表示設定
表示設定
目次 目次




変化

ー/ー



 久しぶりの登校……自分のクラスへ行き、自分の席に着く。机は、毎日使っていないせいか少々埃っぽい。俺は、それを軽く手で払ってから席に着く。

 その後は、HRまで時間があるので特に何もするわけでもなくだらけていると、アイツがいつもの広島弁で話しかけてきた。


「おはようございます。横島さん」


 いかつい顔に2mを越す長身。しかし、どこか人の良さそうで穏やかな顔つきをしたタイガー寅吉だ。

 そんな奴に、いつもの調子で答える。 

 
「タイガーか、おはよう」


 すると、奴はそんな俺をまじまじ見ながら口を開く。


「横島さん。また見た目変わりましたね〜……」







変化 横島
「ソ……ソウカ」


 …………と余り嬉しくない……いや、全く触れて欲しくない指摘をして来やがった。

 
「また、修行ですかい?」
「ああ……」


 自分では気づきにくいが、久しぶりに会う人間から見れば俺は相当変わっちまったらしい。

 身体付きは、以前のような痩せ型ではなく全体的に筋肉が付いて一回り大きくなっている。先日、新調したばかりの制服が既にキツくなっちまった。

 恐らく体重にして5、6kgは増えているだろう。身長も1、2cm伸びてるかな?

 
 顔付きも以前に比べて大人びてきており、タイガーやピートからは精悍になったと言われた。

 これだけなら嬉しいが同年代の人間に比べて老けて見えるのか、知らない人間からは留年したのかと勘違いされているらしい……放っとけ!!(見た目の変わらないピートがマジで羨ましいな……)

 髪が伸び過ぎなのが原因か?

 以前から長めだったが、更に伸びてバンダナが無いと本当に前が見辛い。後ろは、背中に掛かりそうなくらい伸びてる……髪が原因で老けて見えるだとすれば、切りゃ良いだけの話なんだが、切ったら切ったで顔立ちの変化がモロに出そうなんで怖くて切れない。


 ちなみにここで言う『以前』とは美神除霊事務所にいた頃のことだ。そこから、逆算すると大体3ヶ月前後か?

 3ヶ月程度でそんなに変わる訳がねぇとか言われそうだけど、俺の体感時間はもっと長い……多分、1年近く経っているんじゃないか?


 何故そんな事になっているかと言うと、その答えは以前から雪之丞と行っている妙神山にある。

 伊達除霊事務所に移ってから、俺達は暇を見て(暇しかねぇんだけど……)妙神山で修業を付けて貰っている。

 修行と言っても、以前斉天大聖様にしてもらった様なハイリスクのものじゃなく、基礎的な霊能力や技の修行を武神様に見て貰ってる感じだ。

 まぁ、何が言いたいかと言うと、そこには時間の流れが人間界と異なる空間があって、そこで数ヶ月過ごしても人間界では数日しか経たないのだ。この辺も、斉天大聖様の作り出した空間に似ている。

 1度の訪問は、精々2日〜4日程度。

 だが、それが数回も重なれば、1年くらいは普通に過ぎちまう訳だ。

 19歳の雪之丞はそんなに変化しなかったが、ちょうど成長期(17歳)真っ只中だった俺は、その変化がモロに来ちまったらしい。身体に関しては、以前の安月給で食えなかった事情もある。妙神山では毎日キツかったが、飯はたらふく食わせて貰えたからな。

 社会的には17歳……でも実際は、19歳前後………

 
 そりゃ、見た目も変わるよな……


 仕方ないと言えば仕方ないが、周りの反応を見ると中々“クるもの”がある。



 ただ、そんな貴重な若い“時”を投げ打っても、やった甲斐はあった。

 イレギュラー的な出来事で霊能力に目覚めた俺は実戦経験こそ腐るほどあったが、霊能力の基礎的な扱い方や知識は素人同然だったのでその欠点が大分改善された。

 以前より霊気量、出力ともに上がり『霊盾(れいじゅん)』や『霊手』(以前は、『サイキック・ソーサー』だの『ハンド・オブ・グローリー』なんて格好付けて呼んでいたが、恥ずかしいんで止めた)の熟練も格段に上がっている。

 勿論、文珠も健在だ…………まぁ、そうそう使えるものじゃないので余りこれに頼る戦いは避けたいが………


 話がそれたが、今の俺は中堅レベルのGSにも引けはとらないだろう。


「最近、随分熱心ですの〜、やっぱ試験対策ですカイ?」
「そうだな。時間のある内に、出来る事をしときたいからな……」


 そう答える俺をタイガーは、心底関心したように見ていたが、そんなもんは嘘だ。

 いや……GS試験はまた受けるから完全に嘘というわけではないんだが、本当の理由はそこじゃない。

 かと言って、雪之丞之ように人としての限界を超えたいとか、そういう訳でもない。

 強いて言うなら、不甲斐ない自分を立て直したかった。更に言うなら “心に空いた穴を埋める” 為には修行に集中するしかなかった………そう言った所だ……

 なら、その求めた強さで何をするのか?

 そんな風に問われても、今の俺には大した答えなんて出せないだろう。精々一人前のGSになる為と言うのが関の山か……?

 
 以前ならもっとハッキリ(・・・・)とした理由があったんだがな………

 
 好きになった娘を絶対に守りたい。その為に、本気で強くなりたい。本気でそう思っていた時期も確かにあったんだ。

 他人から見ればガキっぽいと鼻で笑われそうだが、それが当時の俺の正直な想いだった。


 でも、その娘との関係は今では切れてしまっている。正確に言うなら、逃げ出したと言った方が適確だろう……

 自分の弱さのせいでな………この業界にいる限り何処かで顔を合わせるかも知れないが、もう以前のように接するなんて不可能だ。


 絶対に軽蔑されてるだろうし、そもそもこっちに合わす顔が無い……


 強さを求める最大の理由が無くなってから、修行にあけくれる。

 改めて振り返ると、自分の馬鹿さ加減に嫌気がさして来るが、それでも止めることなんてもう出来ない。


 止めたら、それこそ立ち直れなくなっちまう…………そんな、恐怖と焦燥が俺の体を突き動かす。


 今の俺に出来るのはそれだけ。それしか、出来ないんだ……



次のエピソードへ進む 模擬戦


みんなのリアクション

 久しぶりの登校……自分のクラスへ行き、自分の席に着く。机は、毎日使っていないせいか少々埃っぽい。俺は、それを軽く手で払ってから席に着く。
 その後は、HRまで時間があるので特に何もするわけでもなくだらけていると、アイツがいつもの広島弁で話しかけてきた。
「おはようございます。横島さん」
 いかつい顔に2mを越す長身。しかし、どこか人の良さそうで穏やかな顔つきをしたタイガー寅吉だ。
 そんな奴に、いつもの調子で答える。 
「タイガーか、おはよう」
 すると、奴はそんな俺をまじまじ見ながら口を開く。
「横島さん。また見た目変わりましたね〜……」
「ソ……ソウカ」
 …………と余り嬉しくない……いや、全く触れて欲しくない指摘をして来やがった。
「また、修行ですかい?」
「ああ……」
 自分では気づきにくいが、久しぶりに会う人間から見れば俺は相当変わっちまったらしい。
 身体付きは、以前のような痩せ型ではなく全体的に筋肉が付いて一回り大きくなっている。先日、新調したばかりの制服が既にキツくなっちまった。
 恐らく体重にして5、6kgは増えているだろう。身長も1、2cm伸びてるかな?
 顔付きも以前に比べて大人びてきており、タイガーやピートからは精悍になったと言われた。
 これだけなら嬉しいが同年代の人間に比べて老けて見えるのか、知らない人間からは留年したのかと勘違いされているらしい……放っとけ!!(見た目の変わらないピートがマジで羨ましいな……)
 髪が伸び過ぎなのが原因か?
 以前から長めだったが、更に伸びてバンダナが無いと本当に前が見辛い。後ろは、背中に掛かりそうなくらい伸びてる……髪が原因で老けて見えるだとすれば、切りゃ良いだけの話なんだが、切ったら切ったで顔立ちの変化がモロに出そうなんで怖くて切れない。
 ちなみにここで言う『以前』とは美神除霊事務所にいた頃のことだ。そこから、逆算すると大体3ヶ月前後か?
 3ヶ月程度でそんなに変わる訳がねぇとか言われそうだけど、俺の体感時間はもっと長い……多分、1年近く経っているんじゃないか?
 何故そんな事になっているかと言うと、その答えは以前から雪之丞と行っている妙神山にある。
 伊達除霊事務所に移ってから、俺達は暇を見て(暇しかねぇんだけど……)妙神山で修業を付けて貰っている。
 修行と言っても、以前斉天大聖様にしてもらった様なハイリスクのものじゃなく、基礎的な霊能力や技の修行を武神様に見て貰ってる感じだ。
 まぁ、何が言いたいかと言うと、そこには時間の流れが人間界と異なる空間があって、そこで数ヶ月過ごしても人間界では数日しか経たないのだ。この辺も、斉天大聖様の作り出した空間に似ている。
 1度の訪問は、精々2日〜4日程度。
 だが、それが数回も重なれば、1年くらいは普通に過ぎちまう訳だ。
 19歳の雪之丞はそんなに変化しなかったが、ちょうど成長期(17歳)真っ只中だった俺は、その変化がモロに来ちまったらしい。身体に関しては、以前の安月給で食えなかった事情もある。妙神山では毎日キツかったが、飯はたらふく食わせて貰えたからな。
 社会的には17歳……でも実際は、19歳前後………
 そりゃ、見た目も変わるよな……
 仕方ないと言えば仕方ないが、周りの反応を見ると中々“クるもの”がある。
 ただ、そんな貴重な若い“時”を投げ打っても、やった甲斐はあった。
 イレギュラー的な出来事で霊能力に目覚めた俺は実戦経験こそ腐るほどあったが、霊能力の基礎的な扱い方や知識は素人同然だったのでその欠点が大分改善された。
 以前より霊気量、出力ともに上がり『|霊盾《れいじゅん》』や『霊手』(以前は、『サイキック・ソーサー』だの『ハンド・オブ・グローリー』なんて格好付けて呼んでいたが、恥ずかしいんで止めた)の熟練も格段に上がっている。
 勿論、文珠も健在だ…………まぁ、そうそう使えるものじゃないので余りこれに頼る戦いは避けたいが………
 話がそれたが、今の俺は中堅レベルのGSにも引けはとらないだろう。
「最近、随分熱心ですの〜、やっぱ試験対策ですカイ?」
「そうだな。時間のある内に、出来る事をしときたいからな……」
 そう答える俺をタイガーは、心底関心したように見ていたが、そんなもんは嘘だ。
 いや……GS試験はまた受けるから完全に嘘というわけではないんだが、本当の理由はそこじゃない。
 かと言って、雪之丞之ように人としての限界を超えたいとか、そういう訳でもない。
 強いて言うなら、不甲斐ない自分を立て直したかった。更に言うなら “心に空いた穴を埋める” 為には修行に集中するしかなかった………そう言った所だ……
 なら、その求めた強さで何をするのか?
 そんな風に問われても、今の俺には大した答えなんて出せないだろう。精々一人前のGSになる為と言うのが関の山か……?
 以前ならもっと|ハッキリ《・・・・》とした理由があったんだがな………
 好きになった娘を絶対に守りたい。その為に、本気で強くなりたい。本気でそう思っていた時期も確かにあったんだ。
 他人から見ればガキっぽいと鼻で笑われそうだが、それが当時の俺の正直な想いだった。
 でも、その娘との関係は今では切れてしまっている。正確に言うなら、逃げ出したと言った方が適確だろう……
 自分の弱さのせいでな………この業界にいる限り何処かで顔を合わせるかも知れないが、もう以前のように接するなんて不可能だ。
 絶対に軽蔑されてるだろうし、そもそもこっちに合わす顔が無い……
 強さを求める最大の理由が無くなってから、修行にあけくれる。
 改めて振り返ると、自分の馬鹿さ加減に嫌気がさして来るが、それでも止めることなんてもう出来ない。
 止めたら、それこそ立ち直れなくなっちまう…………そんな、恐怖と焦燥が俺の体を突き動かす。
 今の俺に出来るのはそれだけ。それしか、出来ないんだ……