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SCENE087 どうにか終わったよ

ー/ー



 配信を終えて、僕は大きく息を吐く。
 正直なところ、先程の話は配信しちゃって大丈夫なのかと思ったよ。

「えっと、ラティナさんでしたよね」

「はい」

「先程のお話を詳しく聞かせて下さいますか?」

「よろしいですよ。私の知っている範囲でよろしければ」

 日下さんの言葉に、ラティナさんはおとなしく応じている。

「谷地さんは見習いの方々をお願いします。それではウィンクさん、ラティナさんをしばらくお借りしますね」

「は、はい。どうぞごゆっくり……」

 ラティナさんは物じゃないけれど、とりあえず話がしたいという日下さんの求めに、僕はあっさりと答えてしまっていた。
 でもまあ、こういうことはダンジョン管理局が情報として持っている方がいいだろうね。僕みたいな存在をこれ以上生み出さないためにも防げるのなら防いだ方がいいもんね。

「さて、私たちの方はどうしたらいいんだ?」

 日下さんを見送った後、衣織お姉さんが谷地さんに問いかけている。
 谷地さんもどうしたらいいのだろうかとちょっと戸惑っているようだ。

「とりあえず、このまま予定通り進めるしかないですね。ただ、先程の内容は配信に乗ってしまったようですし、見ていた管理局関係者は、私たち同様に慌てているでしょうね」

「あわわわ……。僕、大変なことをしちゃいましたかね?」

 谷地さんの言葉を聞いて、僕はだんだんと怖くなってくる。
 こんな重要な情報をさらりと流してしまったことを、今さらながらに後悔し始めていた。

「いや、ウィンクさんは咎められないでしょう。話の流れの中で突然出てきてしまったのですから。それこそ、私たちの方に任せて下さい」

「は、はい。よろしくお願いします」

 僕は仕方なく、谷地さんたちにすべてお任せすることになったのだった。

 話は逸れてしまったけれど、改めて僕は、見習いの人たちに魔法を再び見せている。
 僕もだいぶ魔法に慣れてきたので、見せびらかしたいというのもあるからね。

「ウォーターボール!」

 僕は水の球体を作ると、それを使っていろいろと面白いことをしてみた。

「その水の中に手を入れてみてください」

「この中に手を……?」

 見習いの一人がおそるおそる僕の作り出した水の球体の中に手を入れている。

「見てて下さいね。ウォッシュ!」

 手が中に入ったのを確認すると、僕は魔法を発動させる。すると、球体となった水が動き始めた。

「ははっ、く、くすぐったい」

 手を入れた女の子が、水の感触に笑いそうになっている。
 しばらくして水の動きがおさまると、疲れたようにその場に座り込んでしまった。

「ありゃりゃ……。ちょっと調節をミスりましたかね」

「くすぐったいですよ。でも、すごいですね。作り出した水をその場にとどめて、手洗いに使うっていうの」

「このダンジョンの中は暇ですからね。やることといったら、勉強と魔法の練習くらいしかないんですよ。モンスターになった影響なのか、ゲームで遊びたいって思わなくなっちゃいましたしね」

「なるほど。魔法って色々なことができるんだ。わ、私も使えるようになるかな?」

 僕の作った水に手を入れていた女の子は、魔法に対してやる気十分のようである。

「それこそイメージと特訓ですな。プリンセスは元々イメージするのは得意だったようですので、特訓を重ねてこのように繊細に扱えるようになったのですぞ」

「そうなんですね。私も立派な探索者になるべく、精進します」

 女の子は鼻息を荒くしていた。
 気合いを入れるのはいいけれど、まだダンジョン探索のできる年じゃないから、あんまり無理してほしくないな。
 僕は見習い四人の相手をしながら、そんな風に考えていた。

 そして、無事に二日間の日程を終えて、僕たちはダンジョンの入口まで四人を見送りに行く。

「どうでしたか、この二日間は」

「はい。ダンジョンの雰囲気を実際に体験してみて、早く高校生にならないかと待ち遠しくなりました」

「まさかダンジョンマスター自らに教えられるとは思ってなかったので、貴重な体験だと思います」

「うう、マナ酔いがよくならない……」

「ウィンクちゃんのファンになりました。サインください」

 四人が四人、まったく違う反応をしてくれたんだけど、うん、サインかぁ……。
 僕の出した水魔法に手を入れてくれた女の子が、僕に歩み寄って両手を握りながらにこにこと話している。
 うん、サインかぁ……。どういう風に書いたらいいんだろうね、サインって。
 僕がきょろきょろと見回していると、衣織お姉さんがにこにこと笑っている。

「私を差し置いてサインをもらおうなど見上げた根性だが、その勇気に免じて許してやろう。ほら、紙とペンだ」

「衣織お姉さん、どこから出したの?!」

「私も人気の探索者だ。時々求められるのでな、こうやって持ち歩いているのだよ」

 衣織お姉さんはにやりと僕を見る。
 助かるんだけど、なんだか素直に喜べないなぁ。
 とりあえず、衣織お姉さんから受け取った色紙に、僕はペンで名前を書く。サインなんてよく分からないから、ちょっと格好つけて名前を書くだけにしておいた。

「ありがとうございます。宝物にしますね」

「うん。喜んでくれたのなら、それでいいよ」

 女の子は喜んで色紙を抱きしめている。
 どういうわけか、平然と立っている方の男の子が、うらやましそうに見ている。

「それじゃ、気を付けて帰ってね。立派な探索者になれるように頑張って下さいね」

「はい!」

 挨拶を終えると、探索者見習いたちは、谷地さんと日下さんに連れられてダンジョンを去っていく。
 少しにぎやかだったから、ちょっと寂しくなったかな。

「それじゃ、私も百鬼夜行と合流することにするよ」

「分かりました。衣織お姉さんもありがとう」

「なに、気にするな。瞬のためなら、火の中水の中、どこでも駆けつけようじゃないか」

「もう、衣織お姉さんってば……」

 相変わらずの態度に、僕は呆れてしまう。本当に僕と瞳のためだったら、身をなげうってまで尽力してくれそうだから困る。

「あの、衣織様。お父様にもラティナは元気ですと、お伝え願えますでしょうか」

「ああ、それなら任せておいてくれ。それじゃ、また会おうな」

 最後に衣織お姉さんが去っていく。
 こうして、なにかと騒ぎの大きかった第二回のダンジョン体験は終わったのだった。


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次のエピソードへ進む SCENE088 人魚は嫉妬深い


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 配信を終えて、僕は大きく息を吐く。
 正直なところ、先程の話は配信しちゃって大丈夫なのかと思ったよ。
「えっと、ラティナさんでしたよね」
「はい」
「先程のお話を詳しく聞かせて下さいますか?」
「よろしいですよ。私の知っている範囲でよろしければ」
 日下さんの言葉に、ラティナさんはおとなしく応じている。
「谷地さんは見習いの方々をお願いします。それではウィンクさん、ラティナさんをしばらくお借りしますね」
「は、はい。どうぞごゆっくり……」
 ラティナさんは物じゃないけれど、とりあえず話がしたいという日下さんの求めに、僕はあっさりと答えてしまっていた。
 でもまあ、こういうことはダンジョン管理局が情報として持っている方がいいだろうね。僕みたいな存在をこれ以上生み出さないためにも防げるのなら防いだ方がいいもんね。
「さて、私たちの方はどうしたらいいんだ?」
 日下さんを見送った後、衣織お姉さんが谷地さんに問いかけている。
 谷地さんもどうしたらいいのだろうかとちょっと戸惑っているようだ。
「とりあえず、このまま予定通り進めるしかないですね。ただ、先程の内容は配信に乗ってしまったようですし、見ていた管理局関係者は、私たち同様に慌てているでしょうね」
「あわわわ……。僕、大変なことをしちゃいましたかね?」
 谷地さんの言葉を聞いて、僕はだんだんと怖くなってくる。
 こんな重要な情報をさらりと流してしまったことを、今さらながらに後悔し始めていた。
「いや、ウィンクさんは咎められないでしょう。話の流れの中で突然出てきてしまったのですから。それこそ、私たちの方に任せて下さい」
「は、はい。よろしくお願いします」
 僕は仕方なく、谷地さんたちにすべてお任せすることになったのだった。
 話は逸れてしまったけれど、改めて僕は、見習いの人たちに魔法を再び見せている。
 僕もだいぶ魔法に慣れてきたので、見せびらかしたいというのもあるからね。
「ウォーターボール!」
 僕は水の球体を作ると、それを使っていろいろと面白いことをしてみた。
「その水の中に手を入れてみてください」
「この中に手を……?」
 見習いの一人がおそるおそる僕の作り出した水の球体の中に手を入れている。
「見てて下さいね。ウォッシュ!」
 手が中に入ったのを確認すると、僕は魔法を発動させる。すると、球体となった水が動き始めた。
「ははっ、く、くすぐったい」
 手を入れた女の子が、水の感触に笑いそうになっている。
 しばらくして水の動きがおさまると、疲れたようにその場に座り込んでしまった。
「ありゃりゃ……。ちょっと調節をミスりましたかね」
「くすぐったいですよ。でも、すごいですね。作り出した水をその場にとどめて、手洗いに使うっていうの」
「このダンジョンの中は暇ですからね。やることといったら、勉強と魔法の練習くらいしかないんですよ。モンスターになった影響なのか、ゲームで遊びたいって思わなくなっちゃいましたしね」
「なるほど。魔法って色々なことができるんだ。わ、私も使えるようになるかな?」
 僕の作った水に手を入れていた女の子は、魔法に対してやる気十分のようである。
「それこそイメージと特訓ですな。プリンセスは元々イメージするのは得意だったようですので、特訓を重ねてこのように繊細に扱えるようになったのですぞ」
「そうなんですね。私も立派な探索者になるべく、精進します」
 女の子は鼻息を荒くしていた。
 気合いを入れるのはいいけれど、まだダンジョン探索のできる年じゃないから、あんまり無理してほしくないな。
 僕は見習い四人の相手をしながら、そんな風に考えていた。
 そして、無事に二日間の日程を終えて、僕たちはダンジョンの入口まで四人を見送りに行く。
「どうでしたか、この二日間は」
「はい。ダンジョンの雰囲気を実際に体験してみて、早く高校生にならないかと待ち遠しくなりました」
「まさかダンジョンマスター自らに教えられるとは思ってなかったので、貴重な体験だと思います」
「うう、マナ酔いがよくならない……」
「ウィンクちゃんのファンになりました。サインください」
 四人が四人、まったく違う反応をしてくれたんだけど、うん、サインかぁ……。
 僕の出した水魔法に手を入れてくれた女の子が、僕に歩み寄って両手を握りながらにこにこと話している。
 うん、サインかぁ……。どういう風に書いたらいいんだろうね、サインって。
 僕がきょろきょろと見回していると、衣織お姉さんがにこにこと笑っている。
「私を差し置いてサインをもらおうなど見上げた根性だが、その勇気に免じて許してやろう。ほら、紙とペンだ」
「衣織お姉さん、どこから出したの?!」
「私も人気の探索者だ。時々求められるのでな、こうやって持ち歩いているのだよ」
 衣織お姉さんはにやりと僕を見る。
 助かるんだけど、なんだか素直に喜べないなぁ。
 とりあえず、衣織お姉さんから受け取った色紙に、僕はペンで名前を書く。サインなんてよく分からないから、ちょっと格好つけて名前を書くだけにしておいた。
「ありがとうございます。宝物にしますね」
「うん。喜んでくれたのなら、それでいいよ」
 女の子は喜んで色紙を抱きしめている。
 どういうわけか、平然と立っている方の男の子が、うらやましそうに見ている。
「それじゃ、気を付けて帰ってね。立派な探索者になれるように頑張って下さいね」
「はい!」
 挨拶を終えると、探索者見習いたちは、谷地さんと日下さんに連れられてダンジョンを去っていく。
 少しにぎやかだったから、ちょっと寂しくなったかな。
「それじゃ、私も百鬼夜行と合流することにするよ」
「分かりました。衣織お姉さんもありがとう」
「なに、気にするな。瞬のためなら、火の中水の中、どこでも駆けつけようじゃないか」
「もう、衣織お姉さんってば……」
 相変わらずの態度に、僕は呆れてしまう。本当に僕と瞳のためだったら、身をなげうってまで尽力してくれそうだから困る。
「あの、衣織様。お父様にもラティナは元気ですと、お伝え願えますでしょうか」
「ああ、それなら任せておいてくれ。それじゃ、また会おうな」
 最後に衣織お姉さんが去っていく。
 こうして、なにかと騒ぎの大きかった第二回のダンジョン体験は終わったのだった。