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第18話 時空の訓練部屋

ー/ー



次の日。
朝食を済ませた俺は、訓練に励むため2日目にしてようやくキャンプ地を離れた。
なんか『明日から頑張る』と言い続けてやらなかった奴が、やっと頑張り始めたっぽさがあるが、いや、本気で初日からやる気はあったよ?

「そんなに遠く行かなくていい」

背後からユウキの声が聞こえる。

「そうなの?」
「じゃあ、この辺でもいいのか?」

「そこなら良く見える」

ユウキは親指を立てて言う。
え?単なる見やすさだけで言ったのか?

そんなことを考えているうちに、モンスターがドロップした。

「ふよふよーん」

「ふっ…プヨリンか…」
「俺も舐められたものだっ!」

俺はロングソード+0を片手に、緑色のプヨリンに向かって走り出した。
そして、俺は昔の出来事を思い出していた。
そうだった‥‥‥。

‥‥‥。

「はっ!」

目を覚ました時、俺は既にキャンプ地に居てユウキの膝の上に頭を乗せていた。

「あれ?緑のプヨリンは?」

起き上がってキョロキョロとする俺に、ユウキが指差す。

「あそこ」

ユウキの話によると、俺は突っ込んだ瞬間に緑プヨリンの突進を受けて気絶した挙句、毒を受けてそのまま死んだらしい。
死んだと言っても、この部屋の中では死というものは存在しないらしく、部屋に戻されるだけのようだ。
なんか昔やってたMMORPGみたいだな。

「全く…グリーンプヨリン相手に情けない奴だ!」

言うまでもないが、ジャンヌの言葉である。

「私はさっさとこの部屋を出たいのだ」
「ちゃんと真面目にやれっ!」

勝手に付いて来てこの言いよう。
だが、分かっているぞ。
これはデレ期というやつで『ふんっ!お前のことが心配で付いて来たわけじゃないんだからなっ!』っていうやつだ。

「貴様!何をニヤついているっ!」
「真面目にやれっ!真面目にっ!!!」

あれ?違った?
仕方なく、俺は立ち上がると再びキャンプ地を離れるべく歩み始める。

「あー、気にせんとゆっくりしたらええんやで」

「そうにゃ。ジャンヌは照れてるだけにゃ」
「本当は心配だから付いて来てるにゃ」

「なっ!?違いますっ!私は本当に早く帰りたいんですっ!」

そんな彼女らのやり取りを尻目にキャンプ地を離れた。
と言っても50mくらいしか離れてないけど。

「さぁ、今度こそ貴様の命日だ」
「ゆくぞっ!」

こうして、俺とグリーンプヨリンとの死闘は続いた。
そして、夕方。

「おぉ、結構上がったやん」

千里が俺の冒険者カードを見て言う。
あれからグリーンプヨリンを3体倒したおかげで、そこそこ強くなったのだ。

「流石は私の夫」

ユウキの発言はスルーして、俺は皆に訊く。

「もしかして、みんなもここで訓練したんですか?」

「んにゃ。うちらは元の場所で3年程かけてレベルを上げたんやで」

「そうにゃ。蒼治良は恵まれてるにゃ」
「にゃにせ、ここで得られる経験値は10倍だからにゃ」

「成程」

「まぁ、でも、うちの燒梅(しゅうまい)のレベルも上がったし、感謝感謝にゃ」
「にゃー?燒梅?」

「ウァ」

こうして2日目も無事終了したのであった。
そして3日目。

「さっさと行ってレベルを上げてこい!」

鬼嫁に「さっさと仕事に行って金を稼いで来てっ!」みたいな感じで、ジャンヌに尻を叩かれなが俺は再びキャンプ地を離れる。
離れると言っても‥‥以下略。

「さぁ、今日はどのモンスターだ?」

両手で持った剣を前方に向けながら、ドロップされるのを待つこと3分。
それは現れた。

「あーっ!男だ男だーっ!!!」

現れたのは10体のゴブリン娘。
俺を見つけるやいなや、襲い掛かって来た。

「くっ!…」

3体くらいならともかく10体ともなると避けるのも一苦労だった。

「中々やるね。お兄ちゃん」

『お兄ちゃん』という言葉にキュンときながらも、俺はそれに惑わされないように自分の頬にビンタをする。

「ふっ…その手には乗らないぜ、お嬢ちゃん達」

余裕ぶりながら俺は応える。

「蒼治良はん、鼻血出てるでーっ!!!」

観戦している千里が言う。

「蒼治良」

「ん?」

「これ」

ヒュッ。

ユウキが手裏剣を投げるかのように何かを投げて来たので受け取ってみると、それはティッシュ1枚だった。
よくこんなものを50mも投げられたもんだ。
感心しつつ俺はティッシュを二つに切って、それぞれを鼻に詰めていった。

「やーん、お兄ちゃんのえっちぃ!」

ゴブリン娘たちはそう言った後。

「それぇっ!全員でむいちゃえーっ!!!」
「おーっ!!!」

俺を取り囲んだゴブリン娘たちが一斉に襲い掛かってきた。
だが、それは俺にとって好都合な事であった。

俺は真正面から来るゴブリン娘に突進する。

「しまった!」

ゴブリン娘はそう言うが時すでに遅し。

ポン。

俺の手刀がゴブリン娘の頭上に落ちる。

「うわーん、お兄ちゃんがぶったーっ!!!」

これにて一体脱落。

「酷いよ、お兄ちゃん」
「そうだそうだ!このDVお兄ちゃん!」

ゴブリン娘たちの甘い声による精神攻撃が繰り広げられたが、俺はそれに何とか耐えながら全てのゴブリン娘を撃退し、今日は無事に帰還を果たしたのであった。

「お帰り蒼治良はん……ぶっ!」

「にゃはははははは、なんにゃその顔!」

千里と拇拇(もも)は腹を抱えて笑う。
激戦を繰り広げて帰って来てみれば、笑うとは酷いではないか。
というか、笑ってないのは唯一ユウキだけであった。

「お前は笑わないんだな」

流石は、俺の嫁だと自負しているだけのことはある。

「笑ってる」

「えっ!?その顔で!?…マジで!?」

いつもの無表情にしか見えないんだが……。

「マジ。超ウケてる」

少しでも感動した俺が馬鹿みたいじゃないか。

「これ」

俺はユウキが差し出してきた手鏡で自分の顔を見た。

「……ぷっ」
「これは…笑われても仕方ないな………」

「ない」

そんな面白おかしい顔も、1時間ほどすると綺麗さっぱり治ったのだった。
つづく。

「えっ!?このクソシナリオ。まだ続くの?」

「うん。つづく」


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次の日。
朝食を済ませた俺は、訓練に励むため2日目にしてようやくキャンプ地を離れた。
なんか『明日から頑張る』と言い続けてやらなかった奴が、やっと頑張り始めたっぽさがあるが、いや、本気で初日からやる気はあったよ?
「そんなに遠く行かなくていい」
背後からユウキの声が聞こえる。
「そうなの?」
「じゃあ、この辺でもいいのか?」
「そこなら良く見える」
ユウキは親指を立てて言う。
え?単なる見やすさだけで言ったのか?
そんなことを考えているうちに、モンスターがドロップした。
「ふよふよーん」
「ふっ…プヨリンか…」
「俺も舐められたものだっ!」
俺はロングソード+0を片手に、緑色のプヨリンに向かって走り出した。
そして、俺は昔の出来事を思い出していた。
そうだった‥‥‥。
‥‥‥。
「はっ!」
目を覚ました時、俺は既にキャンプ地に居てユウキの膝の上に頭を乗せていた。
「あれ?緑のプヨリンは?」
起き上がってキョロキョロとする俺に、ユウキが指差す。
「あそこ」
ユウキの話によると、俺は突っ込んだ瞬間に緑プヨリンの突進を受けて気絶した挙句、毒を受けてそのまま死んだらしい。
死んだと言っても、この部屋の中では死というものは存在しないらしく、部屋に戻されるだけのようだ。
なんか昔やってたMMORPGみたいだな。
「全く…グリーンプヨリン相手に情けない奴だ!」
言うまでもないが、ジャンヌの言葉である。
「私はさっさとこの部屋を出たいのだ」
「ちゃんと真面目にやれっ!」
勝手に付いて来てこの言いよう。
だが、分かっているぞ。
これはデレ期というやつで『ふんっ!お前のことが心配で付いて来たわけじゃないんだからなっ!』っていうやつだ。
「貴様!何をニヤついているっ!」
「真面目にやれっ!真面目にっ!!!」
あれ?違った?
仕方なく、俺は立ち上がると再びキャンプ地を離れるべく歩み始める。
「あー、気にせんとゆっくりしたらええんやで」
「そうにゃ。ジャンヌは照れてるだけにゃ」
「本当は心配だから付いて来てるにゃ」
「なっ!?違いますっ!私は本当に早く帰りたいんですっ!」
そんな彼女らのやり取りを尻目にキャンプ地を離れた。
と言っても50mくらいしか離れてないけど。
「さぁ、今度こそ貴様の命日だ」
「ゆくぞっ!」
こうして、俺とグリーンプヨリンとの死闘は続いた。
そして、夕方。
「おぉ、結構上がったやん」
千里が俺の冒険者カードを見て言う。
あれからグリーンプヨリンを3体倒したおかげで、そこそこ強くなったのだ。
「流石は私の夫」
ユウキの発言はスルーして、俺は皆に訊く。
「もしかして、みんなもここで訓練したんですか?」
「んにゃ。うちらは元の場所で3年程かけてレベルを上げたんやで」
「そうにゃ。蒼治良は恵まれてるにゃ」
「にゃにせ、ここで得られる経験値は10倍だからにゃ」
「成程」
「まぁ、でも、うちの|燒梅《しゅうまい》のレベルも上がったし、感謝感謝にゃ」
「にゃー?燒梅?」
「ウァ」
こうして2日目も無事終了したのであった。
そして3日目。
「さっさと行ってレベルを上げてこい!」
鬼嫁に「さっさと仕事に行って金を稼いで来てっ!」みたいな感じで、ジャンヌに尻を叩かれなが俺は再びキャンプ地を離れる。
離れると言っても‥‥以下略。
「さぁ、今日はどのモンスターだ?」
両手で持った剣を前方に向けながら、ドロップされるのを待つこと3分。
それは現れた。
「あーっ!男だ男だーっ!!!」
現れたのは10体のゴブリン娘。
俺を見つけるやいなや、襲い掛かって来た。
「くっ!…」
3体くらいならともかく10体ともなると避けるのも一苦労だった。
「中々やるね。お兄ちゃん」
『お兄ちゃん』という言葉にキュンときながらも、俺はそれに惑わされないように自分の頬にビンタをする。
「ふっ…その手には乗らないぜ、お嬢ちゃん達」
余裕ぶりながら俺は応える。
「蒼治良はん、鼻血出てるでーっ!!!」
観戦している千里が言う。
「蒼治良」
「ん?」
「これ」
ヒュッ。
ユウキが手裏剣を投げるかのように何かを投げて来たので受け取ってみると、それはティッシュ1枚だった。
よくこんなものを50mも投げられたもんだ。
感心しつつ俺はティッシュを二つに切って、それぞれを鼻に詰めていった。
「やーん、お兄ちゃんのえっちぃ!」
ゴブリン娘たちはそう言った後。
「それぇっ!全員でむいちゃえーっ!!!」
「おーっ!!!」
俺を取り囲んだゴブリン娘たちが一斉に襲い掛かってきた。
だが、それは俺にとって好都合な事であった。
俺は真正面から来るゴブリン娘に突進する。
「しまった!」
ゴブリン娘はそう言うが時すでに遅し。
ポン。
俺の手刀がゴブリン娘の頭上に落ちる。
「うわーん、お兄ちゃんがぶったーっ!!!」
これにて一体脱落。
「酷いよ、お兄ちゃん」
「そうだそうだ!このDVお兄ちゃん!」
ゴブリン娘たちの甘い声による精神攻撃が繰り広げられたが、俺はそれに何とか耐えながら全てのゴブリン娘を撃退し、今日は無事に帰還を果たしたのであった。
「お帰り蒼治良はん……ぶっ!」
「にゃはははははは、なんにゃその顔!」
千里と|拇拇《もも》は腹を抱えて笑う。
激戦を繰り広げて帰って来てみれば、笑うとは酷いではないか。
というか、笑ってないのは唯一ユウキだけであった。
「お前は笑わないんだな」
流石は、俺の嫁だと自負しているだけのことはある。
「笑ってる」
「えっ!?その顔で!?…マジで!?」
いつもの無表情にしか見えないんだが……。
「マジ。超ウケてる」
少しでも感動した俺が馬鹿みたいじゃないか。
「これ」
俺はユウキが差し出してきた手鏡で自分の顔を見た。
「……ぷっ」
「これは…笑われても仕方ないな………」
「ない」
そんな面白おかしい顔も、1時間ほどすると綺麗さっぱり治ったのだった。
つづく。
「えっ!?このクソシナリオ。まだ続くの?」
「うん。つづく」