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第14話:最終クライマックス、アパートは異世界と接続す

ー/ー



 1. 結び目の暴走

 変異植物の撃退から数時間後。亮太の部屋は静まり返っていたが、その静寂は異常だった。ルル、ヒヨリ、エラシア、テアの四人は、リビングの中央で顔を見合わせていた。

「次元の波動が……収束しません。むしろ、加速しています」

 テアが額の汗を拭いながら言った。彼女のセンサーは、地面から発される異常な魔力レベルを示していた。

「山田さんの無意味な特訓の風が、かえって結び目を刺激したのかもしれないであります!」

 ルルは震える声で告げた。

「王の魔力が暴走している……いや、魔力というより、次元そのものがこのアパートを飲み込み始めている」

 ヒヨリは鋭く指摘した。窓の外の景色が、まるで水彩画のように滲み始めている。

 亮太は自分の両手を見た。掌から、結び目の光が再び漏れ始めている。その光は、これまでよりも遥かに強く、熱を帯びていた。

「僕が……僕の力が暴走してるのか? どうしたらいいんだ!」

「夫よ、落ち着け! このままでは、アパート全体が異世界と融合してしまう!」

エラシアが剣を抜き、窓の外の景色を睨みつけた。

 次の瞬間、アパート全体が激しい振動に襲われた。テアが張っていた岩盤の防壁は崩壊し、2LDKの床が文字通り真っ二つに割れた。

 割れた床の下からは、光を放つ巨大な魔力体が姿を現した。それは、先の変異植物を統括する、巨大な魔獣だった。アパートは完全に異世界と接続されてしまったのだ。

「フン! やはり陰謀だったのね!」

 玄関から、消火器を抱えた楓さんが、血相を変えて飛び込んできた。彼女は、この状況をヒロインたちによる「亮太を連れ去るための最終手段」だと確信していた。

_____________________
 2. 亮太の決断と五人の共闘

「王! この魔獣を倒すしかありません! でないと、この世界も氷雪郷も、すべて崩壊します!」

 ヒヨリの必死の叫びが響く中、亮太は楓さんを見た。

「楓さん、やはり逃げてください! もう、ここじゃなくていいから、遠くに!」

「逃げる? 馬鹿言わないでください! 私は、新人の頃、あなたが私を助けてくれたあの日から……ずっと、ずっと佐倉先輩が好きでした!」

 楓は消火器を構え、震えながらも一歩も引かなかった。その瞳には、恐怖ではなく、長年の想いが宿っていた。

 亮太は、その告白に全身の血の気が引いた。

「そ、そ、そうだったの? 楓さん、いや、ずっと隣に住んでたのに、そんなそぶり、全然なかったから……」

 楓は、亮太のこの言葉に、絶望と愛しさが入り混じった表情を浮かべた。

「……にぶちん! あなたは本当に、私どころか自分の家の次元の歪みにも気づかないくらいの、世紀の鈍感さよ!」

 楓は叫んだ。だが、その声はすぐに決意に変わる。

「でも、それでいい! 私はここで、先輩の日常(ここ)を護ります! 先輩を、どこにも行かせません!」

 亮太は、楓さんの目を見た。彼女の瞳に映るのは、恐怖ではなく、自分への純粋な愛情と、この世界に繋ぎ止めようとする強い意志だった。

(そうか……僕が護りたいのは、フィギュアや賃貸契約だけじゃない。この、楓さんが護ろうとしてくれる、この場所での、カオスで、でも、温かい日常だ!)

 亮太は強く拳を握りしめた。

「楓さん……ありがとう」

 彼の口から出たのは、初めて彼女の想いを受け入れた感謝の言葉だった。

「ルル! 僕の力を最大限に増幅してくれ! テア! ヒヨリ! エラシア!お前たちの属性を、全てこのアパート全体に張り巡らせるんだ!」

「了解であります! マスター!」

 ルルは魔力を解放し、ピンクの光の奔流が亮太を取り巻いた。ヒロインたちは、亮太の指示通り、それぞれの属性の魔力を2LDKの四方の壁と床に流し込み始めた。

「風よ、このアパートのすべての窓と壁を、風の結界とせよ!」

「大地の力で、割れた床の亀裂を、一瞬でも硬化させます!」

「炎熱魔力で、空間の歪みを焼き切れ!」

「凍てつく冷気で、魔獣の動きを鈍らせる!」

 四属性の魔力が、亮太の「結び目の力」を核として融合した。

_____________________
 3. マドンナの勇気と山田の凱歌

 魔獣が巨大な爪を振り上げ、亮太たちに襲いかかった、その瞬間。

「邪魔させません!」

 楓さんが、魔獣の爪に向かって、消火器の中身を全噴射した。

 白い粉末が魔獣の視界を塞ぎ、動きが一瞬止まった。

「今です! これが人間の時間稼ぎです!」

 楓は叫んだ。

「楓さん!」

 亮太は、この一瞬の隙を逃さなかった。

(ルル、ヒヨリ、エラシア、テア……そして、楓さんの『愛と勇気』の力!これが、この世界の、僕の五つ目の属性だ!)

「いくぞ! 五属性よ!」

 亮太は全ての魔力を一つに束ね、極限まで増幅させた。その光は、アパートを、そして空を覆い尽くした。

「世界を、護る!」

 放たれた五属性の極大の協力技は、魔獣を直撃し、巨大な魔獣は断末魔の叫びとともに霧散した。割れた床の亀裂は閉じられ、窓の外の景色は、再び元の平凡な住宅街に戻った。

 結び目の危機は去った。しかし、亮太は膝から崩れ落ちた。

 その時、天井から響く声が、勝利を祝った。

「フハハハハ! 見たか! 俺の『超大奥義・静止の術』が、魔獣の動きを止めたのだ! 俺こそが、この世界の真の救世主!」

 山田さんは、魔獣の騒ぎを「自分の特訓が成功し、世界を救った」と勘違いし、高らかな凱歌をあげたのだった。

 亮太は力尽きたが、その隣では楓さんが消火器を抱えたまま、安堵の表情で亮太に寄り添っていた。

「佐倉先輩……あなたは、本当に私の世界を護ってくれた……」




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 1. 結び目の暴走
 変異植物の撃退から数時間後。亮太の部屋は静まり返っていたが、その静寂は異常だった。ルル、ヒヨリ、エラシア、テアの四人は、リビングの中央で顔を見合わせていた。
「次元の波動が……収束しません。むしろ、加速しています」
 テアが額の汗を拭いながら言った。彼女のセンサーは、地面から発される異常な魔力レベルを示していた。
「山田さんの無意味な特訓の風が、かえって結び目を刺激したのかもしれないであります!」
 ルルは震える声で告げた。
「王の魔力が暴走している……いや、魔力というより、次元そのものがこのアパートを飲み込み始めている」
 ヒヨリは鋭く指摘した。窓の外の景色が、まるで水彩画のように滲み始めている。
 亮太は自分の両手を見た。掌から、結び目の光が再び漏れ始めている。その光は、これまでよりも遥かに強く、熱を帯びていた。
「僕が……僕の力が暴走してるのか? どうしたらいいんだ!」
「夫よ、落ち着け! このままでは、アパート全体が異世界と融合してしまう!」
エラシアが剣を抜き、窓の外の景色を睨みつけた。
 次の瞬間、アパート全体が激しい振動に襲われた。テアが張っていた岩盤の防壁は崩壊し、2LDKの床が文字通り真っ二つに割れた。
 割れた床の下からは、光を放つ巨大な魔力体が姿を現した。それは、先の変異植物を統括する、巨大な魔獣だった。アパートは完全に異世界と接続されてしまったのだ。
「フン! やはり陰謀だったのね!」
 玄関から、消火器を抱えた楓さんが、血相を変えて飛び込んできた。彼女は、この状況をヒロインたちによる「亮太を連れ去るための最終手段」だと確信していた。
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 2. 亮太の決断と五人の共闘
「王! この魔獣を倒すしかありません! でないと、この世界も氷雪郷も、すべて崩壊します!」
 ヒヨリの必死の叫びが響く中、亮太は楓さんを見た。
「楓さん、やはり逃げてください! もう、ここじゃなくていいから、遠くに!」
「逃げる? 馬鹿言わないでください! 私は、新人の頃、あなたが私を助けてくれたあの日から……ずっと、ずっと佐倉先輩が好きでした!」
 楓は消火器を構え、震えながらも一歩も引かなかった。その瞳には、恐怖ではなく、長年の想いが宿っていた。
 亮太は、その告白に全身の血の気が引いた。
「そ、そ、そうだったの? 楓さん、いや、ずっと隣に住んでたのに、そんなそぶり、全然なかったから……」
 楓は、亮太のこの言葉に、絶望と愛しさが入り混じった表情を浮かべた。
「……にぶちん! あなたは本当に、私どころか自分の家の次元の歪みにも気づかないくらいの、世紀の鈍感さよ!」
 楓は叫んだ。だが、その声はすぐに決意に変わる。
「でも、それでいい! 私はここで、先輩の日常(ここ)を護ります! 先輩を、どこにも行かせません!」
 亮太は、楓さんの目を見た。彼女の瞳に映るのは、恐怖ではなく、自分への純粋な愛情と、この世界に繋ぎ止めようとする強い意志だった。
(そうか……僕が護りたいのは、フィギュアや賃貸契約だけじゃない。この、楓さんが護ろうとしてくれる、この場所での、カオスで、でも、温かい日常だ!)
 亮太は強く拳を握りしめた。
「楓さん……ありがとう」
 彼の口から出たのは、初めて彼女の想いを受け入れた感謝の言葉だった。
「ルル! 僕の力を最大限に増幅してくれ! テア! ヒヨリ! エラシア!お前たちの属性を、全てこのアパート全体に張り巡らせるんだ!」
「了解であります! マスター!」
 ルルは魔力を解放し、ピンクの光の奔流が亮太を取り巻いた。ヒロインたちは、亮太の指示通り、それぞれの属性の魔力を2LDKの四方の壁と床に流し込み始めた。
「風よ、このアパートのすべての窓と壁を、風の結界とせよ!」
「大地の力で、割れた床の亀裂を、一瞬でも硬化させます!」
「炎熱魔力で、空間の歪みを焼き切れ!」
「凍てつく冷気で、魔獣の動きを鈍らせる!」
 四属性の魔力が、亮太の「結び目の力」を核として融合した。
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 3. マドンナの勇気と山田の凱歌
 魔獣が巨大な爪を振り上げ、亮太たちに襲いかかった、その瞬間。
「邪魔させません!」
 楓さんが、魔獣の爪に向かって、消火器の中身を全噴射した。
 白い粉末が魔獣の視界を塞ぎ、動きが一瞬止まった。
「今です! これが人間の時間稼ぎです!」
 楓は叫んだ。
「楓さん!」
 亮太は、この一瞬の隙を逃さなかった。
(ルル、ヒヨリ、エラシア、テア……そして、楓さんの『愛と勇気』の力!これが、この世界の、僕の五つ目の属性だ!)
「いくぞ! 五属性よ!」
 亮太は全ての魔力を一つに束ね、極限まで増幅させた。その光は、アパートを、そして空を覆い尽くした。
「世界を、護る!」
 放たれた五属性の極大の協力技は、魔獣を直撃し、巨大な魔獣は断末魔の叫びとともに霧散した。割れた床の亀裂は閉じられ、窓の外の景色は、再び元の平凡な住宅街に戻った。
 結び目の危機は去った。しかし、亮太は膝から崩れ落ちた。
 その時、天井から響く声が、勝利を祝った。
「フハハハハ! 見たか! 俺の『超大奥義・静止の術』が、魔獣の動きを止めたのだ! 俺こそが、この世界の真の救世主!」
 山田さんは、魔獣の騒ぎを「自分の特訓が成功し、世界を救った」と勘違いし、高らかな凱歌をあげたのだった。
 亮太は力尽きたが、その隣では楓さんが消火器を抱えたまま、安堵の表情で亮太に寄り添っていた。
「佐倉先輩……あなたは、本当に私の世界を護ってくれた……」