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昼飯

ー/ー




昼飯 ピート
「今日も登校してきましたね」


 昼休みの屋上。

 俺がいつものスペースに腰掛けると同時くらいに、金髪碧眼の美形野郎が話し掛けたきた。


 この男の名は、『ピエトロ・ド・ブラドー』……ヴァンパイア・ハーフだ。

 先生(美神玲子)の事務所に居た頃、ある事件を切っ掛けにして知り合い。その後、色々あって俺の通う光明高校に転校(しかも同じクラス)して来て、現在に至る。
 

「……スゲェ、引っ掛かる言い方だな…………」
 

 登校しちゃ悪いのか?

 そんな思いを込めながら、ジト目で軽く睨みながら返す……
 

「い、いえっ……以前は、日数ギリギリにならない限り来なかったから不思議だなぁと………」
 

 ……と、慌てて弁解を始めた。

 まぁ、こいつが悪意を持って話し掛けることは無いのは、始めから解ってたけどな。
 

「生活が前より安定してきたから、ギリギリまで事務所に詰める必要が無くなったんだよ」
 

 そう……先生の所に居た頃は、1円でも多く稼ぐために仕事が無い時でも事務所に押しかけてた。そこに居れば、飯くらいは食べさせて貰えたからな。
 
 だから、学校には進級ギリギリの日数でしか来れなかったが
、雪之丞と組んで時給制から歩合制に変わったことで、前より取り分が増えた(除霊費は雪之丞と折半)。たがら、仕事の無い時はなるべく学校に来るようにしている。
 
 来れる時に来た方が、いざという時に休みやすいからな……


「仕事、順調みたいですね」
「そういう訳でもないけど、俺達は経費が掛からないから安くてもそこそこ(・・・・)取れるんだよ。 貰うぜ」


 そう言いながら、ピートの傍らに積んである弁当をいくつか自分の方へ持ってくる。

 イケメンでモテモテのピートは女子達に大量の弁当を手渡されるんだが、薔薇の精をエネルギーとして吸収するピートに食事は必要ない(食えないわけじゃない)し、食べきれない………だろう。多分……

 かと言って、食べなければ女の子達の気持ちが無駄になるわけで、そうならないよう俺とステルスで食べる手伝いを買って(?)出ている。

 決して、金がなくてタカってる訳でも、持って来るのが面倒だからと言う訳ではない!


 話を戻す。

 他のGS達は、御札やら結界やらその他の道具にかなりの費用を取られちまうが、俺達は自分の霊力を武器化出来るんで費用は安く済む。文珠が色んな物に代用出来るのも大きい。

 ………まぁ、弱い奴ばかり相手にしてるってのもあるんだけどその辺は今後の課題だな。
 

 そんな風に考えているとピートが少し沈んだ調子で続けで来た。


「やっぱり、美神さんと所へは戻らないんですね?」
「……戻れないし、戻る気もねぇよ」


 弁当箱を開けながら、ピートの顔を見ずに答える。


 こいつ……と言うか、誰にも美神除霊事務所を辞めた本当の理由は話してない。

 せいぜい『給料が安い』とか『人使いが荒い』みたいな感じで流してる。

 いや、それはそれで結構参ってはいたんだが…………だけど、あの娘がここに転入して来なくてよかったな……六女に転入した当初は残念だったが、今はこれで良かったと思える。

 良かったと思える理由は、最低だが……


「そうですか……横島さんはらあそこにかなり馴染んでいると思ったんですがね」
「そうか?」


 弁当を食いながら考えてみるが、いまいちピンと来ない。

 まぁ、良くも悪くも色々あったからな。楽しそうにしてる時もあったのかもしれない。


「ところで、お前の方はどうなんだよ?神父は、相変わらずか?」


 正直余り触れて欲しく無い話なんで、適当な所で話題を変える。


「似たような感じですね。やっぱり、先生はお金を取りたがらないので……」
「なるほど……」


 こいつも、苦労してるな……
  
 やれやれと言った感じで答えるピートに相槌を打ちがら、心の中で苦笑する。
 
 神父の行動や理念は素直に尊敬するが、それで自分が倒れちゃ元も子もないないだろうに………それとも、そうなる事も引っ括めた上での行動なのか?

 まぁ、俺がどうこう言う話でもないんだが。


「なんか、食うのが悪くなってきたな」
「えっ?」
「いや、この弁当が神父の食事に当たられたら、なんて思ったからさ。まぁ、無理だろうけど……」
 

 昼に貰った弁当を神父に持ってくなんて、現実的にあり得ねぇよな。

 ただ、食に困ってる人間がいるのに、自分は何もせずに人の物を貪り食う、と言う行為に良心の苛責を覚えただけだ。

 ステルスはともかく、俺はピートにタカる必要はもうない訳だし、今日の会話を切っ掛けに昼飯くらい自分で何とかするかな?


「そ、それは流石に……」
「い……いや、言っただけだ。 気にしないでくれ」


 苦笑するピートに慌てて弁解しながら、まだ開けてない弁当箱を奴に返す。


「な、何ですか?」


 戸惑うピートに、今度は俺が苦笑しながら答える。


「………い…今更だけど、タダで食わせ続けてもらうのって、やっぱ悪いかなぁ〜……なんて」


 以前は、その日生き抜くのに必死で、他人の事情なんて考えられなかった。だが、今は裕福と言えないまでも食う物くらいは十分に確保出来てるんだ。

 人の好意に胡座かいてタダ飯食うなんて、やっぱおかしいよな……


「余った弁当は、ス…タイガーに食わせてやれよ ……散々食っといて、言う資格ないけどさ。まぁ、いつか埋め合わせはするよ」
「いや、それは逆に困ります! 僕やタイガーだけじゃ、食べ切れないでしょう。捨ててしまえば、それこそ皆に申し訳ないですから」
「そ、そう…「横島さ〜ん!!」うわぉ!!!」


 す、ステルス!?

 いつまに?? 2人しかいないと思ってたのに、いきなり2mを越す巨漢が俺の横に……


「自分だけ、いい格好するのはズルイんジャ! これじゃあ自分だけ、悪い人間ジャけん!!」


 戸惑う俺達に構わず、ステルスは一気に捲し立てる。

 …………んだよっ、いきなり!


「だぁーっ、そんなんじゃねぇよ!! 食うよ!食えばいいんだろ!! ってか、お前来てんなら言えよっ、ビックリするだろ!!」
「ずっーと、居ったのに2人共気付かんかったジャーー!!」


 マジか!? いつからだよ?

  毎回思うけど、こいつのステルス能力(?)は、もはや天賦の才としか言いようがないよな。こんなデカくて目立つのに……


「うぅ……酷いんジャい。横島さん………親友ジャと、思ってたのに」
「弁当くらいで、大げさだろ……」


 何言ってんだコイツは………?


「最近は、ピートさんが女の子達と一緒に居るのを邪魔するの、手伝ってくれへん!」
「…………そんな事してたんですか?」
「す、すまん……」


 本人の前で言うなよ………

  ピートも、ジト目で睨むな……悪かったって………


「も…もぅ、あんなこと止めようぜ……ピートをいくら邪魔したって、俺等がモテる様にはならないだろ?」

「何で、そんな “まとも” な事言い出すんジャぁ!?モテる男を、ひたすら呪いまくっとったアンタがぁ!! 横島さん、もしかしてアンタが呪われてしまったんジャぁ!??」

「…………んな訳あるか。俺は正気だ」


 何で弁当遠慮しただけで、呪われてる疑いまで掛けられなきゃたらねぇんだよ?

 いや……まぁ確かに以前は、しょうもねぇ事にエネルギー使ってたけどな。


「いんや! あんた絶対おかしい!!最近は、可愛い娘見かけても普通にスルーするし、一体どうしたんジャぁ!?」
「そういや、 最近ナンパとかしてないなぁ……」


 そう………確かにコイツの言う通り、最近は女の子達に言い寄ったりはしなくなった。別に真面目になったとか、大人になったからとか、そんな格好いいもんじゃない。


 どうしてかは…………下らな過ぎて、思い出したくもない。



 まぁ、理由はともかく、そんな行動が周りには “奇異” に映ってるのかもしれない。

 そんなことを考えてると、ステルスは更に捲し立てる。
 

「やたら、修業に熱心ジャい!」
「別にいいだろ」

「めっちゃ仕事も一生懸命ジャい!」
「仕事だからな……」

「何で、全然アホなこと言わないんジャ!!?」
「言わない方がいいだろ……?」
 

 何がアホだ……

 そりゃ以前の奇行を振り返りゃ、いくつも思い当たるんだが、面と向かって言われると何か腹立つな。 


「とにかく、俺は正常だ。今は、そんな気分にならないだけだよ」
「なら、またいつかは女の子に飛びかかるんですカイ!?」

「それ、ただの変態じゃねぇか!?」
「やっぱり変ジャい!!!」
「テメェ……いい加減にしろよ………!!」

 
 物には “限度” ってもんがあんだよ……!
 
 頭を抱えて空を見上げるこいつの顔面に、一発ぶち込んでやろうと、立ち上がって拳に力を入れるがピートに止められる。


「学校でそんな物騒なもの出さないで下さい!」
 

 物騒な物……?

 やべっ……!?思わず、右手に霊手を展開してたわ(ちなみに鉤爪じゃなくて、今回はナックル型だ)!

 体勢もいつも除霊する時みたく、腰を沈めて飛び掛かる姿勢になってる。割とガチで、キレかかってたな。

 ステルスの方を見ると、冷や汗を掻きながら後ずさってやがる。流石にヤバいと思ったらしい……


「チッ…… 馬鹿らしい!」


 舌打ちして霊手を戻して座り直すと、食いかけの弁当をかっ込む!こうなりゃ自棄食いだ!!

 善意のつもりがら呪われた疑い掛けられて、変態扱いされたぞ。自業自得とは言え、面白くねぇな!
 

「す、すまんです……」
「いいよ。俺にも、原因はある」


 小声で謝るステルスに、俺は食いながら答えた。こいつも俺の変化に戸惑ってただけ…………だと信じたい。


 そんな感じでよく解らないトラブルから気を取り直しつつ、いつも通り三人で弁当を再開した後ピートが口を開く。


「そういえば『ハンド・オブ・グローリー』でしたっけ? 形、変えれるようになったんですね」
「ワッシもびっくりしたんジャ。それも、修業の成果ですカイ?」
「恥ずいから、それは止やめてくれ………今は『霊手』って呼んでる」


 初めて具現化した時は、調子に乗って大層な名前着けちまったけど、今は激しく後悔してる。

 何がグローリーだ!俺に “栄光” なんか要らん!!


「…………見ての通り、変えれるようになったよ。剣の形より、腕の延長にした方が使いやすいからな」


 そう言って、俺は箸を持った右手に再び霊手を展開させた。今度は、いつもやる “鉤爪” だ。

 ちなみに箸は持ったままだが、霊手はちゃんと鉤爪状になってる。これも修業の成果だな。
 


「名前、変えちゃったんですか!?」
「あんな「栄光を掴んでやる!」とか息巻いとったのに!?」
「そっちかよ!!?」


 名前なんか、どうでもいいだろ?

 もっと、霊気の流れをコントロール出来るようになったことに驚けよ!!ってか、そっちが振ったんだよな!?


「栄光なんていらねぇよ。他に大事なもんなんて、いくらでもあんだろ?」


 もぅ、栄光なんて欲しがらねぇ……そんなもんに拘って、大事なものを失ったら後悔してもしきれねぇからな。

 霊手は大した力じゃないかもしれないが、それでも上手く使えば役に立つ。それだけだ……


「よ、横島さん……」
「やっぱ変なもん喰ったんじゃぁ……?」
「テメェ、やっぱ殺す」


 この野郎……大人しくしてりゃ、図に乗りやがって!今度は許さん!!

 そう思った瞬間、鉤爪の指の部分がステルスに向かって一気に伸びる!

 これも修業の成果だ。存分に味わえ!
 

「うわおぃ!!?」


 だが、驚きながらもステルスは、その巨体に合わない俊敏な動きで指を躱す!

 流石ジャングル育ちだな。器用に弁当もこぼさず、キープしてやがる。


「逃げんなっ!この野郎!!」
「かっ、勘弁……!!」
 

 その後、休み時間ギリギリまでステルスを追いかけ回した。

 すっかり弁当を食う時間がなくなっちまったが、余らすのも勿体ないんで、残り数分で強引に流し込んだ………流石に気持ち悪りぃ凹


 …………そういや、ピートと何の話してたんだっけ?忘れちまったな。

 


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「今日も登校してきましたね」
 昼休みの屋上。
 俺がいつものスペースに腰掛けると同時くらいに、金髪碧眼の美形野郎が話し掛けたきた。
 この男の名は、『ピエトロ・ド・ブラドー』……ヴァンパイア・ハーフだ。
 |先生《美神玲子》の事務所に居た頃、ある事件を切っ掛けにして知り合い。その後、色々あって俺の通う光明高校に転校(しかも同じクラス)して来て、現在に至る。
「……スゲェ、引っ掛かる言い方だな…………」
 登校しちゃ悪いのか?
 そんな思いを込めながら、ジト目で軽く睨みながら返す……
「い、いえっ……以前は、日数ギリギリにならない限り来なかったから不思議だなぁと………」
 ……と、慌てて弁解を始めた。
 まぁ、こいつが悪意を持って話し掛けることは無いのは、始めから解ってたけどな。
「生活が前より安定してきたから、ギリギリまで事務所に詰める必要が無くなったんだよ」
 そう……先生の所に居た頃は、1円でも多く稼ぐために仕事が無い時でも事務所に押しかけてた。そこに居れば、飯くらいは食べさせて貰えたからな。
 だから、学校には進級ギリギリの日数でしか来れなかったが
、雪之丞と組んで時給制から歩合制に変わったことで、前より取り分が増えた(除霊費は雪之丞と折半)。たがら、仕事の無い時はなるべく学校に来るようにしている。
 来れる時に来た方が、いざという時に休みやすいからな……
「仕事、順調みたいですね」
「そういう訳でもないけど、俺達は経費が掛からないから安くても|そこそこ《・・・・》取れるんだよ。 貰うぜ」
 そう言いながら、ピートの傍らに積んである弁当をいくつか自分の方へ持ってくる。
 イケメンでモテモテのピートは女子達に大量の弁当を手渡されるんだが、薔薇の精をエネルギーとして吸収するピートに食事は必要ない(食えないわけじゃない)し、食べきれない………だろう。多分……
 かと言って、食べなければ女の子達の気持ちが無駄になるわけで、そうならないよう俺とステルスで食べる手伝いを買って(?)出ている。
 決して、金がなくてタカってる訳でも、持って来るのが面倒だからと言う訳ではない!
 話を戻す。
 他のGS達は、御札やら結界やらその他の道具にかなりの費用を取られちまうが、俺達は自分の霊力を武器化出来るんで費用は安く済む。文珠が色んな物に代用出来るのも大きい。
 ………まぁ、弱い奴ばかり相手にしてるってのもあるんだけどその辺は今後の課題だな。
 そんな風に考えているとピートが少し沈んだ調子で続けで来た。
「やっぱり、美神さんと所へは戻らないんですね?」
「……戻れないし、戻る気もねぇよ」
 弁当箱を開けながら、ピートの顔を見ずに答える。
 こいつ……と言うか、誰にも美神除霊事務所を辞めた本当の理由は話してない。
 せいぜい『給料が安い』とか『人使いが荒い』みたいな感じで流してる。
 いや、それはそれで結構参ってはいたんだが…………だけど、あの娘がここに転入して来なくてよかったな……六女に転入した当初は残念だったが、今はこれで良かったと思える。
 良かったと思える理由は、最低だが……
「そうですか……横島さんはらあそこにかなり馴染んでいると思ったんですがね」
「そうか?」
 弁当を食いながら考えてみるが、いまいちピンと来ない。
 まぁ、良くも悪くも色々あったからな。楽しそうにしてる時もあったのかもしれない。
「ところで、お前の方はどうなんだよ?神父は、相変わらずか?」
 正直余り触れて欲しく無い話なんで、適当な所で話題を変える。
「似たような感じですね。やっぱり、先生はお金を取りたがらないので……」
「なるほど……」
 こいつも、苦労してるな……
 やれやれと言った感じで答えるピートに相槌を打ちがら、心の中で苦笑する。
 神父の行動や理念は素直に尊敬するが、それで自分が倒れちゃ元も子もないないだろうに………それとも、そうなる事も引っ括めた上での行動なのか?
 まぁ、俺がどうこう言う話でもないんだが。
「なんか、食うのが悪くなってきたな」
「えっ?」
「いや、この弁当が神父の食事に当たられたら、なんて思ったからさ。まぁ、無理だろうけど……」
 昼に貰った弁当を神父に持ってくなんて、現実的にあり得ねぇよな。
 ただ、食に困ってる人間がいるのに、自分は何もせずに人の物を貪り食う、と言う行為に良心の苛責を覚えただけだ。
 ステルスはともかく、俺はピートにタカる必要はもうない訳だし、今日の会話を切っ掛けに昼飯くらい自分で何とかするかな?
「そ、それは流石に……」
「い……いや、言っただけだ。 気にしないでくれ」
 苦笑するピートに慌てて弁解しながら、まだ開けてない弁当箱を奴に返す。
「な、何ですか?」
 戸惑うピートに、今度は俺が苦笑しながら答える。
「………い…今更だけど、タダで食わせ続けてもらうのって、やっぱ悪いかなぁ〜……なんて」
 以前は、その日生き抜くのに必死で、他人の事情なんて考えられなかった。だが、今は裕福と言えないまでも食う物くらいは十分に確保出来てるんだ。
 人の好意に胡座かいてタダ飯食うなんて、やっぱおかしいよな……
「余った弁当は、ス…タイガーに食わせてやれよ ……散々食っといて、言う資格ないけどさ。まぁ、いつか埋め合わせはするよ」
「いや、それは逆に困ります! 僕やタイガーだけじゃ、食べ切れないでしょう。捨ててしまえば、それこそ皆に申し訳ないですから」
「そ、そう…「横島さ〜ん!!」うわぉ!!!」
 す、ステルス!?
 いつまに?? 2人しかいないと思ってたのに、いきなり2mを越す巨漢が俺の横に……
「自分だけ、いい格好するのはズルイんジャ! これじゃあ自分だけ、悪い人間ジャけん!!」
 戸惑う俺達に構わず、ステルスは一気に捲し立てる。
 …………んだよっ、いきなり!
「だぁーっ、そんなんじゃねぇよ!! 食うよ!食えばいいんだろ!! ってか、お前来てんなら言えよっ、ビックリするだろ!!」
「ずっーと、居ったのに2人共気付かんかったジャーー!!」
 マジか!? いつからだよ?
  毎回思うけど、こいつのステルス能力(?)は、もはや天賦の才としか言いようがないよな。こんなデカくて目立つのに……
「うぅ……酷いんジャい。横島さん………親友ジャと、思ってたのに」
「弁当くらいで、大げさだろ……」
 何言ってんだコイツは………?
「最近は、ピートさんが女の子達と一緒に居るのを邪魔するの、手伝ってくれへん!」
「…………そんな事してたんですか?」
「す、すまん……」
 本人の前で言うなよ………
  ピートも、ジト目で睨むな……悪かったって………
「も…もぅ、あんなこと止めようぜ……ピートをいくら邪魔したって、俺等がモテる様にはならないだろ?」
「何で、そんな “まとも” な事言い出すんジャぁ!?モテる男を、ひたすら呪いまくっとったアンタがぁ!! 横島さん、もしかしてアンタが呪われてしまったんジャぁ!??」
「…………んな訳あるか。俺は正気だ」
 何で弁当遠慮しただけで、呪われてる疑いまで掛けられなきゃたらねぇんだよ?
 いや……まぁ確かに以前は、しょうもねぇ事にエネルギー使ってたけどな。
「いんや! あんた絶対おかしい!!最近は、可愛い娘見かけても普通にスルーするし、一体どうしたんジャぁ!?」
「そういや、 最近ナンパとかしてないなぁ……」
 そう………確かにコイツの言う通り、最近は女の子達に言い寄ったりはしなくなった。別に真面目になったとか、大人になったからとか、そんな格好いいもんじゃない。
 どうしてかは…………下らな過ぎて、思い出したくもない。
 まぁ、理由はともかく、そんな行動が周りには “奇異” に映ってるのかもしれない。
 そんなことを考えてると、ステルスは更に捲し立てる。
「やたら、修業に熱心ジャい!」
「別にいいだろ」
「めっちゃ仕事も一生懸命ジャい!」
「仕事だからな……」
「何で、全然アホなこと言わないんジャ!!?」
「言わない方がいいだろ……?」
 何がアホだ……
 そりゃ以前の奇行を振り返りゃ、いくつも思い当たるんだが、面と向かって言われると何か腹立つな。 
「とにかく、俺は正常だ。今は、そんな気分にならないだけだよ」
「なら、またいつかは女の子に飛びかかるんですカイ!?」
「それ、ただの変態じゃねぇか!?」
「やっぱり変ジャい!!!」
「テメェ……いい加減にしろよ………!!」
 物には “限度” ってもんがあんだよ……!
 頭を抱えて空を見上げるこいつの顔面に、一発ぶち込んでやろうと、立ち上がって拳に力を入れるがピートに止められる。
「学校でそんな物騒なもの出さないで下さい!」
 物騒な物……?
 やべっ……!?思わず、右手に霊手を展開してたわ(ちなみに鉤爪じゃなくて、今回はナックル型だ)!
 体勢もいつも除霊する時みたく、腰を沈めて飛び掛かる姿勢になってる。割とガチで、キレかかってたな。
 ステルスの方を見ると、冷や汗を掻きながら後ずさってやがる。流石にヤバいと思ったらしい……
「チッ…… 馬鹿らしい!」
 舌打ちして霊手を戻して座り直すと、食いかけの弁当をかっ込む!こうなりゃ自棄食いだ!!
 善意のつもりがら呪われた疑い掛けられて、変態扱いされたぞ。自業自得とは言え、面白くねぇな!
「す、すまんです……」
「いいよ。俺にも、原因はある」
 小声で謝るステルスに、俺は食いながら答えた。こいつも俺の変化に戸惑ってただけ…………だと信じたい。
 そんな感じでよく解らないトラブルから気を取り直しつつ、いつも通り三人で弁当を再開した後ピートが口を開く。
「そういえば『ハンド・オブ・グローリー』でしたっけ? 形、変えれるようになったんですね」
「ワッシもびっくりしたんジャ。それも、修業の成果ですカイ?」
「恥ずいから、それは止やめてくれ………今は『霊手』って呼んでる」
 初めて具現化した時は、調子に乗って大層な名前着けちまったけど、今は激しく後悔してる。
 何がグローリーだ!俺に “栄光” なんか要らん!!
「…………見ての通り、変えれるようになったよ。剣の形より、腕の延長にした方が使いやすいからな」
 そう言って、俺は箸を持った右手に再び霊手を展開させた。今度は、いつもやる “鉤爪” だ。
 ちなみに箸は持ったままだが、霊手はちゃんと鉤爪状になってる。これも修業の成果だな。
「名前、変えちゃったんですか!?」
「あんな「栄光を掴んでやる!」とか息巻いとったのに!?」
「そっちかよ!!?」
 名前なんか、どうでもいいだろ?
 もっと、霊気の流れをコントロール出来るようになったことに驚けよ!!ってか、そっちが振ったんだよな!?
「栄光なんていらねぇよ。他に大事なもんなんて、いくらでもあんだろ?」
 もぅ、栄光なんて欲しがらねぇ……そんなもんに拘って、大事なものを失ったら後悔してもしきれねぇからな。
 霊手は大した力じゃないかもしれないが、それでも上手く使えば役に立つ。それだけだ……
「よ、横島さん……」
「やっぱ変なもん喰ったんじゃぁ……?」
「テメェ、やっぱ殺す」
 この野郎……大人しくしてりゃ、図に乗りやがって!今度は許さん!!
 そう思った瞬間、鉤爪の指の部分がステルスに向かって一気に伸びる!
 これも修業の成果だ。存分に味わえ!
「うわおぃ!!?」
 だが、驚きながらもステルスは、その巨体に合わない俊敏な動きで指を躱す!
 流石ジャングル育ちだな。器用に弁当もこぼさず、キープしてやがる。
「逃げんなっ!この野郎!!」
「かっ、勘弁……!!」
 その後、休み時間ギリギリまでステルスを追いかけ回した。
 すっかり弁当を食う時間がなくなっちまったが、余らすのも勿体ないんで、残り数分で強引に流し込んだ………流石に気持ち悪りぃ凹
 …………そういや、ピートと何の話してたんだっけ?忘れちまったな。