──とおりゃんせ、とおりゃんせ。
──ここはどこの細道じゃ。
──閻魔さまへの細道じゃ。
私は唄う。私が唄えば、人が慄く。慄く人は、私が何かを知る者だ。そも、さような者にこそ私が遣わされる故、果たしてどちらが先なのかしら。
私は浮かぶ。暗夜に炎を煌めかせ。私は罪を見つめるもの。
人呼んで、火車である。人は我らの類を魔や妖と呼び、姿を与える。私のそれは、猫だった。
人とは実に、愉快愉快。まあそれなりに人を見てきたつもりだけれども、縁もゆかりも、生きる時代さえもが異なる者らが、よくも飽きずに同じ業を積むものよ。
栄華を誇れば、久しからずや。富を得らば、さらに求める。男女の諍いは枚挙に暇なく、恩讐もまた繰り返される。世の姿こそ変われども、人はこれっぽっちも変わりゃしない。
嗚呼、愛い愛い。食べちゃいたい。しかしまあ、それは獄卒犬どもの仕事さね。
ฅ
私を見て、
人の必ず言いたることには、己は悪くないのだと。
──そうかもしれないねえ。
人の必ず喚きたることには、己はまだ死にたくないと。
──それは結構だこと。
人の必ず弁することには、己は悔い改めると。
──私に言われてもねえ。
人の必ず問いたることには、己はどこに行くのかと。
──知らないねえ。
──疾っく腹をば決めなんせ。
──お前の人道にゃお似合いよ。
私に言っても何も変わらぬ。私は裁くものではなく、すべては閻魔がお決めなさる。しかし、そうさね、私から言えることがあるならば────私が来たということは、概ねそういうことなれば、腹は括っておきなさい。
ฅ
──行きは宵々、帰りも暗い。
嗚呼、人たちよ。お前たちには夜が来る。今生は存分に楽しめたかい。
名に富に、人の縁もつれづれに──この人道は楽しめたかい。
私は別に責めやしない。それは私の仕事じゃない。
俗楽に興ずるも、また生なれば。
嗚呼、私を見る人たちよ、お前たちは、これから夜を歩くんだ。
帰りがあるのかって?そりゃあ、あるさ。お前が歩んだ道々が、すなわちお前の帰り道。
朝というわけには行くまいねえ、暗夜行路の他生を往きな。それはお前の選んだ道だ。
──あなかしこくとも、とおりゃんせ。