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SCENE088 人魚は嫉妬深い

ー/ー



 ウィンクさんの配信がぶつ切りになってしまって、あたしは少々不機嫌になっておりますの。
 仕方がありませんので、下僕を呼びつけましたわ。

「わわっ、セイレーンさん。なんですか、急に呼び出すなんて……」

 呼び出してから二時間で、最下層のあたしの部屋に下僕がやってきましたわ。早かったことは褒めてつかわしますわよ。

「下僕、あたしにしばらく付き合いなさい」

「いきなりなんですか。暇だから別にいいですけど」

「下僕のくせに口答えしますの?」

「わっ、ご、ごめんなさい!」

 あたしが手を振りかざすと、下僕は素直に謝っていましたわね。ええ、最初からそうおとなしくしていればいいのです。

「下僕、ちょっとお尋ねしますけれど、いいかしら」

「はい、なんでしょうか」

「下僕は、今日のウィンクスダンジョンの配信は見ておりましたかしら」

「見てましたよ。ゴーレムの子、可愛かったですよね」

「へえ……、あたしよりもですかしら」

 ラティナ様のことを思い浮かべて赤くなる下僕に、あたしは正直申しまして不愉快でしたわ。くるっと回って、尾びれビンタをお見舞いしてあげましたわよ。

「い、痛いですよ……」

「あたし以外にそんな顔は許しませんわよ」

「ご、ごめんなさい……」

 あたしがすごみますと、下僕はすんなりと謝りましたわ。まったく、進歩のない下僕ですこと。
 癇癪みたいなものですから、さすがにここら辺でやめておきましょうか。それよりも本題ですわ。

「下僕に聞きますわ」

「なんですか?」

「下僕は、マナを見ることはできますかしら」

 あたしはストレートに質問をします。下僕の反応は、首を左右に振るだけでしたわ。
 隠密と看破があるので見えるかと思いましたけれど、どうやらそれとは違うもののようですわね。

「なるほど……。マナが見えなくても、あたしの仕掛けた罠は見破れるというわけですのね。スキルというのはよく分かりませんわね」

「ですね。ダンジョンに関しては、十年経過しても分からないことが多いようですよ。今回の配信中のことも、本当に初耳が多かったです」

「そうですわね。マナが見える体質のこともですけれど、それによってダンジョンマスターになる可能性を持っているということも、あたしたちにとっても初耳ですもの。ロックウェル伯爵家……、もっと異界にいる間に交流したかったですわ」

 あたしは悔しくて、つい爪を噛みそうになってしまう。
 しかし、せっかくきれいにお手入れした爪を台無しにするわけにはいかず、なんとか踏みとどまりましたわ。

「それにしても伯爵家とか……。異界って貴族社会なんですかね」

 下僕のくせに、ずいぶんと鋭い質問をしてきますわね。ですが、答えてあげないあたしではありませんわよ。

「ええ、そうですわ。あたしの家は公爵家。今の異界を治める国王様とは、ちょっとした血縁にありますのよ」

「へえ、すごい。セイレーンさんって、すごいお嬢様だったんですね」

「そうですわよ。さあ、あたしの前に跪きなさい」

「ははーっ」

 冗談半分であたしが命令しますと、下僕ったら真面目に片膝をついて頭を下げていますわ。まあ、なんと気持ちのよい光景なのでしょうかしら。

「セイレーン様、何をなさってらっしゃるのですか……」

「あら、シードラゴンではありませんの。一階層の改装は進んでおりますかしら」

 急にシードラゴンが割り込んできましたので、あたしはちょっとばかり気分が悪くなりましたわ。

「はい。こちらのダンジョン管理局の意見を聞きながら、セイレーン様とすり合わせた通りに、一階層の一部分を順次改装しております。ですが、ダンジョンマスターではない私めでは、限界があるというものです」

「ふむ……。それでしたら、できないことをまとめておいて下さらないかしら。あたしの権限でちゃちゃっと片付けてしまいますわ」

「承知致しました。では、再度確認に向かい、まとめて参ります」

「頼みますわよ」

 シードラゴンはそうとだけ言い残すと、あたしの部屋から出ていきましたわ。
 また、下僕と二人きりになりましたわね。

「セイレーンさん。あのゴーレムの女の子とはどのようなご関係なのですかね」

「どうって言われましてもね。まあ、時々交流しているお友だちといったところですわ。あたしが水で、ラティナ様は土ですから、属性的には相性がよろしくありませんけれどね。それでも、それはとても仲良くさせていただきましたわ」

「そうなんですね……」

 ちょっと下僕。何を赤くなっていますのよ。
 まったくイライラしますわね。

「下僕、命は惜しくありませんかしら」

「ひっ! 殺さないで下さいよ。いくら復活できるとはいっても、殺される瞬間はすっごく痛いんですから!」

「でしたら、あたし以外に惚れるのは禁止致しますわよ。下僕があたしから逃れられると思ってまして?」

「ご、ごめんなさい!」

 あたしが本気で怒鳴りましたら、下僕は涙目になりながら必死に謝っていましたわね。見ていて爽快でしたわ。
 とはいえ、このままではただの嫉妬深い女にしかなりませんから、ラティナ様の情報をもうちょっと詳しくお教えしてあげましょうかね。

 ……まったく、あんな全身がごつごつした女のどこがいいというのかしら。まったく、あたしには理解できませんわね。


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 ウィンクさんの配信がぶつ切りになってしまって、あたしは少々不機嫌になっておりますの。
 仕方がありませんので、下僕を呼びつけましたわ。
「わわっ、セイレーンさん。なんですか、急に呼び出すなんて……」
 呼び出してから二時間で、最下層のあたしの部屋に下僕がやってきましたわ。早かったことは褒めてつかわしますわよ。
「下僕、あたしにしばらく付き合いなさい」
「いきなりなんですか。暇だから別にいいですけど」
「下僕のくせに口答えしますの?」
「わっ、ご、ごめんなさい!」
 あたしが手を振りかざすと、下僕は素直に謝っていましたわね。ええ、最初からそうおとなしくしていればいいのです。
「下僕、ちょっとお尋ねしますけれど、いいかしら」
「はい、なんでしょうか」
「下僕は、今日のウィンクスダンジョンの配信は見ておりましたかしら」
「見てましたよ。ゴーレムの子、可愛かったですよね」
「へえ……、あたしよりもですかしら」
 ラティナ様のことを思い浮かべて赤くなる下僕に、あたしは正直申しまして不愉快でしたわ。くるっと回って、尾びれビンタをお見舞いしてあげましたわよ。
「い、痛いですよ……」
「あたし以外にそんな顔は許しませんわよ」
「ご、ごめんなさい……」
 あたしがすごみますと、下僕はすんなりと謝りましたわ。まったく、進歩のない下僕ですこと。
 癇癪みたいなものですから、さすがにここら辺でやめておきましょうか。それよりも本題ですわ。
「下僕に聞きますわ」
「なんですか?」
「下僕は、マナを見ることはできますかしら」
 あたしはストレートに質問をします。下僕の反応は、首を左右に振るだけでしたわ。
 隠密と看破があるので見えるかと思いましたけれど、どうやらそれとは違うもののようですわね。
「なるほど……。マナが見えなくても、あたしの仕掛けた罠は見破れるというわけですのね。スキルというのはよく分かりませんわね」
「ですね。ダンジョンに関しては、十年経過しても分からないことが多いようですよ。今回の配信中のことも、本当に初耳が多かったです」
「そうですわね。マナが見える体質のこともですけれど、それによってダンジョンマスターになる可能性を持っているということも、あたしたちにとっても初耳ですもの。ロックウェル伯爵家……、もっと異界にいる間に交流したかったですわ」
 あたしは悔しくて、つい爪を噛みそうになってしまう。
 しかし、せっかくきれいにお手入れした爪を台無しにするわけにはいかず、なんとか踏みとどまりましたわ。
「それにしても伯爵家とか……。異界って貴族社会なんですかね」
 下僕のくせに、ずいぶんと鋭い質問をしてきますわね。ですが、答えてあげないあたしではありませんわよ。
「ええ、そうですわ。あたしの家は公爵家。今の異界を治める国王様とは、ちょっとした血縁にありますのよ」
「へえ、すごい。セイレーンさんって、すごいお嬢様だったんですね」
「そうですわよ。さあ、あたしの前に跪きなさい」
「ははーっ」
 冗談半分であたしが命令しますと、下僕ったら真面目に片膝をついて頭を下げていますわ。まあ、なんと気持ちのよい光景なのでしょうかしら。
「セイレーン様、何をなさってらっしゃるのですか……」
「あら、シードラゴンではありませんの。一階層の改装は進んでおりますかしら」
 急にシードラゴンが割り込んできましたので、あたしはちょっとばかり気分が悪くなりましたわ。
「はい。こちらのダンジョン管理局の意見を聞きながら、セイレーン様とすり合わせた通りに、一階層の一部分を順次改装しております。ですが、ダンジョンマスターではない私めでは、限界があるというものです」
「ふむ……。それでしたら、できないことをまとめておいて下さらないかしら。あたしの権限でちゃちゃっと片付けてしまいますわ」
「承知致しました。では、再度確認に向かい、まとめて参ります」
「頼みますわよ」
 シードラゴンはそうとだけ言い残すと、あたしの部屋から出ていきましたわ。
 また、下僕と二人きりになりましたわね。
「セイレーンさん。あのゴーレムの女の子とはどのようなご関係なのですかね」
「どうって言われましてもね。まあ、時々交流しているお友だちといったところですわ。あたしが水で、ラティナ様は土ですから、属性的には相性がよろしくありませんけれどね。それでも、それはとても仲良くさせていただきましたわ」
「そうなんですね……」
 ちょっと下僕。何を赤くなっていますのよ。
 まったくイライラしますわね。
「下僕、命は惜しくありませんかしら」
「ひっ! 殺さないで下さいよ。いくら復活できるとはいっても、殺される瞬間はすっごく痛いんですから!」
「でしたら、あたし以外に惚れるのは禁止致しますわよ。下僕があたしから逃れられると思ってまして?」
「ご、ごめんなさい!」
 あたしが本気で怒鳴りましたら、下僕は涙目になりながら必死に謝っていましたわね。見ていて爽快でしたわ。
 とはいえ、このままではただの嫉妬深い女にしかなりませんから、ラティナ様の情報をもうちょっと詳しくお教えしてあげましょうかね。
 ……まったく、あんな全身がごつごつした女のどこがいいというのかしら。まったく、あたしには理解できませんわね。