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旅立(月編)

ー/ー




 《某国 星の町》


 夜が明ける前、宇宙基地は静寂に包まれていた。

 漆黒の闇の中で、ロケットの輪郭がかすかに浮かび上がり、星々が天空を点々と照らす。
 作業員たちは準備を整えるために忙しく動き回り、彼らの影が明かりの下で長く伸び、そこから不安や期待が感じ取れた。

 打ち上げ台の方でも、静かな緊張感が漂っていた。燃料の匂いが立ち込め、それが鼻腔を着く度に俺の中で宇宙へ旅立つ事への実感が高まって行った。


 武神様達の依頼を受けた俺達は、彼等の力で一瞬にしてこの国へやってきた。理由は勿論、ここのロケットで月へ行くためだ。

 そういう力があるなら、月へも一瞬で転送して欲しいもんだが、そこまでするのは難しいらしい。
 もっとも、月の連中と接触したくない彼等としてはそんなリスク背負える訳もないよな。

 
「本当に行くんだな……」







旅立 カオス
「何じゃ小僧、今になってビビリだしたのか?」


 俺がロケットを見上げながら放った呟きに、いつの間にか側に来ていた爺さんが反応する。

 
 黒いマント、オールバックにした白髪、西洋人らしいメリハリの付いた顔に刻まれた深い皺…………それでも、爺さんの姿勢や動きは矍鑠としていて老いを全く感じさせない(言動には痴呆の気が、かなり見えるが……)。
 
 かつて、『ヨーロッパの魔王』とまで恐れられた “ドクターカオス” だ。

 何故、爺さんがここにいるかと言うと、今回の旅は爺さんと、この国が共同で作ったロケットに乗るからだ……………………


 大丈夫だよな………?

 ロケットの外観はとても立派なんだが、なんだか “棺桶” にも見えて来てる。中身は勿論……いや、止めよう。なるように、なるしかない。

 補足すると、月への移動手段を確保するために武神様達は、事前に爺さんの方へ接触していそうだ。そして、爺さんの提案でこの国との合作という流れになったらしい。

 よく、この国はそんな訳の解らねぇ依頼受けたなとも思ったが、彼女達の沢山の金塊を見せたらアッサリOKが出たそうだ。

 世の中、やっぱ金か…………

 

「ビビってるのは、始めからだ……でも、そこに現実感がやっと出てきた」


 俺の答えに、爺さんは意外そうな顔をしながら返す。


「嫌に落ち着いてるのぉ……大騒ぎしたお前さんを黙らそうと、睡眠薬まで用意しといたのに」


 そりゃ、“気遣い” どうも……


「大騒ぎして何とかなるなら、いくらでも騒いでやるよ……でも、そうしたって何も変わらないんだろ?」


 俺がそう言うと、爺さんは更に怪訝な表情をする。

 
「やっぱり、おかしい……お主、変なもんでも喰ったんじゃないか?」
「言ってろ!それより、大丈夫なんだろうな?」

「心配するな、ワシは腐っても『ヨーロッパの魔王』とまで言われた男じゃぞ!」


 その腐っちまった部分が心配なんだけどな………まぁ、今はこの自信満々に笑う爺さんを信じるしかねぇ。 

 そんな事を考えてる内にトイレに行っていた宇宙船服姿の雪之丞が戻って来た。当たり前だが、俺も同じものを着ている(下はいつもの霊障用スーツ)。ゴワゴワして、動きにくい……これが、原因でやられなきゃいいが。


「おお、爺さん!あと、どれくらいで出れるんだ?」
「後は、マリアの接続調整だけだな。それが済み次第、すぐに出発出来る」


 いよいよか……これが地球で過ごす、最後の時間になるかもしれない。


 マリアとは、爺さんが最盛期の時に作った最高傑作のアンドロイド。

 見た目は、ピンク色の髪に緑色の瞳が特徴の西洋風の美少女。この姿は、爺さんが愛した女性を模したものだ。以前、先生と過去に飛ばされた時にモデルになった人物にも会ったことがある。

 華奢な見た目と裏腹に凄まじいパワーと耐久度を持ち、戦闘から家事までこなすなど、機能は高い。強いて欠点を上げるならば情緒面が薄く、表情に乏しい事だ。
 しかし、表面にこそ表れないものの彼女なりに内心は色々と考えているようで、常に爺さんの心配をしてる。

 こいつが居なくなったら、爺さん死ぬしかないよな……
 


「しかし、月旅行か……話を聞いて久しぶりにトキめいたぞ。あと400年若ければ、儂も行きたいもんじゃが…………」


 何が「月旅行」だ。

 遠い目で話しやがって、こっちは命掛けだぞ。アンタが強く希望すりゃ、本当に代わってやりたいぜ………


「ところで謝礼の方じゃが……失敗して、話が消えたら困るから今のうちに………」
「魔王がショボいこと、言ってんじゃねぇよ!」
「全くだ!俺等だって貰ってねぇんだよ。成功報酬のみ……取り分は、3人で折半だ」


 本当は貰ってるけど、置いとける場所がないんで武神様に預かって貰ってる。でも、ここで馬鹿正直に言う必要はねぇよな。


「マリアが居るから、4人折半に……」


 みみっちいジジィだな………


「しつけぇな……じゃあ、今回壊れたら修理費用は別で出してやるよ。忠夫もそれで、いいな?」
「ああ。マリアには世話になるから、それでいい」


 俺等は、宇宙空間では完全に素人、もっと言や “お荷物” と言っても過言じゃない。

 ロケットの操作は勿論、星間の移動全般を彼女に “おんぶ抱っこ” になるんだ。壊れなくても、メンテ代くらい出したって罰(バチ)は当たらないだろう。


「なら4人折半で……」


 まだ、言うかコイツは………いい加減ウンザリ仕掛けたが、ロケットの見物をしていた武神様達が、ちょうどいい具合にやって来てくれた。


「準備が整ったみたいですね」
「ああ、マリアの準備出来たら行けるらしいぜ」
「……ところで、武神様」


 バタバタしてて流しちまったが、俺には引っかかってる事があったので、このタイミングで聞くことにした。


「どうかしましたか?横島さん」
「あなたは今回の一件を “月だけ” の問題と仰いました。気になっていんたんですが………月に誰か居るんですか?」


 今回の問題は、魔族と神族の勢力争いの流れが根源にある。

 あの話し方だと、月にも何かしらの “勢力” があると感じていた。そして、そんな俺の疑問には魔族のジークが答えてくれた。


「『月神族』……月の精霊達だ。彼等は、神にも魔にも属していない」
「へぇ………そんな連中が」
「今更、何が出てきても驚かねぇよ」


 ……と言うより、感覚が既に麻痺ってる…………


「侵略を受けた月神族の要請に答えて、『人間』が『魔族』を倒す。表向きは、このシナリオで通すんだ…………そうそう、日本人には神話で馴染みがあると聞くけど……」


 話の途中で思い出したように呟くジークは、懐から小型の装置を取り出してた。

 装置は縦が7〜8cm、横が20cm程度の大きさ、でラグビーボールのような流線形のデザインをしていた。

 それをジークは慣れた手で操作していき、すぐに装置から巨大な立体映像が浮かび上がる……SF映画なんかで、よく見られる『フォログラム』と言う奴か…………?


「うぉっ!」
「おおっ!」


 立体映像に映っているのは、奇妙な服装(月神族の特有の服装?)をした、金色の長い髪をした美女だった。上半身しか映ってなかったが、髪は恐らく腰まで届いてるだろう。

 知性の深さを感じさせる切れ長の双眸、長い睫毛、スッとした鼻筋、全体の輪郭は西洋の女神像でも彷彿させるように整っている。

 俺のボキャブラリーじゃ、こんな人並みの表現しか出来ないが、これが『月神族』か…………


 “私は……月世界の女王、迦具夜__”


 喋った!?投影機じゃなくて、通信端末だったのか!?

 この野郎、それなら始めから言えよ。驚いた、おもくそ “間抜け” な顔見られたぞ……そんな俺の焦りを他所に、彼女は穏やかに話続ける。


“その方達が侵略者を討つ武士ですか?”
「はっ!!まもなく出発の予定です!」


 彼女の問いに姿勢を正したジークが、敬礼しながら答える。そして、彼女は俺達の方を向き直り語りかけてきた。


“___侵略者は凶暴で強力です。我々の主権を犯し、無法を続けており手がつけられません。一刻も早い救援を要請します”


 彼等にどうにもならないような連中を、俺達2人でやれってか………解っちゃぁいたが、とんでもねぇ依頼を引き受けちまったと改めて実感させられる。


「『なよ竹のかぐや姫』、昔話に出てくる永遠の美女よ。伝説とはイメージが違うけど」


 俺の横で、ヒャクメが補足してくれた。

 なるほど……この美しさなら伝説になるのも頷ける……………って呆けてる場合じゃねぇ!!


「……やれるだけ、やってみます…………」


 辛うじて言葉を絞り出すが、なんの捻りもない陳腐な内容に自分で恥ずかしくなる……


(……おい!お前も黙ってねぇで、何か言えよ)


 俺は、横で黙りっぱなしの雪之丞を肘で小突きながら促す。


「ママ……「やっぱ、黙れ!!」…………」

「「「「「…………………………」」」」」


 …………言うんじゃなかった。

 お前は、美人なら誰でもママなのか?俺が呆けてるなら、赤面してるコイツは “惚けてる” か?


“ありがとう___到着をお待ちしています。私は……月世界の女王、迦具夜____”

 
 その言葉を最後に、立体映像は消えた。





    ◇◇◇


“こちら・マリア!接続チェック・良好!!カウントダウン・よろしいですか?”


 ロケットの狭い室内にマリアの通信音が響く。


「ああ、いつでも行ける!」
「頼むぞ、マリア……」


 まさか、自分の人生でロケットに乗る事になるなんてまるで想像してなかった。周りに計器類が所狭しと並んじゃいるが、俺達に操作出来るのなんて精々通信装置くらいだ。

 地球からの通信は常にONにしちゃいるが、本当に頼りになるのは一緒にいるアイツだけだ。



“_____5……4……3……2……1……点火! リフトオフ!!”



 ゴオオオオォォォォォン!!!!!!



 凄まじい轟音と同時に強烈なGが、俺達を襲う!!

 なんの訓練もシミュレーションもなしに、これはかなりキツイ……全身に、霊力でブーストして何とか耐える。

 
「クるな……」
「ああ、かなりキツイ……」


 そんな状況の中、地球からの通信音が聴こえてくる。

 
 “おおっ! “ちゃんと” 飛んだぞ!?”
 “ち、ちゃんと……”


 ……………………途中で爆発したら、幽霊になってでもテメェは爆散してやるからな!ジジィ!!


 俺は、凄まじいGに耐えながら決意を新たにした。


  


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 夜が明ける前、宇宙基地は静寂に包まれていた。
 漆黒の闇の中で、ロケットの輪郭がかすかに浮かび上がり、星々が天空を点々と照らす。
 作業員たちは準備を整えるために忙しく動き回り、彼らの影が明かりの下で長く伸び、そこから不安や期待が感じ取れた。
 打ち上げ台の方でも、静かな緊張感が漂っていた。燃料の匂いが立ち込め、それが鼻腔を着く度に俺の中で宇宙へ旅立つ事への実感が高まって行った。
 武神様達の依頼を受けた俺達は、彼等の力で一瞬にしてこの国へやってきた。理由は勿論、ここのロケットで月へ行くためだ。
 そういう力があるなら、月へも一瞬で転送して欲しいもんだが、そこまでするのは難しいらしい。
 もっとも、月の連中と接触したくない彼等としてはそんなリスク背負える訳もないよな。
「本当に行くんだな……」
「何じゃ小僧、今になってビビリだしたのか?」
 俺がロケットを見上げながら放った呟きに、いつの間にか側に来ていた爺さんが反応する。
 黒いマント、オールバックにした白髪、西洋人らしいメリハリの付いた顔に刻まれた深い皺…………それでも、爺さんの姿勢や動きは矍鑠としていて老いを全く感じさせない(言動には痴呆の気が、かなり見えるが……)。
 かつて、『ヨーロッパの魔王』とまで恐れられた “ドクターカオス” だ。
 何故、爺さんがここにいるかと言うと、今回の旅は爺さんと、この国が共同で作ったロケットに乗るからだ……………………
 大丈夫だよな………?
 ロケットの外観はとても立派なんだが、なんだか “棺桶” にも見えて来てる。中身は勿論……いや、止めよう。なるように、なるしかない。
 補足すると、月への移動手段を確保するために武神様達は、事前に爺さんの方へ接触していそうだ。そして、爺さんの提案でこの国との合作という流れになったらしい。
 よく、この国はそんな訳の解らねぇ依頼受けたなとも思ったが、彼女達の沢山の金塊を見せたらアッサリOKが出たそうだ。
 世の中、やっぱ金か…………
「ビビってるのは、始めからだ……でも、そこに現実感がやっと出てきた」
 俺の答えに、爺さんは意外そうな顔をしながら返す。
「嫌に落ち着いてるのぉ……大騒ぎしたお前さんを黙らそうと、睡眠薬まで用意しといたのに」
 そりゃ、“気遣い” どうも……
「大騒ぎして何とかなるなら、いくらでも騒いでやるよ……でも、そうしたって何も変わらないんだろ?」
 俺がそう言うと、爺さんは更に怪訝な表情をする。
「やっぱり、おかしい……お主、変なもんでも喰ったんじゃないか?」
「言ってろ!それより、大丈夫なんだろうな?」
「心配するな、ワシは腐っても『ヨーロッパの魔王』とまで言われた男じゃぞ!」
 その腐っちまった部分が心配なんだけどな………まぁ、今はこの自信満々に笑う爺さんを信じるしかねぇ。 
 そんな事を考えてる内にトイレに行っていた宇宙船服姿の雪之丞が戻って来た。当たり前だが、俺も同じものを着ている(下はいつもの霊障用スーツ)。ゴワゴワして、動きにくい……これが、原因でやられなきゃいいが。
「おお、爺さん!あと、どれくらいで出れるんだ?」
「後は、マリアの接続調整だけだな。それが済み次第、すぐに出発出来る」
 いよいよか……これが地球で過ごす、最後の時間になるかもしれない。
 マリアとは、爺さんが最盛期の時に作った最高傑作のアンドロイド。
 見た目は、ピンク色の髪に緑色の瞳が特徴の西洋風の美少女。この姿は、爺さんが愛した女性を模したものだ。以前、先生と過去に飛ばされた時にモデルになった人物にも会ったことがある。
 華奢な見た目と裏腹に凄まじいパワーと耐久度を持ち、戦闘から家事までこなすなど、機能は高い。強いて欠点を上げるならば情緒面が薄く、表情に乏しい事だ。
 しかし、表面にこそ表れないものの彼女なりに内心は色々と考えているようで、常に爺さんの心配をしてる。
 こいつが居なくなったら、爺さん死ぬしかないよな……
「しかし、月旅行か……話を聞いて久しぶりにトキめいたぞ。あと400年若ければ、儂も行きたいもんじゃが…………」
 何が「月旅行」だ。
 遠い目で話しやがって、こっちは命掛けだぞ。アンタが強く希望すりゃ、本当に代わってやりたいぜ………
「ところで謝礼の方じゃが……失敗して、話が消えたら困るから今のうちに………」
「魔王がショボいこと、言ってんじゃねぇよ!」
「全くだ!俺等だって貰ってねぇんだよ。成功報酬のみ……取り分は、3人で折半だ」
 本当は貰ってるけど、置いとける場所がないんで武神様に預かって貰ってる。でも、ここで馬鹿正直に言う必要はねぇよな。
「マリアが居るから、4人折半に……」
 みみっちいジジィだな………
「しつけぇな……じゃあ、今回壊れたら修理費用は別で出してやるよ。忠夫もそれで、いいな?」
「ああ。マリアには世話になるから、それでいい」
 俺等は、宇宙空間では完全に素人、もっと言や “お荷物” と言っても過言じゃない。
 ロケットの操作は勿論、星間の移動全般を彼女に “おんぶ抱っこ” になるんだ。壊れなくても、メンテ代くらい出したって罰(バチ)は当たらないだろう。
「なら4人折半で……」
 まだ、言うかコイツは………いい加減ウンザリ仕掛けたが、ロケットの見物をしていた武神様達が、ちょうどいい具合にやって来てくれた。
「準備が整ったみたいですね」
「ああ、マリアの準備出来たら行けるらしいぜ」
「……ところで、武神様」
 バタバタしてて流しちまったが、俺には引っかかってる事があったので、このタイミングで聞くことにした。
「どうかしましたか?横島さん」
「あなたは今回の一件を “月だけ” の問題と仰いました。気になっていんたんですが………月に誰か居るんですか?」
 今回の問題は、魔族と神族の勢力争いの流れが根源にある。
 あの話し方だと、月にも何かしらの “勢力” があると感じていた。そして、そんな俺の疑問には魔族のジークが答えてくれた。
「『月神族』……月の精霊達だ。彼等は、神にも魔にも属していない」
「へぇ………そんな連中が」
「今更、何が出てきても驚かねぇよ」
 ……と言うより、感覚が既に麻痺ってる…………
「侵略を受けた月神族の要請に答えて、『人間』が『魔族』を倒す。表向きは、このシナリオで通すんだ…………そうそう、日本人には神話で馴染みがあると聞くけど……」
 話の途中で思い出したように呟くジークは、懐から小型の装置を取り出してた。
 装置は縦が7〜8cm、横が20cm程度の大きさ、でラグビーボールのような流線形のデザインをしていた。
 それをジークは慣れた手で操作していき、すぐに装置から巨大な立体映像が浮かび上がる……SF映画なんかで、よく見られる『フォログラム』と言う奴か…………?
「うぉっ!」
「おおっ!」
 立体映像に映っているのは、奇妙な服装(月神族の特有の服装?)をした、金色の長い髪をした美女だった。上半身しか映ってなかったが、髪は恐らく腰まで届いてるだろう。
 知性の深さを感じさせる切れ長の双眸、長い睫毛、スッとした鼻筋、全体の輪郭は西洋の女神像でも彷彿させるように整っている。
 俺のボキャブラリーじゃ、こんな人並みの表現しか出来ないが、これが『月神族』か…………
 “私は……月世界の女王、迦具夜__”
 喋った!?投影機じゃなくて、通信端末だったのか!?
 この野郎、それなら始めから言えよ。驚いた、おもくそ “間抜け” な顔見られたぞ……そんな俺の焦りを他所に、彼女は穏やかに話続ける。
“その方達が侵略者を討つ武士ですか?”
「はっ!!まもなく出発の予定です!」
 彼女の問いに姿勢を正したジークが、敬礼しながら答える。そして、彼女は俺達の方を向き直り語りかけてきた。
“___侵略者は凶暴で強力です。我々の主権を犯し、無法を続けており手がつけられません。一刻も早い救援を要請します”
 彼等にどうにもならないような連中を、俺達2人でやれってか………解っちゃぁいたが、とんでもねぇ依頼を引き受けちまったと改めて実感させられる。
「『なよ竹のかぐや姫』、昔話に出てくる永遠の美女よ。伝説とはイメージが違うけど」
 俺の横で、ヒャクメが補足してくれた。
 なるほど……この美しさなら伝説になるのも頷ける……………って呆けてる場合じゃねぇ!!
「……やれるだけ、やってみます…………」
 辛うじて言葉を絞り出すが、なんの捻りもない陳腐な内容に自分で恥ずかしくなる……
(……おい!お前も黙ってねぇで、何か言えよ)
 俺は、横で黙りっぱなしの雪之丞を肘で小突きながら促す。
「ママ……「やっぱ、黙れ!!」…………」
「「「「「…………………………」」」」」
 …………言うんじゃなかった。
 お前は、美人なら誰でもママなのか?俺が呆けてるなら、赤面してるコイツは “惚けてる” か?
“ありがとう___到着をお待ちしています。私は……月世界の女王、迦具夜____”
 その言葉を最後に、立体映像は消えた。
    ◇◇◇
“こちら・マリア!接続チェック・良好!!カウントダウン・よろしいですか?”
 ロケットの狭い室内にマリアの通信音が響く。
「ああ、いつでも行ける!」
「頼むぞ、マリア……」
 まさか、自分の人生でロケットに乗る事になるなんてまるで想像してなかった。周りに計器類が所狭しと並んじゃいるが、俺達に操作出来るのなんて精々通信装置くらいだ。
 地球からの通信は常にONにしちゃいるが、本当に頼りになるのは一緒にいるアイツだけだ。
“_____5……4……3……2……1……点火! リフトオフ!!”
 ゴオオオオォォォォォン!!!!!!
 凄まじい轟音と同時に強烈なGが、俺達を襲う!!
 なんの訓練もシミュレーションもなしに、これはかなりキツイ……全身に、霊力でブーストして何とか耐える。
「クるな……」
「ああ、かなりキツイ……」
 そんな状況の中、地球からの通信音が聴こえてくる。
 “おおっ! “ちゃんと” 飛んだぞ!?”
 “ち、ちゃんと……”
 ……………………途中で爆発したら、幽霊になってでもテメェは爆散してやるからな!ジジィ!!
 俺は、凄まじいGに耐えながら決意を新たにした。