#29
ー/ー 今度は頻繁に時間を確認しながら辿り着いた階段が終わり、水平方向へと一直線に伸びる地下道に辿り着いたのは最初に確認してから五分後。つまり地上から地下道までの時間は都合二十分ということになる。
相変わらずの石壁に手を付いてひんやりとした感触を感じ先を見るが、カンテラの光ではとても届かない程長い。そしてその先には点となった灯りが見えていた。
女が足元と手の届く範囲の壁を照らすのが精一杯のカンテラにもう少しだけ持ってくれよとお願いしながら進むと、二十分はかからない程度の通路を進んで行くうちに光点から光面、光面から徐々に広い部屋となっている事がわかってくる。
光の正体に心を躍らせつつ足を踏み入れると、居住者が居なくなって久しいという借り家の地下深くのみならず、おそらく村の下も網羅しているであろう広いすり鉢状の空間が姿を現した。地上から二十分程の深さを底とする謎の建築物は所謂ドーム状で、自分の出てきたような穴がそこかしこに空いており、女は色々な入り口から侵入した者が須らくこの空間に辿り着くよう設計された巨獣の巣のようだと感じた。
石張りから板張りへと変わった床を少し進んだ所で帰り道を忘れぬよう覚えておこうと振り返ると、シロは自分の出てきた穴を縁取るアーチ状の石積みの頂点に木製の板を見つける。煤けているが、よく見るとそこには斜めに傾いた金槌の印が刻まれていた。
もしかすると他の物にもついているのかと考えた女は隣、といっても数十メートルは離れている石造りの上部に取り付けられている板を確認する。やはり思った通りそこにも印が刻まれており今度は横向きの犬が彫られていた。
「表札ってわけか」
女は独り言ちながらだだっ広い空間に開けられた穴に目を回す。
さすがに遠すぎるので彼女の視力をもってしても掘られた穴の表札までは見えないが、それぞれに板が張り付けられているのは確認できるので恐らく全てに違う印が付けられているのだろうと推察した。きっとこの空間から村の家々に繋がる穴が掘られており、印を表札として何処に繋がるのかがわかる仕組みなのだと。
一つ謎が解けすっきりしたのも束の間、彼女の中に更なる疑問が沸き上がって来た。明らかな人工物であるこの空間が誰のどういった意図で作られたのか。地下なのに明る過ぎやしないか。後の謎は上を見上げることで一瞬で氷解した。
天井一面が地上から見上げる洗濯日和と思わせる青空となっており、太陽と空だけでなく悠々と泳ぎ徐々に形を変える雲まで再現されていたのだ。朝起きてベッドから見た地上のそれは厚い雪雲に覆われていた記憶があるので、これは本物の空ではないだろう。
シロはこれは何かの遺物で作り上げた物だろうと検討を付けた。遺物とは世界に散らばる謎のテクノロジーだとか怪異の力で作り出された道具である。人間社会ではオーパーツとか宝具と呼ばれるそれらは現代人類の科学では未だ達成し得ぬ現象をおこし、時に人を驚かせるばかりか甚大な被害を及ぼした歴史も持つ。
彼女には何という遺物が使われているのかは見当も付かないが、名前はどうあれ地下空間にあるまじき明るさの原因がわかったので残る先の疑問に集中することにした。すなわち誰が何のために作ったかだ。
蝋燭が勿体ないので火を吹き消し底の外周を歩きながら通路と同じ石壁の切れ目から一つ上の階層に上る。自分が出てきた最下段は石造りだった壁だったが二階から上は本棚となっていた。
相変わらずの石壁に手を付いてひんやりとした感触を感じ先を見るが、カンテラの光ではとても届かない程長い。そしてその先には点となった灯りが見えていた。
女が足元と手の届く範囲の壁を照らすのが精一杯のカンテラにもう少しだけ持ってくれよとお願いしながら進むと、二十分はかからない程度の通路を進んで行くうちに光点から光面、光面から徐々に広い部屋となっている事がわかってくる。
光の正体に心を躍らせつつ足を踏み入れると、居住者が居なくなって久しいという借り家の地下深くのみならず、おそらく村の下も網羅しているであろう広いすり鉢状の空間が姿を現した。地上から二十分程の深さを底とする謎の建築物は所謂ドーム状で、自分の出てきたような穴がそこかしこに空いており、女は色々な入り口から侵入した者が須らくこの空間に辿り着くよう設計された巨獣の巣のようだと感じた。
石張りから板張りへと変わった床を少し進んだ所で帰り道を忘れぬよう覚えておこうと振り返ると、シロは自分の出てきた穴を縁取るアーチ状の石積みの頂点に木製の板を見つける。煤けているが、よく見るとそこには斜めに傾いた金槌の印が刻まれていた。
もしかすると他の物にもついているのかと考えた女は隣、といっても数十メートルは離れている石造りの上部に取り付けられている板を確認する。やはり思った通りそこにも印が刻まれており今度は横向きの犬が彫られていた。
「表札ってわけか」
女は独り言ちながらだだっ広い空間に開けられた穴に目を回す。
さすがに遠すぎるので彼女の視力をもってしても掘られた穴の表札までは見えないが、それぞれに板が張り付けられているのは確認できるので恐らく全てに違う印が付けられているのだろうと推察した。きっとこの空間から村の家々に繋がる穴が掘られており、印を表札として何処に繋がるのかがわかる仕組みなのだと。
一つ謎が解けすっきりしたのも束の間、彼女の中に更なる疑問が沸き上がって来た。明らかな人工物であるこの空間が誰のどういった意図で作られたのか。地下なのに明る過ぎやしないか。後の謎は上を見上げることで一瞬で氷解した。
天井一面が地上から見上げる洗濯日和と思わせる青空となっており、太陽と空だけでなく悠々と泳ぎ徐々に形を変える雲まで再現されていたのだ。朝起きてベッドから見た地上のそれは厚い雪雲に覆われていた記憶があるので、これは本物の空ではないだろう。
シロはこれは何かの遺物で作り上げた物だろうと検討を付けた。遺物とは世界に散らばる謎のテクノロジーだとか怪異の力で作り出された道具である。人間社会ではオーパーツとか宝具と呼ばれるそれらは現代人類の科学では未だ達成し得ぬ現象をおこし、時に人を驚かせるばかりか甚大な被害を及ぼした歴史も持つ。
彼女には何という遺物が使われているのかは見当も付かないが、名前はどうあれ地下空間にあるまじき明るさの原因がわかったので残る先の疑問に集中することにした。すなわち誰が何のために作ったかだ。
蝋燭が勿体ないので火を吹き消し底の外周を歩きながら通路と同じ石壁の切れ目から一つ上の階層に上る。自分が出てきた最下段は石造りだった壁だったが二階から上は本棚となっていた。
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