもや異世界の法則が浮かび上がった。

【異世界ポイント:血で全部わかる謎のカード】



 エリシアは微笑みながら、何のためらいもなくカードに指先から血を垂らした。



 「はい、ドン・タコス様ですね。」



 受付嬢がカードを確認しながら微笑む。



「はい。」



 エリシアは素直に答えたが、その顔には微妙に引きつった笑みが浮かんでいる。

 横を向き、こっそりカメラに向かって小声で話しかけた。



「ま、今日だけですから。」



 その言葉の意味は、視聴者だけが知る真実だった。

 実はエリシア、異世界の謎技術を逆手に取り、自らの血液に偽名を付与するという荒技を使っていたのだ。



 エリシアが受付嬢から冒険者ギルドの説明を聞く。受付嬢は親切に、しかしとにかく長い説明を始めた。

「まず、冒険者ギルドにはランク制度があります。冒険者は全員、最初はGクラスから始まりまして、ここからF、E、D、C、B、A、そしてSクラスへと昇格していきます。Sクラスはごく限られた者だけがなれる最高ランクで、その実力と実績は計り知れません。」

 受付嬢は満面の笑みを浮かべながら、さらに続ける。

「依頼にはそれぞれ難易度が設定されておりまして、Gクラスの冒険者はGクラスの依頼しか受けることができません。Fクラス以上の依頼を受けるには、まずFクラスに昇級しなければなりません。」



 エリシアはすでに半分聞き流しながらも、相槌を打つ。

「ええ、なるほどですわね。」

 しかし、受付嬢は止まらない。



「昇級の条件として、一定回数の依頼を成功させる必要があります。この成功回数は依頼の難易度や種類によって異なりますが、例えばGクラスからFクラスに昇級するには、基本的に10回程度の依頼成功が求められます。」

 エリシアがスマホを触り始めたのも気づかず、受付嬢は説明を続ける。

「昇級条件を満たした場合、次は昇格試験を受けていただきます。この試験の内容ですが、これもランクによって異なり、基本的には実技と筆記、場合によっては模擬戦闘や依頼のシミュレーションが課されます。試験はギルドが設けた特定の日時に実施されますので、スケジュールの調整が必要です。」

「さらに、昇級した後も一定期間内に依頼を成功させなければランクが下がることもございます。そのため、定期的に依頼を受けていただくことをお勧めします。」

 ここで一息ついた受付嬢は、満足げに微笑みながらまとめに入った。

「つまり、冒険者ランクの昇級には実績と試験が必要であり、それを維持するには日々の努力が欠かせないということです!」



 エリシアはふと顔を上げて言った。

「……ええ、とてもわかりやすい説明でしたわ。ありがとうございます。」



(長すぎて一切頭に入ってませんけど。)



 エリシアは受付嬢の話を聞き終えたあと、微妙な笑みを浮かべながらカメラに向かって話しかけた。



「はい!これが異世界名物『とんでも無く長いシステム説明』ですわ。」




 その声には若干の疲労感が滲んでいる。

 異世界における長い説明は、冒険者ギルドに限らない。



 主人公のステータス画面が登場するたびに細かい数値の説明が延々と続き、魔法の原理を語り始めると専門書顔負けの理論が展開される。

 さらに、通貨の価値やレート、市場での流通量について語り始めると、現地の経済学講座が開講されるかのようだ。

 地理や街の情勢に至っては、王国の歴史や文化、さらには周辺国との関係性まで話が及び、聞き手の意識を軽く超越していく。



 エリシアは深くため息をつきながら、横に浮かび上がる異世界法則を眺めた。

【異世界ポイント:無駄に長い説明】



「まぁ、これも異世界らしさの一つですわね。」

 そう言って、エリシアは再び笑みを浮かべた。



 「とまあ、今日はこの辺にしておきましょうかね。」



 エリシアはカメラに向かって締めの一言を言いながら、軽く手を振った。



「じゃ、私は少年の男娼でも買って楽しみますか。皆さんもお好きに。あ、ほどほどにしてくださいましね〜。」



 そう言い残し、エリシアはカメラを止めてその場を後にした。



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 Youtube企画で「もし私が異世界転生したら」ということで異世界転生したエリシア。
 異世界に転生したエリシアは、さっそく動画の撮影を開始した。
「そうですわね……じゃあ恒例のアレ、やってみましょう。」
 彼女は半笑いを浮かべながら、軽い調子で唱えた。
「ステータスオープン!」
 目の前に浮かび上がったステータス画面には、膨大な情報がぎっしりと詰まっている。しかし、エリシアは一瞥しただけでそっけなく言い放った。
「ま、基本放置ですわ。こういうのって後半になると飾りみたいなもんですし。」
 彼女の言葉と共に、画面の片隅に浮かび上がった文字——
【異世界ポイント:ステータスは飾り】
 エリシアは平然とした顔でその場を後にし、次の企画に移る準備を始めた。
 遠くで激しい争いの音が響いている。
 エリシアは音のする方向に向かって足を進め、状況を確認するために少し離れた場所から覗き込んだ。
 そこには、商人の馬車がゴブリンたちに襲われている光景が広がっていた。商人たちは必死に抵抗しているが、数の上で圧倒されつつある。
「よし!助けますわよ!」
 一瞬力強くそう言いかけたエリシアだったが、すぐに表情を変え、冷静な声で続けた。
「——と思うの素人ですわ!」
 彼女は物陰に隠れ、じっと状況を観察する。
「ちゃんとどっちを助けるか、あるいはどっちも見捨てるか、見極めないといけませんわね。」
 真剣な目で状況を見つめながら、慎重に判断しようとするエリシア。その横には、異世界の法則を記したメッセージが浮かび上がった。
【異世界ポイント:安易に助けない!】
 エリシアは腕を組み、しばらくその光景を冷静に見守り続けた。
 結局、エリシアは商人を助けた。
 というのも、ゴブリンたちが何のアイテムも持っていなかったため、彼らを倒しても得るものがなかったからだ。
 で、なんやかんやあって、助けた商人の馬車に乗り込み、近くの街まで向かうことに。
 道中、商人が感心したように口を開く。
「お嬢さん、強いね。どっから来たんだい?」
 エリシアはスマホを弄りながら、適当に返事をした。
「あ〜、その辺ですわね。」
 そして次の瞬間、彼女は驚きの行動に出た。
「——というわけで、売り上げ全部くださいましね。」
 商人は驚愕の声を上げる。
「えええぇ!?」
 エリシアは平然とした顔で続ける。
「あのまま助けなかったら、あなたは死んでいたのですから。売り上げを渡すくらい安いものだと思いますけれど?」
 商人はしばし言葉を失い、最終的に渋々袋を差し出した。
 その場には、異世界の法則を記したメッセージが再び浮かび上がった。
【異世界ポイント:命も金も重い!】
 エリシアは袋を受け取りながら、満足げに微笑むのだった。
 街に着いたエリシアは、賑わうサンセット街を悠然と歩いていた。
 大通りの両脇には露店が立ち並び、串焼き屋台からは香ばしい煙が立ち上っている。観光客たちは楽しげにその串焼きを頬張りながら通りを行き交っていた。
 エリシアは露店を横目に冷ややかに呟く。
「私も食べたことありますけど、あれねぇ、ゴミみたいな肉ですわ。」
 その発言に近くを歩いていた人々がぎょっとして振り返るが、彼女は気にするそぶりもなく続けた。
「肉屋からただ同然のクズ肉を買ってきて、観光客に売りつけてますのよ。もう見ただけでわかりますわ。」
 そう言い切ると、エリシアは露店に興味を失ったように視線を外した。
 通りの上には異世界の法則を記したメッセージが浮かび上がる。
【異世界ポイント:串焼きの屋台はボッタクリ!】
 観光客たちが賑わう中、エリシアだけが冷めた表情で通りを歩き続けた。
 歩いていると、大通りの片隅でガラの悪い男たちが一人の少女に絡んでいる場面が目に入った。
「かわいいね〜俺と一緒にいいことしようぜ!」
「そうだぜ、一夜限りのアバンチュ〜ル!」
 少女は怯えた表情で、声を震わせながら拒絶している。
「やめてください……そんな……。」
 その光景を見たエリシアは、何をするでもなくその場に立ち止まった。
 まるでコメディでも見ているような、少し面白そうな顔を浮かべながら、腕を組んで傍観している。
 すると、若い冒険者の男が少女に近寄り、勇敢に制止した。
「何してんだ!やめてやれよ!」
 チンピラの一人が不快そうに睨み返す。
「なんだおめえ?」
 もう一人の男も挑発的に叫ぶ。
「そうだよ!インタ〜セプトだぜ!」
 一人のチンピラが殴りかかろうと拳を振り上げた。
 しかし、冒険者はその攻撃を素早くかわし、アビリティ「二連撃」を発動。拳のような輝きが一閃し、二発の連続攻撃がチンピラに命中する。
「ぐわぁ〜!」
 吹っ飛ばされたチンピラは地面に転がり、もう一人も怯んだ表情で立ちすくむ。冒険者は体勢を整えながら、挑発的に二人を睨みつけた。
 少女は冒険者に駆け寄り、その腕に抱きついた。
「ありがとう……私、怖かった。」
 冒険者は優しく肩を叩きながら答える。
「大丈夫だ。気をつけなよ。」
 感動的な場面のように見えたが、エリシアの目は別のものを捉えていた。
(……ふふ、見逃しませんわ。)
 少女が抱きつく瞬間、冒険者のポケットから何かを抜き取ったのだ。
 その手の動きは素早く、周囲には気づかれないよう巧妙だった。
 冒険者が去っていくと、少女はなぜか倒れていたチンピラたちの方へ向かう。そして、三人で盗んだ物を物色しながら笑い合っているではないか。
 エリシアはその光景を物陰から半笑いで眺め、冷静に呟く。
「悪人に老若男女なんて関係ありませんわね。」
 頭上には異世界の法則が浮かび上がる。
【異世界ポイント:悪人に老若男女関係なし!】
 エリシアはその場を立ち去るでもなく、しばらく微笑みながら彼らのやり取りを観察していた。
 エリシアは、少女とチンピラたちのやり取りを観察しながら考えを巡らせていた。
(なるほど……相手が弱ければ、そのままボコボコにして持ち物を奪う。強ければ、負けたふりをして仕上げに少女が盗む……隙を見せぬ二段構えですわね。)
 彼女の目は、目の前で繰り広げられる悪行のプロフェッショナルぶりに興味を示しているようだった。
 「あ、異世界といえばアレですわね!」
 エリシアはそう呟きながら、冒険者ギルドの建物にたどり着いた。
 重いドアを開けると、中からチンピラたちの喧騒が響いてくる。昼間から酒を飲み、戦利品を巡って喧嘩。その様子を見ながら、他の連中が誰が勝つか賭けをしているというカオスな光景だ。
 エリシアは一瞬だけその光景を眺めた後、受付へ向かい、淡々と話を切り出した。
「試しに登録してみましょう。」
 受付嬢はにこやかに応じ、エリシアに一枚のカードを手渡す。
「ここに血を垂らすと、あなたの情報が登録されます。」
 エリシアはカードをじっと見つめながら首を傾げた。
「はい、来ましたわ!この……えっと……謎のカード!いつも思いますけど、どういった原理なんでしょうかね?まあいいですけど。」
 彼女はカードを掲げながら淡々と語る。その上にはまたもや異世界の法則が浮かび上がった。
【異世界ポイント:血で全部わかる謎のカード】
 エリシアは微笑みながら、何のためらいもなくカードに指先から血を垂らした。
 「はい、ドン・タコス様ですね。」
 受付嬢がカードを確認しながら微笑む。
「はい。」
 エリシアは素直に答えたが、その顔には微妙に引きつった笑みが浮かんでいる。
 横を向き、こっそりカメラに向かって小声で話しかけた。
「ま、今日だけですから。」
 その言葉の意味は、視聴者だけが知る真実だった。
 実はエリシア、異世界の謎技術を逆手に取り、自らの血液に偽名を付与するという荒技を使っていたのだ。
 エリシアが受付嬢から冒険者ギルドの説明を聞く。受付嬢は親切に、しかしとにかく長い説明を始めた。
「まず、冒険者ギルドにはランク制度があります。冒険者は全員、最初はGクラスから始まりまして、ここからF、E、D、C、B、A、そしてSクラスへと昇格していきます。Sクラスはごく限られた者だけがなれる最高ランクで、その実力と実績は計り知れません。」
 受付嬢は満面の笑みを浮かべながら、さらに続ける。
「依頼にはそれぞれ難易度が設定されておりまして、Gクラスの冒険者はGクラスの依頼しか受けることができません。Fクラス以上の依頼を受けるには、まずFクラスに昇級しなければなりません。」
 エリシアはすでに半分聞き流しながらも、相槌を打つ。
「ええ、なるほどですわね。」
 しかし、受付嬢は止まらない。
「昇級の条件として、一定回数の依頼を成功させる必要があります。この成功回数は依頼の難易度や種類によって異なりますが、例えばGクラスからFクラスに昇級するには、基本的に10回程度の依頼成功が求められます。」
 エリシアがスマホを触り始めたのも気づかず、受付嬢は説明を続ける。
「昇級条件を満たした場合、次は昇格試験を受けていただきます。この試験の内容ですが、これもランクによって異なり、基本的には実技と筆記、場合によっては模擬戦闘や依頼のシミュレーションが課されます。試験はギルドが設けた特定の日時に実施されますので、スケジュールの調整が必要です。」
「さらに、昇級した後も一定期間内に依頼を成功させなければランクが下がることもございます。そのため、定期的に依頼を受けていただくことをお勧めします。」
 ここで一息ついた受付嬢は、満足げに微笑みながらまとめに入った。
「つまり、冒険者ランクの昇級には実績と試験が必要であり、それを維持するには日々の努力が欠かせないということです!」
 エリシアはふと顔を上げて言った。
「……ええ、とてもわかりやすい説明でしたわ。ありがとうございます。」
(長すぎて一切頭に入ってませんけど。)
 エリシアは受付嬢の話を聞き終えたあと、微妙な笑みを浮かべながらカメラに向かって話しかけた。
「はい!これが異世界名物『とんでも無く長いシステム説明』ですわ。」
 その声には若干の疲労感が滲んでいる。
 異世界における長い説明は、冒険者ギルドに限らない。
 主人公のステータス画面が登場するたびに細かい数値の説明が延々と続き、魔法の原理を語り始めると専門書顔負けの理論が展開される。
 さらに、通貨の価値やレート、市場での流通量について語り始めると、現地の経済学講座が開講されるかのようだ。
 地理や街の情勢に至っては、王国の歴史や文化、さらには周辺国との関係性まで話が及び、聞き手の意識を軽く超越していく。
 エリシアは深くため息をつきながら、横に浮かび上がる異世界法則を眺めた。
【異世界ポイント:無駄に長い説明】
「まぁ、これも異世界らしさの一つですわね。」
 そう言って、エリシアは再び笑みを浮かべた。
 「とまあ、今日はこの辺にしておきましょうかね。」
 エリシアはカメラに向かって締めの一言を言いながら、軽く手を振った。
「じゃ、私は少年の男娼でも買って楽しみますか。皆さんもお好きに。あ、ほどほどにしてくださいましね〜。」
 そう言い残し、エリシアはカメラを止めてその場を後にした。