廃墟のような図書館の前は何度か横切った広場だった。そこでは数日ぶりに屋台を準備している最中で司書室で気が付かなかったのが不思議な程の賑わいを見せている。
シロは喧騒の中に歩み入れると手直で作業している男に何か祭りでもあるのかと問いかけた。
「ああジローさんこんにちわ。今晩は夜光祭ですよ」
「夜光祭?」
「この辺りの晴れた夜はオーロラが見えることがあるので、皆でそれを楽しもうという祭りなんです」
「てことは、今日はオーロラが観られるってことか」
「さあそれは何とも。その時になるまでは分かりません。なにせ天気を確認して旅行に来られても観られずに帰るなんてザラですから」
「なんだそりゃ。じゃあなんで準備してんだよ」
「オーロラが出てからでは遅いでしょう?それにお偉方が何を思ったかは知りませんが、折角国が国民全員にくれた冬休みの好天の夜ですからね。毎日騒いだってバチは当たりませんよ」
シロは手を停めて説明してくれた男に軽く礼を言い、いつの間にか傾いていた太陽に思っていたよりも長い間茶をしばいていたことに気付き、オヤツ時にも関わらず閉店作業に入っている店員に断りを入れ買い物を済ませ、一度荷物を置くために家へ戻る事にした。
パーカを掛けすっかりストーブの火の消えたリビングに立ち入ると、地下への進入路を塞がぬために半開きのままのどんでん返しを閉め掃除の続きに取り掛かる。確か二階は掃き終えたはずなので残るは一階のみだと気を入れ直し、外から帰った靴でそのまま歩き回った床を掃きついでにキッチンまでピカピカにし終えた彼女は達成感で心が満たされた。
シロは掃除が好きだった。なかなか落ちない汚れも諦めずにこすれば意外と落ちるし、こんなもんでいいかと諦めそうになる心をねじ伏せ何が何でもやり遂げた瞬間に彼女の怪異性が満たされる快感を手ごろに与えてくれるからだ。
掃除に夢中になるあまり薄くなっていた雪雲が何処かに飛んでいき、いつの間にか晴れ渡っていた夜空に女が気が付いたのはとっくに陽の暮れた午後七時だった。