「いつも大量だな……」
毎日のことだが、積み上げられた弁当箱の数に呆れちまう……これを作ってくる連中は、こいつが本当に食べてるとでも思ってるんだろうか?
「本当に申し訳ないです……」
「食べれなくてか? それとも “応えられなくて” か?」
「こたえられなくて……?」
怪訝そうな顔をするピートに、俺は慌ててさっきの言葉を取り消した。
「いや、いきなり野暮だったな……悪りぃ…………」
流石に “踏み込み” 過ぎだよな……普段の親しさと、こいつの人の良さに胡座をかいちまった。
そう言って、会話を打ち切ろうとしたが、口から出た言葉は飲み込むことは出来ない。
「まぁ……今は誰かと付き合うとか、そんな事は考えれませんね。修業もあるし、村の皆のためにもオカルトGメンにはなんとしても入らなきゃいけませんから」
「そうか……」
今更ながら自分のデリカシーのなさに辟易したが、踏み込んじまったついでに前から気にしてることも聞いてみることにした。
パシッ!
さり気なく人の弁当にまで手を出そうとする、ステルス野郎の手を無言で払うのも忘れない。
「今はともかく、やっぱり一緒になるとしたら同族か?」
ヴァンパイア・ハーフであるピートの寿命は長い。一体いくつまで生きるか知らねぇけど、現在700歳。
俺と見た目が一緒(最近、妙神山に籠もりまくったせいで若干俺のが上に見えるのが悲しい……)だから、人間年齢でいやぁ10代後半……そっから考えりゃ3000年も以上生きるんだろうか?
俺達の寿命は精々80年。人生を共に歩むパートナーにするには、人間なんて短すぎて話にならない。
「別にそこは、拘っていませんよ。その人の内面に惹かれるものがあれば、僕はその人と一緒になります」
「でも、それじゃあ……」
別れが辛くならないか? そんな言葉を発するより先にピートは続けてきた。
「お忘れですか? 横島さん、僕の母は人間です」
「確かにそうだけど、お前が小さい内に死んじゃったんだろ」
ヴァンパイアに比べりゃ、人間の寿命なんて笑っちまうくらい短い。
例えるなら、俺が1、2年歳を重ねるだけで、相手は老いて死んじまう。それも中々にエグい体験な気がする……
ビシッ!
懲りずに手を伸ばして来た、ステルスの手を弾くことも忘れない。しつけぇな……
「時間の長さは関係ありません。要はどんな時間を過ごしたかです。確かに母はすぐに亡くなってしまいましたけど、一緒に過ごした時間はとても素晴らしいものでした。そして、それは今も僕の中に残っています」
「一緒に居る時間が短いからこそ、大事に過ごすか……」
「そうです。そして、母は僕の中で生き続けるんです」
そう言って、爽やかに笑うこいつに確かな感動………と言いようのない微かな苛立(嫉妬)を…………
ゴスッ!!
「ウギャッ!」
肘鉄に乗せて、ステルスの腹にお見舞いしてやった!!
「テメェ! さっきから、しつけぇぞ!!」
どんだけ、弁当食いてぇんだこいつは………
「ワッシを無視しないで欲しいんジャーーー!!!」
「「…………………………」」
屋上に響く、寂しい虎の虚しい雄叫びが辺りを支配する………こう言う時は、大人しくステルスしてろよ。