エリシアは新たな発明に取り組み、ついに完成させた。
それは高機動型ゴーレムだった。
タフなボディ、その巨体を軽々と動かす強力な駆動力、さらに現代の魔導技術を駆使してGPSを搭載。スマートフォンのアプリひとつで呼び出すことができる優れものだ。
エリシアは完成したゴーレムを前に満足そうに笑みを浮かべた。
「これで戦力はさらに強化されますわね。」
次に彼女が行ったのは、このゴーレムを仲間の道化師に託すことだった。
道化師は特徴的な衣装を揺らしながら、興味津々でゴーレムを見上げる。
「これ……すごいじゃないですか! 私でも使いこなせますかねぇ?」
エリシアは自信満々に頷く。
「もちろんですわ。操作は簡単ですのよ。ほら、このアプリを使って……。」
エリシアがスマホ画面を見せると、道化師は目を輝かせた。
「えぇ〜! すっごく便利!」
エリシアと道化師は冒険の旅に出た。
向かう先は、「帰らずの吊り橋」と呼ばれる危険地帯。その先には古代遺跡が眠っているという噂があり、エリシアの好奇心を大いに刺激していた。
目の前に現れたのは、見るからに不安定な古い吊り橋。
ロープがほつれ、板は一部が朽ちている。渡るたびに異音を立てるその橋に、道化師は早くも冷や汗を流していた。
——ギシ……ギシ……
エリシアは先頭で橋を渡りながら、後ろの道化師に声をかける。
「ゆっくりですわよ……ゆっくり歩くんですのよ。」
「え、ええぇ……。」
道化師は恐る恐る足を踏み出す。下を見てしまうと、急流が眼下に広がり、流れの音が一層怖さを煽る。
——ザアアアアァア!
「これ、本当に渡れるんですかね……。」
道化師の声が震える中、エリシアは振り返ることなく言い放つ。
「信じなさいませ。この橋が崩れたら、私が何とかしますわ。」
吊り橋の上で震える道化師は、ポケットからスマホを取り出した。
——ピロリン
そして高機動型ゴーレムをアプリで呼び出す。
——ガション! ガション! ガション! ガション!
遠くから地響きとともに、巨大なゴーレムが轟音を立ててこっちに向かってくる。
「グオオオオオオオ!」
その迫力に道化師の震えは倍増し、エリシアは振り返って叫んだ。
「ちょっと!? 何してるんですの!?」
道化師は苦笑いを浮かべながら答える。
「い、いや……ちょっと呼んでみたくて……。」
ゴーレムは容赦なく加速し、吊り橋へ突っ込む勢いで走り続ける。
——ガシャンガシャンガシャンガシャン!
エリシアは目を見開き、声を張り上げた。
「ちょ……キエえぇエェエ〜!」
道化師もパニックに陥り、悲鳴を上げる。
「うわあああああああああぁ!」
超重量級ゴーレムの振動が吊り橋全体に伝わり、古い木板が次々と軋み、音を立てて崩れ始める。
「これ、どうするんですのよー!?」
「ひえええぇー!」
¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥
「静寂の遺跡」と呼ばれる不気味な場所。
その内部には、四つん這いの恐ろしいモンスターが天井、床、壁にびっしりと群がっていた。
目が見えない代わりに、聴力が極端に発達しており、わずかな音でも感知すると、一斉に飛びかかってくるという。
エリシアと道化師は慎重に遺跡の中へ足を踏み入れた。
「……音を立てないように。」
エリシアは低い声で言いながら、忍足でゆっくりと進む。その仕草はまるで水面を滑るように静かだ。
道化師もそれに続き、息を潜めながら足を進めた。
——シーン……
遺跡の中は異様なほど静まり返っている。モンスターたちの不気味な存在感が、二人の緊張をさらに高めた。
道化師は恐る恐るエリシアの背中に囁きかける。
「これ……全部起きたら終わりだよね……?」
エリシアは振り返らず、わずかに笑みを浮かべる。
「ええ、あなたが静かにしていれば、何も起きませんわよ。」
その言葉に、道化師は心臓が飛び出しそうになりながら慎重に足を進めた。
静寂の遺跡の中、道化師は震える手でスマホを取り出した。
——ブブゥ
マナーモードでアプリを起動し、高機動型ゴーレムを呼び出す。
次の瞬間、遺跡内にけたたましい音が響き渡った。
——ガションガションガションガション!
遠くから地響きとともに、高機動型ゴーレムが助けに駆けつける。
「グオオオオオオオオオ!」
その轟音にエリシアが振り返り、目を見開いて叫んだ。
「ちょっと!? 何してるんですの!?」
道化師は苦笑いを浮かべながら答える。
「いや……呼んでみたくて……。」
その瞬間、四方八方からモンスターたちが恐ろしい鳴き声を上げながら動き出した。
——キシャアアアアァア!
一斉に飛びかかるモンスターたち。
「うわああああああああああぁ!」
「キエエェ〜!」
高機動型ゴーレムの轟音とモンスターたちの怒声が遺跡内に響き渡る中、エリシアと道化師は全力で駆け出すしかなかった。
——終わり。