「ヒドラ、アンテナの調整にはどれくらい掛かる?」
「グルル……」
ヒドラが唸ると共に、奴の思念が頭に直接流れ込んでくる……あと数時間ってとこか。
「私が暫くここを離れても大丈夫かい?」
私の問いに再び似たような呻き声で返すヒドラ。
問題ないと、言いたいらしい…………まぁ、長い時間月の魔力を吸わせて育てたからね。大抵の敵には負けやしないだろうさ。だが、コイツには “致命的” な弱点がある……どちらにしろ、余り長くは掛けれない。
「そうかい、なら月の連中が来た時は自分で蹴散らすんだよ……」
◇◇◇
「さて……ウ◯コは殺ったけど、このまま乗り込むか?」
蝿野郎を仕留めて、船内に戻ると雪之丞が話し掛けて来た。ヘルメットは、もう外してる………臨戦態勢だな。
「俺は出来ることなら、直接対決は避けたい……」
哀れ……雪之丞の中で奴は、遂にウン◯ “そのもの” になったらしい。
俺は、今は亡き◯ンコ野郎にほんの微かな同情を覚えた………名前なんだったけ?
まぁ、いいや。死んだ奴のことなんて。
「言いたいことは、解るぜ!でも、ウ◯コが居ねぇことに蛇だって気づいたはずだ。モタモタしてるうちに奴が来る、こっちから仕掛けた方が得策じゃねぇか?」
「………………」
…………ったく、コイツは頭は使わねぇ癖に、たまに核心つきやがる。本能か……?
確かに考えてばかりで、動けなきゃ殺されるだけだからな。ここは、勢いのまま仕掛けた方がいいか……
「………………わかった。死ぬなよ……」
ここまで来たら、やり合うしかねぇか……!!
俺が、そうに返すと奴はニヤリと笑って答える。
「お前もなっ!」
「……聞いての通りです。これからメドーサに仕掛けます!」
次いで俺は、地球側にも口を開く。これが最後の会話になるかもしれない……
“解りました。2人共気を付けて!”
武神様……これまで、こんな馬鹿を面倒見て下さってありがとうございました。期待に応えれるかは解りませんが、全てぶつけて来ます。
“2人とも頑張るのね〜”
おい、糞女神!お前のせいで、こっちは一回死にかけてんだからな……生きてたら、借り返せよ。
“頼んだぞ2人共!”
“地球の運命は、君達に掛かってる!”
ワルキューレ、ジーク……あんた達から激励されるなんて、初めて会ったころは想像すら出来なかったぞ。地球の運命なんて俺には重すぎるが、全力を尽くすよ。
“金塊の約束、忘れるんじゃないぞーー”
ジジィ、テメェは死ね!!
…………失敗したら、金塊持っててもただの石ころと変わらねぇだろ。
「マリア!俺達を落としたら、お前はヒャクメと協力して装置を調べてくれ」
「くれぐれも、蛇の攻撃に巻き込まれんなよ!」
“イエス・皆で地球に・帰りましょう”
◇◇◇
《地球》
「……なんか、一瞬寒気がしたのね〜…………」
「奇遇じゃのぉ〜……ワシもじゃ」
◇◇◇
マリアに降ろして貰う途中に、あの装置の全容が見えた。
上から見た感じだと、直径3〜40mの巨大なパラボナアンテナって感じだな……ただ、普通のアンテナと違ってるのは、ディッシュ(皿の部)を支えてるのが紫色の何ともグロテスクで生物的なデザインをした外壁だった。ディッシュが鏡のようにピカピカなだけに余計その異様さが際立っている。
高さは大体3mくらいか……真横から見たら、建物にしか見えないだろうな。
肝心のメドーサは…………居た!!装置のすぐ近くに居る。俺達を見てる!!
「行くぞ……!」
そう呟く雪之丞と俺は、宇宙服を脱ぎ捨ててる。雪之丞は魔装術の邪魔になるから。俺は着てても良かったが、やっぱり動き辛いんで脱いだ。勿論、マスクも装着済みだ。
宇宙空間で宇宙服を脱ぐなんて、普通なら正気の沙汰じゃないだろう………でも、俺達には武神様から借りて来た竜人族の装備がある。
この竜気の籠もった、篭手とバンダナを着けてる間は人間でも宇宙で活動出来る…………もっとも、余り長い時間は維持出来ない。
だが、“超加速” を使うメドーサにそもそも長い時間なんて掛けられない。多分、数分と掛からず終わるだろう。半端に後のことを考えて懸念材料を残すより、端から全力を出せる状態で挑むべきだ。
ちなみにだが、武器は他にもライフルやら神剣があったが役に立たなそうなんで置いていくことにした(凄く勿体ない……)。
武神様の話では “超加速” 状態でライフルは役に立たないらしいし、剣なんて俺達には扱えない。
「ああっ……!」
「はあぁぁっ!!!」
俺が答えると、雪之丞はそれを合図に気合を入れる!!
気合と共に奴の体から溢れた霊気が一瞬で収束して、強固な霊気の鎧と化す。
そして、機敏な動きでハッチを開けて外へ飛び立つ、当然俺もそれに続く!
飛び立った俺達はすぐさま、奴の眼の前に降り立った!
宇宙船の速さの勢いのまま、飛び立てばそのまま月面に衝突してお陀仏なところを雪之丞は魔装術、俺はそのまま霊気で身体能力をブーストして着地の衝撃に耐える。
月面の感触は無重力で変な感じだが、それを除けばキメの細かい砂場の上に立ったような、そんな印象だった。
そんな俺達を見ていたであろう奴は……メドーサは、攻撃するわけでもなく、本当にただ見ていた。
驚いたように、目を見開いて…………
「なっ……なんだと…………!!?お前達2人だけ!?」
奴の表情は驚愕…………それだけじゃないな。あれは “屈辱” か……?
先生の代わりに来たのが俺達なのが、余程ショックらしいな。技を授けた雪之丞ならともかく、一緒に居るのが俺じゃあな……だが、それもすぐに変わった。
冷静になったんじゃない、寧ろ逆………今の顔には強烈な “憤怒” が貼り付いてる。怒りで、ただでさえ小さな蛇の瞳孔が更に小さくなって、キツく食いしばった歯から歯軋りでも聞こえて来そうだぜ。
「このメドーサ様も、随分と舐められだもんだねぇ……!!奴等は、私を倒すならムシケラ2匹で十分と言いたいらしい!!」
唸るような低い声で吐き捨てると、獲物である刺又槍の柄の底を乱暴に月面に突く。
予想通り、相当ご立腹だな……心臓を鷲掴みにされてる気分だ…………
だが、耐えろ……!
俺なんかを信じて、送り出してくれた武神様のためにも無様な真似なんか出来ねぇ!!
「ハッ!良く解ってんじゃねぇか!!今日こそテメェに引導を渡してやるよっ!!!」
雪之丞は奴を目の前にしても、いつも通りか……こいつは、どんな時でも振り返らない。前しか見ない!
一見ただの狂犬のじみた言動にも取れるが、俺は知ってる。こいつが自分以外の誰かのために強くあろうとしてるのかを…………
普段、「ママ」「ママ」連呼しなきゃ完璧なんだけどな……
雪之丞は、メドーサに言い放つと同時に霊波砲を放つ!
それを俺も黙って見てたわけじゃない。手榴弾型にしていた霊盾を同時に投げつける。
「フンッ」
…………だが、跳躍して外される。
俺達の放ったエネルギーの奔流は、ちょうどメドーサの後ろの盛り上がった月面に着弾して破裂した。
「多少、腕を上げたからって、いい気になるんじゃないよ!」
そう言い放ち、躱した勢いのまま瞬時に俺達へ肉薄すると同時に刺又槍を突き出してくる。
それを俺達は、左右に分かれて回避!
「いい気になってやるよっ!!」
売り言葉に、買い言葉…………今度は、雪之丞が拳で襲い掛かる。
同時に俺は、メドーサの後ろに回って隙を窺う。
今の所、奴は1人……こっちは2人。そのアドバンテージを最大に活かすんだ!
“こちら・マリア・2人は・メドーサと・交戦を開始しました・敵装置へ移動します・ヒャクメさん・分析をお願いします”