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趣味のお料理

ー/ー



 エリシアとヴァイはミッションのため、とあるサイトに潜入していた。



 ヴァイは情報収集のため施設内を動き回っている。その間、待機していたエリシアは暇を持て余してスマホをいじり始めた。



——クックパッド:
 プチシュークリームにチョコレートソースをかけるのがおすすめ!



 エリシアは画面に表示されたレシピに目を止め、興味深そうに呟いた。



「へぇ……。」



 最近、彼女は暇つぶしにデザート作りにハマっていた。



「プチシュークリーム……簡単に作れそうですわね。でも、ソースはもう少しこだわった方が良いかしら。」



 画面をスクロールしながら、彼女の頭の中には次々とデザートのアレンジ案が浮かんでくる。



 エリシアがデザート作りに熱中している最中、スマホが突然鳴り響いた。



 ——Prrrrrrr!



「やれやれ……。」



 彼女はシュークリームにソースをかける手を止めてスマホを手に取り、その場で受話する。

 エリシアはヴァイとのミッションをこなす傍ら、自身が手掛けるビジネスもいくつも進行中だった。



「あぁ〜もしもしぃ? 例の通信講座のサブスクの件ですけどね、価格の表記があからさまで、ちょっとイメージ悪いですわね。」



 そう言いながら、スマホ片手に部屋を出ていく。



 ——バタン



 扉の向こうでは、エリシアの声が忙しなく響いていた。



 エリシアが電話に夢中になっている頃、ヴァイが部屋に戻ってきた。



「進展があったゼェ〜……って、いねえな。」



 部屋を見回したがエリシアの姿はない。



「ま、何か用事だろう。飯でも買いに行ったか?」



 そんなことを呟きながら、ヴァイの視線はキッチンのコンロに移った。そこには鍋があり、その中に小さな器が入れられている。



「おっ、茶碗蒸しじゃねえか。」



 ヴァイは嬉しそうに笑いながら、器を取り出した。



「さすがはエリシア、気が利くぜ。」



 遠慮なくスプーンを手に取り、一口すくって食べる。



 しかし——。



「うえぇ! なんだこれ!? くっそ甘えぇ!」



 ヴァイは顔を顰め、思わずスプーンを置いた。

 茶碗蒸しだと思って食べたそれは、エリシアがデザート用に試作していたプリンだった。ヴァイは砂糖の甘さに打ちのめされながら、慌てて冷蔵庫の水を探し始めた。



 「なんだよ、プリンかよ。」



 ヴァイはスプーンを投げ出し、がっかりした表情で呟いた。甘いものは彼の好みではない。タバコ、酒、肉。それが彼の求めるものだ。



「けっ……しけてんな!」



 そう言い捨て、視線をテーブルに移す。



「おっ、たこ焼きじゃねえか!」



 テンションが一気に上がったヴァイは冷蔵庫を開けてビールを取り出すと、得意げに缶を掲げた。



 ——ぷしゅ



「ま、たこ焼きでちょうどいいってもんだ——。」



 そう言いながら、たこ焼きを一つ掴んで口に放り込む。



 ——ぱく

 しかし次の瞬間——。



「うげええええ! なんだこれ!?」



 ヴァイは思わず口を押さえ、目を見開いた。



 たこ焼きだと思って食べたそれは、エリシアが作った「プチシュークリーム〜チョコソースを添えて〜」だった。ヴァイの舌は完全に裏切られた。



「甘えええ! こんなのたこ焼きじゃねえ!」



 彼は冷蔵庫のビールを一気に飲み干して苦味で甘さを消そうとするが、むしろさらに混乱した表情を浮かべた。



 ヴァイがテーブルの上に散らかした食べかけのプリンやシュークリームの残骸。彼が椅子に座りながらビールを飲んでいるその光景を、電話から戻ってきたエリシアが扉の前で仁王立ちのまま凝視していた。



「……。」
「……。」



 沈黙が数秒続く中、ヴァイは冷や汗をかきながら視線を泳がせる。

 次の瞬間——。



「——キエエエェエえ〜!」



 エリシアの怒りの叫び声がアジト中に響き渡り、それに続いて物を投げつける音が轟いた。



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 ヴァイは情報収集のため施設内を動き回っている。その間、待機していたエリシアは暇を持て余してスマホをいじり始めた。
——クックパッド:
 プチシュークリームにチョコレートソースをかけるのがおすすめ!
 エリシアは画面に表示されたレシピに目を止め、興味深そうに呟いた。
「へぇ……。」
 最近、彼女は暇つぶしにデザート作りにハマっていた。
「プチシュークリーム……簡単に作れそうですわね。でも、ソースはもう少しこだわった方が良いかしら。」
 画面をスクロールしながら、彼女の頭の中には次々とデザートのアレンジ案が浮かんでくる。
 エリシアがデザート作りに熱中している最中、スマホが突然鳴り響いた。
 ——Prrrrrrr!
「やれやれ……。」
 彼女はシュークリームにソースをかける手を止めてスマホを手に取り、その場で受話する。
 エリシアはヴァイとのミッションをこなす傍ら、自身が手掛けるビジネスもいくつも進行中だった。
「あぁ〜もしもしぃ? 例の通信講座のサブスクの件ですけどね、価格の表記があからさまで、ちょっとイメージ悪いですわね。」
 そう言いながら、スマホ片手に部屋を出ていく。
 ——バタン
 扉の向こうでは、エリシアの声が忙しなく響いていた。
 エリシアが電話に夢中になっている頃、ヴァイが部屋に戻ってきた。
「進展があったゼェ〜……って、いねえな。」
 部屋を見回したがエリシアの姿はない。
「ま、何か用事だろう。飯でも買いに行ったか?」
 そんなことを呟きながら、ヴァイの視線はキッチンのコンロに移った。そこには鍋があり、その中に小さな器が入れられている。
「おっ、茶碗蒸しじゃねえか。」
 ヴァイは嬉しそうに笑いながら、器を取り出した。
「さすがはエリシア、気が利くぜ。」
 遠慮なくスプーンを手に取り、一口すくって食べる。
 しかし——。
「うえぇ! なんだこれ!? くっそ甘えぇ!」
 ヴァイは顔を顰め、思わずスプーンを置いた。
 茶碗蒸しだと思って食べたそれは、エリシアがデザート用に試作していたプリンだった。ヴァイは砂糖の甘さに打ちのめされながら、慌てて冷蔵庫の水を探し始めた。
 「なんだよ、プリンかよ。」
 ヴァイはスプーンを投げ出し、がっかりした表情で呟いた。甘いものは彼の好みではない。タバコ、酒、肉。それが彼の求めるものだ。
「けっ……しけてんな!」
 そう言い捨て、視線をテーブルに移す。
「おっ、たこ焼きじゃねえか!」
 テンションが一気に上がったヴァイは冷蔵庫を開けてビールを取り出すと、得意げに缶を掲げた。
 ——ぷしゅ
「ま、たこ焼きでちょうどいいってもんだ——。」
 そう言いながら、たこ焼きを一つ掴んで口に放り込む。
 ——ぱく
 しかし次の瞬間——。
「うげええええ! なんだこれ!?」
 ヴァイは思わず口を押さえ、目を見開いた。
 たこ焼きだと思って食べたそれは、エリシアが作った「プチシュークリーム〜チョコソースを添えて〜」だった。ヴァイの舌は完全に裏切られた。
「甘えええ! こんなのたこ焼きじゃねえ!」
 彼は冷蔵庫のビールを一気に飲み干して苦味で甘さを消そうとするが、むしろさらに混乱した表情を浮かべた。
 ヴァイがテーブルの上に散らかした食べかけのプリンやシュークリームの残骸。彼が椅子に座りながらビールを飲んでいるその光景を、電話から戻ってきたエリシアが扉の前で仁王立ちのまま凝視していた。
「……。」
「……。」
 沈黙が数秒続く中、ヴァイは冷や汗をかきながら視線を泳がせる。
 次の瞬間——。
「——キエエエェエえ〜!」
 エリシアの怒りの叫び声がアジト中に響き渡り、それに続いて物を投げつける音が轟いた。