第30話 恋愛と創作
ー/ー コンテストに応募して数日──
会社帰りにスマホに通知が来た。
もう辞めたサークルのリーダーの人からだった。
三浦さんがコンテストに作品を応募して、その作品が凄くいいから神谷さんにも是非見てほしい、との事だった。
サークルを辞めた人間なのに、気にかけてくれたのが嬉しかった。
三浦さんとサークルで最後会った時、びっくりして帰ってから戸惑ってたけど、彼の小説に対する真っ直ぐな気持ちは本物だ。
私も読んでみたい。
私は『行きます』と返信した。
◇ ◇ ◇
サークルの日、私はいつもの場所に行った。
部屋に入ったら、色んな人が声をかけてくれた。
「久しぶりだね!来なくなって寂しかったよ〜。また戻ってきてよ」
「ありがとうございます。今仕事が立て込んでまして……。また落ち着いたら是非」
暖かく歓迎されて嬉しかった。
ふと視線を感じて振り返ると、三浦さんがいた。
三浦さんは驚いてたけど、優しく微笑んだ。
「神谷さんもコンテスト出したの?」
「はい、出しました」
あの時伝えられた三浦さんの想いと、重なった唇を思い出すと恥ずかしくなった。
「あの……今日三浦さんがコンテストに出した作品を見たくてきました」
「いいよ……でも、神谷さんのも見たい」
実は今日、持ってきていた。
自分の作品を。
恥ずかしいと思ったけど、コンテストに出すなら色んな人に見られる。
もう隠さない事にした。
お互いに作品を交換してじっくり読んだ。
三浦さんが書いた作品は──
恋人と親友に裏切られた男の子が、二人に復讐する物語だった。
大人の書くものとはまた違った、苦しさと切なさが入り混じり、三浦さんの純粋さが物語を美しく包んで、読んだ後に希望を感じた。
「とても素敵な物語です……三浦さんは凄いです」
三浦さんは私の作品を読み終わった。
「凄い……破滅的な世界だね。人間ってこんなに壊れてしまうんだね……」
「あくまで私が考えたストーリーなので」
他の人たちも順番に読んでいた。
「神谷さんってこういうストーリー書くんだね。意外。でもすごい引き込まれる世界だね」
「そう思ってもらえると嬉しいです」
橘さんだけじゃなくて、他の人にも褒めてもらって、私はそれだけでも胸がいっぱいだった。
その後、他にもコンテストに小説を投稿した人の作品も色々読んで解散になった。
私は三浦さんとゆっくり夕陽が照らす坂道を歩いていた。
「三浦さんは凄いですね、今日のコンテストの作品とても素敵なストーリーでした」
「神谷さんも凄いよ。前見たものよりもっと深くて……俺じゃ書けないよ」
「三浦さんならこれからも色んな作品が書けますよ!これからも作品楽しみにしてます」
その時、三浦さんが立ち止まった。
「打倒、翠川雅人だからね!」
握りこぶしをして微笑んだ。
あの日の事をなかった事にしようとしたけど、三浦さんの私への想いは本物なのかもしれない。
「私も負けません!!」
「あ、そうか、神谷さんもライバルだね」
恋として成就はしないけど、私はこの人を尊敬しているし、ファンでもある。
同じコンテストに応募したライバルでもある。
この関係は失いたくないと思った。
◇ ◇ ◇
マンションに帰ってからしばらくすると、橘さんが来た。
「今日はどこに行ってた?」
「前お世話になったサークルの方に呼ばれて遊びに行ったんです」
「……三浦もいたんだろ?」
「……はい、いました。同じコンテストに作品を出してました」
「なんで三浦と何かあると混乱するくせにまた行くんだよ……」
橘さんが呆れている。
「三浦さんが同じコンテストに作品を出したと聞いて気になって……」
「美鈴が書いたやつも見せたのか?」
「はい。応募も済んだので」
橘さんから苛立ちを感じる。
「三浦はお前を好きなんだろ?」
「三浦さんに対しては私は恋愛感情はないですし、三浦さんを作家として見ているだけなんです」
「俺の気持ちは考えないんだな……」
何も言えなくなった。
恋愛と創作は別だと私は考えていた。
「……すみません、三浦さんとはもう会いません」
私は自分から恋人なりたいとこの人に言った。
流石に軽率だった。
本当は作家仲間としてこれからも関わっていきたいと思っていたけれど、橘さんの事を考えると、この人が受け入れられないと厳しい。
「……頼まれて受けたけど、やっぱり共同で作るのは、断る」
「え……?」
橘さんは玄関から出て行こうとした。
「ごめんなさい!もう行きません!もう三浦さんとも関わりません!」
「違う。そうじゃない……そういう事じゃない」
「何がいけなかったんですか?」
「美鈴は何も悪くない。俺の問題だ」
橘さんはそのまま部屋を出て行ってしまった。
どうして……やっとコンテストに作品を出せたのに……。
何で橘さんは断ったの?
全くわからないまま、時間だけが静かに過ぎ去っていった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
コンテストに応募して数日──
会社帰りにスマホに通知が来た。
もう辞めたサークルのリーダーの人からだった。
三浦さんがコンテストに作品を応募して、その作品が凄くいいから神谷さんにも是非見てほしい、との事だった。
サークルを辞めた人間なのに、気にかけてくれたのが嬉しかった。
三浦さんとサークルで最後会った時、びっくりして帰ってから戸惑ってたけど、彼の小説に対する真っ直ぐな気持ちは本物だ。
私も読んでみたい。
私は『行きます』と返信した。
◇ ◇ ◇
サークルの日、私はいつもの場所に行った。
部屋に入ったら、色んな人が声をかけてくれた。
「久しぶりだね!来なくなって寂しかったよ〜。また戻ってきてよ」
「ありがとうございます。今仕事が立て込んでまして……。また落ち着いたら是非」
暖かく歓迎されて嬉しかった。
ふと視線を感じて振り返ると、三浦さんがいた。
三浦さんは驚いてたけど、優しく微笑んだ。
「神谷さんもコンテスト出したの?」
「はい、出しました」
あの時伝えられた三浦さんの想いと、重なった唇を思い出すと恥ずかしくなった。
「あの……今日三浦さんがコンテストに出した作品を見たくてきました」
「いいよ……でも、神谷さんのも見たい」
実は今日、持ってきていた。
自分の作品を。
恥ずかしいと思ったけど、コンテストに出すなら色んな人に見られる。
もう隠さない事にした。
お互いに作品を交換してじっくり読んだ。
三浦さんが書いた作品は──
恋人と親友に裏切られた男の子が、二人に復讐する物語だった。
大人の書くものとはまた違った、苦しさと切なさが入り混じり、三浦さんの純粋さが物語を美しく包んで、読んだ後に希望を感じた。
「とても素敵な物語です……三浦さんは凄いです」
三浦さんは私の作品を読み終わった。
「凄い……破滅的な世界だね。人間ってこんなに壊れてしまうんだね……」
「あくまで私が考えたストーリーなので」
他の人たちも順番に読んでいた。
「神谷さんってこういうストーリー書くんだね。意外。でもすごい引き込まれる世界だね」
「そう思ってもらえると嬉しいです」
橘さんだけじゃなくて、他の人にも褒めてもらって、私はそれだけでも胸がいっぱいだった。
その後、他にもコンテストに小説を投稿した人の作品も色々読んで解散になった。
私は三浦さんとゆっくり夕陽が照らす坂道を歩いていた。
「三浦さんは凄いですね、今日のコンテストの作品とても素敵なストーリーでした」
「神谷さんも凄いよ。前見たものよりもっと深くて……俺じゃ書けないよ」
「三浦さんならこれからも色んな作品が書けますよ!これからも作品楽しみにしてます」
その時、三浦さんが立ち止まった。
「打倒、翠川雅人だからね!」
握りこぶしをして微笑んだ。
あの日の事をなかった事にしようとしたけど、三浦さんの私への想いは本物なのかもしれない。
「私も負けません!!」
「あ、そうか、神谷さんもライバルだね」
恋として成就はしないけど、私はこの人を尊敬しているし、ファンでもある。
同じコンテストに応募したライバルでもある。
この関係は失いたくないと思った。
◇ ◇ ◇
マンションに帰ってからしばらくすると、橘さんが来た。
「今日はどこに行ってた?」
「前お世話になったサークルの方に呼ばれて遊びに行ったんです」
「……三浦もいたんだろ?」
「……はい、いました。同じコンテストに作品を出してました」
「なんで三浦と何かあると混乱するくせにまた行くんだよ……」
橘さんが呆れている。
「三浦さんが同じコンテストに作品を出したと聞いて気になって……」
「美鈴が書いたやつも見せたのか?」
「はい。応募も済んだので」
橘さんから苛立ちを感じる。
「三浦はお前を好きなんだろ?」
「三浦さんに対しては私は恋愛感情はないですし、三浦さんを作家として見ているだけなんです」
「俺の気持ちは考えないんだな……」
何も言えなくなった。
恋愛と創作は別だと私は考えていた。
「……すみません、三浦さんとはもう会いません」
私は自分から恋人なりたいとこの人に言った。
流石に軽率だった。
本当は作家仲間としてこれからも関わっていきたいと思っていたけれど、橘さんの事を考えると、この人が受け入れられないと厳しい。
「……頼まれて受けたけど、やっぱり共同で作るのは、断る」
「え……?」
橘さんは玄関から出て行こうとした。
「ごめんなさい!もう行きません!もう三浦さんとも関わりません!」
「違う。そうじゃない……そういう事じゃない」
「何がいけなかったんですか?」
「美鈴は何も悪くない。俺の問題だ」
橘さんはそのまま部屋を出て行ってしまった。
どうして……やっとコンテストに作品を出せたのに……。
何で橘さんは断ったの?
全くわからないまま、時間だけが静かに過ぎ去っていった。