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第20話 大失態

ー/ー



 ──その日私は、仕事の疲れのせいか、とんでもない失態をやらかしてしまった…

 ◇ ◇ ◇

 やっと、やっと、そういうシーンがない短編小説を書いた。

 私が書いたのは……バスケ部のエースの男の子とキャプテンの男の子の友情物語だった。
 それはほぼ実話で、私の学生時代の男子バスケ部はその二人がとても仲が良くて、チームの雰囲気もすごく良かった。
 そこに、三角関係という設定を入れてみて、二人が同じ女の子を好きになってしまうというストーリー。

 自分の今の年齢とは合わない内容だけど、経験した事が一番書きやすくて……
 青春、友情、恋愛をメインにしていた。

 それを橘さんに見せたら、
「ありきたり。展開がすぐわかる。つまらない。」

 一刀両断された……。
 自分なりに一生懸命書いたからショックだった。
 部屋で凹んでる時、三浦さんからメッセージがきた。

『小説書けましたか?』

 三浦さん……
 まだ高校生なのに、大人っぽくて、私の方がかなり年上なのに、気にかけてくれている。
 このストーリー、三浦さんならどう思うだろう。

『短いストーリーですけど書きました!見てもらってもいいですか?』

 他の人の意見も聞きたかったから、三浦さんに見せに行くことにした。

 ◇ ◇ ◇

 次の休みの日、お昼に少しだけ会う約束をした。
 三浦さんに指定された駅の近くのカフェ。
 私は用意した小説をバッグに入れて、カフェに早く着いて、小説を読んで時間を潰していた。
 暫くすると、三浦さんが来た。

「待たせてごめん!」

 全力で来たのか、息を切らして汗をかいていた。
 若さが溢れている……!

「いえ、今日はありがとうございます!時間を下さって」
「俺が見たかったんだよ」

 三浦さんの優しい笑顔。
 年下だけど私が敬語で三浦さんはタメ口。
 でも私はまだまだ未熟者で……賞を取った彼は尊敬してるし、この方が落ち着く。

「早速だけど見てもいい?」
「はい。短編で、他の作家さんからはダメ出しされました……」
「え?他の作家??」

 あ!これは秘密にしよう……

「あ、間違えました。小説投稿サイトの投稿者のグループがあって……そこのメンバーの人に厳しく言われたんです」
「どのサイトでどのアカウント??」

 無理、無理、R18

「あ、それよりこれです!見て感想やアドバイスください!」

 頭を下げて印刷した小説を渡した。
 三浦さんはそれを読み始めた。

 暫くすると──

「神谷さんって……こういうストーリー書くんだね……意外」
「え?そうですか?」
「設定とか……性描写とかあるから」

 ───え??

 私は三浦さんから紙を奪い取った。

 それは、橘さんに言われて作った小説だった。

 スーッと血の気が引いた。
 なんてものを……なんで私はこれを持って来たの!?
 恥ずかしくて、死にそうだった。

「ごめんなさい!!間違えました!!」

 三浦さんはそこまで動揺していなかった。

「意外だったけど、引き込まれたよ。流れもスムーズだし、心理的な描写が多いからそんなに露骨な感じもしないし。」

 いやでも高校生の子に見せるようなものじゃない!!

「すみません……出直します……」

 居ても立っても居られなくて、そのままカフェを出ようとした。

「待って!まだ最後まで読んでない!!」

 三浦さんが私の道を塞いだ。

「こんなの恥ずかしくて見せられないです……」
「恥ずかしくない!これも小説だよ!」

 そんな純粋で必死な目で見られると断れず──

「では、どうぞ……」

 私はそれを渡した。

 その時、スマホに着信があった。
 橘さんからだった。

『今どこにいる?話したい事がある』

 話したい事って……?

 私は、その小説を読まれる恥ずかしさと、橘さんの話したい事が気になって、その日は帰ることにした。

「中途半端で申し訳ありませんでした!」

 そのまま走り去って家に向かった。
 その途中、今度は三浦さんからメッセージが。

『小説忘れてるよ』

 ──最悪だった……。

『あー!!』と、心の中で叫んだ。

 他の人に見られてしまうなんて!!
 なんたる失態!!

 でも、ちゃんと読んでくれた。
 そういうストーリーでも。
 そっちの方が意外だった。

『今度また取りに行きます!申し訳ありませんでした。』

 それを送信。

 気持ちが沈んだままマンションに帰り、橘さんの部屋に行った。
 インターホンを押す。

『はい』
「神谷です」
『鍵渡したんだから自分で開けて入って来て』

 でも、打ち合わせしてる時もあるだろうし、そうもいかない。
 仕方なく橘さんの部屋に合鍵で開けて入ると書斎にいた。

「どこ行ってたの?」

 う、言いにくい……。

 嫌な予感がするから黙っておこう。

「ちょっと昔の友達と会ってまして…」
「女?」
「はい、女です」

 やはり言えない。
 真面目な理由でも、嫌がられそう。

「話なんだけど、コンテストに作品応募してみないか?」
「え、コンテスト!?」
「まあ、とりあえずコンテスト向けに作ってみる練習」

 コンテスト……
 一体どんなストーリーを……?

「ジャンルが指定されてるのもあるし、とりあえず調べていこう」
「はい……」

 この前、小説家としてじゃない俺を見て、と橘さんに言われて戸惑ったけど、今日は小説家モードだ。
 待たせている以上、何か、結果が欲しい……!

「わかりました!私頑張ります!!」
「お前の夢を叶えないと、俺の願いが叶わないからな」

 チクリと胸が痛んだ。

 とにかくやるしかない!
 私また夢にもう一歩踏み出してみることにした。



次のエピソードへ進む 第21話 ピンチ


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 ──その日私は、仕事の疲れのせいか、とんでもない失態をやらかしてしまった…
 ◇ ◇ ◇
 やっと、やっと、そういうシーンがない短編小説を書いた。
 私が書いたのは……バスケ部のエースの男の子とキャプテンの男の子の友情物語だった。
 それはほぼ実話で、私の学生時代の男子バスケ部はその二人がとても仲が良くて、チームの雰囲気もすごく良かった。
 そこに、三角関係という設定を入れてみて、二人が同じ女の子を好きになってしまうというストーリー。
 自分の今の年齢とは合わない内容だけど、経験した事が一番書きやすくて……
 青春、友情、恋愛をメインにしていた。
 それを橘さんに見せたら、
「ありきたり。展開がすぐわかる。つまらない。」
 一刀両断された……。
 自分なりに一生懸命書いたからショックだった。
 部屋で凹んでる時、三浦さんからメッセージがきた。
『小説書けましたか?』
 三浦さん……
 まだ高校生なのに、大人っぽくて、私の方がかなり年上なのに、気にかけてくれている。
 このストーリー、三浦さんならどう思うだろう。
『短いストーリーですけど書きました!見てもらってもいいですか?』
 他の人の意見も聞きたかったから、三浦さんに見せに行くことにした。
 ◇ ◇ ◇
 次の休みの日、お昼に少しだけ会う約束をした。
 三浦さんに指定された駅の近くのカフェ。
 私は用意した小説をバッグに入れて、カフェに早く着いて、小説を読んで時間を潰していた。
 暫くすると、三浦さんが来た。
「待たせてごめん!」
 全力で来たのか、息を切らして汗をかいていた。
 若さが溢れている……!
「いえ、今日はありがとうございます!時間を下さって」
「俺が見たかったんだよ」
 三浦さんの優しい笑顔。
 年下だけど私が敬語で三浦さんはタメ口。
 でも私はまだまだ未熟者で……賞を取った彼は尊敬してるし、この方が落ち着く。
「早速だけど見てもいい?」
「はい。短編で、他の作家さんからはダメ出しされました……」
「え?他の作家??」
 あ!これは秘密にしよう……
「あ、間違えました。小説投稿サイトの投稿者のグループがあって……そこのメンバーの人に厳しく言われたんです」
「どのサイトでどのアカウント??」
 無理、無理、R18
「あ、それよりこれです!見て感想やアドバイスください!」
 頭を下げて印刷した小説を渡した。
 三浦さんはそれを読み始めた。
 暫くすると──
「神谷さんって……こういうストーリー書くんだね……意外」
「え?そうですか?」
「設定とか……性描写とかあるから」
 ───え??
 私は三浦さんから紙を奪い取った。
 それは、橘さんに言われて作った小説だった。
 スーッと血の気が引いた。
 なんてものを……なんで私はこれを持って来たの!?
 恥ずかしくて、死にそうだった。
「ごめんなさい!!間違えました!!」
 三浦さんはそこまで動揺していなかった。
「意外だったけど、引き込まれたよ。流れもスムーズだし、心理的な描写が多いからそんなに露骨な感じもしないし。」
 いやでも高校生の子に見せるようなものじゃない!!
「すみません……出直します……」
 居ても立っても居られなくて、そのままカフェを出ようとした。
「待って!まだ最後まで読んでない!!」
 三浦さんが私の道を塞いだ。
「こんなの恥ずかしくて見せられないです……」
「恥ずかしくない!これも小説だよ!」
 そんな純粋で必死な目で見られると断れず──
「では、どうぞ……」
 私はそれを渡した。
 その時、スマホに着信があった。
 橘さんからだった。
『今どこにいる?話したい事がある』
 話したい事って……?
 私は、その小説を読まれる恥ずかしさと、橘さんの話したい事が気になって、その日は帰ることにした。
「中途半端で申し訳ありませんでした!」
 そのまま走り去って家に向かった。
 その途中、今度は三浦さんからメッセージが。
『小説忘れてるよ』
 ──最悪だった……。
『あー!!』と、心の中で叫んだ。
 他の人に見られてしまうなんて!!
 なんたる失態!!
 でも、ちゃんと読んでくれた。
 そういうストーリーでも。
 そっちの方が意外だった。
『今度また取りに行きます!申し訳ありませんでした。』
 それを送信。
 気持ちが沈んだままマンションに帰り、橘さんの部屋に行った。
 インターホンを押す。
『はい』
「神谷です」
『鍵渡したんだから自分で開けて入って来て』
 でも、打ち合わせしてる時もあるだろうし、そうもいかない。
 仕方なく橘さんの部屋に合鍵で開けて入ると書斎にいた。
「どこ行ってたの?」
 う、言いにくい……。
 嫌な予感がするから黙っておこう。
「ちょっと昔の友達と会ってまして…」
「女?」
「はい、女です」
 やはり言えない。
 真面目な理由でも、嫌がられそう。
「話なんだけど、コンテストに作品応募してみないか?」
「え、コンテスト!?」
「まあ、とりあえずコンテスト向けに作ってみる練習」
 コンテスト……
 一体どんなストーリーを……?
「ジャンルが指定されてるのもあるし、とりあえず調べていこう」
「はい……」
 この前、小説家としてじゃない俺を見て、と橘さんに言われて戸惑ったけど、今日は小説家モードだ。
 待たせている以上、何か、結果が欲しい……!
「わかりました!私頑張ります!!」
「お前の夢を叶えないと、俺の願いが叶わないからな」
 チクリと胸が痛んだ。
 とにかくやるしかない!
 私また夢にもう一歩踏み出してみることにした。