「………今回もかったるかったな」
「また、それかよ……」
毎回、毎回飽きずによく言うな………まぁ、最近は俺も似たような事を考えることがあるんだが。
現在時刻は夜の3時過ぎ、ここは高速のサービスエリアの食堂。
地方の除霊を終えて東京へ帰宅中にお互い腹が減ったんで、現在“夜食”休憩中というやつだ。
ちなみに雪之丞はカツ丼とカレー、俺はラーメンにカツ丼……ぶっちゃけサービスエリアなんて、今言った三品程度しかない。
もっと言えば大して旨くもねぇが、空腹という最強のスパイスが効いてるんで特に文句はない。
俺は車の中で着替えたが、雪之丞は構わず仕事着のまま。コンバットスーツ姿の男とボロいTシャツにジーパンを履いた男と言う、何だかよく解らない組み合わせだ。
時間が時間だから、俺達しかいないのが救いだよ。周りの目を気にしなくて済むからな。
んで……話を戻すと、2人共食ってる間は黙ってたんだが、一段落した辺りで雪之丞がいつも通りボヤき始めたわけだ。
「無事に終わって良かったじゃねぇか。2人共怪我してねぇし、実績だって上がる」
……嘘じゃねぇけど、毎回似たような返ししてる。コイツがコイツなら俺も俺だな。
取り敢えず生活できるくらいに安定はしてきたけど、余裕があるわけじゃない。定期的に仕事を入れないとすぐに干上がる……そんな危うさからは、まだ脱しきれずにいる。
「仕事に困らないのはいいんだけどよぉ……本当に実績上がってんだかなぁ? 毎回似たようなことしてる気がするぜ」
明後日の方を見て、ため息をつく雪之丞を見て少し思う。以前は単に相手が弱くて詰まらないから言ってる感じだったが、最近は少しニュアンスが変わってる気がする。
生活があるから、退屈な仕事でもやらなきゃならない。
でも、それは何かを成し得る為の行動と言うよりも、迫りくる不安からの逃避する為の行動だ。
それがコイツのジレンマになってるんだろうか……?俺も最近たまに感じることがある。
「言いたいことは解るさ。でも、事務所開いてから半年も経ってねぇんだぞ、こんなもんだろ」
…………そう、まだそれくらいしか経ってない。
妙神山のせいで体感時間がおかしなことになってるが、実際はそんなもんだ。他のGSだって開いたばかりなんて、似たような感じだと思う。
魔族と契約してモグリになるなんて、ダブルコンボかましたコイツが他のGSと同様なのかは疑問だが……
「まぁな……元“モグリ”の俺が普通にGSしてるだけで奇跡なんだ、そうそう上手くは行かねぇよな」
…………心読まれたか!?
いや、こいつなりに思うところがあんだろうな。自嘲気味に呟くコイツにかなりドキッとしちまったよ。
「言っても仕方ねぇ……実績は確実に上がってるし、失敗は一回もしてない…………ただ、変化は欲しいよな」
半分後ろめたさ、半分は本音で取り繕うように同意する。
これまで2人で依頼をこなしてきた事で、それなりに自信も付いた。修業を繰り返したことで、地力も上がってる。
ただ、毎回同じような事ばかりしてるとどうしても不安になる。
やってる事に意味はあるのか?後、何年同じように過ごせばいいんだ?
………先の見えない道を、延々と歩いてる感じがする。
「半年で何言ってやがる!」なんて文句言われそうな気もするし、こう思うのは仕事に慣れてきた余裕から来るものなんだろうか?
俺の内面の問題もある。
雪之丞はいい、コイツはただひたすらに人としての限界を極めたいだけだ。それを支えにすれば、これからも突き進めるだろうな。本気で羨ましいと、何度思ったことか……
俺には進むべき目印がない。強くなることも、GSとして認められることも目的の一部だが、その先に何を見ればいいんだ?
武神様の仰られた “答え” と言うのは何なのだろう?
あのお方は焦るなって言われたが、一体どうすりゃいいんだ……?
それが見えないから、変化のない日常が余計不安に思えるんだろうな……
「こうなったらメドゥーサでも、魔族でも何でもいいからどっかにドカーンと……」
「………結局そこかよ」
止めろっ……!
平和守りたいから、乱れろ平和って叫んでんのと一緒だからな。 珍しく真剣に悩んでると思ったのに損したわ。
まぁ……変に沈むよりは、この方が気楽でいいか。
ただ、強敵は兎も角やり方は変える必要があるのかもしれない。
今までのようにGS協会に仕事を斡旋してもらってるようじゃ、いずれ行き詰まる。
かと言って営業……?
雪之丞にそんなもん無理だし、俺も学校がある内は厳しい。でも、何らかの形で売り込み掛けねぇとジリ貧だ。
それとも、知り合いのGSでも頼るか?
唐巣神父……?
あり得ねぇ。頼りたいけど、実績上げる前にこっちが餓死しちまう………
タイガーの師匠……?
これもねぇな。人を呪いの弾にするような人でなしだ。それ以上にすり寄った事が原因で、あの女と対立してる糞女と揉めることになったら、目も当てれねぇ。
カオス……?
折り合いが付けば、協力くらい出来そうだな。でも、頼る相手じゃない。
六道家……?
…………無理だろうな。上手く縁が出来りゃ心強いけど、雪之丞の経歴がネックになる。コイツには悪いが魔族と契約した元モグリなんて、向こうからしたら外聞として最悪だ。
全滅だな……
やっぱ、この状態で暫く我慢するしかないか……俺が高校卒業するまで、後一年と数ヶ月。そうすれば時間も空くし、2人でもっと色々出来るようになるか。
今はその時を想定して、色々準備しといた方が現実的な気がする。
「そろそろ行くか」
「雪之丞」
席を立とうとする、雪之丞を俺は呼び止めた。
「ん?」
「営業するぞ!」
「え、営業……?」
「このままじゃ、ジリ貧だ! 自分達から売り込み掛けねぇと、いつまでもデカい仕事なんか回って来ない」
「いや……俺には無理だろ」
「やれよ!所長だろ? 俺もやるから!」
「じゃ、じゃあ頼む……」
「じゃあ頼むじゃねぇよ!」
なんで、そこは他力本願なんだよ? お前が言い出したんだぞ!!
野心だけか? 野心だけで具体的なプランなんもねぇのか?? いや、知ってる! お前は何も考えてないよな……!
だったら、人の言うことくらい聞けや!!