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第13話:四属性の共闘、カオスな防衛線

ー/ー



 1. 緊張の共同戦線

 佐倉亮太の「カオスを管理する」という宣言から一夜明けた。2LDKは、依然として崩壊寸前ではあったが、亮太の微弱な「結び目の力」によって、ヒロインたちの魔力は安定し、これ以上の物理的破壊は起こっていない。

 リビングは、異世界から漏れ出した魔物の痕跡(小さな焦げ跡、氷の跡、砂の山)を前に、四属性会議の場となっていた。

「マスターが『次元の鍵』であることは理解しました。わたくしどもが争えば、マスターの魔力が乱れ、世界は崩壊します」

 ルルは真剣な表情で、ステッキを胸の前で組んだ。

「王の力は、我々の故郷を守るための最終手段。無益な奪い合いは、今は中止する」

 ヒヨリは冷静に同意し、エラシアを見た。

「フン。仕方あるまい。夫の命と、里の存続がかかっている。一時的な休戦は認めよう」

 エラシアは渋々、剣を鞘に収めた。

 テアは床に這いつくばりながら、センサーをいじっていた。

「佐倉ユウジ……いや、亮太。地下の亀裂は依然、不安定だ。共同作業が必要だ。私は『亀裂の硬化』を行う。お前たちの協力が必要だ」

 四人のヒロインが初めて、亮太を中心とした協力体制に入ったのだ。

 亮太は、この平和的な空気に逆に戸惑いを覚えた。

「えーと、つまり、僕がこの2LDKの『大家』兼『管理人』兼『世界の鍵』になったってことでいいのかな?とにかく、これ以上、騒音や破壊はナシだぞ!」

 その時、玄関のドアが勢いよく開いた。

「佐倉先輩! あなたを一人にはさせません!」

 神崎楓が、社内では絶対に見せない、戦闘服のようなデニムにスウェットというラフな服装で立っていた。その手には、ホームセンターで買ったらしい、大型の消火器が握られている。

「楓さん!? どうしたんですか、その恰好!」

「どうした、じゃないでしょう! 昨日、あなたの周りで何が起こったか、私は見ています! あなたはあの女たちの陰謀から私たちが護らなければなりません! この消火器は有毒ガスと炎上に対応するためです!」

 楓は、ヒロインたちの協力体制を「亮太を完全に孤立させ、異世界に連れ去るための新たな陰謀」だと完全に誤解していた。

_____________________
 2. 決戦!2LDK防衛戦

 その誤解の最中、アパートの庭全体が、突如として濃い緑色の霧に包まれた。

「な、なんだ、この魔力は……!? 濃すぎる!」

 ルルが声を上げた。

 テアのセンサーが激しく点滅した。

「マズイ! 地下の亀裂から、大規模な魔力体が漏れ出した! これは『古代種の変異植物』だ!」

 庭から、アパートの壁を突き破るように、巨大な蔦と、人の顔のような花が大量に生えてきた。

「マスター! 外の防御が突破されます!」

「王を庭に出すな!」

「夫は私が護る!」

 ヒロインたちは即座に戦闘態勢に入った。

 亮太は、四人に叫んだ。

「争うな! みんな、僕を連れ去るのが目的だろ!? だったら、僕を安全なこの世界に留めるために、協力するんだ!」

 ヒロインたちは、亮太の言葉にハッとした。

「……王の言う通りだ。今は共闘だ」

 ヒヨリが氷の槍を構えた。

「わたくしの増幅魔法で、みんなの力を束ねるであります!」

 ルルが叫ぶ。

 四属性による最初で最後の協力技が発動する。

「風よ、氷を纏え! 極寒の刃となれ!」

 エラシアが精霊魔法でヒヨリの冷気を集め、極低温の竜巻を発生させる。

「大地の盾よ、炎熱を封じ込めろ!」

 テアが地中から強固な岩盤の壁を隆起させ、その岩盤にルルが高熱の魔力をコーティング。魔力コーティングされた防壁を作り出した。

「今だ、マスター! 亀裂を無効化する力!」

 亮太は、自身の「結び目の力」をルルたちの攻撃に乗せるように、無属性の光を放出した。

_____________________
 3. 山田さんの勘違い貢献

 四属性の協力技が、庭の変異植物に襲いかかった、その時――。

 上階の山田さんの部屋から、突如として唸るような轟音が響き渡った。

「フハハハ! 見たか! 俺の『最終奥義・風属性超速循環ダンス』は、世界の危機に呼応して発動する! これで竜巻の威力は十倍だ!」

 山田さんは、窓が吹き飛んだままの部屋で、巨大な扇風機を全開にし、奇妙な雄叫びをあげながら盆踊りのような儀式的なダンスを踊っていた。その動作一つ一つが、アパートの窓から凄まじい物理的な風圧を生み出した。

「なっ!? この風の出力は、まさかあの男が……!」

 エラシアが驚愕した。

 エラシアの精霊魔法による竜巻は、山田さんの物理的な風圧によって劇的に増強された。極低温の竜巻は、予測をはるかに超える勢いとなり、変異植物の蔦を一瞬で凍結させ、細かく粉砕した。

「マスター、風の威力が跳ね上がったであります! これもすべてマスターの力を引き出す、山田さんの特訓の賜物であります!」

 ルルが的外れな分析をした。

「無意味な特訓が、結果的に王の勝利を助けた……皮肉なものだ」

 ヒヨリは冷静に分析しつつ、その馬鹿馬鹿しさに小さくため息をついた。

 極寒の竜巻が変異植物の蔦を粉砕し、ルルとテアの炎熱岩盤が植物の根の侵入を完全に防ぎ切った。

「やった……! 四人の協力技と、なぜか山田さんの特訓のおかげだ!」

 変異植物は一掃され、亮太の「結び目の力」によって亀裂も一時的に安定した。

 亮太は安堵したが、その背後で、消火器を抱えた楓さんが、ヒロインたちを警戒しつつ亮太に接近していた。

「佐倉先輩! 今です! あの特訓男の騒音まで加わって、カオスは限界を超えました! 私が護りますから!」

 楓は、戦闘の余波と騒音を前にしても、「亮太を危険なカオスから隔離する」という使命を諦めてはいなかった。彼女は、戦場を駆け抜けて、亮太を独占しようとする唯一の人間だった。

「待て、楓さん! 今は協力してるんだ! 逃げなくていい!」

 亮太の叫びは、またもや届かなかった。そして上階からは、「フハハハハ!」という山田さんの高笑いが、勝利の凱歌のように響き渡るのだった。




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 1. 緊張の共同戦線
 佐倉亮太の「カオスを管理する」という宣言から一夜明けた。2LDKは、依然として崩壊寸前ではあったが、亮太の微弱な「結び目の力」によって、ヒロインたちの魔力は安定し、これ以上の物理的破壊は起こっていない。
 リビングは、異世界から漏れ出した魔物の痕跡(小さな焦げ跡、氷の跡、砂の山)を前に、四属性会議の場となっていた。
「マスターが『次元の鍵』であることは理解しました。わたくしどもが争えば、マスターの魔力が乱れ、世界は崩壊します」
 ルルは真剣な表情で、ステッキを胸の前で組んだ。
「王の力は、我々の故郷を守るための最終手段。無益な奪い合いは、今は中止する」
 ヒヨリは冷静に同意し、エラシアを見た。
「フン。仕方あるまい。夫の命と、里の存続がかかっている。一時的な休戦は認めよう」
 エラシアは渋々、剣を鞘に収めた。
 テアは床に這いつくばりながら、センサーをいじっていた。
「佐倉ユウジ……いや、亮太。地下の亀裂は依然、不安定だ。共同作業が必要だ。私は『亀裂の硬化』を行う。お前たちの協力が必要だ」
 四人のヒロインが初めて、亮太を中心とした協力体制に入ったのだ。
 亮太は、この平和的な空気に逆に戸惑いを覚えた。
「えーと、つまり、僕がこの2LDKの『大家』兼『管理人』兼『世界の鍵』になったってことでいいのかな?とにかく、これ以上、騒音や破壊はナシだぞ!」
 その時、玄関のドアが勢いよく開いた。
「佐倉先輩! あなたを一人にはさせません!」
 神崎楓が、社内では絶対に見せない、戦闘服のようなデニムにスウェットというラフな服装で立っていた。その手には、ホームセンターで買ったらしい、大型の消火器が握られている。
「楓さん!? どうしたんですか、その恰好!」
「どうした、じゃないでしょう! 昨日、あなたの周りで何が起こったか、私は見ています! あなたはあの女たちの陰謀から私たちが護らなければなりません! この消火器は有毒ガスと炎上に対応するためです!」
 楓は、ヒロインたちの協力体制を「亮太を完全に孤立させ、異世界に連れ去るための新たな陰謀」だと完全に誤解していた。
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 2. 決戦!2LDK防衛戦
 その誤解の最中、アパートの庭全体が、突如として濃い緑色の霧に包まれた。
「な、なんだ、この魔力は……!? 濃すぎる!」
 ルルが声を上げた。
 テアのセンサーが激しく点滅した。
「マズイ! 地下の亀裂から、大規模な魔力体が漏れ出した! これは『古代種の変異植物』だ!」
 庭から、アパートの壁を突き破るように、巨大な蔦と、人の顔のような花が大量に生えてきた。
「マスター! 外の防御が突破されます!」
「王を庭に出すな!」
「夫は私が護る!」
 ヒロインたちは即座に戦闘態勢に入った。
 亮太は、四人に叫んだ。
「争うな! みんな、僕を連れ去るのが目的だろ!? だったら、僕を安全なこの世界に留めるために、協力するんだ!」
 ヒロインたちは、亮太の言葉にハッとした。
「……王の言う通りだ。今は共闘だ」
 ヒヨリが氷の槍を構えた。
「わたくしの増幅魔法で、みんなの力を束ねるであります!」
 ルルが叫ぶ。
 四属性による最初で最後の協力技が発動する。
「風よ、氷を纏え! 極寒の刃となれ!」
 エラシアが精霊魔法でヒヨリの冷気を集め、極低温の竜巻を発生させる。
「大地の盾よ、炎熱を封じ込めろ!」
 テアが地中から強固な岩盤の壁を隆起させ、その岩盤にルルが高熱の魔力をコーティング。魔力コーティングされた防壁を作り出した。
「今だ、マスター! 亀裂を無効化する力!」
 亮太は、自身の「結び目の力」をルルたちの攻撃に乗せるように、無属性の光を放出した。
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 3. 山田さんの勘違い貢献
 四属性の協力技が、庭の変異植物に襲いかかった、その時――。
 上階の山田さんの部屋から、突如として唸るような轟音が響き渡った。
「フハハハ! 見たか! 俺の『最終奥義・風属性超速循環ダンス』は、世界の危機に呼応して発動する! これで竜巻の威力は十倍だ!」
 山田さんは、窓が吹き飛んだままの部屋で、巨大な扇風機を全開にし、奇妙な雄叫びをあげながら盆踊りのような儀式的なダンスを踊っていた。その動作一つ一つが、アパートの窓から凄まじい物理的な風圧を生み出した。
「なっ!? この風の出力は、まさかあの男が……!」
 エラシアが驚愕した。
 エラシアの精霊魔法による竜巻は、山田さんの物理的な風圧によって劇的に増強された。極低温の竜巻は、予測をはるかに超える勢いとなり、変異植物の蔦を一瞬で凍結させ、細かく粉砕した。
「マスター、風の威力が跳ね上がったであります! これもすべてマスターの力を引き出す、山田さんの特訓の賜物であります!」
 ルルが的外れな分析をした。
「無意味な特訓が、結果的に王の勝利を助けた……皮肉なものだ」
 ヒヨリは冷静に分析しつつ、その馬鹿馬鹿しさに小さくため息をついた。
 極寒の竜巻が変異植物の蔦を粉砕し、ルルとテアの炎熱岩盤が植物の根の侵入を完全に防ぎ切った。
「やった……! 四人の協力技と、なぜか山田さんの特訓のおかげだ!」
 変異植物は一掃され、亮太の「結び目の力」によって亀裂も一時的に安定した。
 亮太は安堵したが、その背後で、消火器を抱えた楓さんが、ヒロインたちを警戒しつつ亮太に接近していた。
「佐倉先輩! 今です! あの特訓男の騒音まで加わって、カオスは限界を超えました! 私が護りますから!」
 楓は、戦闘の余波と騒音を前にしても、「亮太を危険なカオスから隔離する」という使命を諦めてはいなかった。彼女は、戦場を駆け抜けて、亮太を独占しようとする唯一の人間だった。
「待て、楓さん! 今は協力してるんだ! 逃げなくていい!」
 亮太の叫びは、またもや届かなかった。そして上階からは、「フハハハハ!」という山田さんの高笑いが、勝利の凱歌のように響き渡るのだった。