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小鳩

ー/ー




 あの人が、事務所(美神除霊事務所)を辞めたと聞いた時は驚いた。


 理由を聞いたら、「給料が安いから……」みたいに言ってたけど、何か話しにくそうにしてたから多分違うよね。

 本当に、何があったんだろ?

 横島さん、あそこの人達と凄く仲良さそうだったのに……

 気にはなったけど、それ以上は聞けなかった。

 あの人はいつも優しいし、会う度に色々話すけど、やっぱり私は “ご近所さん” 程度の関係でしかないのかもしれない。


 一度は “結婚” までしたのに……


 …………そう、私と横島さんは以前結婚した。

 元は、あの人の早とちりから始まったなし(・・)崩し的な結婚だったけど私は嬉しかった。


 考えなしで、落ち着きがないけど、裏表がなくて優しい人。

 何より『貧乏神』の “貧ちゃん” に憑かれてるのを知っても、私を嫌がらなかった。

 口では同情的なことを言っても、本音は私達家族を避けたがってる人達と彼は真逆だったと言ってもいい。

 貧ちゃんが大きくなった時は、どうしようかと思ったけど、この人と一緒になれるなら、“それもいいかな” なんて思ったのも正直な気持ちだった。


 結局、貧ちゃんが福之神になったことで有耶無耶になっちゃったけどね…………凄い複雑。


 だったら、新しく関係を作れればいいんだけど、中々勇気が持てない。

 以前、福引で遊園地の券が当たった時は変な感じになっちゃったしなぁ……

 どこかに誘いたくても、やっぱり家の事があって余裕はない。それに、横島さんも新しい事務所(男の人だけみたいだから、少し安心)が忙しいみたいで誘いにくい。

 だから、学校の行き帰りを一緒にするのが、今は精一杯…………

 それが、私にはとても大切な時間だけど、あの人はどうなんだろ?

 嫌がられてなきゃ、いいな……

 

「小鳩、まだ行かんのか?」
 

 とっくに学校に行く準備を済ましてるのに、いつまでも出ていかない私に貧ちゃんが声を掛けてくる。


「うん、そろそろ行こうかな……」
「……あいつが、出るのをまっとんのか?」
「…………いや、そういう訳じゃないけど」


 横島さんが家を出るのは、もう少しあと……

 帰りは中々一緒になれないから、朝だけは必ず合わせないといけない。

 あの人が出るのと同時に出ちゃうと、待ってるのがバレちゃうから微妙にずらさなきゃだけど、これが結構難しい……早すぎても、遅すぎても駄目。

 タイミング的に横島さんが出た後にするのが合わせやすいけど、毎回あとから出るとやっぱりバレちゃう…………

 でも、昨日は横島さんより早かったから、今日は後からでいいよね。


 ガチャッ


 そんなふうに思ってると、隣の部屋のドアが開く音が聞こえる。こういう時に、壁の薄い部屋には感謝出来る。

 でも、まだ駄目……もう少しズラして……

 …………よし! 行こう。


「そろそろ、出なきゃね! じゃあ、行ってきます」
「頑張れよ」
「うん!」


バタンッ


 


「…………全く、小鳩もしょうもない奴やなぁ……普通に待ってた方が、あのアホだって気付くやろ」








小鳩 小鳩


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 あの人が、事務所(美神除霊事務所)を辞めたと聞いた時は驚いた。
 理由を聞いたら、「給料が安いから……」みたいに言ってたけど、何か話しにくそうにしてたから多分違うよね。
 本当に、何があったんだろ?
 横島さん、あそこの人達と凄く仲良さそうだったのに……
 気にはなったけど、それ以上は聞けなかった。
 あの人はいつも優しいし、会う度に色々話すけど、やっぱり私は “ご近所さん” 程度の関係でしかないのかもしれない。
 一度は “結婚” までしたのに……
 …………そう、私と横島さんは以前結婚した。
 元は、あの人の早とちりから始まった|なし《・・》崩し的な結婚だったけど私は嬉しかった。
 考えなしで、落ち着きがないけど、裏表がなくて優しい人。
 何より『貧乏神』の “貧ちゃん” に憑かれてるのを知っても、私を嫌がらなかった。
 口では同情的なことを言っても、本音は私達家族を避けたがってる人達と彼は真逆だったと言ってもいい。
 貧ちゃんが大きくなった時は、どうしようかと思ったけど、この人と一緒になれるなら、“それもいいかな” なんて思ったのも正直な気持ちだった。
 結局、貧ちゃんが福之神になったことで有耶無耶になっちゃったけどね…………凄い複雑。
 だったら、新しく関係を作れればいいんだけど、中々勇気が持てない。
 以前、福引で遊園地の券が当たった時は変な感じになっちゃったしなぁ……
 どこかに誘いたくても、やっぱり家の事があって余裕はない。それに、横島さんも新しい事務所(男の人だけみたいだから、少し安心)が忙しいみたいで誘いにくい。
 だから、学校の行き帰りを一緒にするのが、今は精一杯…………
 それが、私にはとても大切な時間だけど、あの人はどうなんだろ?
 嫌がられてなきゃ、いいな……
「小鳩、まだ行かんのか?」
 とっくに学校に行く準備を済ましてるのに、いつまでも出ていかない私に貧ちゃんが声を掛けてくる。
「うん、そろそろ行こうかな……」
「……あいつが、出るのをまっとんのか?」
「…………いや、そういう訳じゃないけど」
 横島さんが家を出るのは、もう少しあと……
 帰りは中々一緒になれないから、朝だけは必ず合わせないといけない。
 あの人が出るのと同時に出ちゃうと、待ってるのがバレちゃうから微妙にずらさなきゃだけど、これが結構難しい……早すぎても、遅すぎても駄目。
 タイミング的に横島さんが出た後にするのが合わせやすいけど、毎回あとから出るとやっぱりバレちゃう…………
 でも、昨日は横島さんより早かったから、今日は後からでいいよね。
 ガチャッ
 そんなふうに思ってると、隣の部屋のドアが開く音が聞こえる。こういう時に、壁の薄い部屋には感謝出来る。
 でも、まだ駄目……もう少しズラして……
 …………よし! 行こう。
「そろそろ、出なきゃね! じゃあ、行ってきます」
「頑張れよ」
「うん!」
バタンッ
「…………全く、小鳩もしょうもない奴やなぁ……普通に待ってた方が、あのアホだって気付くやろ」