百足
ー/ー「解っては、いたけどよぉ〜……」

「想像以上にキショいな……」
目の前で蠢く妖怪『百足』の姿に、俺も雪之丞も嫌悪感丸出しだ。
ここは長野県の郊外で、周りには豊かな森林が広がる田園地帯。その一角にある、大きな廃屋に俺達はいる。
こんな所にいる理由は、いつも通り除霊……いや、妖怪退治か。
依頼主は、この廃屋の持ち主。
元々は、この辺一帯を所有する大地主の家系でこの廃屋も当時は大きな邸宅だったらしい。
ずっと放置されていたのを老朽化が進んで取り壊すことになったが、その時になっな『妖怪百足』が住み着いてると解り取り壊しが頓挫。
そして、退治しようと言う流れになるのは当然の話だな。
依頼主も“元々”大地主だったが、今は落ちぶれ……とにかく、昔ほど豊かではない。
本来なら一流所のGSにとっとと退治して貰いたいんだろうが、報酬を渋らざる負えない事情があり、相場より安くても喜んで(いや、違うけど)飛び付いてくる俺達にお鉢が回って来たわけだ。
………………いつも通りだな。
雪之丞とで組んでまだ数ヶ月(妙神山の加速空間を入れれば数年)……業界では完全なペーペーである俺達は、仕事があるだけでも“ありがた”がらなきゃならないが、毎回似たような話ばかり聞かされると少しばかり滅入る。
この状況を打破出来る時は、来るのだろうか?いや、マジで…………
いやいや……毎回、似たようなこと愚痴っても仕方ねぇ………
どうも前の事務所(美神除霊事務所)の経験から、安く使われることに過剰反応しちまう。
どんだけ死ぬ思いしても99%吸い上げられる以前に比べたら、歩合制でも報酬は折半出来る今は天国だ。
◇◇◇
…………話を依頼に戻す。
今回の討伐対象の妖怪『百足』だが、読んで字の如く自然の百足が妖気を浴びて妖怪化した存在で、大きさは大体数m。山に巻き付くくらいデカいなんて伝承もあるが流石にそれはない。
性格は攻撃的で人間を捕食する。口にある牙には毒があって噛まれると数日は熱を出して寝込み、場合によっては死ぬこともある。
主に森に潜むが、ごく稀に人家にもいることがある。今回の場合は後者か………人がまるで寄り付かないことが、逆に奴等の温床になったようだな。
知識としては大体これくらいか。正直、油断さえしなきゃ苦戦する相手でもなさそうだとは思う。問題は、見た目だよ。見た目……
図鑑でしか見たことないんだが……普通に気持ち悪い。
あの長くて黒っぽい体に無数の脚………写真を見てるだけで、鳥肌が立ってくるのに、アレが数mにもなったらもぅ……………いや、仕事だ。割り切れ。
…………な〜んて、来る前に考えてたけど、やっぱキモいわ。

大体全長7〜8m、横幅は30〜40cmくらいか。
闇に溶け込む黒い体、無数に蠢く脚。顔面の両端に伸びる鋭い牙。そして、不気味に光る八つの赤い眼。
でも、それだけなら何とか我慢出来そうだった。周りに這う、百足の群れを見るまでは………
「んなっ!?」
「うぉっ!!?」
二人同時に、驚愕の声を上げる!
薄暗くて気づかなかなったが、床や壁……果ては天井まで、大小無数のムカデが埋め尽くしていやがった。
全身に鳥肌が立って、嫌な汗が流れる。死の危険が迫るような恐怖とは別物の嫌悪感が、俺達を支配する……
ムカデは、単独行動しないはずだが………ひょっとして同種を使役してやがるのか!!?
そんな感じで衝撃を受けてるのをよそに、後ろを向いていた奴が俺達の上げた声に気づき顔をこちらに向ける。
そして俺達を認識した瞬間、奴の眼が光った気がした……
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサッッ……
「「!!!?」」
それと同時に無数のムカデが、俺達目掛けて迫って来る!!
「「おおおぉ〜〜!!!!!!!」」
そのまま回れ右をして、一目散に出口へ走る!!後ろなんて、振り返らない。いや、振り返れない……!
“戦闘中に敵を背を向けるなんて自殺行為”……んなこと、解ってる。
だが、そんな有り難い啓示、その時の俺達の頭の片隅にも残っちゃいなかった。
俺は走りながら、隣の雪之丞を罵る。罵る事に、意味なんかねぇ……ある種ノリだ!
「おおいっ、何逃げてんだよ!? 魔装術で何とかしろよ!!」
「うるせぇ! んなこと言うなら、お前が文珠で何とかしろ!!」
「チッ!」
まぁ、そりゃそうだな。
霊盾でぶっ飛ばす事も一瞬考えたが、即座に却下した。こんな廃屋でそれをしたら、普通に崩れる。
崩れなかったとしても、あの赤黒く蠢く連中が吹っ飛んで体にへばり付こうもんなら、想像しただけで吐ける。霊盾は、絶対に無しだ!
俺は『燃』と刻んだ文珠を、前を向いたまま後ろへ投擲!
「燃えろ!!」
汚物は消毒だっ!!!
ボアッ!!
パチッパチッパチッ……!!
念じた瞬間、文珠を起点にして炎が吹き上がる!!
………………見てないけど、多分吹き上がってると思う。背中へ、新たに感じた “熱” を信じたい。
そんな感じで少し不安ではあったが、火はありがたい(?)事に、昔ながらの木造建築の廃屋に瞬く間に燃え広がってくれた。
「勝手に燃やしちまって、平気か?」
「壊す予定なんだからいいだろ」
余談だが、家主が廃屋をわざわざ残していたのは、思い入れがあるからじゃねぇ。単に取り壊す金をケチっただけだ。
夜中に変な物音がすると近隣から苦情が来て、ようやく壊す気になったが、それが百足のせいだって言うんだから、何とも間の抜けたな話だよな。
そうやって、何とか外に出るがムカデ達は追って来なかった。どうやら、上手く炎で撒けたらしい。
「どうする? あれじゃ近寄れねぇぞ」
「気分的には、全部燃やしちまいたいんだがな」
このやたら広い廃屋(学校の体育館くらいある)を燃やすのは現実的じゃねぇわな………燃やすことは出来るだろうが、消すのが面倒だ。森にでも、火が移ったら偉いことになる。
奴を外に引っ張り出すか?
ムカデも付いてくるだろうが、中に居るよりはマシか……
「奴の居る所、大体解るよな?」
「ああ、炎がいい目印になってるよ」
さっき、俺が着けた火は今も煌々と燃え続けてる。流石に周辺には居ないだろうが、まだそんなに離れてない筈だ(……と言うか、早く消さねぇと本当に山火事になるな)。
「そこに霊波砲ぶっ込みゃ、奴を引きずり出せるんじゃねぇか?」
「……やってみるか」
他に代案もないからか、少し思案してから頷くと目標地点に向かって構え始めた。
雪之丞の両手に霊気が収束して行き、それが一気に解き放たれる!
「オラァ!!」
ギュオォーーーーー!!!!
掛け声と共に放たれた霊気は光束を成して、瞬く間に廃屋の一角に着弾!!
それと同時に、爆音と煙が辺りを支配する。
ドグォーーーン!!
「さ〜て、どうなる?」
「派手に行ったな」
壁を破壊してくれりゃいいと思ってたが、今の一撃で建物の一角が弾け飛んだぞ。また、腕あげやがったな……
相棒(書類上の上司)の成長に感心しながら、土煙の舞いたがる廃屋を眺めていたら、変化は直ぐに表れた。
「キシャーーーーーッ!!」
耳障りな奇声がしたと思った瞬間、百足の奴が崩れた廃屋から頭を這い出して来た。心なしか住処を台無しにされて怒ってるようにも見える。
…………思えばコイツは、まだ人間に被害を出してないんだったな。
依頼と言う事で、倒すのが当たり前の精神状態になってたが、冷静になって考えると俺達の方が他人のテリトリーを侵害している気がして、少し申し訳ない気にもなってくる。
ただ、人里に現れた以上放ってもおけない……それに、今はそんなことより………
「チッ……! やっぱり、小さいのも居るぜ」
雪之丞が指摘した通り、百足の周りを無数のムカデが這い回っている。奴が、嗾ければさっきと同じ様に襲ってくるだろうな。
だが………
「大丈夫だ、燃やす!」
俺は再び『燃』の文殊を取り出して、ムカデの這ってる地面に投擲した。
「終わりだ!」
念じると同時に文殊が発動!
ボウッ!! パチッ!パチッ!パチッ……!
霊気によって生成される炎が、一気に拡がりムカデを焼き尽くす。
さっき動揺したのは、暗く閉鎖された空間に居たからだ。開けた場所に出てきちまえば、どうと言うことはない。
「キシャーーーッ!!」
炎に焼かれ、百足も苦悶の奇声を上げる。
流石にこれだけじゃ倒せねぇだろうが、それなりにダメージは通った筈だ。
それに、一番の懸念材料は、これで消えた。
「牙の毒に気をつけろ」
「分かってるって!」
そう言って、雪之丞が百足に駆け出す!
勝負あったな。
炎の熱に藻掻いてる百足は、雪之丞の手刀に抵抗することも出来ずにあっさり首を斬り飛ばされた。親玉が死ねば、残ったムカデは放置でいいだろ。
「討伐完了……ってな♪」
…………何とか、これで依頼完了か。
「もぅ、百足駆除は勘弁して欲しいぜ……」
百足の死骸を見下ろして、ドヤ顔してるアイツを見ながら俺はそう独りごちた。
ただ、その後廃屋を消火して依頼主の所に報告に行ったんだが、そこでも一悶着起きてくれた。
勝手に壊したことに文句言われるかと不安だったが、どうせなら全部壊して更地にして欲しいと頼んで来たんで、速攻で断った!
ふざけんな!俺達は、除霊はするが便利屋じゃねぇ!!料金上乗せなら兎も角、人を安く使おうとすんじゃねぇよ!そもそも、テメェが解体費ケチった所為でこうなったんだから少しは反省しろや!!!
…………ああっ糞っ!
こうなって来ると、先生の金に拘る気持ちも解る気がした。
あんま、解りたくねぇけど…………
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「解っては、いたけどよぉ〜……」「想像以上にキショいな……」
目の前で蠢く妖怪『百足』の姿に、俺も雪之丞も嫌悪感丸出しだ。
ここは長野県の郊外で、周りには豊かな森林が広がる田園地帯。その一角にある、大きな廃屋に俺達はいる。
こんな所にいる理由は、いつも通り除霊……いや、妖怪退治か。
依頼主は、この廃屋の持ち主。
元々は、この辺一帯を所有する大地主の家系でこの廃屋も当時は大きな邸宅だったらしい。
ずっと放置されていたのを老朽化が進んで取り壊すことになったが、その時になっな『妖怪百足』が住み着いてると解り取り壊しが頓挫。
そして、退治しようと言う流れになるのは当然の話だな。
依頼主も“元々”大地主だったが、今は落ちぶれ……とにかく、昔ほど豊かではない。
本来なら一流所のGSにとっとと退治して貰いたいんだろうが、報酬を渋らざる負えない事情があり、相場より安くても喜んで(いや、違うけど)飛び付いてくる俺達にお鉢が回って来たわけだ。
………………いつも通りだな。
雪之丞とで組んでまだ数ヶ月(妙神山の加速空間を入れれば数年)……業界では完全なペーペーである俺達は、仕事があるだけでも“ありがた”がらなきゃならないが、毎回似たような話ばかり聞かされると少しばかり滅入る。
この状況を打破出来る時は、来るのだろうか?いや、マジで…………
いやいや……毎回、似たようなこと愚痴っても仕方ねぇ………
どうも前の事務所(美神除霊事務所)の経験から、安く使われることに過剰反応しちまう。
どんだけ死ぬ思いしても99%吸い上げられる以前に比べたら、歩合制でも報酬は折半出来る今は天国だ。
◇◇◇
…………話を依頼に戻す。
今回の討伐対象の妖怪『百足』だが、読んで字の如く自然の百足が妖気を浴びて妖怪化した存在で、大きさは大体数m。山に巻き付くくらいデカいなんて伝承もあるが流石にそれはない。
性格は攻撃的で人間を捕食する。口にある牙には毒があって噛まれると数日は熱を出して寝込み、場合によっては死ぬこともある。
主に森に潜むが、ごく稀に人家にもいることがある。今回の場合は後者か………人がまるで寄り付かないことが、逆に奴等の温床になったようだな。
知識としては大体これくらいか。正直、油断さえしなきゃ苦戦する相手でもなさそうだとは思う。問題は、|見た目《・・・》だよ。見た目……
図鑑でしか見たことないんだが……普通に気持ち悪い。
あの長くて黒っぽい体に無数の脚………写真を見てるだけで、鳥肌が立ってくるのに、アレが数mにもなったらもぅ……………いや、仕事だ。割り切れ。
…………な〜んて、来る前に考えてたけど、やっぱキモいわ。
大体全長7〜8m、横幅は30〜40cmくらいか。
闇に溶け込む黒い体、無数に蠢く脚。顔面の両端に伸びる鋭い牙。そして、不気味に光る八つの赤い眼。
でも、それだけなら何とか我慢出来そうだった。周りに這う、百足の群れを見るまでは………
「んなっ!?」
「うぉっ!!?」
二人同時に、驚愕の声を上げる!
薄暗くて気づかなかなったが、床や壁……果ては天井まで、大小無数のムカデが埋め尽くしていやがった。
全身に鳥肌が立って、嫌な汗が流れる。死の危険が迫るような恐怖とは別物の嫌悪感が、俺達を支配する……
ムカデは、単独行動しないはずだが………ひょっとして同種を使役してやがるのか!!?
そんな感じで衝撃を受けてるのをよそに、後ろを向いていた奴が俺達の上げた声に気づき顔をこちらに向ける。
そして俺達を認識した瞬間、奴の眼が光った気がした……
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサッッ……
「「!!!?」」
それと同時に無数のムカデが、俺達目掛けて迫って来る!!
「「おおおぉ〜〜!!!!!!!」」
そのまま回れ右をして、一目散に出口へ走る!!後ろなんて、振り返らない。いや、振り返れない……!
“戦闘中に敵を背を向けるなんて自殺行為”……んなこと、解ってる。
だが、そんな有り難い啓示、その時の俺達の頭の片隅にも残っちゃいなかった。
俺は走りながら、隣の雪之丞を罵る。罵る事に、意味なんかねぇ……ある種|ノリ《・・》だ!
「おおいっ、何逃げてんだよ!? 魔装術で何とかしろよ!!」
「うるせぇ! んなこと言うなら、お前が文珠で何とかしろ!!」
「チッ!」
まぁ、そりゃそうだな。
霊盾でぶっ飛ばす事も一瞬考えたが、即座に却下した。こんな廃屋でそれをしたら、普通に崩れる。
崩れなかったとしても、あの赤黒く蠢く連中が吹っ飛んで体にへばり付こうもんなら、想像しただけで吐ける。霊盾は、絶対に無しだ!
俺は『燃』と刻んだ文珠を、前を向いたまま後ろへ投擲!
「燃えろ!!」
汚物は消毒だっ!!!
ボアッ!!
パチッパチッパチッ……!!
念じた瞬間、文珠を起点にして炎が吹き上がる!!
………………見てないけど、多分吹き上がってると思う。背中へ、新たに感じた “熱” を信じたい。
そんな感じで少し不安ではあったが、火はありがたい(?)事に、昔ながらの木造建築の廃屋に瞬く間に燃え広がってくれた。
「勝手に燃やしちまって、平気か?」
「壊す予定なんだからいいだろ」
余談だが、家主が廃屋をわざわざ残していたのは、思い入れがあるからじゃねぇ。単に取り壊す金をケチっただけだ。
夜中に変な物音がすると近隣から苦情が来て、ようやく壊す気になったが、それが百足のせいだって言うんだから、何とも間の抜けたな話だよな。
そうやって、何とか外に出るがムカデ達は追って来なかった。どうやら、上手く炎で撒けたらしい。
「どうする? あれじゃ近寄れねぇぞ」
「気分的には、全部燃やしちまいたいんだがな」
このやたら広い廃屋(学校の体育館くらいある)を燃やすのは現実的じゃねぇわな………燃やすことは出来るだろうが、消すのが面倒だ。森にでも、火が移ったら偉いことになる。
奴を外に引っ張り出すか?
ムカデも付いてくるだろうが、中に居るよりはマシか……
「奴の居る所、大体解るよな?」
「ああ、炎がいい目印になってるよ」
さっき、俺が着けた火は今も煌々と燃え続けてる。流石に周辺には居ないだろうが、まだそんなに離れてない筈だ(……と言うか、早く消さねぇと本当に山火事になるな)。
「そこに霊波砲ぶっ込みゃ、奴を引きずり出せるんじゃねぇか?」
「……やってみるか」
他に代案もないからか、少し思案してから頷くと目標地点に向かって構え始めた。
雪之丞の両手に霊気が収束して行き、それが一気に解き放たれる!
「オラァ!!」
ギュオォーーーーー!!!!
掛け声と共に放たれた霊気は光束を成して、瞬く間に廃屋の一角に着弾!!
それと同時に、爆音と煙が辺りを支配する。
ドグォーーーン!!
「さ〜て、どうなる?」
「派手に行ったな」
壁を破壊してくれりゃいいと思ってたが、今の一撃で建物の一角が弾け飛んだぞ。また、腕あげやがったな……
相棒(書類上の上司)の成長に感心しながら、土煙の舞いたがる廃屋を眺めていたら、変化は直ぐに表れた。
「キシャーーーーーッ!!」
耳障りな奇声がしたと思った瞬間、百足の奴が崩れた廃屋から頭を這い出して来た。心なしか住処を台無しにされて怒ってるようにも見える。
…………思えばコイツは、まだ人間に被害を出してないんだったな。
依頼と言う事で、倒すのが当たり前の精神状態になってたが、冷静になって考えると俺達の方が他人のテリトリーを侵害している気がして、少し申し訳ない気にもなってくる。
ただ、人里に現れた以上放ってもおけない……それに、今はそんなことより………
「チッ……! やっぱり、小さいのも居るぜ」
雪之丞が指摘した通り、百足の周りを無数のムカデが這い回っている。奴が、|嗾《けしか》ければさっきと同じ様に襲ってくるだろうな。
だが………
「大丈夫だ、燃やす!」
俺は再び『燃』の文殊を取り出して、ムカデの這ってる地面に投擲した。
「終わりだ!」
念じると同時に文殊が発動!
ボウッ!! パチッ!パチッ!パチッ……!
霊気によって生成される炎が、一気に拡がりムカデを焼き尽くす。
さっき動揺したのは、暗く閉鎖された空間に居たからだ。開けた場所に出てきちまえば、どうと言うことはない。
「キシャーーーッ!!」
炎に焼かれ、百足も苦悶の奇声を上げる。
流石にこれだけじゃ倒せねぇだろうが、それなりにダメージは通った筈だ。
それに、一番の懸念材料は、これで消えた。
「牙の毒に気をつけろ」
「分かってるって!」
そう言って、雪之丞が百足に駆け出す!
勝負あったな。
炎の熱に藻掻いてる百足は、雪之丞の手刀に抵抗することも出来ずにあっさり首を斬り飛ばされた。親玉が死ねば、残ったムカデは放置でいいだろ。
「討伐完了……ってな♪」
…………何とか、これで依頼完了か。
「もぅ、百足駆除は勘弁して欲しいぜ……」
百足の死骸を見下ろして、ドヤ顔してるアイツを見ながら俺はそう独りごちた。
ただ、その後廃屋を消火して依頼主の所に報告に行ったんだが、そこでも一悶着起きてくれた。
勝手に壊したことに文句言われるかと不安だったが、どうせなら全部壊して更地にして欲しいと頼んで来たんで、速攻で断った!
ふざけんな!俺達は、除霊はするが便利屋じゃねぇ!!料金上乗せなら兎も角、人を安く使おうとすんじゃねぇよ!そもそも、テメェが解体費ケチった所為でこうなったんだから少しは反省しろや!!!
…………ああっ糞っ!
こうなって来ると、|先生《美神玲子》の金に拘る気持ちも解る気がした。
あんま、解りたくねぇけど…………