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SCENE089 確認を怠っちゃいけない

ー/ー



 第二回のダンジョン体験が終わって、僕は改めてダンジョンポイントを確認する。
 あの時の様子を配信したとあって、ポイントの伸びというのは期待できると思うんだ。
 誰もいないことを確認して、僕はダンジョンコアを呼び出す。
 いつものように呪文を唱えると、目の前には水晶玉のようなものが乗った柱が現れた。

「あら、それはなんでしょうか」

「うわぁっ!?」

 突然、後ろから声をかけられて、僕は心臓が飛び出る勢いで叫んでしまう。

「な、なんだ、ラティナさんかぁ……。急に話しかけないで下さいよ。今、すっごく集中してたんですから」

「わわっ、ごめんなさい。まさかそんなに驚かれるなんて思ってもみなかったものですから」

 僕がちょっと文句を言うと、ラティナさんは本当に申し訳なさそうに下を見てしまった。
 全身が岩でできているゴーレムではあるけれど、本当にラティナさんは感情と表情が豊かだ。異界の貴族というのもすごく納得がいく気がするよ。

「ちょっと言い過ぎちゃいましたね。ラティナさん、顔を上げて下さい」

「はい」

 ラティナさんは顔を上げるけれど、その表情はやっぱり申し訳なさそうな感じだった。
 なんだろう。僕が悪いことをしたみたいで、なんか罪悪感を抱いちゃうよ。これが可愛さの強みというものなのかな。
 目の前の可愛いゴーレムに、なんだか嫉妬してしまいそうだよ、僕。
 っと、いけない。今はダンジョンポイントの確認をしているんだった。

「あの、ウィンク様。これはなんでしょうか」

「あれ? お父さんのダンジョンで見たことないんですか、これ」

「えっと……。私はほとんど見つからないように隠れていましたので、よく分からないんです」

「そ、そうなんですね……」

 ラティナさんの言い訳を聞いて、どれだけ顔が合わせづらかったのかと、つい思わず考えてしまった。

「とりあえず、これはダンジョンコアといいまして、僕のようなダンジョンマスターだけが操作できる装置なんですよね。だから、ラティナさんのお父さんも多分何度か使っていたと思いますよ?」

「そうなんですね。初めて見ましたよ」

 どうやらラティナさんは、本当にダンジョンコアのことを知らないみたいだった。
 事情をなんとなく把握したので、僕はラティナさんにダンジョンコアのことを説明する。

「ダンジョンコアは頑丈だと思いますけれど、一応扱いは気を付けて下さいね。壊されたらこのダンジョンは消えてしまいますし、僕たちもどうなるか分かりませんからね」

「はい、気をつけます!」

 僕が注意すると、ラティナさんは元気よく返事をしてくれていた。これなら大丈夫かな。
 改めて、僕はメニューを呼び出して、現在のダンジョンポイントを確認する。

「う~ん、3万ちょっとかぁ。思ったよりも増えてないかな」

「あの、それは何なんですか?」

 横から一緒にメニューを眺めていたラティナさんが尋ねてくる。

「これは、ダンジョンを管理するメニューですね。一番上の数字が、現在持っているダンジョンポイントで、このポイントを使ってダンジョンを改装したり、生活をしたりするんですよ」

「初めて知りました。ダンジョンって、そんな風になっているんですね。お話だけは、聞いたことはありましたけれど、実物は見たことがありませんでしたから」

「そうなんですね。僕は今、目標があるのでポイントを貯め続けているんですよ」

「ふむふむ。お聞きしますが、その目標とはいかほどなのですか?」

 ラティナさんは興味津々なのか、宝石のような目がキラキラと輝いている。本当にきれいだなぁ。
 っと、見とれている場合じゃないや。質問されたからには、答えないとね。

「目標は500万ポイントですね。死にたくないですし、殺したくもないですから、復活システムを完備しようと思うんです」

「それはすごいですね。ダンジョンって、何でもありなんですか?」

「システムを見る感じではそういう風みたいですよ。セイレーンさんのダンジョンは、探索者の復活システムを取り入れているみたいですし」

「さすがセイレーン様。公爵家の令嬢は違いますね」

 やっぱり、ラティナさんはセイレーンさんのことをよく知っているみたいだ。この様子だとかなり交流があったのは間違いないみたいだね。
 それにしても、話を聞いているラティナさんは、なんだか楽しそうに見える。ダンジョン運営に興味がわいてきたのかな?

「ねえ、ラティナさんもや……」

「私は、争いごとは嫌いです。ですので、ダンジョン運営には興味はありませんね。しなさいと言われたらするとは思いますけれど、自分からするということはないでしょう」

 僕が聞こうとしたら、かぶせるようにして言われちゃったよ。まるで分ってたみたいな反応じゃないか。

「うふふ。ウィンク様の様子を見ていたら、聞かれるような気がしましたのでね」

「あれ? 僕ってそんなに分かりやすいのかな」

「はい、それはとても。顔どころか、態度にもよく出ていますよ」

「えー……」

 出会ったばかりのラティナさんにはっきり言われて、僕はなんだかすごくショックだよ。
 とはいっても、いつまでも凹んでばかりもいられない。あまり増えていないダンジョンポイントにもショックだったけど、どうにかしてポイントを稼がないとね。
 ダンジョンシステムの画面とにらめっこをしながら、僕は次をどうするか考えることにしたのだった。
 目指せ、500万ポイントだよ。


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 第二回のダンジョン体験が終わって、僕は改めてダンジョンポイントを確認する。
 あの時の様子を配信したとあって、ポイントの伸びというのは期待できると思うんだ。
 誰もいないことを確認して、僕はダンジョンコアを呼び出す。
 いつものように呪文を唱えると、目の前には水晶玉のようなものが乗った柱が現れた。
「あら、それはなんでしょうか」
「うわぁっ!?」
 突然、後ろから声をかけられて、僕は心臓が飛び出る勢いで叫んでしまう。
「な、なんだ、ラティナさんかぁ……。急に話しかけないで下さいよ。今、すっごく集中してたんですから」
「わわっ、ごめんなさい。まさかそんなに驚かれるなんて思ってもみなかったものですから」
 僕がちょっと文句を言うと、ラティナさんは本当に申し訳なさそうに下を見てしまった。
 全身が岩でできているゴーレムではあるけれど、本当にラティナさんは感情と表情が豊かだ。異界の貴族というのもすごく納得がいく気がするよ。
「ちょっと言い過ぎちゃいましたね。ラティナさん、顔を上げて下さい」
「はい」
 ラティナさんは顔を上げるけれど、その表情はやっぱり申し訳なさそうな感じだった。
 なんだろう。僕が悪いことをしたみたいで、なんか罪悪感を抱いちゃうよ。これが可愛さの強みというものなのかな。
 目の前の可愛いゴーレムに、なんだか嫉妬してしまいそうだよ、僕。
 っと、いけない。今はダンジョンポイントの確認をしているんだった。
「あの、ウィンク様。これはなんでしょうか」
「あれ? お父さんのダンジョンで見たことないんですか、これ」
「えっと……。私はほとんど見つからないように隠れていましたので、よく分からないんです」
「そ、そうなんですね……」
 ラティナさんの言い訳を聞いて、どれだけ顔が合わせづらかったのかと、つい思わず考えてしまった。
「とりあえず、これはダンジョンコアといいまして、僕のようなダンジョンマスターだけが操作できる装置なんですよね。だから、ラティナさんのお父さんも多分何度か使っていたと思いますよ?」
「そうなんですね。初めて見ましたよ」
 どうやらラティナさんは、本当にダンジョンコアのことを知らないみたいだった。
 事情をなんとなく把握したので、僕はラティナさんにダンジョンコアのことを説明する。
「ダンジョンコアは頑丈だと思いますけれど、一応扱いは気を付けて下さいね。壊されたらこのダンジョンは消えてしまいますし、僕たちもどうなるか分かりませんからね」
「はい、気をつけます!」
 僕が注意すると、ラティナさんは元気よく返事をしてくれていた。これなら大丈夫かな。
 改めて、僕はメニューを呼び出して、現在のダンジョンポイントを確認する。
「う~ん、3万ちょっとかぁ。思ったよりも増えてないかな」
「あの、それは何なんですか?」
 横から一緒にメニューを眺めていたラティナさんが尋ねてくる。
「これは、ダンジョンを管理するメニューですね。一番上の数字が、現在持っているダンジョンポイントで、このポイントを使ってダンジョンを改装したり、生活をしたりするんですよ」
「初めて知りました。ダンジョンって、そんな風になっているんですね。お話だけは、聞いたことはありましたけれど、実物は見たことがありませんでしたから」
「そうなんですね。僕は今、目標があるのでポイントを貯め続けているんですよ」
「ふむふむ。お聞きしますが、その目標とはいかほどなのですか?」
 ラティナさんは興味津々なのか、宝石のような目がキラキラと輝いている。本当にきれいだなぁ。
 っと、見とれている場合じゃないや。質問されたからには、答えないとね。
「目標は500万ポイントですね。死にたくないですし、殺したくもないですから、復活システムを完備しようと思うんです」
「それはすごいですね。ダンジョンって、何でもありなんですか?」
「システムを見る感じではそういう風みたいですよ。セイレーンさんのダンジョンは、探索者の復活システムを取り入れているみたいですし」
「さすがセイレーン様。公爵家の令嬢は違いますね」
 やっぱり、ラティナさんはセイレーンさんのことをよく知っているみたいだ。この様子だとかなり交流があったのは間違いないみたいだね。
 それにしても、話を聞いているラティナさんは、なんだか楽しそうに見える。ダンジョン運営に興味がわいてきたのかな?
「ねえ、ラティナさんもや……」
「私は、争いごとは嫌いです。ですので、ダンジョン運営には興味はありませんね。しなさいと言われたらするとは思いますけれど、自分からするということはないでしょう」
 僕が聞こうとしたら、かぶせるようにして言われちゃったよ。まるで分ってたみたいな反応じゃないか。
「うふふ。ウィンク様の様子を見ていたら、聞かれるような気がしましたのでね」
「あれ? 僕ってそんなに分かりやすいのかな」
「はい、それはとても。顔どころか、態度にもよく出ていますよ」
「えー……」
 出会ったばかりのラティナさんにはっきり言われて、僕はなんだかすごくショックだよ。
 とはいっても、いつまでも凹んでばかりもいられない。あまり増えていないダンジョンポイントにもショックだったけど、どうにかしてポイントを稼がないとね。
 ダンジョンシステムの画面とにらめっこをしながら、僕は次をどうするか考えることにしたのだった。
 目指せ、500万ポイントだよ。