表示設定
表示設定
目次 目次




帰還(月編)

ー/ー



《地球》

「マリア、マリア……!返事をしてくれぇ!!マリア〜……!!」


 カオス氏の悲痛な叫びが制御室に鳴り響き、皆が固唾を飲んで見守ること数十秒…………
 

“こちら・マリア……”

「おお、マリア!無事だったかぁ」

 “イエス・ドクターカオス”


 良かったぁ、マリアさん無事だったのね!

 “もにたー” の映像は回復しなかったけど、通信機からは確かに彼女の声が返って来た。

 彼女が大事に至らなかったことに取り敢えずは安心するものの、私の胸中にはまだ(・・)不安が残っている。

 2人は、どうなったのかしら?
 


“戦闘終了・メドーサの反応・消失”

「「「おおっ!!」」」

「奴等やりよったか!」

「凄いのね〜♪」

「見事だな……」

「ジークさん、月神族と連絡を取って下さい!『超加速』を使ったせいで竜装具も限界の筈です」

「了解しました!」

“これより・合流・します”
 


 …………良かった……本当に良かった。

 でも、まだ安心は出来ない。もし、2人が宇宙空間で死亡することになってしまったら、私は彼等に何と言って詫びたらいいの?



“………お前は、ああ言うちんちくりん(・・・・・・)が好みなのか?”
“ちんちくりんでも、可愛いから良いんだよ……!”

 

「「「「……………………………………」」」」


「ちんちくりん……?」

「誰の事じゃろうのぉ?」

「私の事ではないのねぇ〜♪」

「ちょっと、皆さん……」

「「「あっ……」」」


「…………………………………………」


 ばっ……!


「止せぇ!小竜姫ーー!!」
「横島ぁ〜っ!!雪之丞〜っっ!!!」 


※モニターを剣で、たたっ斬ろうとしてます


 
 だ〜〜れが、 “ちんちくりん” じゃあ〜〜〜〜!!!!!!

 

「落ち着いて下さい!横島くんは、ちんちくりんでも可愛いと褒めてるんです!」

「おっぱい “小隆起” とか、言われるよりマシなのね!」


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ〜〜〜〜〜っっっ!!!!!」


「要らんことを、言うでない!!」





    ◇◇◇


「横島さん・雪之丞さん」
「マリアか……無事…………じゃないか」


 流石に完全無傷って訳には、行かなかったみたいだな。右腕の肘から先が千切れてる……


「大丈夫か?」
「ノープロブレム・活動に支障・ありません」


 ………………活動……か。装具の竜気も残り少ない。

 マリアは後日回収して貰えばいいとして、俺達は後どれくらい生きれるんだろうな?


「月神族・救助に・来ます・もう少しです」
「マジか……!?」


 そうだ、そうだ……月には、月神族達がいるんだ。彼等に頼めば、迎えが来るまで保護して貰えるかもしれない。

 全く………極限状況だったとは言え、完全に忘れてたぜ。


「おいっ、俺等助かるか__」


 最後まで言い切ることは、出来なかった。

 振り向いた瞬間に、砂地にうつ伏せになって倒れている姿が目に入ったからだ……
 

 竜気が先に尽きたか___!?


「おいっ!雪之じ……」
「横島さん!?」


 慌てて駆け寄ろうとするも、身体から急に力が抜ける…………

 糞ったれが………俺のも……尽きた…………辛うじてマリアに支えられたのまでは解ったが、そこで俺の意識は消えた。





    ◇◇◇


「…………ん」


 どのくらい寝てたんだろうか?

 気がつくと、俺は奇妙な部屋の寝台に寝かされていた。

 黒塗りの壁と、黒塗りの天井…………まぁ、それはいい。気になるのは、部屋の至るところに設置されてる計器類。

 壁はもとより、天井にまで設置してある。大きさも “まちまち” で、形にもまるで統一性がない。これで一体何を測ってるんだ?


「横島さん」 


 そうやって、目や首を動かして辺りを確認していると、名前を呼ばれた。振り向くと傍らにマリア……と、もう一人見知らぬ女性が立っていた。

 月神族だろうか……?微妙に変形した巫女服のような衣装に身を包んだ、赤髪のショートヘアが特徴的だ。
 

「マリアか、その人は……?」
「月神族・朧さんです」


 月神族か…………とすると、ここは彼等の施設で間違いないらしい。とすると彼等に救助されて、ここに寝かされている感じか。

 マリアの返答と同時に女性も頭を下げる。行儀の良い綺麗な礼だ。


「姫様付き、女官長の朧と申します」
「よ、横島です。ご丁寧にどうも……」


 迦具夜姫様付きと言うことは、普段彼女の身の回りの世話をする人達か………姿勢や所作と同様、丁寧な言葉使いに恐縮した俺だがここに来て自分が寝たままなのに気付き、慌てて起き上がろうとするが彼女に止められた。


「まだ、動かないで下さい。傷は手当てしましたが、体の霊気が枯渇しています」


 傷……?そう言えば、メドーサにやられた腹の鈍痛が消えてる。ヒーリング(心霊治療)の類だろうか?


「すみません……」
「いえいえっ」


 ……正直、動かないで済むならありがたい。彼女の言うように霊気が枯渇して、身体がとにかく重い。言葉に甘えて、また寝ちまおうかなんて考えたが寸でのところで思いとどまる。


「雪之丞……私の連れは?」
「隣で眠っていますよ」


 そう言って、彼女の示した方を見ると彼女達とは逆方向に、俺と同じ寝台で眠る雪之丞がいた。

 見た感じ、外傷はなさそうだ。呼吸もしっかりしている。

 …………呼吸?

 そういや、普通に呼吸出来てるな。俺も奴も、既に竜具を外されてる。

 彼等も空気を……?いや、神が空気なんか吸うはずないから、俺達の為に準備してくれたのかな?



「彼は外傷はありませんでしたが、霊気回路にダメージを受けています。もう、暫くは眠ったままかと…………」
「……そうですか」



 生きてることに安心はしたけど、まだ油断出来そうもねぇな…………にしても霊気回路か。

 メドーサを消し飛ばした時もそうだけど、それ以前……と言うか初手から全開でぶっ飛ばしてたからな。

 文殊で霊気は補充出来ても、回路への負担は軽減出来ない。振り返れば、随分と無茶をさせたもんだ…………それくらいしなきゃ、どうにも出来ない相手ではあったが……
 

「そうだ、マリア………地球の皆は?」


 雪之丞も心配だが、今は状況を見守るしかないので俺は再びマリアに話しを振る。どうせ俺達が寝てる間に連絡は済ませてくれたろうけど、一応聞いてみる。


「先程済ませました・大体・喜んで・いました」


 “大体” 喜んでた?


「装置が、まだ動いてるのか?」


 完全に破壊出来たと思ってたけど、あの時はメドーサに掛り切りでちゃんと確認したわけじゃないからな。それとも、敵はまだいるのか?


「ノー・装置・完全に活動・停止しています」

「他に敵は……?」

「ノープロブレム・反応全て・消失・任務完了です」


 どっちも違うのか?

 なら、俺達の帰りを心配してる?それとも、俺達の知らない懸念材料が他にもあるのか?
 

 …………ここでウダウダ考えても仕方ねぇか。マリアは任務完了って言ってんだし、そのうち解るだろ。

 そんな風に考えてると、再度朧さんが口を開く。


「さっきも言いましたが、あなたの霊気は枯渇したままです。もう少し安静にして休んでいて下さい」
「すみません……そうさせて、頂きます」


 目は覚めたが、以前身体の疲労感は激しい。

 少し話した程度だが、お互いの無事を確認したことで安心したせいか、また眠くなってきた俺はそのまま目を閉じた。





    ◇◇◇


 そこから目覚めたのは、更に17時間後だった。マリアの話しによると、初めて気を失ってからは28時間寝ていたらしいから、2日近く寝ていたことになる。

 宇宙空間という過酷な環境、メドーサと言う強大な敵、それを相手にしての長時間の『超加速』の使用と大量の霊気の消耗…………やはりと言うか、それらは俺達の身体に多大な負担を掛けたらしい。

 ただ、あの時掛かっていたのは地球の命運。それに対して、ベットしたのは地球人2人とロボット1体…………それを考えれば、この程度の犠牲で済んだのは奇跡以上の奇跡と言っても、過言じゃないだろうな。


 雪之丞が目覚めたのは、俺の更に数時間後。

 俺と違って、間に一度も起きなかったことを考えると、それだけダメージが深いってことなんだろうな。


 そして、起きれるようになってからは大変だった。

 まず、沢山の月神族達に熱烈な歓待を受けた。自分達の脅威を取り除いた事実を鑑みれば頷ける話でもあるんだが、それ以上に彼等……いや、彼女達『月神族』には女性しか居ないらしく、男である俺達は非常に珍しがられた。

 それは、官女長の朧さんも同様…………寧ろ積極的ですらあった。長がそれでいいのか?


 男子校に女子が紛れ込んだら、特に可愛くなくても可愛く見えるみたいに言うけど、アレと一緒か?いや、そもそも例えとしてどうなんだろうな?

 以前の女に脳死でもしたように飛び掛かってた俺なら狂喜乱舞だったのかもしれないが、今はただ辟易するだけだった(感謝されて悪い気はしてない)。

 そりゃ、そうだろう?彼女達は、男が珍しいだけで “俺達” が珍しいわけじゃないんだからな。


 もしかして、迦具夜姫様も同じなのかと要らん心配もしたが、流石にこの人は違った。

 見た目通り、落ち着いたしっかりした人で俺達が目覚めると、月神族を代表してお礼を言ってくれた。

 その態度も堂々としていながら誠意に満ちたもので、少なからず俺は感動した。

 バタバタしながら放り込まれた戦場で必死こいただけの話なんだが、ここまではっきり感謝の意を示して貰えるのは気分がいい。

 これだけ(・・・・)で終わってれば…………


 マリアが「大体喜んでる」って、言ってる意味がついさっき解った…………

 改めて地球と通信して、真っ先に俺の目に飛び込んで来たのは……


 “よ〜〜こ〜〜し〜〜ま〜〜〜!!!!!”


 プッ!!


『夜叉』が居た…………

 もう一度言う………………『夜叉』が居た……恐すぎて、通信切っちまったよ……


 武神様……私は、何か不味い事でもしたのでしょうか………?



「おっぱい・小隆起・凄く・怒ってます」
「いや、言ってねぇし。そんな事……」


 ちんちくりんと、言ったんだぞ。しかも、言い出したの俺じゃねぇし……
 

 武神様……貴方は、おっぱいが小さくたって十二分に可愛いし、優しい、素晴らしい方なんですよ。


 ………………と、嘆いたところでもう遅ぇ……


 …………どうしよう?

 ガンジーみたいに無抵抗、貫いたら許してくれるかな?いや、あの剣幕じゃ本当に動かなくなるまで殴られそうだ……ジーク達に泣き付いて、色々転移して逃げて貰うか?

 
 ただ…………ここまでは大変ではあるけど、ある意味 “些事” だった。





    ◇◇◇

 今、俺達は帰りの宇宙船の中にいる(月神族達は帰りも盛大に見送ってくれた)。

 これはメドーサ達が乗ってきたものをそのまま流用していて、操縦しているのは勿論マリアだ。

 後は帰るだけなんだが、俺の気分は重い…………


 そう……一番の問題は、俺の隣で頭を抱えるこの男。








帰還 雪之丞
「僕は……僕は誰なんだ……!?」



 ………………名前から、何まで全部忘れちまったらしい……どうすんだ?これ……

 


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 戸惑(忘却編)


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



《地球》
「マリア、マリア……!返事をしてくれぇ!!マリア〜……!!」
 カオス氏の悲痛な叫びが制御室に鳴り響き、皆が固唾を飲んで見守ること数十秒…………
“こちら・マリア……”
「おお、マリア!無事だったかぁ」
 “イエス・ドクターカオス”
 良かったぁ、マリアさん無事だったのね!
 “もにたー” の映像は回復しなかったけど、通信機からは確かに彼女の声が返って来た。
 彼女が大事に至らなかったことに取り敢えずは安心するものの、私の胸中には|まだ《・・》不安が残っている。
 2人は、どうなったのかしら?
“戦闘終了・メドーサの反応・消失”
「「「おおっ!!」」」
「奴等やりよったか!」
「凄いのね〜♪」
「見事だな……」
「ジークさん、月神族と連絡を取って下さい!『超加速』を使ったせいで竜装具も限界の筈です」
「了解しました!」
“これより・合流・します”
 …………良かった……本当に良かった。
 でも、まだ安心は出来ない。もし、2人が宇宙空間で死亡することになってしまったら、私は彼等に何と言って詫びたらいいの?
“………お前は、ああ言う|ちんちくりん《・・・・・・》が好みなのか?”
“ちんちくりんでも、可愛いから良いんだよ……!”
「「「「……………………………………」」」」
「ちんちくりん……?」
「誰の事じゃろうのぉ?」
「私の事ではないのねぇ〜♪」
「ちょっと、皆さん……」
「「「あっ……」」」
「…………………………………………」
 ばっ……!
「止せぇ!小竜姫ーー!!」
「横島ぁ〜っ!!雪之丞〜っっ!!!」 
※モニターを剣で、たたっ斬ろうとしてます
 だ〜〜れが、 “ちんちくりん” じゃあ〜〜〜〜!!!!!!
「落ち着いて下さい!横島くんは、ちんちくりんでも可愛いと褒めてるんです!」
「おっぱい “小隆起” とか、言われるよりマシなのね!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ〜〜〜〜〜っっっ!!!!!」
「要らんことを、言うでない!!」
    ◇◇◇
「横島さん・雪之丞さん」
「マリアか……無事…………じゃないか」
 流石に完全無傷って訳には、行かなかったみたいだな。右腕の肘から先が千切れてる……
「大丈夫か?」
「ノープロブレム・活動に支障・ありません」
 ………………活動……か。装具の竜気も残り少ない。
 マリアは後日回収して貰えばいいとして、俺達は後どれくらい生きれるんだろうな?
「月神族・救助に・来ます・もう少しです」
「マジか……!?」
 そうだ、そうだ……月には、月神族達がいるんだ。彼等に頼めば、迎えが来るまで保護して貰えるかもしれない。
 全く………極限状況だったとは言え、完全に忘れてたぜ。
「おいっ、俺等助かるか__」
 最後まで言い切ることは、出来なかった。
 振り向いた瞬間に、砂地にうつ伏せになって倒れている姿が目に入ったからだ……
 竜気が先に尽きたか___!?
「おいっ!雪之じ……」
「横島さん!?」
 慌てて駆け寄ろうとするも、身体から急に力が抜ける…………
 糞ったれが………俺のも……尽きた…………辛うじてマリアに支えられたのまでは解ったが、そこで俺の意識は消えた。
    ◇◇◇
「…………ん」
 どのくらい寝てたんだろうか?
 気がつくと、俺は奇妙な部屋の寝台に寝かされていた。
 黒塗りの壁と、黒塗りの天井…………まぁ、それはいい。気になるのは、部屋の至るところに設置されてる計器類。
 壁はもとより、天井にまで設置してある。大きさも “まちまち” で、形にもまるで統一性がない。これで一体何を測ってるんだ?
「横島さん」 
 そうやって、目や首を動かして辺りを確認していると、名前を呼ばれた。振り向くと傍らにマリア……と、もう一人見知らぬ女性が立っていた。
 月神族だろうか……?微妙に変形した巫女服のような衣装に身を包んだ、赤髪のショートヘアが特徴的だ。
「マリアか、その人は……?」
「月神族・朧さんです」
 月神族か…………とすると、ここは彼等の施設で間違いないらしい。とすると彼等に救助されて、ここに寝かされている感じか。
 マリアの返答と同時に女性も頭を下げる。行儀の良い綺麗な礼だ。
「姫様付き、女官長の朧と申します」
「よ、横島です。ご丁寧にどうも……」
 迦具夜姫様付きと言うことは、普段彼女の身の回りの世話をする人達か………姿勢や所作と同様、丁寧な言葉使いに恐縮した俺だがここに来て自分が寝たままなのに気付き、慌てて起き上がろうとするが彼女に止められた。
「まだ、動かないで下さい。傷は手当てしましたが、体の霊気が枯渇しています」
 傷……?そう言えば、メドーサにやられた腹の鈍痛が消えてる。ヒーリング(心霊治療)の類だろうか?
「すみません……」
「いえいえっ」
 ……正直、動かないで済むならありがたい。彼女の言うように霊気が枯渇して、身体がとにかく重い。言葉に甘えて、また寝ちまおうかなんて考えたが寸でのところで思いとどまる。
「雪之丞……私の連れは?」
「隣で眠っていますよ」
 そう言って、彼女の示した方を見ると彼女達とは逆方向に、俺と同じ寝台で眠る雪之丞がいた。
 見た感じ、外傷はなさそうだ。呼吸もしっかりしている。
 …………呼吸?
 そういや、普通に呼吸出来てるな。俺も奴も、既に竜具を外されてる。
 彼等も空気を……?いや、神が空気なんか吸うはずないから、俺達の為に準備してくれたのかな?
「彼は外傷はありませんでしたが、霊気回路にダメージを受けています。もう、暫くは眠ったままかと…………」
「……そうですか」
 生きてることに安心はしたけど、まだ油断出来そうもねぇな…………にしても霊気回路か。
 メドーサを消し飛ばした時もそうだけど、それ以前……と言うか初手から全開でぶっ飛ばしてたからな。
 文殊で霊気は補充出来ても、回路への負担は軽減出来ない。振り返れば、随分と無茶をさせたもんだ…………それくらいしなきゃ、どうにも出来ない相手ではあったが……
「そうだ、マリア………地球の皆は?」
 雪之丞も心配だが、今は状況を見守るしかないので俺は再びマリアに話しを振る。どうせ俺達が寝てる間に連絡は済ませてくれたろうけど、一応聞いてみる。
「先程済ませました・大体・喜んで・いました」
 “大体” 喜んでた?
「装置が、まだ動いてるのか?」
 完全に破壊出来たと思ってたけど、あの時はメドーサに掛り切りでちゃんと確認したわけじゃないからな。それとも、敵はまだいるのか?
「ノー・装置・完全に活動・停止しています」
「他に敵は……?」
「ノープロブレム・反応全て・消失・任務完了です」
 どっちも違うのか?
 なら、俺達の帰りを心配してる?それとも、俺達の知らない懸念材料が他にもあるのか?
 …………ここでウダウダ考えても仕方ねぇか。マリアは任務完了って言ってんだし、そのうち解るだろ。
 そんな風に考えてると、再度朧さんが口を開く。
「さっきも言いましたが、あなたの霊気は枯渇したままです。もう少し安静にして休んでいて下さい」
「すみません……そうさせて、頂きます」
 目は覚めたが、以前身体の疲労感は激しい。
 少し話した程度だが、お互いの無事を確認したことで安心したせいか、また眠くなってきた俺はそのまま目を閉じた。
    ◇◇◇
 そこから目覚めたのは、更に17時間後だった。マリアの話しによると、初めて気を失ってからは28時間寝ていたらしいから、2日近く寝ていたことになる。
 宇宙空間という過酷な環境、メドーサと言う強大な敵、それを相手にしての長時間の『超加速』の使用と大量の霊気の消耗…………やはりと言うか、それらは俺達の身体に多大な負担を掛けたらしい。
 ただ、あの時掛かっていたのは地球の命運。それに対して、ベットしたのは地球人2人とロボット1体…………それを考えれば、この程度の犠牲で済んだのは奇跡以上の奇跡と言っても、過言じゃないだろうな。
 雪之丞が目覚めたのは、俺の更に数時間後。
 俺と違って、間に一度も起きなかったことを考えると、それだけダメージが深いってことなんだろうな。
 そして、起きれるようになってからは大変だった。
 まず、沢山の月神族達に熱烈な歓待を受けた。自分達の脅威を取り除いた事実を鑑みれば頷ける話でもあるんだが、それ以上に彼等……いや、彼女達『月神族』には女性しか居ないらしく、男である俺達は非常に珍しがられた。
 それは、官女長の朧さんも同様…………寧ろ積極的ですらあった。長がそれでいいのか?
 男子校に女子が紛れ込んだら、特に可愛くなくても可愛く見えるみたいに言うけど、アレと一緒か?いや、そもそも例えとしてどうなんだろうな?
 以前の女に脳死でもしたように飛び掛かってた俺なら狂喜乱舞だったのかもしれないが、今はただ辟易するだけだった(感謝されて悪い気はしてない)。
 そりゃ、そうだろう?彼女達は、男が珍しいだけで “俺達” が珍しいわけじゃないんだからな。
 もしかして、迦具夜姫様も同じなのかと要らん心配もしたが、流石にこの人は違った。
 見た目通り、落ち着いたしっかりした人で俺達が目覚めると、月神族を代表してお礼を言ってくれた。
 その態度も堂々としていながら誠意に満ちたもので、少なからず俺は感動した。
 バタバタしながら放り込まれた戦場で必死こいただけの話なんだが、ここまではっきり感謝の意を示して貰えるのは気分がいい。
 |これだけ《・・・・》で終わってれば…………
 マリアが「大体喜んでる」って、言ってる意味がついさっき解った…………
 改めて地球と通信して、真っ先に俺の目に飛び込んで来たのは……
 “よ〜〜こ〜〜し〜〜ま〜〜〜!!!!!”
 プッ!!
『夜叉』が居た…………
 もう一度言う………………『夜叉』が居た……恐すぎて、通信切っちまったよ……
 武神様……私は、何か不味い事でもしたのでしょうか………?
「おっぱい・小隆起・凄く・怒ってます」
「いや、言ってねぇし。そんな事……」
 ちんちくりんと、言ったんだぞ。しかも、言い出したの俺じゃねぇし……
 武神様……貴方は、おっぱいが小さくたって十二分に可愛いし、優しい、素晴らしい方なんですよ。
 ………………と、嘆いたところでもう遅ぇ……
 …………どうしよう?
 ガンジーみたいに無抵抗、貫いたら許してくれるかな?いや、あの剣幕じゃ本当に動かなくなるまで殴られそうだ……ジーク達に泣き付いて、色々転移して逃げて貰うか?
 ただ…………ここまでは大変ではあるけど、ある意味 “些事” だった。
    ◇◇◇
 今、俺達は帰りの宇宙船の中にいる(月神族達は帰りも盛大に見送ってくれた)。
 これはメドーサ達が乗ってきたものをそのまま流用していて、操縦しているのは勿論マリアだ。
 後は帰るだけなんだが、俺の気分は重い…………
 そう……一番の問題は、俺の隣で頭を抱えるこの男。
「僕は……僕は誰なんだ……!?」
 ………………名前から、何まで全部忘れちまったらしい……どうすんだ?これ……