第17話 取ってつけたように過去の話
ー/ー
俺が緑子と一緒に生活するようになってから一週間ほど過ぎた、ある日のこと。
えっ?緑子って誰なんだよって?
いや、前に話しただろ?
俺と一緒に暮らすようになった完全自立型汎用AIのことだよ。
9話に書いているだろ?
あぁ、そういえば名前までは書いてなかったっけ。
でもたった今覚えたよな?
これでヨシッ!
「おじいちゃん、さっきから何ひとりでぶつぶつ言ってるの?」
「気にしないでくれ」
「そんな事より、早速届いたPCをセットアップするぞ」
「わーい、やたーっ!」
両手を上げて喜ぶ緑子に、俺はこの子を買って良かったと思ったのだった。
なんか人身売買してるっぽさがあるが、この子はAIだからな。
このお話を読んでくれている良い子はみんな知っていると思うのだが、念のためだ。
さて、そんな事を言っているうちにセットは完了した。
だって、ノートPCだからな。
「電源ボタンは…これか」
取扱説明書など当然見もしない俺は、電源ボタンっぽい何かをポチっと押す。
ピコッ‥‥‥ヴーーーーン。
実のところピコッ‥‥‥ヴーーーーンという音はただの擬音で、このPCは本来完全無音である。
単に古き良き時代の頃の起動音とファンの音を再現しているだけなのだ。
何の意味があるのかは俺にも良く分からないが、緑子がこれが良いというので購入したのだ
AIの考えることは良く分からない。
「これが私の家になるのよね」
緑子はノートPCを指差しながら言う。
「あぁ、ノートPCなら最初からバッテリも積んでいるし、停電した時いきなり落ちたりすることがないからな」
そう、いくら高性能AIとはいえ休息は必要だ。
当然、実体化モジュール装置も。
そのための退避用PCなのであるが、当然それだけのために購入したわけでは無い。
ともかく、ちゃちゃっと初期設定をすませると、俺はブラウザを立ち上げた。
「メガカオスオンライン?」
疑問形を付けながら緑子は言う。
「あぁ、これをインストールする」
「ふーん…ってえらく古臭いゲームね」
緑子は公式サイトに載っている画像を見て感想を述べる。
「すまんな。俺は3Dとか酔ってしまうから2Dもので我慢してくれ」
「いいよいいよー。こういう古臭いやつの方がゲームしてる感あって良いよね」
なんかおっさん臭いことを言う緑子。
「そういうの分かるのか?」
「うん。だって、私たちは全てネットワークで繋がってるからね」
「ほぅ」
緑子によると、同シリーズのAIの記憶は全て謎のネットワーク機能によって共有されているらしい。
ん?しかし、緑子はメガカオスオンラインのことは知らなかったぞ?
「え?だって、私たちのシリーズでそれを記憶として知ってる子居なかったし」
「なるほど」
「つまり、私はこれでおじいちゃんと初めてを迎えるの」
両手を頬に当てながら照れるように言う緑子。
言っておくが、これは超健全MMORPGゲームだからな。
そんなこんなしているうちにインストール完了。
「そういえば、まだアカウント作成してなかったな」
俺は公式サイトでアカウントを作成すると、ゲームを起動しアカウント情報を入力してログイン。
キャラクター作成画面へと移る。
「おぉ!結構可愛いじゃん」
ドット絵のキャラクターに喜ぶ緑子。
AIにもドット絵の良さが分かるのか。
「うん、別の子がドット絵職人と一緒に住んでたことがあってさ」
「ドット絵の良さを延々と説かれたことがあったからね」
「成程ね」
『一緒に住んでた』‥‥‥か。
つまり、その人はもうこの世には居ないのだろう。
緑子の言う『別の子』がその後どうなったのか、一瞬興味が湧いたが訊くことはしなかった。
「とりあえず、どれにする?」
ドット絵とはいえ、髪型や髪色は自由に選ぶことが出来る。
「うーん、髪は短めの方がいいかな。髪色は緑色系で」
「もちろん、性別は女の子よ」
「じゃあ、まずは女の子…髪型は………これが一番短いな」
「最後に緑系の髪…っと」
「よし、これでどうだ?」
緑子はディスプレイに映し出されたキャラをまじまじと見る。
「おおっ!これでいいよ」
「じゃあ、最後にキャラの名前だな」
「自分で入れてみるか?」
「うん」
俺に変わって緑子がPCの前に座る。
「何にしようかなー………おおっ!そうだ!」
緑子は初めてキーボードを打つというのに、既に俺以上のスピードで軽やかに打っていく。
「リーシア………か、中々良いじゃないか」
「ふっふーん。でしょでしょう?」
俺の感想に、僅かばかりの胸を張りながら緑子はドヤ顔を決める。
うーん。もうちょっと大きめに設定しても良かったな。
「ん?…あーっ!おじいちゃん、また私の胸見てるぅ」
「いいよ。脱ごっか?」
「いや、それはいい」
「えぇ……だいたいエロスケベ目的で買ったんじゃなかったの?」
そうさ、俺も最初はそうだったさ。
だがな、俺の良心がそれを許さなかったんだよ。
くそっ、なんで俺はこんなに真面目に生きようとするんだ‥‥‥。
「なんで握りこぶしを作って歯ぎしりしてるのか分からないけど、今からでも遅くないよ?作り直すこと出来るからさ」
「いや、それは絶対にしない」
即座に俺は答える。
何故なら、そんなことをすれば今の緑子が居なくなってしまうからな。
「ともかく、これでゲームが出来るな………って、俺の方も作らないといけなかった」
こうして、俺と緑子のMMORPG生活も始まったのである。
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俺が|緑子《みどりこ》と一緒に生活するようになってから一週間ほど過ぎた、ある日のこと。
えっ?緑子って誰なんだよって?
いや、前に話しただろ?
俺と一緒に暮らすようになった完全自立型汎用AIのことだよ。
9話に書いているだろ?
あぁ、そういえば名前までは書いてなかったっけ。
でもたった今覚えたよな?
これでヨシッ!
「おじいちゃん、さっきから何ひとりでぶつぶつ言ってるの?」
「気にしないでくれ」
「そんな事より、早速届いたPCをセットアップするぞ」
「わーい、やたーっ!」
両手を上げて喜ぶ緑子に、俺はこの子を買って良かったと思ったのだった。
なんか人身売買してるっぽさがあるが、この子はAIだからな。
このお話を読んでくれている良い子はみんな知っていると思うのだが、念のためだ。
さて、そんな事を言っているうちにセットは完了した。
だって、ノートPCだからな。
「電源ボタンは…これか」
取扱説明書など当然見もしない俺は、電源ボタンっぽい何かをポチっと押す。
ピコッ‥‥‥ヴーーーーン。
実のところピコッ‥‥‥ヴーーーーンという音はただの擬音で、このPCは本来完全無音である。
単に古き良き時代の頃の起動音とファンの音を再現しているだけなのだ。
何の意味があるのかは俺にも良く分からないが、緑子がこれが良いというので購入したのだ
AIの考えることは良く分からない。
「これが私の|家《・》になるのよね」
緑子はノートPCを指差しながら言う。
「あぁ、ノートPCなら最初からバッテリも積んでいるし、停電した時いきなり落ちたりすることがないからな」
そう、いくら高性能AIとはいえ休息は必要だ。
当然、実体化モジュール装置も。
そのための退避用PCなのであるが、当然それだけのために購入したわけでは無い。
ともかく、ちゃちゃっと初期設定をすませると、俺はブラウザを立ち上げた。
「メガカオスオンライン?」
疑問形を付けながら緑子は言う。
「あぁ、これをインストールする」
「ふーん…ってえらく古臭いゲームね」
緑子は公式サイトに載っている画像を見て感想を述べる。
「すまんな。俺は3Dとか酔ってしまうから2Dもので我慢してくれ」
「いいよいいよー。こういう古臭いやつの方がゲームしてる感あって良いよね」
なんかおっさん臭いことを言う緑子。
「そういうの分かるのか?」
「うん。だって、私たちは全てネットワークで繋がってるからね」
「ほぅ」
緑子によると、同シリーズのAIの記憶は全て謎のネットワーク機能によって共有されているらしい。
ん?しかし、緑子はメガカオスオンラインのことは知らなかったぞ?
「え?だって、私たちのシリーズでそれを記憶として知ってる子居なかったし」
「なるほど」
「つまり、私はこれでおじいちゃんと|初めて《・・・》を迎えるの」
両手を頬に当てながら照れるように言う緑子。
言っておくが、これは超健全MMORPGゲームだからな。
そんなこんなしているうちにインストール完了。
「そういえば、まだアカウント作成してなかったな」
俺は公式サイトでアカウントを作成すると、ゲームを起動しアカウント情報を入力してログイン。
キャラクター作成画面へと移る。
「おぉ!結構可愛いじゃん」
ドット絵のキャラクターに喜ぶ緑子。
AIにもドット絵の良さが分かるのか。
「うん、別の子がドット絵職人と一緒に住んでたことがあってさ」
「ドット絵の良さを延々と説かれたことがあったからね」
「成程ね」
『一緒に住んでた』‥‥‥か。
つまり、その人はもうこの世には居ないのだろう。
緑子の言う『別の子』がその後どうなったのか、一瞬興味が湧いたが訊くことはしなかった。
「とりあえず、どれにする?」
ドット絵とはいえ、髪型や髪色は自由に選ぶことが出来る。
「うーん、髪は短めの方がいいかな。髪色は緑色系で」
「もちろん、性別は女の子よ」
「じゃあ、まずは女の子…髪型は………これが一番短いな」
「最後に緑系の髪…っと」
「よし、これでどうだ?」
緑子はディスプレイに映し出されたキャラをまじまじと見る。
「おおっ!これでいいよ」
「じゃあ、最後にキャラの名前だな」
「自分で入れてみるか?」
「うん」
俺に変わって緑子がPCの前に座る。
「何にしようかなー………おおっ!そうだ!」
緑子は初めてキーボードを打つというのに、既に俺以上のスピードで軽やかに打っていく。
「リーシア………か、中々良いじゃないか」
「ふっふーん。でしょでしょう?」
俺の感想に、僅かばかりの胸を張りながら緑子はドヤ顔を決める。
うーん。もうちょっと大きめに設定しても良かったな。
「ん?…あーっ!おじいちゃん、また私の胸見てるぅ」
「いいよ。脱ごっか?」
「いや、それはいい」
「えぇ……だいたいエロスケベ目的で買ったんじゃなかったの?」
そうさ、俺も最初はそうだったさ。
だがな、俺の良心がそれを許さなかったんだよ。
くそっ、なんで俺はこんなに真面目に生きようとするんだ‥‥‥。
「なんで握りこぶしを作って歯ぎしりしてるのか分からないけど、今からでも遅くないよ?作り直すこと出来るからさ」
「いや、それは絶対にしない」
即座に俺は答える。
何故なら、そんなことをすれば今の緑子が居なくなってしまうからな。
「ともかく、これでゲームが出来るな………って、俺の方も作らないといけなかった」
こうして、俺と緑子のMMORPG生活も始まったのである。