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第16話 爆発

ー/ー



 翠川雅人のアドバイスや指導や要望に合わせ、官能小説を書く日々。
 ただ書くだけではなく、私自身に植え付けられていく感覚。
 勝手に紡いでいってしまうストーリー。

 橘さんは、毎日のように「書いた!?」と、待ちきれなくて連絡してくる。
 部屋に押しかけてくる。
 そして新しい設定を作って、私の意欲を動かそうとする。

「手に取るようにわかる……美鈴の心と体が響く場所が。そして、俺がまた新しく植えるんだ」

 私をコントロールして書かせて楽しむ橘さんを見て、これでいいのかと募った不安が──

 爆発した。

「私もう書きません!!私はあなたの為に書いてるんじゃないんです!!」

「落ち着け。やり過ぎたのはわかった。でも本当にお前の書くこの世界は美しい。俺は好きだ」

「自分で書いてください!!」

 私は橘さんと距離を置こうと、部屋のインターホンが押されても、スマホに連絡がきても無視をした。

 橘さんは私の純粋な世界を汚した。
 自分の欲望で。
 もうあんな小説書かない!!
 私は自分の好きな世界観で書くんだ!

 会社から帰った後、パソコンに向かった。

 頭をまっさらにした。
 私の好きだった世界。
 純粋でプラトニックな純愛。

 そうだ、学生を主人公にしよう!!
 青春ラブストーリー!

 私はパソコンでざっと考えたのを打ち始めた。

 でも──

 何もストーリーが思いつかない……。

「なんで……?」

 この前までスラスラ書いてたのに。

 先生の好きなストーリーだけど……。

 なんであれはスラスラ書けるのに、これは書けないの……?

 ──橘さんのせいだ……。

 あの人にあんなストーリーを沢山書かされたせいで、私は変わってしまったんだ。

 ショックだ。

 あんな要望聞かなければよかった!

 私は居ても立っても居られなくて、橘さんの部屋に行った。

 インターホンを押したら、橘さんが出てきた。

「美鈴!よかった……やっと、やっと会えた」

 橘さんが私に触れようとした。
 その時、私はその手を払いのけた。

「あなたのせいです!」

「は?」

「あなたのせいで書けなくなってしまいました!自分の世界を!」

 ぐっと手を握りしめた。

「何も思い浮かばないんです!つい前まであんなに書けてたのに!」

 橘さんは冷静に私を見ていた。

「私は変わってしまいました!」

「お前は変わったんじゃない。目覚めたんだ」

「は……?」

 目覚めた……?

「意味がわかりません……」

「その世界が、お前とリンクしたんだよ」

「それも橘さんが仕向けたんじゃないですか……」

「確かに最初読めとは言った。でもそれも含めて物語だから、そこに他意はなかった」

 でも──

「お前はその世界に魅入られてしまったんだよ」

 そんな……。

「恥じる事じゃない。むしろ、書けた事を誇って欲しい」

 橘さんの瞳は真剣だった。

「誰にでもできる事じゃない」

 そう言われると、複雑だ。

「創作は自由だ。この先、色々な経験を積めば、また違うものを書けるようになるかもしれない」

 橘さんの言うことは、作家をしてるただけあって普通の人が言う事とは重みが違う。

 でも私にはまだわからない。

「そもそも恋愛でなくてもいい。ミステリーやホラー。ジャンルはいくらでもある」

 そうだ……。

 私は、縛られ過ぎたのかもしれない

 プラトニックな恋愛、翠川雅人の世界に……。

「人間が出てこない物語もある。もっともっと知るんだ。」

「……わかりました」

 橘さんの言葉でやっと気持ちが落ち着いてきた。

 橘さんは私をぎゅっと抱きしめた。

「美鈴の物語は綺麗だよ。」

「ありがとうございます……」

 橘さんの温もりが心地よかった。

「酷い事沢山言ってしまって申し訳ありませんでした」

「いや、不安にさせてごめん。書いてる時辛かった?」

 ──それは

「辛くはなかったです……」

「よかった。やめることは簡単にできる。やめたくないから辛いんだよな」

 そうなんだ。
 嫌ならすぐにやめればいい。
 やめたくない。
 書きたいんだ。

「……そうだ。お詫びに見せる」

「何をですか?」

 橘さんは書斎に行った。

 そして私の前に、紙を持ってきた。

「読んでみろ」

 そこに書いてあったのは──

 翠川雅人の描く官能の世界だった。
 短く部分的に書いてあった。
 私は読んでるうちに震えてきた。

「これはダメです…翠川雅人がこの作品を出しては……」

 想像以上にエグかった。

「わかったか。」

「橘さんの性癖はなんとなくわかりました……」

 自分の創作に自信はないけど、橘さんだけは認めてくれている。

 それが官能小説でも。

 今はそれだけでいいんだ。

 と思う事にした……。



次のエピソードへ進む 第17話 本当の気持ち


みんなのリアクション

 翠川雅人のアドバイスや指導や要望に合わせ、官能小説を書く日々。
 ただ書くだけではなく、私自身に植え付けられていく感覚。
 勝手に紡いでいってしまうストーリー。
 橘さんは、毎日のように「書いた!?」と、待ちきれなくて連絡してくる。
 部屋に押しかけてくる。
 そして新しい設定を作って、私の意欲を動かそうとする。
「手に取るようにわかる……美鈴の心と体が響く場所が。そして、俺がまた新しく植えるんだ」
 私をコントロールして書かせて楽しむ橘さんを見て、これでいいのかと募った不安が──
 爆発した。
「私もう書きません!!私はあなたの為に書いてるんじゃないんです!!」
「落ち着け。やり過ぎたのはわかった。でも本当にお前の書くこの世界は美しい。俺は好きだ」
「自分で書いてください!!」
 私は橘さんと距離を置こうと、部屋のインターホンが押されても、スマホに連絡がきても無視をした。
 橘さんは私の純粋な世界を汚した。
 自分の欲望で。
 もうあんな小説書かない!!
 私は自分の好きな世界観で書くんだ!
 会社から帰った後、パソコンに向かった。
 頭をまっさらにした。
 私の好きだった世界。
 純粋でプラトニックな純愛。
 そうだ、学生を主人公にしよう!!
 青春ラブストーリー!
 私はパソコンでざっと考えたのを打ち始めた。
 でも──
 何もストーリーが思いつかない……。
「なんで……?」
 この前までスラスラ書いてたのに。
 先生の好きなストーリーだけど……。
 なんであれはスラスラ書けるのに、これは書けないの……?
 ──橘さんのせいだ……。
 あの人にあんなストーリーを沢山書かされたせいで、私は変わってしまったんだ。
 ショックだ。
 あんな要望聞かなければよかった!
 私は居ても立っても居られなくて、橘さんの部屋に行った。
 インターホンを押したら、橘さんが出てきた。
「美鈴!よかった……やっと、やっと会えた」
 橘さんが私に触れようとした。
 その時、私はその手を払いのけた。
「あなたのせいです!」
「は?」
「あなたのせいで書けなくなってしまいました!自分の世界を!」
 ぐっと手を握りしめた。
「何も思い浮かばないんです!つい前まであんなに書けてたのに!」
 橘さんは冷静に私を見ていた。
「私は変わってしまいました!」
「お前は変わったんじゃない。目覚めたんだ」
「は……?」
 目覚めた……?
「意味がわかりません……」
「その世界が、お前とリンクしたんだよ」
「それも橘さんが仕向けたんじゃないですか……」
「確かに最初読めとは言った。でもそれも含めて物語だから、そこに他意はなかった」
 でも──
「お前はその世界に魅入られてしまったんだよ」
 そんな……。
「恥じる事じゃない。むしろ、書けた事を誇って欲しい」
 橘さんの瞳は真剣だった。
「誰にでもできる事じゃない」
 そう言われると、複雑だ。
「創作は自由だ。この先、色々な経験を積めば、また違うものを書けるようになるかもしれない」
 橘さんの言うことは、作家をしてるただけあって普通の人が言う事とは重みが違う。
 でも私にはまだわからない。
「そもそも恋愛でなくてもいい。ミステリーやホラー。ジャンルはいくらでもある」
 そうだ……。
 私は、縛られ過ぎたのかもしれない
 プラトニックな恋愛、翠川雅人の世界に……。
「人間が出てこない物語もある。もっともっと知るんだ。」
「……わかりました」
 橘さんの言葉でやっと気持ちが落ち着いてきた。
 橘さんは私をぎゅっと抱きしめた。
「美鈴の物語は綺麗だよ。」
「ありがとうございます……」
 橘さんの温もりが心地よかった。
「酷い事沢山言ってしまって申し訳ありませんでした」
「いや、不安にさせてごめん。書いてる時辛かった?」
 ──それは
「辛くはなかったです……」
「よかった。やめることは簡単にできる。やめたくないから辛いんだよな」
 そうなんだ。
 嫌ならすぐにやめればいい。
 やめたくない。
 書きたいんだ。
「……そうだ。お詫びに見せる」
「何をですか?」
 橘さんは書斎に行った。
 そして私の前に、紙を持ってきた。
「読んでみろ」
 そこに書いてあったのは──
 翠川雅人の描く官能の世界だった。
 短く部分的に書いてあった。
 私は読んでるうちに震えてきた。
「これはダメです…翠川雅人がこの作品を出しては……」
 想像以上にエグかった。
「わかったか。」
「橘さんの性癖はなんとなくわかりました……」
 自分の創作に自信はないけど、橘さんだけは認めてくれている。
 それが官能小説でも。
 今はそれだけでいいんだ。
 と思う事にした……。