表示設定
表示設定
目次 目次




幕間(月編)

ー/ー




「!!」
 

 ここ数日暇なのもあって、それまで退屈な気分でいつものデスクに頬杖をついて だらけ(・・・)切っていた。

 そんな時に窓の外に感じた違和感に反応して、私は即座にデスクを立ち足早に窓まで近づくと一息に開け放った!


「魔族…………」


 外には、何も無かった。

 夕闇に包まれた街並みは、ネオンや街灯に彩られて活気があり平和そのもの……

 だけど、この感覚………微かに覚えてる。確か、妙神山で私を襲ってきた魔族の一体(アレを一体と呼んでいいか微妙だけど……)だ。

 今は、もう奴はいない。逃げたんじゃなくて “ここ” で消滅した。さっきまで辛うじて残ってた、奴の残り滓のような物が消えていくのが解る………


 思えば、ここのところずっと違和感は感じていたのよね。何をされるわけでもないけど、誰かに見られている……そんな感覚。

 かと言って実害があるわけでもないから、放置するしかなかったけどコイツだったのね。

 以前会った、魔族の女軍人………ワルキューレだったかしら?彼女の話しによれば、こいつは結界をすり抜ける能力があるって話だから、人工幽霊壱号が気付かなかったのも頷けるわ。

 でも、それはいい……
 

 ………………問題なのは、何で魔族が私を監視してたかってことだけど……



「……一体何が起こってるって言うの?」 





    ◇◇◇

 
“うっしゃっ!作戦通り!!”

“マリア、周りに反応はないか?”

“ノープロブレム・反応ありません”


 ここは『某国』の “ろけっと” 制御室。

 先程まで私達5人(私、ヒャクメ、ジークにワルキューレ、そしてカオス氏)は、彼等の様子を固唾を飲んで見守っていた。

 そして、“通信もにたー” を通して流れてくる音声を聴いて、私は胸に手を当てほっと安堵する。音声や画像だけじゃ安心しきれないものもあるけど、少なくとも彼等から不安な雰囲気は感じられない。

 彼等を、孤立無援の死地へ向かわせたのは私……彼等の力を見込んだ上での決断だったけれど、それでも不安は大きかった。

 しかも、こちらには『美神令子』(やってくれるかどうかは別として……)と言う最大の切札があったにも関わらず(彼女との接触は危険もあった)、彼等を抜擢したのだ。不安を覚えない方が、どうかしてると思うわ。


「あのベルゼブルを、あんなあっさり倒すなんて凄いじゃないか!」
「大したものなのね〜、2人を推薦された時は、驚いたけど納得したのね♪」


 “もにたー” を視ていたワルキューレ達が感心したように呟くのを聞いて、私も自分のように嬉しくなる。そんな私へ、ワルキューレが話し掛けて来る。
 

「小竜姫……あの男に何をしたんだ?」
「…………横島さんの事を言っているのですか?」


 多分、彼女も彼の変貌振りが気になるのね。


「強くなっていた事は、見れば解った。だが、それ以上に言動や面構えが、まるで別人だ。数年間面倒見たらしいが、よくあそこまで “矯正” したな」
「本当、そうなのね〜小竜姫、横島君に何したの?」


 “矯正”……か。やはり、他者には私が何かしたように見えているのね。


「…………私は特別なことは何もしてません。それに、彼は何一つ変わってはいませんよ」
「よく、解らないな…………浮ついた態度が消えて、物事を真摯に受け止めてるじゃないか。人間として、何倍も成長してるように見えるが……」

「私は、素直に月に行ったのが驚きなのね〜、てっきり「行きたくない!!」とか大騒ぎすると思ったのに」
「あやつを黙らす、麻酔薬が無駄になってしもうた……」
「僕は、迦具夜姫に普通に対応したことに驚きました」

「アハハ……」
 

 私の返答に彼女達は、予想通り不可解な表情をして答えて来た。
 

「本当です。一見、人が変わったように見えますが、あれが “本来” の彼の人格………優しくて、真面目で物の本質を見抜く事に長ける…………大きな挫折を経験したことで、それが表に出てきたんだと思います」


 もっと言ってしまえば、後ろ向きで自棄になってるわけではないけど、余り自分を大事にしていないような所がある。
 これは皆が不安になるから言えないけど、私自身とても不安に思っている……この辺は、雪之丞さんに上手く支えて貰いたい。

 彼は、彼で危なっかしいけど…………
 

「……じゃあ、なにか…………今まで奴は、自分を偽って生きてきたと言いたいのか?」
「そうなりますね。何故、偽ってたのかまでは解りませんが、そうに結論着けないと私の中で “しっくり” 来ないんですよ」


 そう答えると、今度はヒャクメが人差し指を顎に当てながら別の疑問を口にする。


「私は “大きな挫折” って言うのが気になるのね〜、ひょっとして美神さんと関係あるの?彼、彼女の事務所辞めちゃったんでしょ?」
「え!?そうなんですか?」
「そう言えば、そうじゃったな……」


 ヒャクメの言葉に、今度はジークやカオス氏まで驚いたように反応して来た。そう言えばバタバタしてて、この辺はよく説明してなかったわね。


「以前、妙神山に魔族の襲来があって少ししてからですね。それと同時に雪之丞さんと定期的に来るようになったのですが、その時には既に今のような彼になっていましたから、彼女との間に何かあったのは間違いないでしょうね……ただ、本人が話したがらないので詳しい話は知りません」

「何で辞めたかは、言ってないのですが?」
「人使いが荒すぎて、嫌になったと言っていましたよ」


 ジークの質問に返した私の答えに今度はワルキューレが、変に納得したように口を開く。あれを
 

「ああ……それは解る。数日間しか一緒にいなかったが、アレは酷いものだった…………あの時は、情けない奴くらいにしか思っていなかったが、あの待遇に我慢出来ることには感心していたんだ」

「「「「アハハ……」」」」


 …………それも……嘘ではないんだろうなぁ。でも、本当の理由は別に在ると思ってる。

 いつか、話してくれると嬉しいんだけど………


「と言うことは、あれか?お前さんが美神令子に拘らなかったのは、奴等の不仲も考慮したと言うことか?」


 うっ…………流石、腐ってもヨーロッパの魔王……痛い所をついて来るわね。


「ええ、その通りです。本当は、あの2人と美神さんが協力しあってくれるのが理想だったんですけど、横島さんの様子から連携は不可能……なら、美神さんには “囮” になって貰って、相性のいい雪之丞さんと行って貰う方が良いと判断したんですよ」

「なるほどのぉ〜、確かにあの2人には、よく解らん連帯感がある」

「いや、でも解りますよ!2人は斉天大聖様の試練や魔族相手の時も、息が合ってましたからね。死線を潜って強力な絆が生まれたんでしょう」


 確かに……あの2人は、お互い刺激し合って加速的に強くなっている。特に横島さんは、元が素人臭い(と言うか、そのもの)かっただけに凄まじい(・・・・)伸びがあったわ。
 
 でも、絆と言う意味では美神さんとだって、あったと思う。死線の数だって、雪之丞さんよりも美神さんとの方が多い筈なのに…………いつか、仲直りして貰いたいものだわ。


「そうか………少し不可解な感じはあるが、私は今の奴等が戦士として信頼出来るならそれでいい」

「そうね〜、美神さんの件は気になるけど、今はメドーサが先なのね〜」

「確かにそうですね。未来は勿論大事ですが、今は目先に集中しないと……Dr.カオス航路は、大丈夫ですか」

「ああ、今の所は何も問題ない」


 ジークの言葉に皆再び “もにたー” 齧りつく。

  

 さあ、2人共……本当の戦いは、これからよ。

 神族、魔族、そして地球の運命は貴方達に託されてる。今は、貴方達2人だけが頼りなの。

 2人で、お互いの欠点を支え合って……!そうすれば、貴方達は誰にも負けないわ。


 私は、両手をきつく閉じて祈る。

 武神と呼ばれる私が祈るなんて変な話よね。でも、これでいいの。祈る先は勿論、神族の最高指導者……そして、この大いなる宇宙…………


 お願いします。どうか彼等を守ってあげて下さい。

 




幕間 小竜姫


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 蛇女(月編)


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「!!」
 ここ数日暇なのもあって、それまで退屈な気分でいつものデスクに頬杖をついて |だらけ《・・・》切っていた。
 そんな時に窓の外に感じた違和感に反応して、私は即座にデスクを立ち足早に窓まで近づくと一息に開け放った!
「魔族…………」
 外には、何も無かった。
 夕闇に包まれた街並みは、ネオンや街灯に彩られて活気があり平和そのもの……
 だけど、この感覚………微かに覚えてる。確か、妙神山で私を襲ってきた魔族の一体(アレを一体と呼んでいいか微妙だけど……)だ。
 今は、もう奴はいない。逃げたんじゃなくて “ここ” で消滅した。さっきまで辛うじて残ってた、奴の残り滓のような物が消えていくのが解る………
 思えば、ここのところずっと違和感は感じていたのよね。何をされるわけでもないけど、誰かに見られている……そんな感覚。
 かと言って実害があるわけでもないから、放置するしかなかったけどコイツだったのね。
 以前会った、魔族の女軍人………ワルキューレだったかしら?彼女の話しによれば、こいつは結界をすり抜ける能力があるって話だから、人工幽霊壱号が気付かなかったのも頷けるわ。
 でも、それはいい……
 ………………問題なのは、何で魔族が私を監視してたかってことだけど……
「……一体何が起こってるって言うの?」 
    ◇◇◇
“うっしゃっ!作戦通り!!”
“マリア、周りに反応はないか?”
“ノープロブレム・反応ありません”
 ここは『某国』の “ろけっと” 制御室。
 先程まで私達5人(私、ヒャクメ、ジークにワルキューレ、そしてカオス氏)は、彼等の様子を固唾を飲んで見守っていた。
 そして、“通信もにたー” を通して流れてくる音声を聴いて、私は胸に手を当てほっと安堵する。音声や画像だけじゃ安心しきれないものもあるけど、少なくとも彼等から不安な雰囲気は感じられない。
 彼等を、孤立無援の死地へ向かわせたのは私……彼等の力を見込んだ上での決断だったけれど、それでも不安は大きかった。
 しかも、こちらには『美神令子』(やってくれるかどうかは別として……)と言う最大の切札があったにも関わらず(彼女との接触は危険もあった)、彼等を抜擢したのだ。不安を覚えない方が、どうかしてると思うわ。
「あのベルゼブルを、あんなあっさり倒すなんて凄いじゃないか!」
「大したものなのね〜、2人を推薦された時は、驚いたけど納得したのね♪」
 “もにたー” を視ていたワルキューレ達が感心したように呟くのを聞いて、私も自分のように嬉しくなる。そんな私へ、ワルキューレが話し掛けて来る。
「小竜姫……あの男に何をしたんだ?」
「…………横島さんの事を言っているのですか?」
 多分、彼女も彼の変貌振りが気になるのね。
「強くなっていた事は、見れば解った。だが、それ以上に言動や面構えが、まるで別人だ。数年間面倒見たらしいが、よくあそこまで “矯正” したな」
「本当、そうなのね〜小竜姫、横島君に何したの?」
 “矯正”……か。やはり、他者には私が何かしたように見えているのね。
「…………私は特別なことは何もしてません。それに、彼は何一つ変わってはいませんよ」
「よく、解らないな…………浮ついた態度が消えて、物事を真摯に受け止めてるじゃないか。人間として、何倍も成長してるように見えるが……」
「私は、素直に月に行ったのが驚きなのね〜、てっきり「行きたくない!!」とか大騒ぎすると思ったのに」
「あやつを黙らす、麻酔薬が無駄になってしもうた……」
「僕は、迦具夜姫に普通に対応したことに驚きました」
「アハハ……」
 私の返答に彼女達は、予想通り不可解な表情をして答えて来た。
「本当です。一見、人が変わったように見えますが、あれが “本来” の彼の人格………優しくて、真面目で物の本質を見抜く事に長ける…………大きな挫折を経験したことで、それが表に出てきたんだと思います」
 もっと言ってしまえば、後ろ向きで自棄になってるわけではないけど、余り自分を大事にしていないような所がある。
 これは皆が不安になるから言えないけど、私自身とても不安に思っている……この辺は、雪之丞さんに上手く支えて貰いたい。
 彼は、彼で危なっかしいけど…………
「……じゃあ、なにか…………今まで奴は、自分を偽って生きてきたと言いたいのか?」
「そうなりますね。何故、偽ってたのかまでは解りませんが、そうに結論着けないと私の中で “しっくり” 来ないんですよ」
 そう答えると、今度はヒャクメが人差し指を顎に当てながら別の疑問を口にする。
「私は “大きな挫折” って言うのが気になるのね〜、ひょっとして美神さんと関係あるの?彼、彼女の事務所辞めちゃったんでしょ?」
「え!?そうなんですか?」
「そう言えば、そうじゃったな……」
 ヒャクメの言葉に、今度はジークやカオス氏まで驚いたように反応して来た。そう言えばバタバタしてて、この辺はよく説明してなかったわね。
「以前、妙神山に魔族の襲来があって少ししてからですね。それと同時に雪之丞さんと定期的に来るようになったのですが、その時には既に今のような彼になっていましたから、彼女との間に何かあったのは間違いないでしょうね……ただ、本人が話したがらないので詳しい話は知りません」
「何で辞めたかは、言ってないのですが?」
「人使いが荒すぎて、嫌になったと言っていましたよ」
 ジークの質問に返した私の答えに今度はワルキューレが、変に納得したように口を開く。あれを
「ああ……それは解る。数日間しか一緒にいなかったが、アレは酷いものだった…………あの時は、情けない奴くらいにしか思っていなかったが、あの待遇に我慢出来ることには感心していたんだ」
「「「「アハハ……」」」」
 …………それも……嘘ではないんだろうなぁ。でも、本当の理由は別に在ると思ってる。
 いつか、話してくれると嬉しいんだけど………
「と言うことは、あれか?お前さんが美神令子に拘らなかったのは、奴等の不仲も考慮したと言うことか?」
 うっ…………流石、腐ってもヨーロッパの魔王……痛い所をついて来るわね。
「ええ、その通りです。本当は、あの2人と美神さんが協力しあってくれるのが理想だったんですけど、横島さんの様子から連携は不可能……なら、美神さんには “囮” になって貰って、相性のいい雪之丞さんと行って貰う方が良いと判断したんですよ」
「なるほどのぉ〜、確かにあの2人には、よく解らん連帯感がある」
「いや、でも解りますよ!2人は斉天大聖様の試練や魔族相手の時も、息が合ってましたからね。死線を潜って強力な絆が生まれたんでしょう」
 確かに……あの2人は、お互い刺激し合って加速的に強くなっている。特に横島さんは、元が素人臭い(と言うか、そのもの)かっただけに|凄まじい《・・・・》伸びがあったわ。
 でも、絆と言う意味では美神さんとだって、あったと思う。死線の数だって、雪之丞さんよりも美神さんとの方が多い筈なのに…………いつか、仲直りして貰いたいものだわ。
「そうか………少し不可解な感じはあるが、私は今の奴等が戦士として信頼出来るならそれでいい」
「そうね〜、美神さんの件は気になるけど、今はメドーサが先なのね〜」
「確かにそうですね。未来は勿論大事ですが、今は目先に集中しないと……Dr.カオス航路は、大丈夫ですか」
「ああ、今の所は何も問題ない」
 ジークの言葉に皆再び “もにたー” 齧りつく。
 さあ、2人共……本当の戦いは、これからよ。
 神族、魔族、そして地球の運命は貴方達に託されてる。今は、貴方達2人だけが頼りなの。
 2人で、お互いの欠点を支え合って……!そうすれば、貴方達は誰にも負けないわ。
 私は、両手をきつく閉じて祈る。
 武神と呼ばれる私が祈るなんて変な話よね。でも、これでいいの。祈る先は勿論、神族の最高指導者……そして、この大いなる宇宙…………
 お願いします。どうか彼等を守ってあげて下さい。