エリシアとヴァイは珍しく回転寿司店に足を運んでいた。
店内を見渡したエリシアは、回転レーンを流れる無数の寿司を見て眉をひそめる。
「庶民ばっかりですわね……。」
ヴァイは肩をすくめながら返す。
「まあ、こんなもんファーストフードと変わりねえからな。」
エリシアは不満げに小皿を手に取り、レーンを流れてくる寿司を物色し始めた。
「お寿司っていうのは、もっとこう……職人が手で握る芸術のようなものではなくて?」
ヴァイは笑いながら、適当に流れてきたサーモンを手に取る。
「お高くとまるなよ。こんなのでも意外といけるぜ。」
エリシアは目の前のテーブルに設置された蛇口のようなものを指差し、不思議そうに尋ねた。
「なんですの?これ。」
ヴァイはニヤリと笑いながら答える。
「手洗い用の水だゼェ〜。やっぱ寿司は手で食うもんだろォ〜?」
エリシアは疑いの目を向けながらも、試しにその蛇口を指で押してみる。
——ジョボボボ
勢いよく出てきた液体に触れた瞬間、エリシアが叫んだ。
「あっつ!」
慌てて手を引っ込めるエリシア。その隙を見計らい、ヴァイは腹を抱えて笑い出す。
「ゲヒャヒャヒャ〜!騙される方が悪いぜぇ〜!」
だがその瞬間——。
——パコン!
エリシアの手がヴァイの頭を見事に捉える。
「あっちいですわね!騙したでしょ!?あぁん!?」
ヴァイは頭を押さえながらも、止まらない笑い声で応じる。
「ゲヒャヒャヒャ〜!その顔が見たかったんだよォ〜!」
エリシアは腕を組み、怒りの視線を投げかけながら言った。
「次にそんなことしたら、あなたも熱湯風呂に沈めますわよ。」
流れてくる寿司をじっと見つめるエリシア。
普通の皿に混ざって、特別な容器に入ったものがチラホラと流れてくるのに気づいた。
「ヴァイ、他の皿と違うやつがありますわよ。」
エリシアが不思議そうに尋ねると、ヴァイはニカッと笑って答えた。
「あれは当たりくじつきだよ。」
「そうですの!?」
エリシアの目が輝いた。ヴァイは続けて説明する。
「当たりが出たら、もう一貫サービスってやつだなぁ〜。」
その説明を聞き終えるや否や、エリシアは遠慮なしに特別な容器の寿司を取った。
「これですわね!」
彼女はその後も同じような容器を見つけるたびに取っては食べ、再び流れるのを待つ。何回か繰り返していると、ふいに隣のテーブルの家族連れから声をかけられた。
「あのぉ……それ……私たちの注文なんですけど……。」
エリシアは箸を止め、目を丸くする。
「えぇ!?」
その瞬間、ヴァイが腹を抱えて爆笑する。
「ゲヘヘヘヘ〜!最高だぜ!こりゃ面白え!」
エリシアは赤くなりながら、空になった皿をそっとテーブルに戻し、言い訳する。
「いや、だって……特別な皿でしたから……!」
家族連れは苦笑しながらも、エリシアの皿を指差した。
「その皿は注文品なんです……。」
エリシアはヴァイを睨みつけ、低い声で呟く。
「……後で覚えてなさい。」
ヴァイは笑いながら、再び流れてくる寿司を見つめていた。
エリシアは積み上がった皿を見ながら、ふと疑問を口にした。
「しかし……ウェイターは何をしてますの?」
ヴァイはエビアボカドを食べながら、適当に返す。
「あん?」
エリシアは不満げに皿を指差した。
「いつになったらこの皿……片付けますの? もう、これではスペースがありませんわ!」
彼女の前には見事なタワー状に積み上げられた皿の山。
ヴァイは鼻で笑いながら、当然のように答えた。
「おいおい! ここは回転寿司だぜぇ? 目の前にレーンがあるだろうよ! そこに返せばいいんだろぉ〜!」
「……あ、確かに。」
ヴァイは寿司を満喫し終えると、素早く席を立ち、ニヤリと笑いながら言った。
「たまにはお前が払ってくれよ〜。」
エリシアは軽く手を振りながら答える。
「ま、いいですわよ。」
ヴァイはそのまま外に出てタバコに火をつけ、一服していた。
しかし、しばらくすると店から血相を変えたエリシアが飛び出してきた。
「てんメェえ〜!よくも騙しましたわね!」
彼女の片手には圧縮された火炎が揺らめき、今にも爆発しそうなほどだ。
「皿はレーンに返さないんですの!テーブルに置いたままでいいんですの!」
エリシアの怒りの叫びをよそに、ヴァイは火炎をひょいひょいと避けながら腹を抱えて爆笑している。
「ゲヒャヒャヒャ〜!マジでやったのかよ!最高だぜ!」
「危うく警察沙汰ですわよ〜!」
エリシアは火炎を回しながら追いかけるが、ヴァイは逃げ足が速く、タバコをくわえたまま軽やかに避け続ける。
「そんなことでキレんなよ〜!楽しかったろ〜?」
「楽しいわけありませんでしょ!? キエエエエェ〜!」
騒動の声と爆笑が響く中、近くの通行人たちは二人の様子を遠巻きに見守っていた。