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模擬戦

ー/ー



 
 ドゴォーーーーン!!!



 都心の外れにある工業地帯……その一画にある廃工場に轟音が響く。

 例えるならそれは、重量の金属同士がぶつかり合うような音。知らない人間が聞けば、車両同士の衝突なんかを連想しそうだな……

 その轟音のする廃工場の通路を、黒のコンバットスーツのような衣装に身を包んだ俺は埃を巻き上げながら全力で走る。


 時刻は夜の10時過ぎ。電灯なんて点かないんで光源は窓から見える星明かり明かりのみ。周りが殆ど見えやしねぇ……


「チッ……!」

 
 撒いたと思ったら、速攻で追い付いてくるアイツの気配を感じて俺は舌打ちをする。

 さっきの音は車両の衝突なんかじゃない、奴が壊れた機械に “体当り” した音だ!


 なんて思っていた次の瞬間に物陰のから、魔装術を身に纏った雪之丞が飛び出して来る。







模擬戦 雪之丞
「そこだぁ!!」 

 
 ギインッ

 
「ぐっ……」

 

 俺の右後方から来た奴の一撃を、俺は右手に纏わせた霊気を盾状に変化させて何とか防ぐ。

 魔装術を使ってる奴は、ある意味全身が金属の弾丸だ。霊気の盾で防ぎはしたが、衝撃は殺しきれず右腕全体に痺れが走る……


「クソがっ!!」


 それでも奴を振り払うように、強引に右腕を振るう! 

 
 ………………が、大きく振った事でボディが、がら空きになっちまった。

 
「貰いぃぃっ!!」


 嬉々とした顔をした雪之丞が、俺にボディブローを放つ!!

 ドヤ顔しやがって、腹立つなこの野郎!!

 咄嗟に左手で霊盾を展開させて直撃は何とか防ぐが、衝撃で数メートル後ろへすっ飛ばされる。


「くっ…」


 受け身をとって何とか体勢を整えようとするが、その時既に距離を詰めた奴の右手が俺の首スジに当たっていた……


「ここまでだな♪」


 ニヤリと笑いながら雪之丞は、魔装術を解いた。着ているのは、俺と同じ黒のコンバットスーツだ。

 

 正確には特殊な繊維で作られた対悪霊に特化したスーツ………
所謂 “霊衣” と言う奴だ。

 オカルトGメンも御用達にしてる大手オカルト企業の製品で、霊的な攻撃に対して強力な防御力を誇る。
 それに目を付けた雪之丞の発案で、それからは仕事や今みたいな“模擬戦”ではこんな格好をしてる訳だ

 そして、俺達は仕事が無い日(無い日が圧倒的なんだが……)は、修業の為にこういった事務所近くの廃工場でやり合う事が多い。






<i14655|55568>
「……これで三連敗か」

 
 俺は、体についた埃を払いながら苦々しく返した。
 
 勝率で言えば7対3くらいか……?せめて、6対4までは持って行きてぇな。

 
「実戦形式なんだぜ。普通に文珠だって使えばいいじゃねぇか?」
「アレにばかり、頼りたくねぇんだよ……」


 …………そう、俺の文珠は使いようによっては、最強の手段になり得る。自惚れじゃなく、本気でそう言える。


 俺の霊力を凝縮して作るビー玉くらいの宝珠に、文字を刻んで発動と念じれば様々な事象を引き起こせる。

『爆』と刻めば爆弾のように使えるし、『護』と刻めば結界は張ることが出来る。ニ個使用してそれぞれに『転』『移』と刻めばテレポートまで出来る。

 そして、組み合わせる文字数が多くなるほど、効果も比例して大きくなる。

 ただ、当然そんな強力な手段は多様出来る訳じゃない。

 文珠一つ生成するにもそれなりの霊力を消費するし、瞬時に創り出せる訳じゃない。さっきみたいな戦闘中にやるのは至難の技だ。

 何もない日は瞑想しながらストックしてるが、それでも一日数個が限界。

 除霊に使うなら兎も角、模擬戦でバンバン使えるもんじゃない。いや、使わないで済むなら除霊でも使いたくない。

 いつも、ストック出来てるとは限らないからな……文珠はあくまで “切り札” だ。


 …………となれば、残った戦闘手段のレベルアップが必須なわけだが、結果はご覧の通り……

 まぁ、奴とやり合えばそれなりに学ぶもんも多いから、状況は言うほど悪くはないんだけどな。

 
「ここまでにしようぜ。デカい音立てたんで、また(・・)通報されると不味い」


 夜の工業地帯だから人気は無いが、全く居ないわけでもない。夜、稼働してる工場だってあるんだ。


 以前は別の所でやってたんだが、派手にやり過ぎてパトカー呼ばれちまった……上手く逃げたからいいけど、同じ事は避けたい。

 やり合う場所云々より、見つかれば事務所の存続がヤバいからな。

 2人して、モグリなんて洒落にならねぇぞ……

 
「チッ……面倒くせぇな…………」

 
 そう言いながら、バツの悪そうな顔をするコイツも多少思う事はあるみたいだ。あんだけ苦労して手に入れた、GS免許を簡単に手放したくはないんだろうな……

 そんなこんなで、俺達は人目を避けるようにしながら工場を後にした。歩きながら暫く様子を覗ってみたが、特に変化はなかったから多分大丈夫だろう……


 そうして、工場から10分くらい歩くと俺達の拠点『伊達除霊事務所』が見えてくる。

 ……っても、看板はない。あっても、見た目は汚ねぇ廃ビルなんで誰も彼も寄って来ない………無関係なら、俺だって寄りたくない程汚い。電気の消えた状態なら、ここを利用してる人間が居るなんて、まず思わないだろう。

 何でそんな所に居るんだか意味が解らないだろうが、一流のGSと違ってペーペー俺達にクライアントからやってくる事なんてまず無い。
 クライアントが来ないなら、収入も無いし当然良い所を借りれる訳が無い。仕事はGS協会に問い合わせて、自分達に出来そうな案件を回して貰ってるが、それをする為にも事務所を構える()だけでも作らなきゃならない。
 それが、ここをただ同然で借りてる理由だ。

 話は脱線するが、回って来るのは誰もやらずに残ってる案件なんて儲けにならない物が殆ど。

 ただ、それは高い道具に頼らざる負えない一般的なGSの話であって、道具を使わない(霊力を具現化)俺達はそれでも十分な採算が取れる。だから、傍から見たら意味不明な俺達でも何とか食えていけてる。

 ぶっちゃけ、美神除霊事務所にいた頃より食えてる……あんな薄給で、よくやってたな俺…………

 
 そんな事を考えながら、鍵を開けて俺達は中に入る。見た目は汚ねぇ廃ビルの中が、綺麗な筈もなく乱雑で埃っぽい屋内。

 全部で3階あって、1階は仕事場。事務処理したり、除霊道具(殆ど無いが……)を置いとくスペースがあるんで、一応整理はしてある。

 2階は雪之丞の居住スペースで、俺も良く寝泊まりしてる………と言うか、半同居状態。


 3階は物置。つっても物は、無ぇからここで良く瞑想して文珠の生成してる。雪之丞は、よく鍛錬してるな。広さは、そこそこあって1フロアが大体学校の教室より少し広い程度。

 
「先に風呂入るぜ……」
「ああ」

 
 2階に上がって早々にプロテクター(スーツの上に装着してる)を外しながら呟く雪之丞に、俺は適当に返事をしてソファに座る。終わるまでここで待ってるか。

 …………アイツは風呂なんて言ってるけど、このビルは会社として使ってた建物をそのまま流用してるんで風呂なんかはない。周りは工場しかねぇから近場に銭湯だってない。給湯室で出したお湯で体を拭くだけだ。それでも、何もしねぇよりはマシだが…………

 本当に、こんなとこ良く住む気になったぜ。元々、住所不定の生活が長いから屋根があれば十分なのか?

 一緒に過ごしてる、俺が言えた義理じゃないが……


「そういや次の仕事いつだっけ?」
「忘れたのか?明後日だよ!」

 
 給湯室から聞こえてくるアイツの問いに答えながら、TVでも観て時間を潰すかとも思ったけどなんだか眠くなってきた。

 ……もう寝ちまおう。

 どうせ、明日は何もないんだ風呂は朝にでも入りゃいい…………


 俺は着替えるのも面倒になってプロテクターを外してブーツを脱ぐと、そのままソファに寝転がって左腕を眼の上に乗せると、そのまま瞼を閉じた。


 たまに仕事して、後は鍛錬。金に余裕が出来れば、妙神山に行って修業。これが、今の俺達二人の日常だ。一応学、校もちゃんと行ってるぞ。

 雪之丞は「GSとして上を目指す」とか言ってるけど、具体的にどうしたいんだかイマイチよく解らん。除霊でバトって、暇な時に修業出来りゃ満足のようにも見える。

 正直言うと、俺の方もこれからGSとしてどうしたいかが余り見えて無い。独立も一応考えてるけど、アイツと二人でやっていくのも悪くないと思ってるし……まぁ、今は鍛錬と細い実績の積み重ねしか無いんだろうけどな。


 そんな事を考えながら俺の意識は眠りへと落ちて行った……

 


次のエピソードへ進む 除霊中


みんなのリアクション

 
 ドゴォーーーーン!!!
 都心の外れにある工業地帯……その一画にある廃工場に轟音が響く。
 例えるならそれは、重量の金属同士がぶつかり合うような音。知らない人間が聞けば、車両同士の衝突なんかを連想しそうだな……
 その轟音のする廃工場の通路を、黒のコンバットスーツのような衣装に身を包んだ俺は埃を巻き上げながら全力で走る。
 時刻は夜の10時過ぎ。電灯なんて点かないんで光源は窓から見える星明かり明かりのみ。周りが殆ど見えやしねぇ……
「チッ……!」
 撒いたと思ったら、速攻で追い付いてくるアイツの気配を感じて俺は舌打ちをする。
 さっきの音は車両の衝突なんかじゃない、奴が壊れた機械に “体当り” した音だ!
 なんて思っていた次の瞬間に物陰のから、魔装術を身に纏った雪之丞が飛び出して来る。
「そこだぁ!!」 
 ギインッ
「ぐっ……」
 俺の右後方から来た奴の一撃を、俺は右手に纏わせた霊気を盾状に変化させて何とか防ぐ。
 魔装術を使ってる奴は、ある意味全身が金属の弾丸だ。霊気の盾で防ぎはしたが、衝撃は殺しきれず右腕全体に痺れが走る……
「クソがっ!!」
 それでも奴を振り払うように、強引に右腕を振るう! 
 ………………が、大きく振った事でボディが、がら空きになっちまった。
「貰いぃぃっ!!」
 嬉々とした顔をした雪之丞が、俺にボディブローを放つ!!
 ドヤ顔しやがって、腹立つなこの野郎!!
 咄嗟に左手で霊盾を展開させて直撃は何とか防ぐが、衝撃で数メートル後ろへすっ飛ばされる。
「くっ…」
 受け身をとって何とか体勢を整えようとするが、その時既に距離を詰めた奴の右手が俺の首スジに当たっていた……
「ここまでだな♪」
 ニヤリと笑いながら雪之丞は、魔装術を解いた。着ているのは、俺と同じ黒のコンバットスーツだ。
 正確には特殊な繊維で作られた対悪霊に特化したスーツ………
所謂 “霊衣” と言う奴だ。
 オカルトGメンも御用達にしてる大手オカルト企業の製品で、霊的な攻撃に対して強力な防御力を誇る。
 それに目を付けた雪之丞の発案で、それからは仕事や今みたいな“模擬戦”ではこんな格好をしてる訳だ
 そして、俺達は仕事が無い日(無い日が圧倒的なんだが……)は、修業の為にこういった事務所近くの廃工場でやり合う事が多い。
<i14655|55568>
「……これで三連敗か」
 俺は、体についた埃を払いながら苦々しく返した。
 勝率で言えば7対3くらいか……?せめて、6対4までは持って行きてぇな。
「実戦形式なんだぜ。普通に文珠だって使えばいいじゃねぇか?」
「アレにばかり、頼りたくねぇんだよ……」
 …………そう、俺の文珠は使いようによっては、最強の手段になり得る。自惚れじゃなく、本気でそう言える。
 俺の霊力を凝縮して作るビー玉くらいの宝珠に、文字を刻んで発動と念じれば様々な事象を引き起こせる。
『爆』と刻めば爆弾のように使えるし、『護』と刻めば結界は張ることが出来る。ニ個使用してそれぞれに『転』『移』と刻めばテレポートまで出来る。
 そして、組み合わせる文字数が多くなるほど、効果も比例して大きくなる。
 ただ、当然そんな強力な手段は多様出来る訳じゃない。
 文珠一つ生成するにもそれなりの霊力を消費するし、瞬時に創り出せる訳じゃない。さっきみたいな戦闘中にやるのは至難の技だ。
 何もない日は瞑想しながらストックしてるが、それでも一日数個が限界。
 除霊に使うなら兎も角、模擬戦でバンバン使えるもんじゃない。いや、使わないで済むなら除霊でも使いたくない。
 いつも、ストック出来てるとは限らないからな……文珠はあくまで “切り札” だ。
 …………となれば、残った戦闘手段のレベルアップが必須なわけだが、結果はご覧の通り……
 まぁ、奴とやり合えばそれなりに学ぶもんも多いから、状況は言うほど悪くはないんだけどな。
「ここまでにしようぜ。デカい音立てたんで、|また《・・》通報されると不味い」
 夜の工業地帯だから人気は無いが、全く居ないわけでもない。夜、稼働してる工場だってあるんだ。
 以前は別の所でやってたんだが、派手にやり過ぎてパトカー呼ばれちまった……上手く逃げたからいいけど、同じ事は避けたい。
 やり合う場所云々より、見つかれば事務所の存続がヤバいからな。
 2人して、モグリなんて洒落にならねぇぞ……
「チッ……面倒くせぇな…………」
 そう言いながら、バツの悪そうな顔をするコイツも多少思う事はあるみたいだ。あんだけ苦労して手に入れた、GS免許を簡単に手放したくはないんだろうな……
 そんなこんなで、俺達は人目を避けるようにしながら工場を後にした。歩きながら暫く様子を覗ってみたが、特に変化はなかったから多分大丈夫だろう……
 そうして、工場から10分くらい歩くと俺達の拠点『伊達除霊事務所』が見えてくる。
 ……っても、看板はない。あっても、見た目は汚ねぇ廃ビルなんで誰も彼も寄って来ない………無関係なら、俺だって寄りたくない程汚い。電気の消えた状態なら、ここを利用してる人間が居るなんて、まず思わないだろう。
 何でそんな所に居るんだか意味が解らないだろうが、一流のGSと違ってペーペー俺達にクライアントからやってくる事なんてまず無い。
 クライアントが来ないなら、収入も無いし当然良い所を借りれる訳が無い。仕事はGS協会に問い合わせて、自分達に出来そうな案件を回して貰ってるが、それをする為にも事務所を構える|形《・》だけでも作らなきゃならない。
 それが、ここをただ同然で借りてる理由だ。
 話は脱線するが、回って来るのは誰もやらずに残ってる案件なんて儲けにならない物が殆ど。
 ただ、それは高い道具に頼らざる負えない一般的なGSの話であって、道具を使わない(霊力を具現化)俺達はそれでも十分な採算が取れる。だから、傍から見たら意味不明な俺達でも何とか食えていけてる。
 ぶっちゃけ、美神除霊事務所にいた頃より食えてる……あんな薄給で、よくやってたな俺…………
 そんな事を考えながら、鍵を開けて俺達は中に入る。見た目は汚ねぇ廃ビルの中が、綺麗な筈もなく乱雑で埃っぽい屋内。
 全部で3階あって、1階は仕事場。事務処理したり、除霊道具(殆ど無いが……)を置いとくスペースがあるんで、一応整理はしてある。
 2階は雪之丞の居住スペースで、俺も良く寝泊まりしてる………と言うか、半同居状態。
 3階は物置。つっても物は、無ぇからここで良く瞑想して文珠の生成してる。雪之丞は、よく鍛錬してるな。広さは、そこそこあって1フロアが大体学校の教室より少し広い程度。
「先に風呂入るぜ……」
「ああ」
 2階に上がって早々にプロテクター(スーツの上に装着してる)を外しながら呟く雪之丞に、俺は適当に返事をしてソファに座る。終わるまでここで待ってるか。
 …………アイツは風呂なんて言ってるけど、このビルは会社として使ってた建物をそのまま流用してるんで風呂なんかはない。周りは工場しかねぇから近場に銭湯だってない。給湯室で出したお湯で体を拭くだけだ。それでも、何もしねぇよりはマシだが…………
 本当に、こんなとこ良く住む気になったぜ。元々、住所不定の生活が長いから屋根があれば十分なのか?
 一緒に過ごしてる、俺が言えた義理じゃないが……
「そういや次の仕事いつだっけ?」
「忘れたのか?明後日だよ!」
 給湯室から聞こえてくるアイツの問いに答えながら、TVでも観て時間を潰すかとも思ったけどなんだか眠くなってきた。
 ……もう寝ちまおう。
 どうせ、明日は何もないんだ風呂は朝にでも入りゃいい…………
 俺は着替えるのも面倒になってプロテクターを外してブーツを脱ぐと、そのままソファに寝転がって左腕を眼の上に乗せると、そのまま瞼を閉じた。
 たまに仕事して、後は鍛錬。金に余裕が出来れば、妙神山に行って修業。これが、今の俺達二人の日常だ。一応学、校もちゃんと行ってるぞ。
 雪之丞は「GSとして上を目指す」とか言ってるけど、具体的にどうしたいんだかイマイチよく解らん。除霊でバトって、暇な時に修業出来りゃ満足のようにも見える。
 正直言うと、俺の方もこれからGSとしてどうしたいかが余り見えて無い。独立も一応考えてるけど、アイツと二人でやっていくのも悪くないと思ってるし……まぁ、今は鍛錬と細い実績の積み重ねしか無いんだろうけどな。
 そんな事を考えながら俺の意識は眠りへと落ちて行った……