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接触(月編)

ー/ー



「やれやれ……」


 足場が人一人通るのが限界の断崖絶壁の道を歩きながら、思わず溜息をが出た。狭い道が危険だから、ボヤいてる訳じゃない。始めは恐ろしかったが、何往復もしてる内にどうでも良くなった。

 溜息が出たのは、別の理由からだ。


「どうした?」


 そんな俺に、前を歩く雪之丞が振り向かずに聞いて来る。狭い道で変な態勢を取れば、足を踏み外す恐れがあるからだ。


「六道の依頼……断っちまって、良かったのかと思ってな」
「ああ?俺が嫌だって言った時、お前別に反対しなかったろ?「そう言うと思った」とか言ってよ」


 ああ、確かに言ったさ。六道女学院には、俺自身行きたくない理由がある。


「学生相手の模擬戦なんて、お前に不向きと解りきってたからな。でも、これで貴重な伝手が一つ潰れちまったよ……」


 別に(霊能科の)学生達が悪いとは思わない。

 ただ、人の限界を突破し続ける事に執念を燃やすこいつを彼女達と同じ土俵に上げるのは、余りにも危険な気がした。

 それが例え、教育演習の模擬戦であったとしてもだ……


「なら、無理して受けりゃ良かったのか?」
「い〜や。受けたら、もっと悲惨になるからいい」



 チャンスの芽じゃなくて、破滅(・・)の芽を潰したと思って切り替えるしかねぇな………





    ◇◇◇


「よっ!少し間が開いたな」
「また、よろしく頼む」


 人界最高峰の霊能修業場『妙神山』…………神界と人界の狭間に位置し、そこを管理するのは『斉天大聖』様、そして武神として大勢の人間から崇められる『小竜姫』様……

 名のある霊能者でも一生に一度、あっても数回訪れれば多いことになる敷居の高い場所。


 本来なら…………な。


 そんな、世の霊能者達から見れば雲の上の存在である由緒正しき場所を俺達2人は、ほぼ毎月のように訪れてる……

 それも「やる事なくて、暇だから来ました〜」的なノリで………………凄いのか?馬鹿なのか?


 多分、後者だ…………
 

 だが、一応断る。

 俺はここが、そんな気安い場所とは一回も思ったことはない!

 毎回、面倒を見てくれる小竜姫様には感謝こそすれ、とても頭が上がらない…………が俺の隣にいる小男は、絶対そんな殊勝なこと考えてねぇ……!!

 もう、「来ていいって言うから、来てやったぜ♪」的なノリ全開だろ…………!?まぁ、武神様も拘らない方だから、これでいいのかもしらんが………


 そんな考えても、どうにもならない事を思う……それも、ある意味お約束。そして、そんな俺達を『鬼門』の2体が呆れながら迎え入れるのが、いつもの流れだった。

 そう、いつもの…………




「やっと、来たか……!」
「待っていたぞ、すぐに入れ!」


 ………流れが違った。俺達を待っていた…………?


 状況が呑み込めないまま門をくぐると、中には武神様の他に意外な人物達が待っていた。

 

「久しぶりだね、2人共」


 黒い軍服を身にまとい、頭にはベレー帽と言う出で立ち。穏やかで、整った顔立ちをした魔族の青年が俺達に声を掛けてきた。
 

「おっ、あん時の……!」
「ジークフリード……」


 魔族の正規軍(情報部)に所属するジークフリート(相性ジーク)。以前、先生を狙う魔族相手に共闘した事がある。

 この男だけじゃない。


「2人共久しぶりなのね〜」
「あの時は、世話になったな」


 何と表現してよいか、良く解らない奇抜な衣装を着た武神様の親友のヒャクメ(百目)。そして、ジークと同じような格好をした彼の姉であるワルキューレもいる。




    ◆◆◆


「ここに居ていいのは、戦士のみ! 民間人は下がってろ!!」
「……くっ」




    ◆◆◆

「………………」


 チッ…………
 

「お前らまで………一体どうしたんだよ?神族と魔族の揃い踏みで……」
「それは私から説明します」
「武神様……」

 
 そんな戸惑う(俺もだが)雪之丞の問いに答えたのは、武神様だった。


「あなた達2人に至急、向かって欲しい所があるんです」
「向かう……?」
「一体どこに……」


 俺達がそう言うと、武神様は真剣な面持ちで空の一点を指差す!


「 “月” です……!」


 釣られて俺達もそっちを見る。


「「……………………」」


 …………厚い雲と時間帯のせいで何も見えなかった。多分、その方向に月があんだろうな………


「……悪い、話が全く見えねぇ…………」


 右に同じ…………どういうこった??




    ◇◇◇


 全く合点の行かない俺達だったが、取り敢えず立ち話もなんだと言うことで、一旦全員で屋敷の広間に集まって向かい合った。

 こっちから見て、正座した武神様の右隣にヒャクメ、左側にワルキューレ、ジークが位置する。

 俺達は、その向かい側で “胡座” を搔いて座る。


 神族、魔族がキチンとした姿勢でいるのに対して人間だけが “胡座” なんて、とんでもねぇ暴挙働いてるとしか思えねぇんだが、俺達はどっちもそういうのが苦手なんだ。

 雪之丞の野郎は俺と違って、端から気にもならないらしい。

 豪胆なんだか、傍若無人と言えばいいのか…………一応、言い訳として形に拘らない武神様に、俺達が慣れすぎてると言うのもあるが……

 
 そんな俺の心情を他所に、武神様はつらつら(・・・・)と話し始める。

 

「月は、はるか昔から地球のあらゆる物に影響を与えてきた巨大な魔力の源です」


 …………確かにそうだな。

 月が出ている時は、悪霊や妖怪達が活発化するって言うのは、よく聞く。
 

「しかし、地理的には余りに遠距離なので、魔族も神族も手が出せないいわば中立地帯なんです」


 …………それは、初耳だな。

 まぁ、スケールがデカすぎて俺等には、縁のない話なのかもしれない。。

 そんな風に思ってると、今度はワルキューレ達が武神様の話を引き継ぐよう語りだす。
 

「ところが、どういう手を使ったかアシュタロスの手の者が月に侵入した。連中の目的は明らかだ」


 厳しい顔を、更に厳しくして語るワルキューレ。

 相変わらずだな………この女に、今の俺はどう映ってるんだ?
 

「月の魔力を地球に持ち帰り、それを使って魔族の政権を握る……」


 今、喋ってるのはヒャクメだ。

 このうっかり女も真剣な顔してりゃ、有能そうに見える。俺にだけは、言われたくないだろうが……
 

「そして、神族と人間の抹殺だ。地球は滅びるかもしれん!」


 最後にジークが纏める。

 皆、表情は真剣だ………

 

「とんでもねぇ、話だな……」
「ああ……」


 …………確かにとんでもねぇ………だが、さっき言ったように話が デカすぎて(・・・・・) 全くピンと来ない……頭では理解しても感情が追いつかない。そんな感じか?


 …………ただ、追いつかないなりに疑問も生まれる。



「それを、私達に何とかして欲しいと?」
「その通りです」


 マジか?即答かよ……
 
 
「事態が深刻なのは、理解しました……だけど、何で私達なんです?神族と魔族で、協力して事に当たる方が確実に思えますが」


 俺の問いに雪之丞も同調する。
 

「確かにそうだな……いつ来るか解らねぇ俺達なんか待ってねぇで、とっとと行って倒しちまえばいいじゃねぇか?」


 そんな俺等の問いに先に答えたのは、魔族のワルキューレだった。


「魔族内部の武闘派は、これをきっかけに暴走するおそれがある。正面きって対立すれば内乱の可能性があり、魔族の和平派は手が出せないのだ」


 なるほど。そう言うことか……

 以前、ここが襲撃された時も似たような事言ってたな。今回もその流れとすると、やっぱり神族側も…………


「神族としても、魔族の勢力と正面対決すると、開戦の口実を与えることになります。これは、あくまで『月』だけの問題として処理したいんです」


 俺の予想を裏付けるように、武神様も答えてくれた。

 理解はした…………だが、そうなるとまつ(・・)新たな疑問が生まれる。


「人間だけで動く必要性は解りました。でしたら、私達でなく美神先生にでも頼んだ方が確実では?」


 あの人には、前世からの因縁やら、香港での実績もある。それだって、地球の運命を決定付けるような一大事手が余りそうだが俺達よりはマシだろう……


「彼女には、ここ数週間ずっと監視がついてる。コンタクトを取れば、月にいる連中に察知されてしまうんで近付ことが出来ないんだ」
「状況は、本当に切羽詰まっています。奴等に気づかれないうちに、乗り込んで貰いたい。だから、私があなた達2人を推薦しました」


 おいおい……そりゃ、いくらなんでも…………俺が呆気に取られてると、今度は雪之丞が返す。
 

「俺等2人が、ここに来るって何で解ったんだ?」
「小竜姫殿が、そろそろ2人が来る頃と言っていたんだ。来なければ、こっちから出向こうと思ってたけど本当に来て驚いてる」







接触 小竜姫
「……2人を危険な場所へ送り出すことは、心苦しくもあります。でも、雪之丞さん。横島さん。ここ数年、あなた達の修業と成長を見守ってきました。今の2人の戦闘力 ““だけ”” なら、美神さんにだって負けません!お願い、力を貸して下さい」


 ……………………武神様の声は穏やかなものだったが、同時に強い意志が感じられた。俺達2人を見据えてくる目には、一切の疑念も欺瞞もなく、澄んでるようにさえ見える。

 間違いない……この人の言葉は、本心だ。


『だけ』を強調したところは、すげぇ気になったが…………

  

「「…………………………」」

「特に横島さん!」
「!?」


 俺を見つめる、武神様が更に続ける。


「あなたは、ずっと美神さんに付いて除霊してました。場数 “““だけ””” なら、相当踏んでる筈です!」
「…………『だけ』をいちいち、強調しないで下さい。解ってますから……」


 要するに、さっき言ったこと以外は不安で仕方ねぇってことね…………このお方も、可愛いらしい顔をして容赦なく抉ってくれるぜ。

 懇願されてんだか、ディスられてんだか良く解らん………


「ごめんなさい……でも、今はあなた達2人が頼りなんです!」 

 
 ………………やれやれ……本当は、もっと小さい事から徐々にステップアップしてくもんなんだが、このお方にここまで(・・・・)言われちゃぁな。

 俺は武神様ではなく、雪之丞の方を向いて口を開く。


「……お前の答えは、とっくに決まってんだろ?」
「当たり前だっ!!こんな面白ぇ依頼、断れるか!!!」

「面白い…………遊びに行くんじゃないんだぞ」


 雪之丞の言葉にワルキューレが難色を示すが、この際それはどうでもいい。


「じゃあ、決まりだな」

 



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「やれやれ……」
 足場が人一人通るのが限界の断崖絶壁の道を歩きながら、思わず溜息をが出た。狭い道が危険だから、ボヤいてる訳じゃない。始めは恐ろしかったが、何往復もしてる内にどうでも良くなった。
 溜息が出たのは、別の理由からだ。
「どうした?」
 そんな俺に、前を歩く雪之丞が振り向かずに聞いて来る。狭い道で変な態勢を取れば、足を踏み外す恐れがあるからだ。
「六道の依頼……断っちまって、良かったのかと思ってな」
「ああ?俺が嫌だって言った時、お前別に反対しなかったろ?「そう言うと思った」とか言ってよ」
 ああ、確かに言ったさ。六道女学院には、俺自身行きたくない理由がある。
「学生相手の模擬戦なんて、お前に不向きと解りきってたからな。でも、これで貴重な伝手が一つ潰れちまったよ……」
 別に(霊能科の)学生達が悪いとは思わない。
 ただ、人の限界を突破し続ける事に執念を燃やすこいつを彼女達と同じ土俵に上げるのは、余りにも危険な気がした。
 それが例え、教育演習の模擬戦であったとしてもだ……
「なら、無理して受けりゃ良かったのか?」
「い〜や。受けたら、もっと悲惨になるからいい」
 チャンスの芽じゃなくて、|破滅《・・》の芽を潰したと思って切り替えるしかねぇな………
    ◇◇◇
「よっ!少し間が開いたな」
「また、よろしく頼む」
 人界最高峰の霊能修業場『妙神山』…………神界と人界の狭間に位置し、そこを管理するのは『斉天大聖』様、そして武神として大勢の人間から崇められる『小竜姫』様……
 名のある霊能者でも一生に一度、あっても数回訪れれば多いことになる敷居の高い場所。
 本来なら…………な。
 そんな、世の霊能者達から見れば雲の上の存在である由緒正しき場所を俺達2人は、ほぼ毎月のように訪れてる……
 それも「やる事なくて、暇だから来ました〜」的なノリで………………凄いのか?馬鹿なのか?
 多分、後者だ…………
 だが、一応断る。
 俺はここが、そんな気安い場所とは一回も思ったことはない!
 毎回、面倒を見てくれる小竜姫様には感謝こそすれ、とても頭が上がらない…………が俺の隣にいる小男は、絶対そんな殊勝なこと考えてねぇ……!!
 もう、「来ていいって言うから、来てやったぜ♪」的なノリ全開だろ…………!?まぁ、武神様も拘らない方だから、これでいいのかもしらんが………
 そんな考えても、どうにもならない事を思う……それも、ある意味お約束。そして、そんな俺達を『鬼門』の2体が呆れながら迎え入れるのが、いつもの流れだった。
 そう、いつもの…………
「やっと、来たか……!」
「待っていたぞ、すぐに入れ!」
 ………流れが違った。俺達を待っていた…………?
 状況が呑み込めないまま門をくぐると、中には武神様の他に意外な人物達が待っていた。
「久しぶりだね、2人共」
 黒い軍服を身にまとい、頭にはベレー帽と言う出で立ち。穏やかで、整った顔立ちをした魔族の青年が俺達に声を掛けてきた。
「おっ、あん時の……!」
「ジークフリード……」
 魔族の正規軍(情報部)に所属するジークフリート(相性ジーク)。以前、先生を狙う魔族相手に共闘した事がある。
 この男だけじゃない。
「2人共久しぶりなのね〜」
「あの時は、世話になったな」
 何と表現してよいか、良く解らない奇抜な衣装を着た武神様の親友のヒャクメ(百目)。そして、ジークと同じような格好をした彼の姉であるワルキューレもいる。
    ◆◆◆
「ここに居ていいのは、戦士のみ! 民間人は下がってろ!!」
「……くっ」
    ◆◆◆
「………………」
 チッ…………
「お前らまで………一体どうしたんだよ?神族と魔族の揃い踏みで……」
「それは私から説明します」
「武神様……」
 そんな戸惑う(俺もだが)雪之丞の問いに答えたのは、武神様だった。
「あなた達2人に至急、向かって欲しい所があるんです」
「向かう……?」
「一体どこに……」
 俺達がそう言うと、武神様は真剣な面持ちで空の一点を指差す!
「 “月” です……!」
 釣られて俺達もそっちを見る。
「「……………………」」
 …………厚い雲と時間帯のせいで何も見えなかった。多分、その方向に月があんだろうな………
「……悪い、話が全く見えねぇ…………」
 右に同じ…………どういうこった??
    ◇◇◇
 全く合点の行かない俺達だったが、取り敢えず立ち話もなんだと言うことで、一旦全員で屋敷の広間に集まって向かい合った。
 こっちから見て、正座した武神様の右隣にヒャクメ、左側にワルキューレ、ジークが位置する。
 俺達は、その向かい側で “胡座” を搔いて座る。
 神族、魔族がキチンとした姿勢でいるのに対して人間だけが “胡座” なんて、とんでもねぇ暴挙働いてるとしか思えねぇんだが、俺達はどっちもそういうのが苦手なんだ。
 雪之丞の野郎は俺と違って、端から気にもならないらしい。
 豪胆なんだか、傍若無人と言えばいいのか…………一応、言い訳として形に拘らない武神様に、俺達が慣れすぎてると言うのもあるが……
 そんな俺の心情を他所に、武神様は|つらつら《・・・・》と話し始める。
「月は、はるか昔から地球のあらゆる物に影響を与えてきた巨大な魔力の源です」
 …………確かにそうだな。
 月が出ている時は、悪霊や妖怪達が活発化するって言うのは、よく聞く。
「しかし、地理的には余りに遠距離なので、魔族も神族も手が出せないいわば中立地帯なんです」
 …………それは、初耳だな。
 まぁ、スケールがデカすぎて俺等には、縁のない話なのかもしれない。。
 そんな風に思ってると、今度はワルキューレ達が武神様の話を引き継ぐよう語りだす。
「ところが、どういう手を使ったかアシュタロスの手の者が月に侵入した。連中の目的は明らかだ」
 厳しい顔を、更に厳しくして語るワルキューレ。
 相変わらずだな………この女に、今の俺はどう映ってるんだ?
「月の魔力を地球に持ち帰り、それを使って魔族の政権を握る……」
 今、喋ってるのはヒャクメだ。
 このうっかり女も真剣な顔してりゃ、有能そうに見える。俺にだけは、言われたくないだろうが……
「そして、神族と人間の抹殺だ。地球は滅びるかもしれん!」
 最後にジークが纏める。
 皆、表情は真剣だ………
「とんでもねぇ、話だな……」
「ああ……」
 …………確かにとんでもねぇ………だが、さっき言ったように話が |デカすぎて《・・・・・》 全くピンと来ない……頭では理解しても感情が追いつかない。そんな感じか?
 …………ただ、追いつかないなりに疑問も生まれる。
「それを、私達に何とかして欲しいと?」
「その通りです」
 マジか?即答かよ……
「事態が深刻なのは、理解しました……だけど、何で私達なんです?神族と魔族で、協力して事に当たる方が確実に思えますが」
 俺の問いに雪之丞も同調する。
「確かにそうだな……いつ来るか解らねぇ俺達なんか待ってねぇで、とっとと行って倒しちまえばいいじゃねぇか?」
 そんな俺等の問いに先に答えたのは、魔族のワルキューレだった。
「魔族内部の武闘派は、これをきっかけに暴走するおそれがある。正面きって対立すれば内乱の可能性があり、魔族の和平派は手が出せないのだ」
 なるほど。そう言うことか……
 以前、ここが襲撃された時も似たような事言ってたな。今回もその流れとすると、やっぱり神族側も…………
「神族としても、魔族の勢力と正面対決すると、開戦の口実を与えることになります。これは、あくまで『月』だけの問題として処理したいんです」
 俺の予想を裏付けるように、武神様も答えてくれた。
 理解はした…………だが、そうなると|まつ《・・》新たな疑問が生まれる。
「人間だけで動く必要性は解りました。でしたら、私達でなく美神先生にでも頼んだ方が確実では?」
 あの人には、前世からの因縁やら、香港での実績もある。それだって、地球の運命を決定付けるような一大事手が余りそうだが俺達よりはマシだろう……
「彼女には、ここ数週間ずっと監視がついてる。コンタクトを取れば、月にいる連中に察知されてしまうんで近付ことが出来ないんだ」
「状況は、本当に切羽詰まっています。奴等に気づかれないうちに、乗り込んで貰いたい。だから、私があなた達2人を推薦しました」
 おいおい……そりゃ、いくらなんでも…………俺が呆気に取られてると、今度は雪之丞が返す。
「俺等2人が、ここに来るって何で解ったんだ?」
「小竜姫殿が、そろそろ2人が来る頃と言っていたんだ。来なければ、こっちから出向こうと思ってたけど本当に来て驚いてる」
「……2人を危険な場所へ送り出すことは、心苦しくもあります。でも、雪之丞さん。横島さん。ここ数年、あなた達の修業と成長を見守ってきました。今の2人の戦闘力 ““だけ”” なら、美神さんにだって負けません!お願い、力を貸して下さい」
 ……………………武神様の声は穏やかなものだったが、同時に強い意志が感じられた。俺達2人を見据えてくる目には、一切の疑念も欺瞞もなく、澄んでるようにさえ見える。
 間違いない……この人の言葉は、本心だ。
『だけ』を強調したところは、すげぇ気になったが…………
「「…………………………」」
「特に横島さん!」
「!?」
 俺を見つめる、武神様が更に続ける。
「あなたは、ずっと美神さんに付いて除霊してました。場数 “““だけ””” なら、相当踏んでる筈です!」
「…………『だけ』をいちいち、強調しないで下さい。解ってますから……」
 要するに、さっき言ったこと以外は不安で仕方ねぇってことね…………このお方も、可愛いらしい顔をして容赦なく抉ってくれるぜ。
 懇願されてんだか、ディスられてんだか良く解らん………
「ごめんなさい……でも、今はあなた達2人が頼りなんです!」 
 ………………やれやれ……本当は、もっと小さい事から徐々にステップアップしてくもんなんだが、このお方に|ここまで《・・・・》言われちゃぁな。
 俺は武神様ではなく、雪之丞の方を向いて口を開く。
「……お前の答えは、とっくに決まってんだろ?」
「当たり前だっ!!こんな面白ぇ依頼、断れるか!!!」
「面白い…………遊びに行くんじゃないんだぞ」
 雪之丞の言葉にワルキューレが難色を示すが、この際それはどうでもいい。
「じゃあ、決まりだな」