「おおぉ〜〜い!!大丈夫か?大丈夫かぁ?田嶋ぁ!!?」
「ああ、どうしてこげな事に!!?」
なんてこった!?
“危ない!” と思った時には、もう間に合わなかった……
◆◆◆
『田嶋彰』……俺のクラスメイトで、よく話す男だ。
※CV高木渉氏 アニメで1度だけ登場した眼鏡モブ 原作には、複数回登場
そして、俺が以前警察で一晩世話になる原因になった男でもある。「横島の部屋に女がいる!!」とか “アホみたいに” 大騒ぎして。
たが、この際それはどうでもいい………
起こったのは、別に大した事じゃない。
いつもの昼休み。そして、それが終わる直前……皆、次の授業に備えて慌ただしくなる。そんな時間だ。
慌ててトイレに行こうとした田嶋と、ちょうど教室に戻ってきたステルスが入口で出会い頭に衝突しちまった。良くある話だ………
ただ、問題なのは2人の体格に差があり過ぎたこと。痩せ型で60kgに満たないであろう田嶋と、恐らく100kg以上はあるステルス…………体重差、およそ50kg超。
お互い小走りでぶつかったのも、更に悪かったと思う。何が言いたいかと言うと、ステルスは軽い衝撃で済んだが、田嶋は派手にぶっ飛んだ。
ステルスのステルス・アタックを喰らった時のこいつが描いた放物線は、映画のスローモーションのように見事なもんで、床に落ちたあと二転、三転したところでやっと止まった。
※別にステルス関係ない……
ハッ、とした俺は急いで奴の元へ駆け寄る。
ああ……可哀想に、こんな傷だらけになって。俺が、もっと早く声を掛けていれば……凄い衝撃だったよな?どっか折れてんじゃないか?お前が良ければ、文殊で直そう。
「申し訳ないけぇ、田嶋君……」
ステルス……お前も責任を感じてるのか。でも、大丈夫。この男は、それくらいで、人を恨んだりはしないぞ。
そんな俺達の所へ、少し遅れてピート達も来る。他のクラスの連中も、遠巻きに俺達の様子をうかがってる。
「タイガー!彼は大丈夫ですか?」
「そんなに強く、当たった積りはないんジャけど……」
「怪我したクラスメイトをみんなで介抱する、青春だわ♪」
茶化すんじゃねぇよ、愛子。こんな時くらい「青春」は、おあずけにしとけ……でも、良かったな。
普段 “目立たねぇ” とか “モブ ” とか散々に扱き下ろされてんのに、いざとなれば皆お前を心配してくれる。
居るんだか、居ないんだか解らないお前でも、やっぱりクラスの一員なんだな……
「横島さん、さっきからそっちで何しとるんジャ?」
「1人だけ別の方向を見るなんて、青春じゃないわ」
「……それ、田嶋君の “眼鏡” でしょ」
両手で眼鏡を拾い上げて語り掛ける俺に皆、不思議そうな顔で聞いてくる。
「いや……だから田嶋を介抱してるんだよ。そこで、失神して白目剥いてる馬鹿の上にいつも掛かってる」
「「「……………………」」」
そうしたら、いつも田嶋の掛かってる “フック” 的な奴が絞り出すように喋りだした。
「よ、横島……お前、絶対以前のこと根に持ってやがるな…………」
「うるせぇ!フックが喋んな」
□□□□
エピーソードが短いので、もう一つ………題名『声』
「お前って、ダミ声だよな?」
「喧嘩売ってんのか?」
※CV高木渉氏
「いや、弄り忘れてただけだ」
「永遠に触れてくれるな!」
「眼鏡以外にネタがあって、良かったじゃねぇか」
「馬鹿にしてるだけだろが…………!!」
「17歳にして、奇跡のおっさん声♪」
「笑ってんじゃねぇよ、テメェ……!」
「でも、良く考えたら味があるとも……」
「思ってもねぇ癖に、テキトーな事ほざいてんじゃねぇ!俺だって、好きでこんな声に生まれたんじゃねぇわ!」
「なら、前世の “カルマ” かもな」
「カルマだぁ?」
「前世は美声だったけど、その声を使って色々やらかした。その行いが、今世にその “汚ったねぇ” ダミ声として返って来たみたいな?」
「汚ったねぇ言うなっ!!…………ち……ちなみに、何やったんだ?俺……」
美声で人を惑わすつったら、妖怪の『セイレーン』とか悪魔の『リリス』なんかが有名だな。まぁ、どっちも絶対こいつとは関係ねぇだろうけど………
「……知るかよ。まぁ、大勢の人間に嫌がられるか、特定の人間に深い怨みを買う “何か” をやっちまったのかもな」
「前世の俺、死ねぇっ!」
「いや、死んでるから前世なんだろ……」
「ガッデムッ!!」
本当、クラス中に良く響く声だよな。ダミ声だけど……
「前世の俺に、文句言ってやりたいぜぇ!」
「いや、無理だろ……」
まぁ、俺も何回か時間ジャンプしてる経験はあるが、もうあんな事2度としたくない。
危険過ぎる……
「なら、この怒り……俺は、どう処理すりゃ良いんだよ?」
「鏡に向かって、「死ね」って連呼してりゃ良いんじゃねぇか?」
「アホか!?何で、俺に言うんだよ!」
「来世に期待でもしろ」
「俺は、今を生きてんだ!」
「ああ、そう悪かったな」
「横島ぁ!」
「何だよ?」
「お前の力で、俺の前世は見えねぇのか?」
「無理だな」
世の中には、確かにそれが出来る人間は居る。
だけど、俺の霊視は精々人並み……俺には、出来ねぇよ。
「伊達さんでも……?」
「あんな奴に出来ると思うか?」
殴る事に全振りだぞ。
「他の知り合いでも駄目か………?」
「物を壊すのなら、皆得意なんだけどな……」
「肝心な時に、役に立たねぇ野郎だな!」
「…………協会に行って、相談して来い」
「協会……?GSのか?」
「ああ」
「そこに行きゃ、出来んのか?」
「数十万くらい出しゃ、やってくれるだろ」
「はぁ!?何で、んな掛かるんだよ?」
「OL相手の占いコーナーじゃねぇんだぞ。それに、個人のGSに見て貰うよりは格安だからな」
「高校生に、んな金払える訳ねぇだろ!」
「じゃあ、進学したら大学でバイトでもしろ」
「何とかしろよ!」
「だから、何をだよ?ちゃんと返すなら、金くらい貸してやるぞ」
「だぁ!!貧乏人だったお前に、そんな事言われると糞腹立つわ!!」
「テメェが力貸せって言うから、提案したんだろうが!じゃあ、勝手しろ!」
「巫山戯んな!元は、お前がダミ声とかカルマとか言い出したんだろうがっ!!」
「無視すりゃいいだろ!大体、お前前世なんか見て何がしたいんだよ!?」
「見りゃ、ダミ声の解決策が見付かるかもしんねぇだろ!?」
「ヘリウムでも吸ってろ……」
ただのダミ声が、高いダミ声に変わるだけだけど………
「馬鹿野郎!ただのダミ声が、高いダミ声に変わるだけだろ!?もっと、真面目に答えろっ!!」
「……………………なら、普通にボイトレでもやれや」
わざわざ前世なんか見るより、そっちのが簡単だぞ。
「ボイトレ……?それって、どうやんだよ?」
「知らん。音楽の先生かコーラス部にもでも、相談してみろ」
◇◇◇
《次の日》
「…………………………」
「………………何だ……?」
傍に寄って来ただけで、何も喋らないのは不気味過ぎんだけど………
そう思ってると、フックは口元を指で指して、次に両手の人差し指で “✕” を作る。
「……声出なくなった?」
こくっ………
「そうか……大変だな」
…………と言うか、寄ってくんな。
本当は、手で向こう行けのジェスチャーでもしたいとこだが、流石にそれは躊躇する。
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………まだ、何かあんの?」
そんな俺の想いとは裏腹に、何時までも無言で立ち尽くすソイツに、俺の方が痺れを切らして口を開く。早くどっか行けよ……
すると、また指で口を示しながら、ゆっくりと動かし始めた。
この形は…………
“よ” “う” “か” “い” “の” “し” “わ” “ざ” …………
「……………………いや、ただの風邪だろ。ちゃんとマスクしろ」
つーか、学校来んな………