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第59話 偽物

ー/ー



 話を聞き終えた恵子とサキは、しばらく黙りこんでしまった。

「あの子供が涙の魔術師であるという証拠はありません」と智美。

「春に大神様からご指示があったのです。間違いありません」と裕香。

「今までも偽物が多くいました」と智美。「警戒するのは当然です。以前の神職が身なりの怪しい笹丸を疑ったのも、無理はないことだと思います」

「当時の神職に真贋(しんがん)を見抜く力がなかったまでの話です。言い訳になりません。これはあなたにも言えることですよ」と裕香。

「私たちはこの宮を預かる巫女です。用心して何が悪いのですか」と智美。「この二人の魔女だってどこの誰とも分からないのですから」

「失礼ですよ」と裕香。「どのみち、明日の門開(もんびらき)之儀ですべてはっきりします」

「門開之儀というのはどのような儀式なのでしょうか?」と恵子。

「ゲートをこの世から、つまりこの奥之院の側から開く儀式です」と裕香。

「そのようなことが可能なのでしょうか?」と恵子。

「人間にはできません」と裕香。「通常は神が神界の側からゲートを開くのをこちらでお迎えします。ただし今回は、新神様がこちら側から開くそうです」

「できるはずがありません」と智美。「今となっては正確なゲートの位置すらわからないのに」

「ゲートは岩の断面ですよね」と恵子。

「え!」と四人の巫女は恵子の顔を見た。

「ゲートの位置は、この宮の最も大切な秘密ですよ」と裕香。「誰から聞いたのですか?」

「この宮に着いたとき揺らいで見える場所があって、それを桐子さんと艦長に言ったらゲートだと教えてくれました」と恵子。

「それはどこか、正確に言えますか?」と裕香。

「古い祠の右奥」とサキ。

「あなたにも見えたのですか?」と裕香はサキに言った。

「ええ」とサキ。「二階の高さぐらいの位置で鳥居ほどの大きさでしょうか」

「やはり、あなたがたは涙の魔術師様の付き人にふさわしい資質をお持ちです」と裕香。



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次のエピソードへ進む 第60話 門開之儀


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 話を聞き終えた恵子とサキは、しばらく黙りこんでしまった。
「あの子供が涙の魔術師であるという証拠はありません」と智美。
「春に大神様からご指示があったのです。間違いありません」と裕香。
「今までも偽物が多くいました」と智美。「警戒するのは当然です。以前の神職が身なりの怪しい笹丸を疑ったのも、無理はないことだと思います」
「当時の神職に|真贋《しんがん》を見抜く力がなかったまでの話です。言い訳になりません。これはあなたにも言えることですよ」と裕香。
「私たちはこの宮を預かる巫女です。用心して何が悪いのですか」と智美。「この二人の魔女だってどこの誰とも分からないのですから」
「失礼ですよ」と裕香。「どのみち、明日の|門開《もんびらき》之儀ですべてはっきりします」
「門開之儀というのはどのような儀式なのでしょうか?」と恵子。
「ゲートをこの世から、つまりこの奥之院の側から開く儀式です」と裕香。
「そのようなことが可能なのでしょうか?」と恵子。
「人間にはできません」と裕香。「通常は神が神界の側からゲートを開くのをこちらでお迎えします。ただし今回は、新神様がこちら側から開くそうです」
「できるはずがありません」と智美。「今となっては正確なゲートの位置すらわからないのに」
「ゲートは岩の断面ですよね」と恵子。
「え!」と四人の巫女は恵子の顔を見た。
「ゲートの位置は、この宮の最も大切な秘密ですよ」と裕香。「誰から聞いたのですか?」
「この宮に着いたとき揺らいで見える場所があって、それを桐子さんと艦長に言ったらゲートだと教えてくれました」と恵子。
「それはどこか、正確に言えますか?」と裕香。
「古い祠の右奥」とサキ。
「あなたにも見えたのですか?」と裕香はサキに言った。
「ええ」とサキ。「二階の高さぐらいの位置で鳥居ほどの大きさでしょうか」
「やはり、あなたがたは涙の魔術師様の付き人にふさわしい資質をお持ちです」と裕香。