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第5話:四属性の結集と、マドンナとの密会

ー/ー



 1. 聖域の危機と口止めの画策

 第4話の騒動から一夜明け、佐倉亮太は出社した。隣室の楓さんとは、会社で会うのが死ぬほど気まずかった。昨夜、彼女にフィギュア趣味を知られた上に、「命の危機よりもフィギュアを優先した」という彼の真実を晒してしまったからだ。

「佐倉さん……」

 給湯室で会った楓さんは、いつもの可憐なマドンナの笑顔を封印し、少し顔が赤い。

(まずい、もう噂が広まっているのか!? いや、楓さんはそんな人じゃないはず……でも、マドンナが知っている秘密は、一瞬で社内に広がる!)

 亮太は意を決し、楓さんに小さな声で話しかけた。

「か、楓さん! あの、お昼休憩、少しお話できませんか?カフェとかで……」

「……え?」

 楓は目を丸くし、頬をさらに赤くした。

(佐倉さんが、私を、二人きりでカフェに……!? もしかして、昨夜の私の『保護宣言』に対して、何か特別な意図が……!)

「あ、もちろんです! 行きます!」

 こうして亮太は、「フィギュア趣味の口止め」という切実な目的のため、会社のマドンナとランチタイムの密会を取り付けた。

_____________________
 2. カフェでの密約

 会社から少し離れた落ち着いたカフェで、二人は向き合った。

「あ、あの楓さん……昨日、その、僕の趣味の件で……」

 亮太は言葉を選んだが、何を言っても言い訳に聞こえる。

「……趣味」

 楓さんは俯き、コーヒーカップの縁を指でなぞった。彼女の耳まで赤くなっている。

「べ、別に……佐倉さんが何をコレクションしていようと、私には関係ありません」

「えっ、そ、そうですよね! もちろん! いや、その……」

 亮太は必死に続ける。

「ただ、あれを、会社で広めてしまうと、僕の会社員としての人生が……」

 楓はそこで顔を上げ、きっぱりと言い放った。

「ベ、別に! 私はそんなことを、言うつもりはありません!!」

(言うつもりはありません……って、なんでそんなに必死に否定するんだ!? で、でも、可愛いな)

 亮太は安堵すると同時に、彼女の意外な反応に動揺した。

「あ、ありがとうございます! 楓さん。楓さんの優しさに救われました。これで、僕の『平凡な日常を守る戦い』は、まだ続けられます」

 亮太はそう言って深々と頭を下げた。楓さんは、その様子をじっと見つめ、小さく呟いた。

「……佐倉さんの、あの趣味。あんな命の危機の中で、必死に守ろうとしているのを見て……なんだか、素敵だな、って思ってしまって……」

「え?」

「な、なんでもありません! ともかく、私はあなたの味方です。でも、『連れ込み作戦』は続行しますからね。私の部屋は安全ですから!」

 楓は照れ隠しで宣言し、カフェを後にした。亮太は、口止めは成功したが、楓さんとの関係が、これまで以上に非日常的な緊張感を帯び始めたことを感じた。

_____________________
 3. 地下からの招かれざる客

 亮太が帰宅すると、既にルル、ヒヨリ、エラシアの三人は、リビングで新たなバトル準備を始めていた。

「マスター! あのエルフの卑怯な盗聴魔法に対抗するため、ルルは『音波遮断結界』を張ります!」

「我が王よ、稚児の魔法では不十分。私が氷雪郷に伝わる『絶対零度静音術』で、この部屋の音を封じる」

「無駄だ。精霊は風に乗る。お前たちの小細工など通用せん」

 三人の緊張が高まり、リビングの空気が不穏な色を帯び始めた、その時。

 ゴゴゴゴゴゴ……!!

 2LDK全体を揺るがす、激しい地鳴りが響き渡った。

「な、なんじゃ!? 地震でありますか!?」

ルルが叫ぶ。

「違う! 上階の山田の特訓にしては、振動が下からだ!」

ヒヨリが氷の槍を構える。

「まさか、これが結び目の暴走か!?」

エラシアは剣を構え、警戒する。

 地鳴りは亮太の部屋の床下から直接響き、リビングの床のコンクリートに大きな亀裂が走った。

「うわあああ! 床が割れてる!?」

 亀裂が中央で交差した瞬間、ドカン!という音と共に、床板が吹き飛んだ。土と粉塵が舞い上がる中、そこには小さなスコップと分厚い眼鏡をかけた、小柄な少女が立っていた。

_____________________
 4. ドワーフの鉱物学者の参戦

 少女――テアは、粉塵を払い、分厚い眼鏡をクイッと持ち上げた。

 彼女は、粉塵で真っ白になり、フィギュア棚を抱えて呆然としている亮太を視界に入れると、迷いなく宣言した。

「はじめまして、この土地の管理者として、田中太郎ですね?」

「田中太郎じゃない!佐倉亮太だ!」(田中太郎って誰だよ!)

 テアは特に気に留めず、淡々と続けた。

「訂正する。佐倉亮太。私はドロテア・ロックウッド。この部屋の地下に眠る『マナの結晶鉱』の採掘・保全のために参った。……ああ、佐倉太亮、だったか?」

「佐倉!亮太だ!」(訂正した直後にまた間違えた!? わざとか!)

 テアは、周囲の三人のヒロインと、剣を構えるエラシアを完全に無視し、床に開いた穴から掘り出した謎の光る石を亮太に突きつけた。

「この鉱脈は、貴様の部屋の地下にある『次元の結び目』を安定させている。だが、貴様らが出す火と氷と風の不安定な魔力のせいで、今、鉱脈全体が崩壊の危機にある」

 テアは激昂した。

「この部屋を戦場にするな! 私の研究を、故郷を支える大地の力を、無駄にするな!」

 テアが足を踏み込むと、ゴッ!という音と共に、アパート全体が激しく揺れた。

「それに、貴様。今の地震は私が起こしたものではない。上からも振動がきている。二重にうるさい」

 ドオォン!!

 その振動は上階の山田さんの特訓と重なり、地震と地鳴りが二重にアパートを襲った。

「な、なんじゃと!? このチビ、土の魔力でありますか!」

「また新たな敵か! 我が王から離れろ!」

「ルル、ヒヨリ、エラシア、テア、そして楓さん……五人……。僕の周りに、こんなにもややこしい美人が集まったのか」

 亮太は目の前で始まる新たな属性バトルを見つめ、静かに呟いた。

「いや、待て。五人じゃ終わらない。……ああ、そうだった。もう一人、天井で、もっとややこしい奴がいるんだ」

 亮太の2LDKは、ここに火、氷、風、土の四属性が揃った、究極の混沌と化した。そして、彼の耳には、山田さんの興奮した絶叫が、天井の穴から直接聞こえていた。

『フハハハ!今だ!大地を揺らす力が共鳴している!これが俺の覚醒だ!!』




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 1. 聖域の危機と口止めの画策
 第4話の騒動から一夜明け、佐倉亮太は出社した。隣室の楓さんとは、会社で会うのが死ぬほど気まずかった。昨夜、彼女にフィギュア趣味を知られた上に、「命の危機よりもフィギュアを優先した」という彼の真実を晒してしまったからだ。
「佐倉さん……」
 給湯室で会った楓さんは、いつもの可憐なマドンナの笑顔を封印し、少し顔が赤い。
(まずい、もう噂が広まっているのか!? いや、楓さんはそんな人じゃないはず……でも、マドンナが知っている秘密は、一瞬で社内に広がる!)
 亮太は意を決し、楓さんに小さな声で話しかけた。
「か、楓さん! あの、お昼休憩、少しお話できませんか?カフェとかで……」
「……え?」
 楓は目を丸くし、頬をさらに赤くした。
(佐倉さんが、私を、二人きりでカフェに……!? もしかして、昨夜の私の『保護宣言』に対して、何か特別な意図が……!)
「あ、もちろんです! 行きます!」
 こうして亮太は、「フィギュア趣味の口止め」という切実な目的のため、会社のマドンナとランチタイムの密会を取り付けた。
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 2. カフェでの密約
 会社から少し離れた落ち着いたカフェで、二人は向き合った。
「あ、あの楓さん……昨日、その、僕の趣味の件で……」
 亮太は言葉を選んだが、何を言っても言い訳に聞こえる。
「……趣味」
 楓さんは俯き、コーヒーカップの縁を指でなぞった。彼女の耳まで赤くなっている。
「べ、別に……佐倉さんが何をコレクションしていようと、私には関係ありません」
「えっ、そ、そうですよね! もちろん! いや、その……」
 亮太は必死に続ける。
「ただ、あれを、会社で広めてしまうと、僕の会社員としての人生が……」
 楓はそこで顔を上げ、きっぱりと言い放った。
「ベ、別に! 私はそんなことを、言うつもりはありません!!」
(言うつもりはありません……って、なんでそんなに必死に否定するんだ!? で、でも、可愛いな)
 亮太は安堵すると同時に、彼女の意外な反応に動揺した。
「あ、ありがとうございます! 楓さん。楓さんの優しさに救われました。これで、僕の『平凡な日常を守る戦い』は、まだ続けられます」
 亮太はそう言って深々と頭を下げた。楓さんは、その様子をじっと見つめ、小さく呟いた。
「……佐倉さんの、あの趣味。あんな命の危機の中で、必死に守ろうとしているのを見て……なんだか、素敵だな、って思ってしまって……」
「え?」
「な、なんでもありません! ともかく、私はあなたの味方です。でも、『連れ込み作戦』は続行しますからね。私の部屋は安全ですから!」
 楓は照れ隠しで宣言し、カフェを後にした。亮太は、口止めは成功したが、楓さんとの関係が、これまで以上に非日常的な緊張感を帯び始めたことを感じた。
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 3. 地下からの招かれざる客
 亮太が帰宅すると、既にルル、ヒヨリ、エラシアの三人は、リビングで新たなバトル準備を始めていた。
「マスター! あのエルフの卑怯な盗聴魔法に対抗するため、ルルは『音波遮断結界』を張ります!」
「我が王よ、稚児の魔法では不十分。私が氷雪郷に伝わる『絶対零度静音術』で、この部屋の音を封じる」
「無駄だ。精霊は風に乗る。お前たちの小細工など通用せん」
 三人の緊張が高まり、リビングの空気が不穏な色を帯び始めた、その時。
 ゴゴゴゴゴゴ……!!
 2LDK全体を揺るがす、激しい地鳴りが響き渡った。
「な、なんじゃ!? 地震でありますか!?」
ルルが叫ぶ。
「違う! 上階の山田の特訓にしては、振動が下からだ!」
ヒヨリが氷の槍を構える。
「まさか、これが結び目の暴走か!?」
エラシアは剣を構え、警戒する。
 地鳴りは亮太の部屋の床下から直接響き、リビングの床のコンクリートに大きな亀裂が走った。
「うわあああ! 床が割れてる!?」
 亀裂が中央で交差した瞬間、ドカン!という音と共に、床板が吹き飛んだ。土と粉塵が舞い上がる中、そこには小さなスコップと分厚い眼鏡をかけた、小柄な少女が立っていた。
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 4. ドワーフの鉱物学者の参戦
 少女――テアは、粉塵を払い、分厚い眼鏡をクイッと持ち上げた。
 彼女は、粉塵で真っ白になり、フィギュア棚を抱えて呆然としている亮太を視界に入れると、迷いなく宣言した。
「はじめまして、この土地の管理者として、田中太郎ですね?」
「田中太郎じゃない!佐倉亮太だ!」(田中太郎って誰だよ!)
 テアは特に気に留めず、淡々と続けた。
「訂正する。佐倉亮太。私はドロテア・ロックウッド。この部屋の地下に眠る『マナの結晶鉱』の採掘・保全のために参った。……ああ、佐倉太亮、だったか?」
「佐倉!亮太だ!」(訂正した直後にまた間違えた!? わざとか!)
 テアは、周囲の三人のヒロインと、剣を構えるエラシアを完全に無視し、床に開いた穴から掘り出した謎の光る石を亮太に突きつけた。
「この鉱脈は、貴様の部屋の地下にある『次元の結び目』を安定させている。だが、貴様らが出す火と氷と風の不安定な魔力のせいで、今、鉱脈全体が崩壊の危機にある」
 テアは激昂した。
「この部屋を戦場にするな! 私の研究を、故郷を支える大地の力を、無駄にするな!」
 テアが足を踏み込むと、ゴッ!という音と共に、アパート全体が激しく揺れた。
「それに、貴様。今の地震は私が起こしたものではない。上からも振動がきている。二重にうるさい」
 ドオォン!!
 その振動は上階の山田さんの特訓と重なり、地震と地鳴りが二重にアパートを襲った。
「な、なんじゃと!? このチビ、土の魔力でありますか!」
「また新たな敵か! 我が王から離れろ!」
「ルル、ヒヨリ、エラシア、テア、そして楓さん……五人……。僕の周りに、こんなにもややこしい美人が集まったのか」
 亮太は目の前で始まる新たな属性バトルを見つめ、静かに呟いた。
「いや、待て。五人じゃ終わらない。……ああ、そうだった。もう一人、天井で、もっとややこしい奴がいるんだ」
 亮太の2LDKは、ここに火、氷、風、土の四属性が揃った、究極の混沌と化した。そして、彼の耳には、山田さんの興奮した絶叫が、天井の穴から直接聞こえていた。
『フハハハ!今だ!大地を揺らす力が共鳴している!これが俺の覚醒だ!!』