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第三百三十七話

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 翌日、九月一日、その早朝。一晩中夢の国にてどんちゃん騒ぎした一行であるが、いよいよ新学期が始まるタイミングがすぐそこにまで迫っていた。とんでもない贈り物を貰った信一郎は、笑顔で受け取っていたものの、車内にそれを動かないよう入れた瞬間に青ざめていた。
「では、皆さん……この度は、本当にありがとうございました。私たちは……これから感情にまつわる研究を重ねながら、感情を悪戯に奪ってしまった千葉県の方々に対し、真摯に向き合って感情をお返ししていく所存にございます」
「私からもありがとう、和井内さん! 色々あった中で、私たちに協力してくれて……おかげで来栖善吉を打倒できた! そして……エヴァちゃんと森ししょーの『大切』、その仇も討つことが出来たし……デスティニーアイランドもそうだけど、皆が無事でとにかく良かった!」
 元気溌剌、これまでの礼安が戻ってきたことにも、涙ぐむ信一郎。その場の英雄学園サイドの面子もそれぞれ一礼し、高級車に乗り込んでそのまま英雄学園に向かって発進する。
 礼安やエヴァは、和井内が見えなくなる最後の方まで、窓を全開にした状態で、彼らに手を振っていた。
 ある意味、この東京デスティニーアイランドは、二人の関係が進んだ場所。お互いを知り、そしてお互いが歩み寄った。エヴァに関しては、過去に踏ん切りをつけることは出来ていないものの、過去を分かち合うことは出来た。これまでひた隠しにしてきた過去を知ることで、お互いの理解度が深まる。
 その礼と言わんばかりに、二人はただ全力で「またいつか」と別れを告げていたのだ。
 和井内は、静かに涙した。年甲斐もなく、あるいは年相応というべきか、あの一件以降涙腺が少々弱っていたのだ。自分たちが支えにしていた支部長は勇敢なる戦死を遂げ、次の世代へ未来を託した。ならば、自分たちもそうするべきなのだろうと、腹を決めた瞬間だった。
「支部長代理――いや、支部長。そろそろ、開園準備の時間です。各種セトリと共に、今日からの研究内容を指導していただきたく」
 指で涙を拭う和井内は、視界から消えゆく彼女たちを見て、彼らに振り返って微笑し、語り掛けるのだった。
「――『笑顔の重要性』、というものはどうでしょう。笑顔を奪って実験するのでは無く……我々でその笑顔を『増やす』のです。本来のあるべき形に、戻るようなものではありますが……それが、夢の国というものでしょう。多くのお客様……いえ、お客様(ゲスト)の方々を我々演者(キャスト)でお迎えする。そして――明日に繋ぐための笑顔を、喜びを……どれほど増幅できるか……実に、興味深く面白い命題(テーマ)だと思いませんか」
 元暴である従業員に、基本的に難しい話題は通用しないが――こればかりは理解できた。つまるところ、『お客様をより喜ばせよう、より楽しませよう』とスローガンを掲げたのと同義である。
 この東京デスティニーアイランドは、そう言う場所。夢を見せ、夢のような一日を楽しんでもらう、夢のような(アイランド)
 原点回帰の命題(テーマ)に、心躍る様子を見せる従業員たちは、頬を張って気合を入れて園内に戻っていく。和井内もまた、この園の総支配人として、全力で向き合う。
 例え教会の支部だろうと、教会とはもう関係のなくなったいち組織。ならば、今はこの園を守るべく、存続するべく動くのが、最善の一手である。

「――さあ、本日もお客様(ゲスト)を全力で楽しませましょう、演者(キャスト)の皆さん!」

 皆が一様に、気合とドスの利いた雄叫びで応える。この東京デスティニーアイランドの新たな日常が、始まろうとする瞬間であった。



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 翌日、九月一日、その早朝。一晩中夢の国にてどんちゃん騒ぎした一行であるが、いよいよ新学期が始まるタイミングがすぐそこにまで迫っていた。とんでもない贈り物を貰った信一郎は、笑顔で受け取っていたものの、車内にそれを動かないよう入れた瞬間に青ざめていた。
「では、皆さん……この度は、本当にありがとうございました。私たちは……これから感情にまつわる研究を重ねながら、感情を悪戯に奪ってしまった千葉県の方々に対し、真摯に向き合って感情をお返ししていく所存にございます」
「私からもありがとう、和井内さん! 色々あった中で、私たちに協力してくれて……おかげで来栖善吉を打倒できた! そして……エヴァちゃんと森ししょーの『大切』、その仇も討つことが出来たし……デスティニーアイランドもそうだけど、皆が無事でとにかく良かった!」
 元気溌剌、これまでの礼安が戻ってきたことにも、涙ぐむ信一郎。その場の英雄学園サイドの面子もそれぞれ一礼し、高級車に乗り込んでそのまま英雄学園に向かって発進する。
 礼安やエヴァは、和井内が見えなくなる最後の方まで、窓を全開にした状態で、彼らに手を振っていた。
 ある意味、この東京デスティニーアイランドは、二人の関係が進んだ場所。お互いを知り、そしてお互いが歩み寄った。エヴァに関しては、過去に踏ん切りをつけることは出来ていないものの、過去を分かち合うことは出来た。これまでひた隠しにしてきた過去を知ることで、お互いの理解度が深まる。
 その礼と言わんばかりに、二人はただ全力で「またいつか」と別れを告げていたのだ。
 和井内は、静かに涙した。年甲斐もなく、あるいは年相応というべきか、あの一件以降涙腺が少々弱っていたのだ。自分たちが支えにしていた支部長は勇敢なる戦死を遂げ、次の世代へ未来を託した。ならば、自分たちもそうするべきなのだろうと、腹を決めた瞬間だった。
「支部長代理――いや、支部長。そろそろ、開園準備の時間です。各種セトリと共に、今日からの研究内容を指導していただきたく」
 指で涙を拭う和井内は、視界から消えゆく彼女たちを見て、彼らに振り返って微笑し、語り掛けるのだった。
「――『笑顔の重要性』、というものはどうでしょう。笑顔を奪って実験するのでは無く……我々でその笑顔を『増やす』のです。本来のあるべき形に、戻るようなものではありますが……それが、夢の国というものでしょう。多くのお客様……いえ、|お客様《ゲスト》の方々を我々|演者《キャスト》でお迎えする。そして――明日に繋ぐための笑顔を、喜びを……どれほど増幅できるか……実に、興味深く面白い|命題《テーマ》だと思いませんか」
 元暴である従業員に、基本的に難しい話題は通用しないが――こればかりは理解できた。つまるところ、『お客様をより喜ばせよう、より楽しませよう』とスローガンを掲げたのと同義である。
 この東京デスティニーアイランドは、そう言う場所。夢を見せ、夢のような一日を楽しんでもらう、夢のような|国《アイランド》。
 原点回帰の|命題《テーマ》に、心躍る様子を見せる従業員たちは、頬を張って気合を入れて園内に戻っていく。和井内もまた、この園の総支配人として、全力で向き合う。
 例え教会の支部だろうと、教会とはもう関係のなくなったいち組織。ならば、今はこの園を守るべく、存続するべく動くのが、最善の一手である。
「――さあ、本日も|お客様《ゲスト》を全力で楽しませましょう、演者《キャスト》の皆さん!」
 皆が一様に、気合とドスの利いた雄叫びで応える。この東京デスティニーアイランドの新たな日常が、始まろうとする瞬間であった。