ep78 幹部

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 翌日。
 朝早くから俺たちは引きつづき〔サンダース〕を目指して足を動かしていた。
 天気は良く、風もさわやかで、頑張れば明朝には着きそうな塩梅だ。

「……とまあ、おれたちが知っているのはこんなもんだぜ、ダンナ。物足りねえだろうが勘弁してくれ」

「ああ」

 トレブルの話によれば〔フリーダム〕には人間と魔族が混在しているという。なので俺が今まで倒した連中のなかにも魔族が混じっていた可能性は充分ある。
 ちなみにシヴィスの使っていた〔魔銃〕は、戦後に魔王領から流れてきた魔族によって持ち込まれた代物なんだそう。

「本当に今は平和……なのか?」

 俺は遠くを見ながらふと呟いた。

「クローさん?」

 シヒロがきょとんとする。

「いや、なんでもない」

〔フリーダム〕の組織の詳細については、トレブルとブーストはほとんど何も知らないに等しかった。
 まあ仕方ない。そもそもコイツらは〔フリーダム〕に所属していたわけではないのだから。また、コイツらの口振りからして、あえて必要以上にそこへ関わらないようにしていたとも思われる。コイツらなりのリスクヘッジだったのだろう。
 
「あ、でもダンナ」

 はたと言い忘れていたことに気づいた様子でブーストが口をひらいた。

「なんだ?」

「フリーダムの幹部なんだが」

「シヴィスも幹部だったんだよな」

「ああ。おれもトレブルも詳しいことは何もわからねえが、他にも幹部が複数いてな。どいつも一騎当千の実力でヤベー奴らしいんだが…」

「それで?」

「シヴィス以外にひとり、おれたちも会ったことがある男がいるんだ」

「!」

「その男の名はキラース。爆破魔術の使い手だ」

「爆破魔術?」

「わかりやすく言えば、キラースは魔術を使った爆破テロリストだ。シヴィスから聞いた話では、人間に魔術で作った爆薬を埋め込んで爆殺して楽しんでいるような奴らしい。面と向かった時にも思ったぜ。コイツは相当ヤベーぜってな」

「確かにヤバそうな奴だな」

「それでよ? もし次にダンナを狙ってくる幹部がいるとしたら、そのキラースかもしれねえんだよ」

「なぜそう思うんだ?」

「〔ダムド〕は元々、キラースが作ったギャンググループだったんだ。そこにシヴィスも加わって、そりゃあムチャクチャやっていたらしいぜ。やがてそいつらは丸ごと〔フリーダム〕に入り、それ以降はシヴィスが都合よく使う私兵に〔ダムド〕を名乗らせていて、おれたちもそこに加わったわけだが。まあ〔ダムド〕の名前はなかなか使えたぜ。大抵のゴロツキはそれでビビるからなぁ。その名前の向こうにキラースの悪辣を想像してビビったんだろうな」 

「つまり、シヴィスとキラースは古い仲間で、シヴィスの仇討ちにキラースが出てくるってことか?」

「ダンナ……」

 急にブーストはトレブルと顔を見合わせて深刻そうな表情を浮かべた。

「いきなりどうした? お前ら」

「だ、ダンナ!」
「キラースが来たらおれたちを守ってくれ!」

 俺にすがりついてくるトレブルとブースト。本気で怯えている。

「もしキラースが来たらおれたちは殺される!」
「ヤツはマジでヤベーんだ! でもダンナなら何とかできんだろ!?」

 都合のいいヤツらだ。自分たちで寝返っておいて今度は俺に保護してもらおうとは。とはいえ、寝返りを促したのは俺だし、その結果として今に至っているのも事実だ。
 それに、コイツらの事情がどうであれ、キラースとかいうヤツが攻めてくれば必然的に迎え撃たなければならない。これは残り少ない人生の時間で俺自身が選んだ道なんだ。

「お前らに頼まれなくとも〔フリーダム〕が目の前に現れたら全力で排除する。相手が幹部だろうがなんだろうがな。お前らは俺が与えた条件をとにかく守れ。俺が言えるのはそれだけだ」

「ああ! もちろんだぜ!」
「ダンナ!」


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 翌日。
 朝早くから俺たちは引きつづき〔サンダース〕を目指して足を動かしていた。
 天気は良く、風もさわやかで、頑張れば明朝には着きそうな塩梅だ。
「……とまあ、おれたちが知っているのはこんなもんだぜ、ダンナ。物足りねえだろうが勘弁してくれ」
「ああ」
 トレブルの話によれば〔フリーダム〕には人間と魔族が混在しているという。なので俺が今まで倒した連中のなかにも魔族が混じっていた可能性は充分ある。
 ちなみにシヴィスの使っていた〔魔銃〕は、戦後に魔王領から流れてきた魔族によって持ち込まれた代物なんだそう。
「本当に今は平和……なのか?」
 俺は遠くを見ながらふと呟いた。
「クローさん?」
 シヒロがきょとんとする。
「いや、なんでもない」
〔フリーダム〕の組織の詳細については、トレブルとブーストはほとんど何も知らないに等しかった。
 まあ仕方ない。そもそもコイツらは〔フリーダム〕に所属していたわけではないのだから。また、コイツらの口振りからして、あえて必要以上にそこへ関わらないようにしていたとも思われる。コイツらなりのリスクヘッジだったのだろう。
「あ、でもダンナ」
 はたと言い忘れていたことに気づいた様子でブーストが口をひらいた。
「なんだ?」
「フリーダムの幹部なんだが」
「シヴィスも幹部だったんだよな」
「ああ。おれもトレブルも詳しいことは何もわからねえが、他にも幹部が複数いてな。どいつも一騎当千の実力でヤベー奴らしいんだが…」
「それで?」
「シヴィス以外にひとり、おれたちも会ったことがある男がいるんだ」
「!」
「その男の名はキラース。爆破魔術の使い手だ」
「爆破魔術?」
「わかりやすく言えば、キラースは魔術を使った爆破テロリストだ。シヴィスから聞いた話では、人間に魔術で作った爆薬を埋め込んで爆殺して楽しんでいるような奴らしい。面と向かった時にも思ったぜ。コイツは相当ヤベーぜってな」
「確かにヤバそうな奴だな」
「それでよ? もし次にダンナを狙ってくる幹部がいるとしたら、そのキラースかもしれねえんだよ」
「なぜそう思うんだ?」
「〔ダムド〕は元々、キラースが作ったギャンググループだったんだ。そこにシヴィスも加わって、そりゃあムチャクチャやっていたらしいぜ。やがてそいつらは丸ごと〔フリーダム〕に入り、それ以降はシヴィスが都合よく使う私兵に〔ダムド〕を名乗らせていて、おれたちもそこに加わったわけだが。まあ〔ダムド〕の名前はなかなか使えたぜ。大抵のゴロツキはそれでビビるからなぁ。その名前の向こうにキラースの悪辣を想像してビビったんだろうな」 
「つまり、シヴィスとキラースは古い仲間で、シヴィスの仇討ちにキラースが出てくるってことか?」
「ダンナ……」
 急にブーストはトレブルと顔を見合わせて深刻そうな表情を浮かべた。
「いきなりどうした? お前ら」
「だ、ダンナ!」
「キラースが来たらおれたちを守ってくれ!」
 俺にすがりついてくるトレブルとブースト。本気で怯えている。
「もしキラースが来たらおれたちは殺される!」
「ヤツはマジでヤベーんだ! でもダンナなら何とかできんだろ!?」
 都合のいいヤツらだ。自分たちで寝返っておいて今度は俺に保護してもらおうとは。とはいえ、寝返りを促したのは俺だし、その結果として今に至っているのも事実だ。
 それに、コイツらの事情がどうであれ、キラースとかいうヤツが攻めてくれば必然的に迎え撃たなければならない。これは残り少ない人生の時間で俺自身が選んだ道なんだ。
「お前らに頼まれなくとも〔フリーダム〕が目の前に現れたら全力で排除する。相手が幹部だろうがなんだろうがな。お前らは俺が与えた条件をとにかく守れ。俺が言えるのはそれだけだ」
「ああ! もちろんだぜ!」
「ダンナ!」