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霊盾爆弾

ー/ー



「何か、良さげなのはあったか?」


 傍らで、端末を操作する雪之丞へ俺は問い掛けた。


 ここは、GS協会の東京本部。

 俺達……正確に言うと、個人から依頼の入らないGS達は、大体ここの『依頼検索コーナー』………イメージ的には、職安の『会社検索コーナー』が一番近いと思う。そこで、自分にあった案件を見つけに来ている。


 霊障案件と一口に言っても色々あって、今直ぐにでも何とかして欲しい案件ならクライアントの方から有名なGSへ駆け込むもんなんだが、その費用を捻出出来なかったり、処理して欲しいがそこまで急ぎでも無い。もっと言えば、誰に頼んで良いか解らない場合なんかも、こうして協会の方に通知が来てプールされてる場合が多い。

 
 俺達は事務所を立ち上げて数ヶ月くらい経つが、未だにクライアントからの依頼は0………まぁ、ペーペーのGSは大体そうなんだが、とにかくここへ来るのが既に習慣になっている。

 別に今の所特に不便はないが、この習慣が終わるのは果たして何年後になるだろうか………



「…………これなんか、良いんじゃねぇか?」


 俺の質問に、そう答えるこいつの顔は、言葉とは裏腹に余り楽しそうじゃない。

 こいつが楽しそうにするのは、強い奴とやり合う時だけだからな。なら、何を持って “良い” なんて言ったんだ?

 そんな事を考えながら、パソコンの画面を覗き込む……


「なるほど……これなら、文珠1つで済みそうだ」





    ◇◇◇


「そろそろ、じゃねぇか?」
「そうだな……」


 山道を歩きながら、隣の雪之丞の声に答える。

 辺りに微かだが、妖気の残り香のような物を感じる。この辺を縄張りとしてるので、ほぼ間違いないだろう。

  
 ここは埼玉県郊外の山奥で、時刻は深夜。今回、俺達はここへ鳥の妖怪の討伐に来た。
 
 どうも鳥の霊が妖怪化した類の物で数ヶ月前から出没し出して、たまに訪れる登山者などを襲うらしい。
 余り強くないようだが、元が鳥だけに標的に接近するのが困難を極め、未だに討伐出来なかったそうだ。

 そう言った事情と、元々人が来ない山奥なのも相まって長期間放置されてきた、所謂 “塩漬け案件” って奴だ。

 まぁ、俺達にとっては渡りの船となりそうだがな……


「この感じ………端から期待しちゃいなかったが……こりゃ、お前1人でも良かったな」
「逃げられたら、挟み打ちにしなきゃいけねぇだろ。その為の保険なんだから、居る意味はある」
「へいへい……」


 そうやって、互いに愚痴るとも駄弁るとも言えないような話をしながら、慎重に進むこと更に10分………


(カラス)……?」
「………に見えるな」


 俺達の居る所から、更に約30メートル先……そこに立つ1本の杉のテッペンに、1羽の大型の鳥が留まっていた。

 その姿は、烏を大鷲より一回りくらい巨大化させたような姿、翼を広げれば3〜4メートルくらいになるかもしれない。そして、その全身が黒い羽で覆われていた。
 そんな姿じゃ、普通は夜中に見えねぇんだろうが、その両眼から漏れる濁った赤い光と、全身から放たれる妖気が鈍く発光していて、それが逆に奴を闇の中で際立たせていた。
 だが、情報通り大した妖力は感じない。一般的なGSなら、楽に駆除出来るレベルだろう。



「どうする?お前なら、こっからでも狙えんじゃねぇか?」
「余裕だな。でも、森に被害は出したくない。お前、もっと近寄って奴を空へ追い立てられるか?」

「解った。3〜40秒後に奴が飛ぶように仕向けるから、準備してくれ」
「ああ、頼む」


 言うやいなや、身を潜めるようにして闇へ消えて行く雪之丞を見送りながら、俺も奴の言った準備に掛かる。


 ………………と言っても、霊盾を一発生成するだけなんだがな。

 そんな事を考えつつ、目の前に出した右手に意識を集中する。体中の霊気を脈動させて、移動させる。
 余り派手にやると烏に霊気を勘付かれる恐れがあるんで、慎重に……そして、ゆっくりと体の霊気を右手に集める。 

 すると、手の平が霊気を帯びて光出す。やがて、その集まった光は手の平から盛り上がり、一つの形を織り成して行く。




霊盾爆弾 横島

 これも、妙神山での修業の成果。

 今作っているのは呼称こそ “霊盾” だが、初めて霊能に目覚めた時の皿とは違う。

 作る手順の始めはそれと同じだが、これは更に霊気を込めて凝縮する感じだ。これの究極形態が俺の文珠になるわけだが、そこまではしない。

 これは、霊盾と文珠の “中間形態” そうに言えば、一番しっくり来るかもしれないな。それでも形を成した光ではなく、固着化した物体レベルまでは行ってる。

 そうして、俺の手から具現化されたそれは………



「爆弾(ダイナマイト型)だ……」



※GS美神の『横島『ではなく、幽遊白書の『鴉』(CV堀川亮氏)をイメージして脳内補完して下さい。知らない方は、Youtubeでも観て調べて下さい。


 変形霊盾爆弾………凝縮した霊気と言うのは、刺激を加えれば爆弾のように爆ぜる。破魔札なんかが、その良い例だな。

 だけど、俺のは一味違うぞ………!


 バサバサバサッ……!!


 巨体烏が闇夜に飛び立ったのは、俺が誰にともなく独りごちたのとほぼ同時だった。

 雪之丞に追い立てられたであろう、そいつは黒い翼をはためかせ宙を舞う。


 闇夜に烏……言葉にすれば、それなりに風情がありそうだが、星明かりを背に飛ぶ奴は別に映えなかった。ただの、巨大な怪鳥だ。

 それを見た俺は、ポケット内の文珠に『飛』と刻み発動。すると、瞬時に背中から半具現された霊気の翼が生える。

 黄色に光るそれは、数本の光の線が何となく翼のシルエットを形作るだけの簡素な物だが、それが異様さが逆に非日常性を際立たせて独特な威風を放つ………少なくとも、俺はそう思っている。


 鳥がそうするように、俺もその翼をはためかせ地を蹴ると、鳥とは絶対に違うであろう慣性の力によって、数瞬の内に木々の上に躍り出た。

 開けた視界の先には、丁度背中を向けている黒い怪鳥。

 そして、そのまま浮遊した状態で………


「はあぁぁぁーーっ!!」


 そいつへ向かって、霊盾を力一杯投げ付ける。


 ………ただ、軌道は外れた。

 当たり前だ。いくら、通常よりデカくても、飛んでる対象に物を投げた所で当たる訳が無い。

 外れた霊盾は、やがて前進するエネルギーを失い森の何処かに落ちて爆ぜる。普通は、そうなる……


 …………でも、今回は普通じゃない。

 外れた霊盾は、空中でグニャリ(・・・・)と軌道を曲げ、そのまま………


“ぐぁっ……!?”



 ドゴォンッッ!!



 「……討伐完了」


 爆発の起こった、宙空を眺めながら呟く。

 粉々になった奴は、何が起こったかも認識出来ないまま死んだ感じだろうな………まぁ、その方が幸せか。

 修業の末、俺は3〜40メートルくらいまでなら霊盾を自由に動かせるようになった。1つだけじゃなくて、複数……


 今回の様な依頼には、打って付けだな。




次のエピソードへ進む 小鳩


みんなのリアクション

「何か、良さげなのはあったか?」
 傍らで、端末を操作する雪之丞へ俺は問い掛けた。
 ここは、GS協会の東京本部。
 俺達……正確に言うと、個人から依頼の入らないGS達は、大体ここの『依頼検索コーナー』………イメージ的には、職安の『会社検索コーナー』が一番近いと思う。そこで、自分にあった案件を見つけに来ている。
 霊障案件と一口に言っても色々あって、今直ぐにでも何とかして欲しい案件ならクライアントの方から有名なGSへ駆け込むもんなんだが、その費用を捻出出来なかったり、処理して欲しいがそこまで急ぎでも無い。もっと言えば、誰に頼んで良いか解らない場合なんかも、こうして協会の方に通知が来てプールされてる場合が多い。
 俺達は事務所を立ち上げて数ヶ月くらい経つが、未だにクライアントからの依頼は0………まぁ、ペーペーのGSは大体そうなんだが、とにかくここへ来るのが既に習慣になっている。
 別に今の所特に不便はないが、この習慣が終わるのは果たして何年後になるだろうか………
「…………これなんか、良いんじゃねぇか?」
 俺の質問に、そう答えるこいつの顔は、言葉とは裏腹に余り楽しそうじゃない。
 こいつが楽しそうにするのは、強い奴とやり合う時だけだからな。なら、何を持って “良い” なんて言ったんだ?
 そんな事を考えながら、パソコンの画面を覗き込む……
「なるほど……これなら、文珠1つで済みそうだ」
    ◇◇◇
「そろそろ、じゃねぇか?」
「そうだな……」
 山道を歩きながら、隣の雪之丞の声に答える。
 辺りに微かだが、妖気の残り香のような物を感じる。この辺を縄張りとしてるので、ほぼ間違いないだろう。
 ここは埼玉県郊外の山奥で、時刻は深夜。今回、俺達はここへ鳥の妖怪の討伐に来た。
 どうも鳥の霊が妖怪化した類の物で数ヶ月前から出没し出して、たまに訪れる登山者などを襲うらしい。
 余り強くないようだが、元が鳥だけに標的に接近するのが困難を極め、未だに討伐出来なかったそうだ。
 そう言った事情と、元々人が来ない山奥なのも相まって長期間放置されてきた、所謂 “塩漬け案件” って奴だ。
 まぁ、俺達にとっては渡りの船となりそうだがな……
「この感じ………端から期待しちゃいなかったが……こりゃ、お前1人でも良かったな」
「逃げられたら、挟み打ちにしなきゃいけねぇだろ。その為の保険なんだから、居る意味はある」
「へいへい……」
 そうやって、互いに愚痴るとも駄弁るとも言えないような話をしながら、慎重に進むこと更に10分………
「|烏《カラス》……?」
「………に見えるな」
 俺達の居る所から、更に約30メートル先……そこに立つ1本の杉のテッペンに、1羽の大型の鳥が留まっていた。
 その姿は、烏を大鷲より一回りくらい巨大化させたような姿、翼を広げれば3〜4メートルくらいになるかもしれない。そして、その全身が黒い羽で覆われていた。
 そんな姿じゃ、普通は夜中に見えねぇんだろうが、その両眼から漏れる濁った赤い光と、全身から放たれる妖気が鈍く発光していて、それが逆に奴を闇の中で際立たせていた。
 だが、情報通り大した妖力は感じない。一般的なGSなら、楽に駆除出来るレベルだろう。
「どうする?お前なら、こっからでも狙えんじゃねぇか?」
「余裕だな。でも、森に被害は出したくない。お前、もっと近寄って奴を空へ追い立てられるか?」
「解った。3〜40秒後に奴が飛ぶように仕向けるから、準備してくれ」
「ああ、頼む」
 言うやいなや、身を潜めるようにして闇へ消えて行く雪之丞を見送りながら、俺も奴の言った準備に掛かる。
 ………………と言っても、霊盾を一発生成するだけなんだがな。
 そんな事を考えつつ、目の前に出した右手に意識を集中する。体中の霊気を脈動させて、移動させる。
 余り派手にやると烏に霊気を勘付かれる恐れがあるんで、慎重に……そして、ゆっくりと体の霊気を右手に集める。 
 すると、手の平が霊気を帯びて光出す。やがて、その集まった光は手の平から盛り上がり、一つの形を織り成して行く。
 これも、妙神山での修業の成果。
 今作っているのは呼称こそ “霊盾” だが、初めて霊能に目覚めた時の皿とは違う。
 作る手順の始めはそれと同じだが、これは更に霊気を込めて凝縮する感じだ。これの究極形態が俺の文珠になるわけだが、そこまではしない。
 これは、霊盾と文珠の “中間形態” そうに言えば、一番しっくり来るかもしれないな。それでも形を成した光ではなく、固着化した物体レベルまでは行ってる。
 そうして、俺の手から具現化されたそれは………
「爆弾(ダイナマイト型)だ……」
※GS美神の『横島『ではなく、幽遊白書の『鴉』(CV堀川亮氏)をイメージして脳内補完して下さい。知らない方は、Youtubeでも観て調べて下さい。
 変形霊盾爆弾………凝縮した霊気と言うのは、刺激を加えれば爆弾のように爆ぜる。破魔札なんかが、その良い例だな。
 だけど、俺のは一味違うぞ………!
 バサバサバサッ……!!
 巨体烏が闇夜に飛び立ったのは、俺が誰にともなく独りごちたのとほぼ同時だった。
 雪之丞に追い立てられたであろう、そいつは黒い翼をはためかせ宙を舞う。
 闇夜に烏……言葉にすれば、それなりに風情がありそうだが、星明かりを背に飛ぶ奴は別に映えなかった。ただの、巨大な怪鳥だ。
 それを見た俺は、ポケット内の文珠に『飛』と刻み発動。すると、瞬時に背中から半具現された霊気の翼が生える。
 黄色に光るそれは、数本の光の線が何となく翼のシルエットを形作るだけの簡素な物だが、それが異様さが逆に非日常性を際立たせて独特な威風を放つ………少なくとも、俺はそう思っている。
 鳥がそうするように、俺もその翼をはためかせ地を蹴ると、鳥とは絶対に違うであろう慣性の力によって、数瞬の内に木々の上に躍り出た。
 開けた視界の先には、丁度背中を向けている黒い怪鳥。
 そして、そのまま浮遊した状態で………
「はあぁぁぁーーっ!!」
 そいつへ向かって、霊盾を力一杯投げ付ける。
 ………ただ、軌道は外れた。
 当たり前だ。いくら、通常よりデカくても、飛んでる対象に物を投げた所で当たる訳が無い。
 外れた霊盾は、やがて前進するエネルギーを失い森の何処かに落ちて爆ぜる。普通は、そうなる……
 …………でも、今回は普通じゃない。
 外れた霊盾は、空中で|グニャリ《・・・・》と軌道を曲げ、そのまま………
“ぐぁっ……!?”
 ドゴォンッッ!!
 「……討伐完了」
 爆発の起こった、宙空を眺めながら呟く。
 粉々になった奴は、何が起こったかも認識出来ないまま死んだ感じだろうな………まぁ、その方が幸せか。
 修業の末、俺は3〜40メートルくらいまでなら霊盾を自由に動かせるようになった。1つだけじゃなくて、複数……
 今回の様な依頼には、打って付けだな。