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後悔

ー/ー




「そう………わかったわ。今までご苦労樣」


 私は、ウンザリした気分で受話器を置いた。


 ここは私の事務所。

 アンティーク調のデスクに両肘をついて、手を自分の前で組ませながらため息をつく。


 これで5人目……アイツが事務所を辞めてから新しくアシスタントを雇っても、どれも長続きしやしない。

 何が不満なの? アイツと違ってちゃんと(・・・・)お給料払ってるでしょ!

 湧き上がってくる感情を、私はデスクに叩きつけた!


 バンッ!







後悔 美神
「全部あいつが悪いっ!!何で戻って来ないのよっ! あの糞砂利がぁ〜!!!」


 叫んでみた所で、当然何も返って来ない。

 1人では広すぎるオフィスに、虚しく私の声が響くだけ。
  
 本当に苛々するわね!!


 …………正直、こんな状態になるとは思ってなかった。

 1週間もしたら、腹を空かして泣きついてくるなんて思ってたけど、もう5ヶ月……今は、雪之丞の開いたの事務所に居るって言うし、あいつ本気だったのね。


 ………………いや、あの時のあいつの思い詰めた顔……

 どう考えても真剣だったけど、意識して考えないようにしてた………

 
 もっと言えば、目を背けていた。でも……もぅ、認めざるを得ないわね。

 
 普通に考えれば、あんな悪条件で働ける人間なんて余程 “馬鹿” か “変人” の2種類しかいない(元々、アイツを追い出す為にワザとキツくしたわけだし……)。


 アイツは両方とも該当するって信じて疑わなかったけど、それは自分勝手な思い込みだったの?


「もっと労ってあげればよかったかしら………?」


 今度は、デスクに頬杖をついて独りごちる。


 しょっちゅう泣き言ばっかり言う頼りない奴だったけど、貴重な奴でもあったかもしれない。

 なんだかんだ言っても自分から辞めるとは言わなかったし、たまには本当に役に立ってくれた……本当にたま(・・)にだけど。

 霊能力にも目覚めて少しは使えるようになったと思ってたんだし、それを機にもっと人並みの待遇にしてあげれば………


 いや……そんなことしたら、いつもみたいに調子に乗るのが解り切ってる。やっぱなしだわ!!

 こうなったのは、全部アホなアイツが悪い!!

 それに決定!


 それ以上に、お絹ちゃんを泣かしたことも許せない!!

 一体、あの娘の何が気に入らないって言うのよ?

 いつも、しょうのないアンタを励ましてくれたじゃない!


 あの娘から話を聞いても、さっぱり要領を得られない。


「いつの間にか避けられるようになった」って話してたけど、本人にも心当たりがないんじゃどうしょうもないわ。


 お絹ちゃんが消えそうになった時、あんた凄く取り乱したでしょ。
 

 仲間としての感情があったからじゃないの?
 

 氷漬けの彼女の体に、霊気を流したのもアンタでしょ。

 
 彼女に生きて欲しいと願ったからじゃないの?
 

 私はともかくあんた達には、しっかりした絆があると思ってたけど、それは私の見込み違いだったわけ?


 解るわけないか…………確実なのは、あいつに戻る気は無いってことね。



 そう考えてると、オフィスの扉が開いてお絹ちゃんが入ってきた。掃除が終わったみたいね。


「お掃除終わりました〜♪」


 こんな状態でも、この娘はいつも通り笑顔を絶やさない。あいつの事で、1番辛いのは彼女の筈なのに……アイツ今度会ったら絶対殺すわ。


「ご苦労樣。いつも悪いわね」


 広い建物だからあいつが居た頃は分担させてたけど、最近はこの娘に任せきりになっちゃってる。

 雇ったアシスタントも辞めちゃったし、私も少しはやらないと彼女が参っちゃうわね。

 出来るかどうかは別にして……
 
※お金を出してハウスキーパーを雇うという発想にはならないらしい……
 
 
「いえ♪ そういえば今日は、あの人遅いですね」
「辞めたわよ……本当に、根性の無い奴ばっかり」


 彼女の問い掛けに、私はやれやれと言った感じで答える。

 普通のバイトなんかより割はいい筈なんだから、もっとしっかりして欲しいわ。


「……やっぱり…………あの人かなり恐がってましたしね」
「そうなの?」
 

 少し顔を曇らせながら言う、彼女の顔を見ながら答える。
 

「そうですよ。慣れてない人には厳しいのかもしれません」 
 
 
  あれくらいで音を上げるようじゃ、何も出来ないじゃない。でも、このままじゃ本当に不味いわね。

 アシスタントなんて雑用しかしないんだから別に素人でもいいなんて考えてたけど、もっと素養があって将来GSになることを考えてる人間を中心に探した方がいいかしら?

 いや、お絹ちゃんだって元は幽霊なわけだし、この際人間に拘らなくても……
 

「美神さん?」


 急に考え込んだ私に、彼女が心配そうに話し掛けてくる。


「ん、何でもないわ。とにかく暫くは私達2人しかいないから頑張らないとね♪」


 そう言って無理に笑って見せる。


 そう!今は切り替えて出来ることをするしかない。そう思って、私は自分に喝を入れた。 
  



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「そう………わかったわ。今までご苦労樣」
 私は、ウンザリした気分で受話器を置いた。
 ここは私の事務所。
 アンティーク調のデスクに両肘をついて、手を自分の前で組ませながらため息をつく。
 これで5人目……アイツが事務所を辞めてから新しくアシスタントを雇っても、どれも長続きしやしない。
 何が不満なの? アイツと違って|ちゃんと《・・・・》お給料払ってるでしょ!
 湧き上がってくる感情を、私はデスクに叩きつけた!
 バンッ!
「全部あいつが悪いっ!!何で戻って来ないのよっ! あの糞砂利がぁ〜!!!」
 叫んでみた所で、当然何も返って来ない。
 1人では広すぎるオフィスに、虚しく私の声が響くだけ。
 本当に苛々するわね!!
 …………正直、こんな状態になるとは思ってなかった。
 1週間もしたら、腹を空かして泣きついてくるなんて思ってたけど、もう5ヶ月……今は、雪之丞の開いたの事務所に居るって言うし、あいつ本気だったのね。
 ………………いや、あの時のあいつの思い詰めた顔……
 どう考えても真剣だったけど、意識して考えないようにしてた………
 もっと言えば、目を背けていた。でも……もぅ、認めざるを得ないわね。
 普通に考えれば、あんな悪条件で働ける人間なんて余程 “馬鹿” か “変人” の2種類しかいない(元々、アイツを追い出す為にワザとキツくしたわけだし……)。
 アイツは両方とも該当するって信じて疑わなかったけど、それは自分勝手な思い込みだったの?
「もっと労ってあげればよかったかしら………?」
 今度は、デスクに頬杖をついて独りごちる。
 しょっちゅう泣き言ばっかり言う頼りない奴だったけど、貴重な奴でもあったかもしれない。
 なんだかんだ言っても自分から辞めるとは言わなかったし、たまには本当に役に立ってくれた……本当に|たま《・・》にだけど。
 霊能力にも目覚めて少しは使えるようになったと思ってたんだし、それを機にもっと人並みの待遇にしてあげれば………
 いや……そんなことしたら、いつもみたいに調子に乗るのが解り切ってる。やっぱなしだわ!!
 こうなったのは、全部アホなアイツが悪い!!
 それに決定!
 それ以上に、お絹ちゃんを泣かしたことも許せない!!
 一体、あの娘の何が気に入らないって言うのよ?
 いつも、しょうのないアンタを励ましてくれたじゃない!
 あの娘から話を聞いても、さっぱり要領を得られない。
「いつの間にか避けられるようになった」って話してたけど、本人にも心当たりがないんじゃどうしょうもないわ。
 お絹ちゃんが消えそうになった時、あんた凄く取り乱したでしょ。
 仲間としての感情があったからじゃないの?
 氷漬けの彼女の体に、霊気を流したのもアンタでしょ。
 彼女に生きて欲しいと願ったからじゃないの?
 私はともかくあんた達には、しっかりした絆があると思ってたけど、それは私の見込み違いだったわけ?
 解るわけないか…………確実なのは、あいつに戻る気は無いってことね。
 そう考えてると、オフィスの扉が開いてお絹ちゃんが入ってきた。掃除が終わったみたいね。
「お掃除終わりました〜♪」
 こんな状態でも、この娘はいつも通り笑顔を絶やさない。あいつの事で、1番辛いのは彼女の筈なのに……アイツ今度会ったら絶対殺すわ。
「ご苦労樣。いつも悪いわね」
 広い建物だからあいつが居た頃は分担させてたけど、最近はこの娘に任せきりになっちゃってる。
 雇ったアシスタントも辞めちゃったし、私も少しはやらないと彼女が参っちゃうわね。
 出来るかどうかは別にして……
※お金を出してハウスキーパーを雇うという発想にはならないらしい……
「いえ♪ そういえば今日は、あの人遅いですね」
「辞めたわよ……本当に、根性の無い奴ばっかり」
 彼女の問い掛けに、私はやれやれと言った感じで答える。
 普通のバイトなんかより割はいい筈なんだから、もっとしっかりして欲しいわ。
「……やっぱり…………あの人かなり恐がってましたしね」
「そうなの?」
 少し顔を曇らせながら言う、彼女の顔を見ながら答える。
「そうですよ。慣れてない人には厳しいのかもしれません」 
  あれくらいで音を上げるようじゃ、何も出来ないじゃない。でも、このままじゃ本当に不味いわね。
 アシスタントなんて雑用しかしないんだから別に素人でもいいなんて考えてたけど、もっと素養があって将来GSになることを考えてる人間を中心に探した方がいいかしら?
 いや、お絹ちゃんだって元は幽霊なわけだし、この際人間に拘らなくても……
「美神さん?」
 急に考え込んだ私に、彼女が心配そうに話し掛けてくる。
「ん、何でもないわ。とにかく暫くは私達2人しかいないから頑張らないとね♪」
 そう言って無理に笑って見せる。
 そう!今は切り替えて出来ることをするしかない。そう思って、私は自分に喝を入れた。